2022.06.08
第106回日本選手権が6月9日から12日までの4日間、大阪・ヤンマースタジアム長居で開催される。オレゴン世界選手権の代表を懸けた熱いバトル、好記録が期待される注目選手を種目ごとに紹介。これをチェックすれば、日本選手権をもっと楽しく観戦できる!
【みどころ男子編】はこちら
●トラック
激戦必至の5000m
リレーメンバー争いも熾烈
オレゴン世界選手権の代表争いという点で、最も熾烈なのが5000mだ。すでに参加標準記録(15分10秒00)を突破しているのが5人。そのうち、日本記録(14分52秒84)を持つ廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、田中希実(豊田自動織機)、萩谷楓(エディオン)という東京五輪代表3人が健在だ。前回優勝の田中は国内相手に強さを見せているが、自身としては調子を上げられていない様子。春に貧血があった廣中は10000mを制して代表に内定するなど、少しずつ上向きだ。萩谷も初10000mで好走するなど、しっかり状態を上げている。
他に標準突破者は19年ドーハ世界選手権代表の木村友香(資生堂)、佐藤早也伽(積水化学)。以上が3位以内に入れば代表に内定する。ここに、10000mで世界選手権代表に内定した五島莉乃(資生堂)も参戦。オープン参加の海外選手と競り合うかたちになれば、積極的な走りで一気に標準突破&内定もあり得る。
田中は日本記録を持ち東京五輪8位に入った1500mに加え、800mにもエントリー。1500mはすでに参加標準記録を突破済みで3位以内で代表に内定する。昨年、田中とともに東京五輪に出場した卜部蘭(積水化学)や後藤夢(積水化学)、今季好調の樫原沙紀(筑波大)らが田中に挑む。卜部はワールドランキングでの出場も見えていることから、しっかり好タイムで上位に入りたいところ。
100m、200mはオレゴン世界選手権の出場権を持つ4×100mリレーの代表入りを懸けた戦いとなる。昨年2冠を果たした兒玉芽生(ミズノ)は春先からやや精彩を欠いていたが、5月の九州実業団対抗では追い風参考ながら11秒39(+2.7)の好タイム。11秒47を持つ青山華依(甲南大)は疲労から関西インカレを見送っている。調子を上げているのが19年女王の御家瀬緑(住友電工)。関西実業団でも11秒53(+0.4)と3年ぶり優勝へ勢いを増している。
200mは兒玉に加えて、初優勝を狙う齋藤愛美(大阪成蹊AC)、壹岐あいこ(立命大)、100mを棄権して200mに絞った2年前の覇者・鶴田玲美(南九州ファミリーマート)らで混戦模様。高2の税田ジェニファー璃美(城西高)も“一発”がある。
●フィールド
北口筆頭にハイレベルなやり投
世界選手権に近づく走幅跳・秦
日本記録(66m00)保持者・北口榛花(JAL)が頭ひとつ抜け出した女子やり投。だが、過去最高レベルの選手層となるため、追いかける面々が虎視眈々と狙っている。北口はセイコーゴールデングランプリでオレゴン世界選手権の参加標準記録(64m00)に迫る63m93を放った。ワールドランキングでの出場権獲得は濃厚だが、参加標準記録を突破しての優勝でスッキリ決めたいところ。
今季60mを2度投げている上田百寧(ゼンリン)、昨年62m39を投げた武本紗栄(佐賀スポ協)が続く。ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり)はケガが続いているがコンディションさえ戻れば上位争いに食い込む。他にも復調してきた17年ロンドン世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ)、長麻尋(国士舘クラブ)も注目。世界選手権の標準記録の複数突破が見られるか。同一大会で3人が60mを超えれば史上初となる。
昨年の東京五輪で3人フルエントリーした女子100mハードルも注目種目だが、3人のうち木村文子は現役を引退、寺田明日香(ジャパンクリエイト)は出場を見送っている。その中で今年12秒86をマークして“単独の”日本記録保持者となったのが五輪代表の青木益未(七十七銀行)。だが、その後は脚を痛めた影響で力を発揮できていないが、コンディションが整えば参加標準記録(12秒84)の突破は十分にある。
