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2020.02.21

編集部コラム「答えを見つけ出す面白さ」(向永)
編集部コラム「答えを見つけ出す面白さ」(向永)

毎週金曜日更新!?

★月陸編集部★

攻め(?)のアンダーハンド

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リレーコラム🔥

毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第30回「答えを見つけ出す面白さ(向永拓史)

 みなさん、最近、月陸を読んでくれていますか?

 近年、雑誌が売れていません。ずっと言われているように出版業界は変化を求められています。

 それは月陸も同じです。先日、ある高校生に「月陸を読んだことはありますか?」と聞いたら、こう返ってきました。

「どこに売っているんですか?」

「本屋さんにあるよ」と言うと、「自転車で30分行かないとないんです」と。最近は街から書店が消え、月陸を目にすることも減りました。書店はどんな広告よりも宣伝効果がありますから、「月陸を知らない」という中高生の割合も増えています。しかも、目に見えて。

 どうすればいいのか。会社への行き帰り、取材へ向かう際、頭の中でぐるぐると考えます。はた目にはスマホでゲームをしているだけなんですが、結構、真剣に毎日考えているんです。でも、〝これだ!〟という答えはありません。

 ひと昔前であれば、専門誌の役割は非常に大きかったと思います。なんせ、情報が雑誌しかありませんでしたから。私もサッカーをしていた頃、バイブルといえば『サッカーマガジン』でした。それこそ、ボロボロになるまで隅々まで読みました。

 でも、今は情報があふれています。練習動画はたくさんネットにアップされていて、ケガの予防やトレーニング法は検索すればたくさん引っかかります。大会の様子や記録はすぐにWebでアップされるし、カメラの性能も格段に進歩した影響もあってプロ並みの競技写真がSNS上で見られます。

 さらに、選手が自ら言葉を発信する手段も増えてきました。選手の声を直接ファンに届けられる、というメリットがありますね。

 こうなると、記録、大会報道、インタビュー、練習メニュー、連続写真……。専門誌の存在意義はどこにあるのか。難しいですよね。

 ただ、情報過多だからこそのデメリットもたくさんあります。その最たる例は「正確性」ではないかと思います。

 例えば、今Twitter上で誰かが「誰々が9秒96で走った!」とツイートしたとします。おそらく、一気に拡散され、あたかも事実かのように流れることでしょう。

 みなさんが目にしている情報は、本当に正しいものでしょうか? その動画の練習メニューをすれば、本当に速く走れますか?

 専門誌の役割の一つとして、やはり「本物」を届けるというものがあると思います。もちろん、いろいろな情報が「ニセモノ」だとは思っていません。また、私たちもしばしば失敗して伝えることもあります。

 ただ、ネット上も含めた情報に「答え」を求めてほしくないなぁと思っています。現代社会の一番の問題点は、「すぐに答えを求めてしまうこと」ではないかなって。

 いろいろな選手、先生方の取材を通して伝えられるのは、ハッキリ言って、速くなる魔法みたいな練習なんてない、ということ。みんな試行錯誤し、失敗しながら成長しています。

 そのヒントは伝えていきたいと思っていますが、ただ表面上の〝かたち〟だけ真似するのではダメなんじゃないかなぁって。

 月陸は答えが載っている「魔法の本」ではありません。でも、競技者として、人として成長できる「ヒント」はたくさん載っています。これだけは胸を張って言えます。

3月号では北口選手のドリルを紹介しました!

 3月号で掲載した北口榛花選手のドリルもその一つです。真似したら66m00投げられるわけではありません。北口選手自身も、デメリットを承知の上で、チェコに〝ヒント〟を求めて渡り、答えを自分で見つけ出しました。そこ(チェコ)に答えがあるかどうかわからないけど、飛び込んだんです。

※3月号はこちらで購入できますよ!!

