2019.09.27
毎週金曜日更新!?
★月陸編集部★
攻め(?)のアンダーハンド
リレーコラム🔥
毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!
第10回「心を動かすもの」(山本慎一郎)
陸上界のみなさん、こんにちは。
月陸編集部の山本慎一郎です。
ずいぶん先のことだと思っていたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が終わり、もう2週間近く経つのに私の心はすっかり「MGCロス」状態です。
みなさんはあのレースを見ましたか?
私は月陸記者の一人として現場で取材をさせていただきました。
東京五輪の代表を懸けた大一番ということで、レース2日前に開かれた記者発表の時から、選手からは緊張感と期待感を感じました。
さて、報道陣の立場としては、今回のMGCは男女同時進行のレースということで当日のプレスセンターの状況が気になっていました。
というのも、通常マラソンやロードレースの取材というのは、レースの間は記者である我々も基本的にはプレスセンターでテレビを見ているだけです。
それが、今回は同時進行で、男子はTBS、女子はNHKと、別々のテレビ局が放送します。
これをどうやって見ればいいのか? というのがMGC取材での最初の疑問でした。
すると、大会当日はプレスセンターの入り口でイヤホン付きの無線機器を渡されます。
会場には男子用、女子用とモニターが2種類並べられており、プレスセンターに流れる音声は先にスタートする男子のもの。
記者は手元の無線機器を操作することで、イヤホンの音声を男女どちらかに切り替えられるようになっていました。
MGCは取材陣への対応も〝特別仕様〟でした。
そして、レースのほうも日本陸上史に残る名勝負となりました。
男子は新旧日本記録保持者が敗れ、壮絶なスパート勝負を制した中村匠吾選手(富士通)が優勝。
女子も序盤から異例の高速レースとなり、その中で底力を見せた前田穂南選手(天満屋)が2位の鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)に4分近い大差をつけて圧勝しました。
どちらも序盤から息詰まるような激戦でした。
では、MGCはどうしてここまで盛り上がったのか?
一番に感じたのは、MGCが「真剣勝負」であったということです。
2位までに入れば代表決定というルールは明快で、選手たちがこの大会に懸ける思いがひしひしと伝わってきましたし、見ている我々も気持ちの入り方が違ったように感じます。
厳密には、MGCの後も「ファイナルチャレンジ」で一定以上の記録を出せば代表入りはできるのですが、「これがダメでも次がある」という大会に比べて、一発勝負の緊張感は段違いだったのではないでしょうか?
やはり、人間の必死な姿は人の心を動かすのだと思います。
あの冷静沈着な大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)がフォームを乱しながら中村選手を追いかけ、4年前に東京マラソンで失速し、リオ五輪代表の座を逃した服部勇馬選手(トヨタ自動車)が、最後に大迫選手をかわす。
中村選手を指導する駒大の大八木弘明監督は、涙を流して駒大OB初の五輪選手誕生を喜びました。
テレビの実況で「人生を懸けた戦い」というフレーズが出てきましたが、MGCはまさに個々の選手が人生を懸けて戦ったからこそ、あそこまで盛り上がったのだと感じます。
もっとも、真剣勝負をしているのはマラソンだけではありません。
トラック&フィールドの大会でも、日本選手権やインターハイは他の大会に比べて〝特別感〟があると感じます。
もちろん、たとえインターハイや日本選手権で思ったような成績が残せなくても、その後の競技人生で挽回できるチャンスは何度もあると思いますが、インターハイに出られるのは高校3年間だけですし、五輪選考会となる日本選手権は4年に1度。
こちらもまさに「人生を懸けた戦い」であるわけです。
さらに言えば、全国大会だけが感動するというものでもないと思います。
たとえ舞台が地域の小さな大会だったとしても、全力を尽くして戦う姿には人の心を動かす力があるはずです。
陸上競技の魅力とは、競技自体のおもしろさもそうですが、それを演じるアスリートたちの思い、境遇、人間性といった部分も大きいと思います。
MGCの取材を通じて、真剣勝負の舞台で戦う選手たちのバックグラウンドを少しでも多く伝えることが我々の使命である……と改めて実感しました。
……と、つい長々と語ってしまいましたが、今夜からはいよいよカタールのドーハで世界選手権が始まります。
現在発売中の『月刊陸上競技』10月号別冊付録は世界選手権の観戦ガイド。
これを事前に読んでおくと、テレビ観戦がより楽しめるはずです。
ちなみに、別冊付録には世界中の記者たちの「優勝者予想」も掲載されているので、それを横目に競技を見るのもおもしろいかもしれません。
現地コラムをアップしている小川部長の予想はどこまで当たるのか!?
