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編集部コラム「西監督」

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暇つぶし程度にご覧ください!

第136回西監督(山本慎一郎)

今年度も日本のマラソンシーズンが盛り上がっています。東京マラソンが終わり、JMCシリーズとして残すはいよいよ日曜日の名古屋ウィメンズマラソンのみとなりました。こちらも注目です。

ところで、コロナ禍になってからはオンラインでの取材が多くなりましたが、以前は取材と言えば選手や指導者と直接お会いするのが普通でした。そうすると本題のインタビューが終わった後も、練習を撮影がてら見学したり雑談をする機会が多々ありました。

今回はその中で印象に残ったエピソードをご紹介します。

あれは2015年の夏でしょうか。明大駅伝チームの新潟・妙高合宿にお邪魔して、箱根駅伝の5区候補を発掘する“山上りトライアル”で籔下響大選手(現・大阪ガス)が快走したのを見た帰り道だったと思います。

明大と言えば、学生長距離界でもトップレベルの逸材が数多く入学しているチーム。車を運転する西弘美駅伝監督(現・スカウティングマネージャー)にふと疑問をぶつけてみました。

明大の西弘美駅伝監督(現・スカウティングマネージャー)

西さんがこれまで指導してきた中で、特に素質を感じた選手は誰でしたか?

「やっぱり鎧坂でしょうね」

鎧坂哲哉選手(現・旭化成)は大学4年生だった2011年に10000mで日本人学生最高(当時)となる27分44秒30をマーク。卒業後の2015年には5000mと10000mで当時の日本記録を上回っています(同じレースで先着されたため日本記録保持者にはなれず)。これは順当と言える選出でした。

2012年の箱根駅伝でアンカーとして3位のフィニッシュテープを切った鎧坂哲哉選手(現・旭化成)

では、もう一人挙げるなら?

「岡本直己ですね」

岡本選手と言えば、37歳となった今でこそ“レジェンド枠”に入るランナーですが、当時はまだ30歳(30歳の選手を「まだ」と表現するのも変ですが……)。駅伝では活躍していましたが、五輪・世界選手権の出場経験はありません。だからこそ、この時に西さんが名前を挙げたのは印象的でした。

あれから時が流れ、マラソンに本格参戦した鎧坂選手は今年2月6日の別大で2時間7分55秒と大幅に自己記録を塗り替えて2位。そして、2月27日の大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会では岡本選手も2時間8分04秒の自己新(!)で4位に食い込み、ともにMGCのキップを手にしました。

あの時に西さんが挙げた2人が、長い年月を経てマラソン界に大きなインパクトを残したのです。西さんの指導力を見た思いがしました。

……と、コラムとしてはここで終わらせても良かったのですが、せっかくなので西さんに少しお話をうかがうことにしました(突然のご連絡にもかかわらず、快く応じていただきました)。

「岡本は私が(明大で指導を始めて)2年目の時に勧誘した選手です。4年間はほとんど故障していて、練習は半分くらいしかできなかったと思いますが、試合になると走るんです。関カレも入賞していますし(3年時の2005年に10000m6位)、箱根(2006年)でも1区6位でした」

2006年の箱根駅伝1区で6位と健闘した岡本直己選手(現・中国電力)

当時の明大は予選会での敗退が続き、2005年に本戦復活を果たした時は14年ぶりの出場でした。苦難の時代だったこともあり、西さんにとっては岡本選手の印象がより強く残ったのかもしれません。

「当時は箱根に出られませんでしたから、ウチに来ると決めてからは他の選手から『明治に陸上部あるの?』と聞かれたこともあったみたいです。初めて走りを見たのは3年のインターハイ中国大会だったかな。勧誘で由良育英高校(現・鳥取中央育英)にも行きました。柔らかい走りでしたが、大学までは身体ができていなかったのかもしれません。ただ、故障がなくなれば強くなる予感はありました」

鎧坂選手のマラソン挑戦については「大迫君(傑/Nike)の影響が大きかったでしょうね」と言いながらも、適性は感じていたようです。

「鎧坂は『マラソンは絶対にやらない』と言っていたんですけどね(笑)。ただ、『いけるんじゃないかな』と伝えたことはありました。大学を卒業した頃でしょうか」

ほかにも明大OBは木村慎選手(Honda)が2020年の東京で2時間7分20秒、大六野秀畝選手(旭化成)が2021年のびわ湖で2時間7分12秒と、徐々にマラソンでも結果を出しつつあります。

「大学4年間で終わりではなく、卒業後も活躍してくれたらと思っていたのでうれしいです。20年間で169名が卒業し、そのうち実業団に進んだのが48人かな。75%が大学時代に5000mの自己ベストを更新しています」

こういう数字がスラスラと出てくることに驚きます。「指導は感覚です」と笑い飛ばす西さんですが、その裏には緻密なデータの蓄積があることがうかがえます。「選手を色分けして整理しているんです」と“企業秘密”も明かしてくれました。

「今は東京と浜松を半分くらい行ったり来たりしています。28年間の単身赴任でした」

選手が活躍する裏には、指導者のこういった見えないサポートがあることを実感します。そして、コロナ禍が収まってまたこういった雑談が気楽にできる日々が戻ってくることを願います。

それと、本日は3月11日。東日本大震災から11年が経ちました。最近はロシアのウクライナ侵攻などのニュースも流れており、改めて平和について考えさせられます。

山本慎一郎(やまもとしんいちろう)
月刊陸上競技 編集部(兼企画営業部)企画課長
1983年1月生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒。中学では1学年下の村上康則(2010年日本選手権1500m覇者)と一緒に駅伝を走り、その才能を間近で見て挫折。懲りずに高校で都大路、大学で箱根駅伝を目指すも、いずれも未達に終わる。引退するタイミングを逸して現在も市民ランナーとして活動中。シューズマニアの一面も持ち、月陸Onlineでは「シューズレポ」を連載中。

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