好調な福部真子(日本建設工業)も初優勝へ虎視眈々。玉置菜々子(国士大)、紫村仁美(静岡陸協)、鈴木美帆(長谷川体育施設)が上位争いに加わる。
参加標準記録に届くのは難しいかもしれないが、ワールドランキングで世界選手権出場を狙える選手たちもいる。
なかでも走幅跳の秦澄美鈴(シバタ工業)はワールドランキングで出場権内にランクインしており、かなり近い存在と言える。今季はコンスタントに好記録を出しており6m60オーバーも2試合。池田久美子の日本記録(6m86)に近づけたぶんだけ、世界選手権が見えてくる。この種目で世界選手権代表なれば2009年ベルリン大会の桝見咲智子以来だ。対抗となる髙良彩花(筑波大)は2年ぶり4度目Vを狙う。
3000m障害では昨年東京五輪に出場した山中柚乃(愛媛銀行)がワールドランキングでの出場圏内。吉村玲美(大東大)らと競り合えば好記録の予感が漂う。400mハードルの宇都宮絵莉(長谷川体育施設)もチャンスあり。今年の日本GPシリーズでは日本人トップを走っており、56秒台をマークして優勝したいところ。だが、前回Vの山本亜美(立命大)も57秒29と調子を上げており、2年前に優勝のイブラヒム愛紗(メイスンワーク)、伊藤明子(セレスポ)、梅原紗月(住友電工)、学生勢もタイトルを狙ってくる。
世界選手権からはやや遠いが、ハイレベル・好勝負となりそうなのは、棒高跳、三段跳、円盤投。棒高跳は今年日本歴代4位タイとなる4m33を跳んでいる那須眞由(KAGOTANI)や、諸田実咲(栃木県スポ協)、竜田夏苗(ニッパツ)らに日本記録(4m40)の更新が期待される。
三段跳は森本麻里子(内田建設AC)と髙島真織子(九電工)の一騎打ち。自己記録は森本が13m56(日本歴代3位)、髙島は13m48(同6位)。いち早く日本人2人目の14mに入るのはどちらか。円盤投は日本記録(59m03)の郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)と齋藤真希(東女体大)が好調。ともに今年は57mオーバーを見せており、ハイレベルな投げ合いが見られそうだ。
代表争い、そして日本一を懸けた熱戦は、6月9日から12日まで大阪・ヤンマースタジアム長居を舞台に繰り広げられる。
【日本選手権見どころチェック】男子編
日本選手権歴代優勝者
トップアスリート選手名鑑
◇テレビ情報
<NHK BS1・総合テレビ>
●第1日:6月24日(木)
BS1:午後6時00分~7時50分
●第2日:6月25日(金)
BS1:午後6時30分~7時30分
総合:午後7時30分~8時42分
●第3日:6月26日(土)
BS1:午後3時30分~4時00分
総合:午後4時00分~6時00分
●第4日:6月27日(日)
BS1:午後3時30分~4時00分
総合:午後4時00分~6時00分
※中継時間帯以外は日本陸連公式YouTubeチャンネルでライブ配信
◇日本選手権特設サイト(日本陸連)
●トラック 激戦必至の5000m リレーメンバー争いも熾烈
オレゴン世界選手権の代表争いという点で、最も熾烈なのが5000mだ。すでに参加標準記録(15分10秒00)を突破しているのが5人。そのうち、日本記録(14分52秒84)を持つ廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、田中希実(豊田自動織機)、萩谷楓(エディオン)という東京五輪代表3人が健在だ。前回優勝の田中は国内相手に強さを見せているが、自身としては調子を上げられていない様子。春に貧血があった廣中は10000mを制して代表に内定するなど、少しずつ上向きだ。萩谷も初10000mで好走するなど、しっかり状態を上げている。 他に標準突破者は19年ドーハ世界選手権代表の木村友香(資生堂)、佐藤早也伽(積水化学)。以上が3位以内に入れば代表に内定する。ここに、10000mで世界選手権代表に内定した五島莉乃(資生堂)も参戦。オープン参加の海外選手と競り合うかたちになれば、積極的な走りで一気に標準突破&内定もあり得る。 田中は日本記録を持ち東京五輪8位に入った1500mに加え、800mにもエントリー。