何にしても、日本勢の活躍を期待したいですね。
| 山本慎一郎(やまもとしんいちろう) 月刊陸上競技編集部(兼企画営業部)企画課長 1983年1月生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒。中学では1学年下の村上康則(2010年日本選手権1500m覇者)と一緒に駅伝を走り、その才能を間近で見て挫折。懲りずに高校で都大路、大学で箱根駅伝を目指すも、いずれも未達に終わる。引退するタイミングを逸して現在も市民ランナーとして活動中。箱根駅伝担当として各大学に顔を出しつつ、夏合宿取材のたびに各校の練習コースを試走してチームの戦力をこっそり分析している。 |
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)
第10回「心を動かすもの」(山本慎一郎)
陸上界のみなさん、こんにちは。 月陸編集部の山本慎一郎です。 ずいぶん先のことだと思っていたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)が終わり、もう2週間近く経つのに私の心はすっかり「MGCロス」状態です。 みなさんはあのレースを見ましたか? 私は月陸記者の一人として現場で取材をさせていただきました。 東京五輪の代表を懸けた大一番ということで、レース2日前に開かれた記者発表の時から、選手からは緊張感と期待感を感じました。 さて、報道陣の立場としては、今回のMGCは男女同時進行のレースということで当日のプレスセンターの状況が気になっていました。 というのも、通常マラソンやロードレースの取材というのは、レースの間は記者である我々も基本的にはプレスセンターでテレビを見ているだけです。 それが、今回は同時進行で、男子はTBS、女子はNHKと、別々のテレビ局が放送します。 これをどうやって見ればいいのか? というのがMGC取材での最初の疑問でした。 すると、大会当日はプレスセンターの入り口でイヤホン付きの無線機器を渡されます。 会場には男子用、女子用とモニターが2種類並べられており、プレスセンターに流れる音声は先にスタートする男子のもの。 記者は手元の無線機器を操作することで、イヤホンの音声を男女どちらかに切り替えられるようになっていました。 MGCは取材陣への対応も〝特別仕様〟でした。 [caption id="attachment_4677" align="aligncenter" width="300"]
レースは記者会見場になったプレスセンター。レースの間は両端のモニターに男女それぞれの映像が流されていました[/caption]
そして、レースのほうも日本陸上史に残る名勝負となりました。
男子は新旧日本記録保持者が敗れ、壮絶なスパート勝負を制した中村匠吾選手(富士通)が優勝。
女子も序盤から異例の高速レースとなり、その中で底力を見せた前田穂南選手(天満屋)が2位の鈴木亜由子選手(日本郵政グループ)に4分近い大差をつけて圧勝しました。
どちらも序盤から息詰まるような激戦でした。
では、MGCはどうしてここまで盛り上がったのか?
一番に感じたのは、MGCが「真剣勝負」であったということです。
2位までに入れば代表決定というルールは明快で、選手たちがこの大会に懸ける思いがひしひしと伝わってきましたし、見ている我々も気持ちの入り方が違ったように感じます。
厳密には、MGCの後も「ファイナルチャレンジ」で一定以上の記録を出せば代表入りはできるのですが、「これがダメでも次がある」という大会に比べて、一発勝負の緊張感は段違いだったのではないでしょうか?
やはり、人間の必死な姿は人の心を動かすのだと思います。
あの冷静沈着な大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)がフォームを乱しながら中村選手を追いかけ、4年前に東京マラソンで失速し、リオ五輪代表の座を逃した服部勇馬選手(トヨタ自動車)が、最後に大迫選手をかわす。
中村選手を指導する駒大の大八木弘明監督は、涙を流して駒大OB初の五輪選手誕生を喜びました。
テレビの実況で「人生を懸けた戦い」というフレーズが出てきましたが、MGCはまさに個々の選手が人生を懸けて戦ったからこそ、あそこまで盛り上がったのだと感じます。
[caption id="attachment_4673" align="aligncenter" width="300"]
歴史的なレースとなったMGC。参加した選手全員が主役と思えるような大会でした[/caption]
もっとも、真剣勝負をしているのはマラソンだけではありません。
トラック&フィールドの大会でも、日本選手権やインターハイは他の大会に比べて〝特別感〟があると感じます。
もちろん、たとえインターハイや日本選手権で思ったような成績が残せなくても、その後の競技人生で挽回できるチャンスは何度もあると思いますが、インターハイに出られるのは高校3年間だけですし、五輪選考会となる日本選手権は4年に1度。
こちらもまさに「人生を懸けた戦い」であるわけです。
さらに言えば、全国大会だけが感動するというものでもないと思います。
たとえ舞台が地域の小さな大会だったとしても、全力を尽くして戦う姿には人の心を動かす力があるはずです。
陸上競技の魅力とは、競技自体のおもしろさもそうですが、それを演じるアスリートたちの思い、境遇、人間性といった部分も大きいと思います。
MGCの取材を通じて、真剣勝負の舞台で戦う選手たちのバックグラウンドを少しでも多く伝えることが我々の使命である……と改めて実感しました。
……と、つい長々と語ってしまいましたが、今夜からはいよいよカタールのドーハで世界選手権が始まります。
現在発売中の『月刊陸上競技』10月号別冊付録は世界選手権の観戦ガイド。
これを事前に読んでおくと、テレビ観戦がより楽しめるはずです。
ちなみに、別冊付録には世界中の記者たちの「優勝者予想」も掲載されているので、それを横目に競技を見るのもおもしろいかもしれません。
現地コラムをアップしている小川部長の予想はどこまで当たるのか!?
何にしても、日本勢の活躍を期待したいですね。
| 山本慎一郎(やまもとしんいちろう) 月刊陸上競技編集部(兼企画営業部)企画課長 1983年1月生まれ。福島県いわき市出身。160cm、47kg(ピーク時)。植田中→磐城高→福島大→法大卒。中学では1学年下の村上康則(2010年日本選手権1500m覇者)と一緒に駅伝を走り、その才能を間近で見て挫折。懲りずに高校で都大路、大学で箱根駅伝を目指すも、いずれも未達に終わる。引退するタイミングを逸して現在も市民ランナーとして活動中。箱根駅伝担当として各大学に顔を出しつつ、夏合宿取材のたびに各校の練習コースを試走してチームの戦力をこっそり分析している。 |
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