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編集部コラム「月陸の歴史も切り開いた田中選手」

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第109回「月陸の歴史も切り開いた田中選手(井上 敦)

先日、甲子園で行われた女子の高校硬式野球選手権決勝をチラっと見て、何だかわからないけど、目がうるみました。高校球児の聖地と言われていますが、時代は変わっています。来年以降もうまく調整して女子の試合も組み込めたらいいですね。

時代が変わったといえば、東京五輪。あれからもう3週間が経ちます。陸上競技では日本選手も2つのメダル(銀1、銅1)を含めた入賞は9と戦後の五輪では最多でした。他競技のメダルラッシュの影に隠れておりますが、49年ぶりとか、57年ぶりとか、史上初といったものもありました。

中でも、本誌9月号の表紙を飾った女子1500mの田中希実選手(豊田自動織機TC)の8位入賞は驚きました。まさか、中距離で日本人が五輪入賞するとは。翌日の新聞では他競技に押されて、扱いは小さかったのですが、日本陸上界にとっては大きな、大きな歴史を作ったと思います。

なかなか中距離(特に1500m)では、世界に勝ち上がるどころか、出場することすら、日本選手には難しいと言われていました。それが、出場するだけでなく、ラウンドを勝ち上がって入賞――。個人的には男子100mで日本人選手が決勝に進むぐらいの歴史的偉業と思います。

記録面でも目を見張るものがあります。予選で4分02秒33の日本新を出すと、準決勝ではさらに更新して3分59秒19、決勝は3分59秒95と2レース連続で3分台をマークしました。東京五輪前の自己記録(日本記録)が7月17日のホクレン・ディスタンスチャレンジ千歳大会で出した4分04秒08でしたので、3週間足らずで5秒近くも縮めたことになります。

短期間の更新幅もびっくりでしたが、女子1500m3分台も日本のこれまでの競技水準を考えると驚異的です。ちなみに準決勝の3分59秒19は世界歴代84位になります。

その田中選手は、月刊陸上競技にも大きな歴史を残しました。

先ほど9月号の表紙について触れましたが、五輪報道を掲載した本誌で1500mの選手が表紙を飾ったのは初めてなんです。下記は月陸創刊(1967年7月号~)後、五輪報道号の表紙に登場した選手の一覧です。

●月刊陸上競技・五輪報道号の表紙
68年(メキシコ) 11月号 男子100m準決勝1組(飯島秀雄選手、J.ハインズ選手ら)
72年(ミュンヘン) 10月号 男子400mHメダルセレモニー(金メダルのJ.アキ・ブア選手/47秒82の世界新)
76年(モントリオール) 8月号増刊 男子800mのA.ファントレナ選手(1分43秒50の世界新)
80年(モスクワ) 9月号 瀬古利彦選手(10000m日本新=7月7日DNガラン)、日本選手不参加のモスクワ大会は中面カラー
84年(ロサンゼルス) 9月号増刊 カール・ルイス選手
88年(ソウル) 10月号増刊 F.ジョイナー選手
88年(ソウル) 11月号 女子100m(F.ジョイナー選手ら)
92年(バルセロナ) 9月号 V.エゴロワ選手&有森裕子選手(女子マラソン)
92年(バルセロナ) 9月号増刊 黄永祚選手&森下広一選手(男子マラソン)
92年(バルセロナ) 10月号 日本男子4×100mR
96年(アトランタ) 9月号 有森裕子選手(女子マラソン)
00年(シドニー) 11月号 高橋尚子選手(女子マラソン)
04年(アテネ) 10月号 室伏広治選手(男子ハンマー投)&野口みずき選手(女子マラソン)
08年(北京) 10月号 日本男子4×100mR
12年(ロンドン) 9月号 室伏広治選手(男子ハンマー投)
12年(ロンドン) 10月号 日本男子4×100mR
16年(リオ) 10月号 日本男子4×100mR
21年(東京) 9月号 田中希実選手(女子1500m)

大会会期と発売日の関係で、増刊を出したり、2号にまたがっての報道をしていますが、1500mは勝負優先となることが多く、その分記録水準がやや下がって印象的なレースにはなりづらいです。そうなれば、表紙には難しくなります。中距離では45年前のモントリオール大会のファントレナ選手ですが、この時は世界新記録。さらに400mとの2冠でした(400mと800mの2冠はこの時だけ)。

メキシコ大会(飯島選手)後は海外選手が続き、再び日本人選手が表紙を飾るようになったのはバルセロナ大会。リオ大会までの7大会は男女のマラソン、男子4×100mリレー、男子ハンマー投の室伏選手に限られていました。

編集部では事前に表紙候補をいくつか挙げていたのですが、大会前は田中選手の表紙は想像していませんでした。それだけ衝撃度が本誌編集部の中でもかなり高かった、ということです。

先日も1000mで日本記録を打ち立てましたが、今後の活躍も注目したいです。と、同時に男女問わず他の中距離選手には大きな刺激となったはず。既存の常識や殻を打ち破って、世界のトップを目指してほしいと思います。

井上 敦(いのうえ あつし)
1978年8月生まれ。新潟市江南区出身。横越中→新潟明訓高→某大学(陸上では有名だが、陸上部に入っていないので匿名)。月刊陸上競技編集部には2015年6月中旬から在籍。中学で陸上部に入部して最初は100mを始めたものの、その年の東京世界選手権でファイナリストとなった高野進選手に憧れて400mに転向。しかし、3年間で個人では県大会に進めなかったうえに、中3秋の駅伝で区間賞獲得やチームの県大会出場でまたまた転向を決意。高校では中距離をメインに、2年時の県新人大会1500mで6位入ったのが最高成績。

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編集部コラム第96回「追い風最高記録」(大久保)
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