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2020.10.10

編集部コラム「質と量」
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攻め(?)のアンダーハンド

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毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ!
陸上界への熱い想い、日頃抱いている独り言、取材の裏話、どーでもいいことetc…。
編集スタッフが週替りで綴って行きたいと思います。
暇つぶし程度にご覧ください!

第63回「質と量(船越陽一郎)

初めて短距離選手のトレーニングを取材に行ったときのことです。数本走った後に選手がへばっている姿を見てこう思いました。

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「え!? これだけで!?」

陸上を知らない私は、失礼にもそう思ってしまいました。

私は若い頃、ラグビーをしていたのですが、当時は立てなくなるほど走っていました。そのため、陸上選手ともなると、それこそ馬車馬のように走るのだろうと勝手に思い込んでおりました。
(もちろん、あとになって知ったこととして、冬季練習では、それはもう、そのくらい走り込まれているのですが……)

でも、思い起こせば私は量こそ走っていましたが、果たして質にこだわって走ったことがあるのだろうか、と、ふっと思いました。

昔、ラグビーの練習で初めて取り組む走り込みの練習では必ずバテました。しかし、面白いことにその走り込みの練習は2回目以降、全然バテなくなります。それは、体力がついたのではなく、練習の全体像が見えたために無意識に力をセーブしているのではないかと推測します。

ラグビーをしている方全員がそうというわけではありません。あくまで私個人の話です! セーブしないでずっと全力の方々もいっぱいいます。むしろ競技力の高い選手はそうだと思います。

ラグビーをはじめ、他のスポーツにおいて走ることとは目的ではなく、過程であって走った先に目的があるのではないかと思います。走った先でシュートをする。走った先でタックルをする。根本的に走りに対する考え方が違うのかもしれません。

走ることが目的である短距離走は、その瞬間その瞬間で力を使い切らなければならない。私が見た選手がへばっている姿はもしかしたら、短距離走の理想の姿なのかもしれないと思い直しました。

走り終わった選手が倒れているのを見て、そんなことを考えながら撮影したりしております。

船越陽一郎(ふなこし・よういちろう)
月刊陸上競技写真部
1974年12月生まれ。172cm、○0kg。福岡県春日市出身
小学生の時に身体が弱く、喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績3戦3敗(3KO負け)。秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。

編集部コラム第62回「たかが2cm、されど2cm」(松永)
編集部コラム第61回「都道府県対抗 女子七種競技選手権」(大久保)
編集部コラム第60回「キソの大切さ」(井上)
編集部コラム第59回「思い込みを捨てる」(山本)
編集部コラム第58回「それ、ドーピングだよ」(向永)
編集部コラム第57回「東京五輪へ“もう1度”あと1年」(小川)
編集部コラム第56回「魔法の言葉」(船越)
編集部コラム第55回「月陸ってどんな雑誌?」(松永)
編集部コラム第54回「インターハイ種目別学校対抗(女子編)」(大久保)
編集部コラム第53回「明確なビジョン」(井上)
編集部コラム第52回「人間性を磨く」(山本)
編集部コラム第51回「指が痛い。」(向永)
編集部コラム第50回「温故知新」(小川)
編集部コラム第49回「対面取材」(船越)
編集部コラム第48回「日本選手権優勝者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第47回「インターハイ種目別学校対抗(男子編)」(大久保)
編集部コラム第46回「月陸に自分が載った」(井上)
編集部コラム第45回「陸上競技と関わり続ける」(山本)
編集部コラム第44回「逃げるとどうなる?」(向永)
編集部コラム第43回「成長のヒント」(小川)
編集部コラム第42回「日本実業団記録」(大久保)
編集部コラム第41回「思い出の2016年長野全中」(松永)
編集部コラム第40回「葛藤」(船越)
編集部コラム第39回「何も咲かない寒い日は……」(井上)
編集部コラム第38回「社会の一員としての役割」(山本)
編集部コラム第37回「大学生、高校生、中学生に光を」(向永)
編集部コラム第36回「Tokyo 2020+1」(小川)
編集部コラム第35回「善意」(船越)
編集部コラム第34回「ピンチをチャンスに」(松永)
編集部コラム第33回「日本記録アラカルト」(大久保)
編集部コラム第32回「独断で選ぶ2019年度高校陸上界5選」(井上)
編集部コラム第31回「記録と順位」(山本)
編集部コラム第30回「答えを見つけ出す面白さ」(向永)
編集部コラム第29回「初めてのオリンピック」(小川)
編集部コラム第28回「人生意気に感ず」(船越)
編集部コラム第27回「学生駅伝〝区間賞〟に関するアレコレ」(松永)
編集部コラム第26回「2019年度 陸上界ナンバーワン都道府県は?」(大久保)
編集部コラム第25回「全国男子駅伝の〝私見〟大会展望」(井上)
編集部コラム第24回「箱根駅伝の高速化を検証」(山本)
編集部コラム番外編「勝負師の顔」(山本)
編集部コラム第23回「みんなキラキラ」(向永)
編集部コラム第22回「国立競技場」(小川)
編集部コラム第21回「〝がんばれ〟という言葉の力と呪縛」(船越)
編集部コラム第20回「日本記録樹立者を世代別にまとめてみた」(松永)
編集部コラム第19回「高校陸上界史上最強校は?(女子編)」(大久保)
編集部コラム第18回「独断で選ぶ全国高校駅伝5選」(井上)
編集部コラム第17回「リクジョウクエスト2~そして月陸へ~」(山本)
編集部コラム第16回「強い選手の共通点?」(向永)
編集部コラム第15回「続・ドーハの喜劇?」(小川)
編集部コラム第14回「初陣」(船越)
編集部コラム第13回「どうなる東京五輪マラソン&競歩!?」(松永)
編集部コラム第12回「高校陸上界史上最強校は?(男子編)」(大久保)
編集部コラム第11回「羽ばたけ日本の中距離!」(井上)
編集部コラム第10回「心を動かすもの」(山本)
編集部コラム第9回「混成競技のアレコレ」(向永)
編集部コラム第8回「アナウンス」(小川)
編集部コラム第7回「ジンクス」(船越)
編集部コラム第6回「学生駅伝を支える主務の存在」(松永)
編集部コラム第5回「他競技で活躍する陸上競技経験者」(大久保)
編集部コラム第4回「とらんすふぁ~」(井上)
編集部コラム第3回「リクジョウクエスト」(山本)
編集部コラム第2回「あんな選手を目指しなさい」(向永)
編集部コラム第1回「締め切りとIHと五輪」(小川)