 ある高校の先生が「あれは良い企画だったから、コピーして生徒に配ったよ」と言ってくれました。「うれしいです!でも、本当はみんなに買ってほしいです!」と冗談半分で返しましたが、評価していただけたことが、うれしかったです。

 そもそも、答えがわかっていることって面白くもなんともないです。

 絶対に道に迷わない遊園地の迷路に入りますか?
 答えがわかる計算ドリルを解きますか?
 最初からレベル99、最強装備のRPGをプレイしますか?

 やっぱり、自分の力で答えを探して、見つけて、身につけていくのが楽しいと思います。その途中の道が苦労すればするほど、得られる物は大きいですよ、きっと。

 だから、ネットサーフィンして、YouTube動画でヒントとつかむのもいいのですが、一緒に月陸も読んで強くなってほしいなって。そして、自分で試して、たくさん失敗して、前進して……。

 偉そうに言いましたが、専門誌の役割、今後のこと、まだまだ答えが見つかりません。

 誰か月陸をたくさん売るための魔法の作戦、教えてくれませんか?

向永拓史(むかえ・ひろし)
月刊陸上競技編集部 新米編集部員
1983年8月30日生まれ。16★cm、★kg(全盛期のマラドーナと同じ)、O型。石川県金沢市生まれ、滋賀県育ち。両親の仕事の都合で多数の引っ越しを経験し、幼少期より「どうせ友達になっても離れる」とひねくれて育つ。運動音痴で絵を描くのが好きな少年だったが、小4の時に開幕したJリーグの影響で三浦知良に心酔し、天才漫画家になる未来を絶たれた。いろいろあって2011年全中以降、陸上競技の取材をすることになり、現在に至る。趣味は一人カラオケで、自己ベストは8時間。

編集部コラム第29回「初めてのオリンピック」(小川)
編集部コラム第28回「人生意気に感ず」(船越)
編集部コラム第27回「学生駅伝〝区間賞〟に関するアレコレ」(松永)
編集部コラム第26回「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」(大久保)
編集部コラム第25回「全国男子駅伝の〝私見〟大会展望」(井上)
編集部コラム第24回「箱根駅伝の高速化を検証」(山本)
編集部コラム番外編「勝負師の顔」(山本)
編集部コラム第23回「みんなキラキラ」(向永)
編集部コラム第22回「国立競技場」(小川)
編集部コラム第21回「〝がんばれ〟という言葉の力と呪縛」(船越)
編集部コラム第20回「日本記録樹立者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第19回「高校陸上界史上最強校は?(女子編)」(大久保)
編集部コラム第18回「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」(井上)
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
編集部コラム第14回「初陣」(船越)
編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永)
編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

