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編集部コラム「オリンピックの価値」

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★月陸編集部★

攻め(?)のアンダーハンド
リレーコラム
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編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
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第107回「オリンピックの価値(向永拓史)

東京五輪が終わりました。開催が決まってから8年。長かったですが、終わってみるとあっという間というか。本当に開催されていたのかな?と錯覚に陥るほど。無観客だったり、自分が生で観ていなかったりしているというのもありますが、嵐のように去っていきました。

コロナ禍での開催にはいろんな意見がありました。実際、私も昨年は「スポーツの価値ってなんだろう」「この仕事意味あるのかな」と葛藤したことも。私なんかでもそうなんですから、アスリートはもっといろいろな感情が湧いたことでしょう。

なぜオリンピックを開催するのか。経済のためというのもそう、アスリートのためというのもそう。本当にいろんな意味があるのでしょう。

開催期間中のある日。たまに行く韓国料理屋さんにランチに行きました。カウンターとテーブル1席の小さなお店。ビビンパとかカルビ丼がおいしい。お母さん(韓国ではオモニって言うのかな?)は、手が空くとカウンターまで出てきて話をするんですが、テレビでは女子バスケットボールの準決勝が録画放送していて「あーだこーだ」話していて、そうしたらお母さんが「昨夜のあの陸上の小さい子もすごかったね」って。お母さんはたぶん、スポーツに詳しくないんだけど。おそらく田中希実選手のこと。

オリンピックが終わってから、実家に電話しました。甥っ子、姪っ子とはよくテレビ電話するし、家族とも仲良しなんです(どうでもいいですが)。そうしたら、普段、別にスポーツに興味がない母は「全部の競技で田中さんが一番すごかった」と言うんです。あの小さな身体で戦おうと思ったらどれほどの練習をしてきたか想像がつく、と。もちろん、専門的なことなんてわからないんですが、何か感じ取ったんでしょう。

小学校2年生の姪っ子は、競歩のマネをしてクネクネと歩いていたそうなんです。「両足があがっちゃダメだよ」なんて言いながら。たぶん、いやきっと、姪っ子は競歩選手になりません。もしかすると二度と競歩のフォームをしないかもしれない。

でも、オリンピックの価値ってこういうところにあるんじゃないかって思いました。日本中、世界中に姪っ子みたいな人がいる。自分がやっている種目を観て感動して夢を持つ子どももいれば、初めて観る競技があってマネしたり、興味を持ったりする子どももいる。ほとんどはスポーツ選手にならないんだけど、頑張っている人がいること、そういう競技があるということを知る経験は人間にとってすごく大切だと思います。新しい感情が生まれ、人生の選択肢が増える。

もちろん、子どもたちだけじゃなく、ウチの知ったかぶりの母や韓国料理屋のお母さんとか、大人にも影響はあると思います。なんか頑張っている人を見ると心が揺さぶられて「自分も頑張ってみようかな」って思ったりするもの(もちろん、それは強制ではないし、何も感じない人がいたっていいと思います)。私もそうで、死にそうなくらいの10日間(実際にはインターハイスタートからだから12日間?)を乗り切れたのは、アスリートの姿があったから。

偉い人が計算するような五輪の経済効果は僕にはわかりません。五輪に参加すること、勝つこと、負けることの意味は、アスリートにしかわからないでしょう。出られないから、わかりません。たぶん、きれいなことだけじゃなく、汚い部分で得をする人がたくさんいるんだろうな、とも思います。

「スポーツで世界は救えない」「スポーツで命は救えない」

そういう人もいるでしょうし、事実だと思います。それでも、この大変な日常の中に確かにあった「東京五輪」が、多くの人の心に小さな小さな何かを残した。その小さな何かが、いずれ大きな力になるんじゃないか。

「2021年、東京でオリンピックが開催できてよかった」

今は言えなくても、数年後、数十年後、みんながそう言えるような、そんな日が来ると信じて。

向永拓史(むかえ・ひろし)
月刊陸上競技編集部 新米編集部員
1983年8月30日生まれ。16★cm、★kg、O型。石川県金沢市生まれ、滋賀県育ち。両親の仕事の都合で多数の引っ越しを経験し、幼少期より「どうせ友達になっても離れる」とひねくれて育つ。運動音痴で絵を描くのが好きな少年だったが、小4の時に開幕したJリーグの影響で三浦知良に心酔し、天才漫画家になる未来を絶たれた。いろいろあって2011年全中以降、陸上競技の取材をすることになり、現在に至る。尊敬する人はカズ、尾崎豊、宮本輝、本田宗一郎。

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