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第63回「質と量(船越陽一郎)

初めて短距離選手のトレーニングを取材に行ったときのことです。数本走った後に選手がへばっている姿を見てこう思いました。 「え!? これだけで!?」 陸上を知らない私は、失礼にもそう思ってしまいました。 私は若い頃、ラグビーをしていたのですが、当時は立てなくなるほど走っていました。そのため、陸上選手ともなると、それこそ馬車馬のように走るのだろうと勝手に思い込んでおりました。 (もちろん、あとになって知ったこととして、冬季練習では、それはもう、そのくらい走り込まれているのですが……) でも、思い起こせば私は量こそ走っていましたが、果たして質にこだわって走ったことがあるのだろうか、と、ふっと思いました。 昔、ラグビーの練習で初めて取り組む走り込みの練習では必ずバテました。しかし、面白いことにその走り込みの練習は2回目以降、全然バテなくなります。それは、体力がついたのではなく、練習の全体像が見えたために無意識に力をセーブしているのではないかと推測します。 ラグビーをしている方全員がそうというわけではありません。あくまで私個人の話です! セーブしないでずっと全力の方々もいっぱいいます。むしろ競技力の高い選手はそうだと思います。 ラグビーをはじめ、他のスポーツにおいて走ることとは目的ではなく、過程であって走った先に目的があるのではないかと思います。走った先でシュートをする。走った先でタックルをする。根本的に走りに対する考え方が違うのかもしれません。 走ることが目的である短距離走は、その瞬間その瞬間で力を使い切らなければならない。私が見た選手がへばっている姿はもしかしたら、短距離走の理想の姿なのかもしれないと思い直しました。 走り終わった選手が倒れているのを見て、そんなことを考えながら撮影したりしております。
船越陽一郎(ふなこし・よういちろう) 月刊陸上競技写真部 1974年12月生まれ。172cm、○0kg。福岡県春日市出身 小学生の時に身体が弱く、喘息持ちだったため、鍛えるためにラグビーを始め「走れば治る」が口癖のドSのコーチに肉体改造される。大学までラグビーを続けるも卒業と同時に引退。何を思ったか社会人でボクシングを始める。戦績3戦3敗(3KO負け)。秘密兵器の左フックを編み出すも、秘密のまま引退。なんじゃかんじゃあって現在に至る。
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