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 みなさん、最近、月陸を読んでくれていますか?  近年、雑誌が売れていません。ずっと言われているように出版業界は変化を求められています。  それは月陸も同じです。先日、ある高校生に「月陸を読んだことはありますか?」と聞いたら、こう返ってきました。 「どこに売っているんですか?」 「本屋さんにあるよ」と言うと、「自転車で30分行かないとないんです」と。最近は街から書店が消え、月陸を目にすることも減りました。書店はどんな広告よりも宣伝効果がありますから、「月陸を知らない」という中高生の割合も増えています。しかも、目に見えて。  どうすればいいのか。会社への行き帰り、取材へ向かう際、頭の中でぐるぐると考えます。はた目にはスマホでゲームをしているだけなんですが、結構、真剣に毎日考えているんです。でも、〝これだ!〟という答えはありません。  ひと昔前であれば、専門誌の役割は非常に大きかったと思います。なんせ、情報が雑誌しかありませんでしたから。私もサッカーをしていた頃、バイブルといえば『サッカーマガジン』でした。それこそ、ボロボロになるまで隅々まで読みました。  でも、今は情報があふれています。練習動画はたくさんネットにアップされていて、ケガの予防やトレーニング法は検索すればたくさん引っかかります。大会の様子や記録はすぐにWebでアップされるし、カメラの性能も格段に進歩した影響もあってプロ並みの競技写真がSNS上で見られます。  さらに、選手が自ら言葉を発信する手段も増えてきました。選手の声を直接ファンに届けられる、というメリットがありますね。  こうなると、記録、大会報道、インタビュー、練習メニュー、連続写真……。専門誌の存在意義はどこにあるのか。難しいですよね。  ただ、情報過多だからこそのデメリットもたくさんあります。その最たる例は「正確性」ではないかと思います。  例えば、今Twitter上で誰かが「誰々が9秒96で走った!」とツイートしたとします。おそらく、一気に拡散され、あたかも事実かのように流れることでしょう。  みなさんが目にしている情報は、本当に正しいものでしょうか? その動画の練習メニューをすれば、本当に速く走れますか?  専門誌の役割の一つとして、やはり「本物」を届けるというものがあると思います。もちろん、いろいろな情報が「ニセモノ」だとは思っていません。また、私たちもしばしば失敗して伝えることもあります。  ただ、ネット上も含めた情報に「答え」を求めてほしくないなぁと思っています。現代社会の一番の問題点は、「すぐに答えを求めてしまうこと」ではないかなって。  いろいろな選手、先生方の取材を通して伝えられるのは、ハッキリ言って、速くなる魔法みたいな練習なんてない、ということ。みんな試行錯誤し、失敗しながら成長しています。  そのヒントは伝えていきたいと思っていますが、ただ表面上の〝かたち〟だけ真似するのではダメなんじゃないかなぁって。  月陸は答えが載っている「魔法の本」ではありません。でも、競技者として、人として成長できる「ヒント」はたくさん載っています。これだけは胸を張って言えます。 3月号では北口選手のドリルを紹介しました!  3月号で掲載した北口榛花選手のドリルもその一つです。真似したら66m00投げられるわけではありません。北口選手自身も、デメリットを承知の上で、チェコに〝ヒント〟を求めて渡り、答えを自分で見つけ出しました。そこ(チェコ)に答えがあるかどうかわからないけど、飛び込んだんです。 ※3月号はこちらで購入できますよ!!  ある高校の先生が「あれは良い企画だったから、コピーして生徒に配ったよ」と言ってくれました。「うれしいです!でも、本当はみんなに買ってほしいです!」と冗談半分で返しましたが、評価していただけたことが、うれしかったです。  そもそも、答えがわかっていることって面白くもなんともないです。  絶対に道に迷わない遊園地の迷路に入りますか?  答えがわかる計算ドリルを解きますか?  最初からレベル99、最強装備のRPGをプレイしますか?  やっぱり、自分の力で答えを探して、見つけて、身につけていくのが楽しいと思います。その途中の道が苦労すればするほど、得られる物は大きいですよ、きっと。  だから、ネットサーフィンして、YouTube動画でヒントとつかむのもいいのですが、一緒に月陸も読んで強くなってほしいなって。そして、自分で試して、たくさん失敗して、前進して……。  偉そうに言いましたが、専門誌の役割、今後のこと、まだまだ答えが見つかりません。  誰か月陸をたくさん売るための魔法の作戦、教えてくれませんか?
向永拓史(むかえ・ひろし) 月刊陸上競技編集部 新米編集部員 1983年8月30日生まれ。16★cm、★kg(全盛期のマラドーナと同じ)、O型。石川県金沢市生まれ、滋賀県育ち。両親の仕事の都合で多数の引っ越しを経験し、幼少期より「どうせ友達になっても離れる」とひねくれて育つ。運動音痴で絵を描くのが好きな少年だったが、小4の時に開幕したJリーグの影響で三浦知良に心酔し、天才漫画家になる未来を絶たれた。いろいろあって2011年全中以降、陸上競技の取材をすることになり、現在に至る。趣味は一人カラオケで、自己ベストは8時間。
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