1500mはすでに参加標準記録を突破済みで3位以内で代表に内定する。昨年、田中とともに東京五輪に出場した卜部蘭(積水化学)や後藤夢(積水化学)、今季好調の樫原沙紀(筑波大)らが田中に挑む。卜部はワールドランキングでの出場も見えていることから、しっかり好タイムで上位に入りたいところ。 100m、200mはオレゴン世界選手権の出場権を持つ4×100mリレーの代表入りを懸けた戦いとなる。昨年2冠を果たした兒玉芽生(ミズノ)は春先からやや精彩を欠いていたが、5月の九州実業団対抗では追い風参考ながら11秒39(+2.7)の好タイム。11秒47を持つ青山華依(甲南大)は疲労から関西インカレを見送っている。調子を上げているのが19年女王の御家瀬緑(住友電工)。関西実業団でも11秒53(+0.4)と3年ぶり優勝へ勢いを増している。 200mは兒玉に加えて、初優勝を狙う齋藤愛美(大阪成蹊AC)、壹岐あいこ(立命大)、100mを棄権して200mに絞った2年前の覇者・鶴田玲美(南九州ファミリーマート)らで混戦模様。高2の税田ジェニファー璃美(城西高)も“一発”がある。●フィールド 北口筆頭にハイレベルなやり投 世界選手権に近づく走幅跳・秦
日本記録(66m00)保持者・北口榛花(JAL)が頭ひとつ抜け出した女子やり投。だが、過去最高レベルの選手層となるため、追いかける面々が虎視眈々と狙っている。北口はセイコーゴールデングランプリでオレゴン世界選手権の参加標準記録(64m00)に迫る63m93を放った。ワールドランキングでの出場権獲得は濃厚だが、参加標準記録を突破しての優勝でスッキリ決めたいところ。 今季60mを2度投げている上田百寧(ゼンリン)、昨年62m39を投げた武本紗栄(佐賀スポ協)が続く。ドーハ世界選手権代表の佐藤友佳(ニコニコのり)はケガが続いているがコンディションさえ戻れば上位争いに食い込む。他にも復調してきた17年ロンドン世界選手権代表の斉藤真理菜(スズキ)、長麻尋(国士舘クラブ)も注目。世界選手権の標準記録の複数突破が見られるか。同一大会で3人が60mを超えれば史上初となる。 昨年の東京五輪で3人フルエントリーした女子100mハードルも注目種目だが、3人のうち木村文子は現役を引退、寺田明日香(ジャパンクリエイト)は出場を見送っている。その中で今年12秒86をマークして“単独の”日本記録保持者となったのが五輪代表の青木益未(七十七銀行)。だが、その後は脚を痛めた影響で力を発揮できていないが、コンディションが整えば参加標準記録(12秒84)の突破は十分にある。 好調な福部真子(日本建設工業)も初優勝へ虎視眈々。玉置菜々子(国士大)、紫村仁美(静岡陸協)、鈴木美帆(長谷川体育施設)が上位争いに加わる。 参加標準記録に届くのは難しいかもしれないが、ワールドランキングで世界選手権出場を狙える選手たちもいる。 なかでも走幅跳の秦澄美鈴(シバタ工業)はワールドランキングで出場権内にランクインしており、かなり近い存在と言える。今季はコンスタントに好記録を出しており6m60オーバーも2試合。池田久美子の日本記録(6m86)に近づけたぶんだけ、世界選手権が見えてくる。この種目で世界選手権代表なれば2009年ベルリン大会の桝見咲智子以来だ。対抗となる髙良彩花(筑波大)は2年ぶり4度目Vを狙う。 3000m障害では昨年東京五輪に出場した山中柚乃(愛媛銀行)がワールドランキングでの出場圏内。吉村玲美(大東大)らと競り合えば好記録の予感が漂う。400mハードルの宇都宮絵莉(長谷川体育施設)もチャンスあり。今年の日本GPシリーズでは日本人トップを走っており、56秒台をマークして優勝したいところ。だが、前回Vの山本亜美(立命大)も57秒29と調子を上げており、2年前に優勝のイブラヒム愛紗(メイスンワーク)、伊藤明子(セレスポ)、梅原紗月(住友電工)、学生勢もタイトルを狙ってくる。 世界選手権からはやや遠いが、ハイレベル・好勝負となりそうなのは、棒高跳、三段跳、円盤投。棒高跳は今年日本歴代4位タイとなる4m33を跳んでいる那須眞由(KAGOTANI)や、諸田実咲(栃木県スポ協)、竜田夏苗(ニッパツ)らに日本記録(4m40)の更新が期待される。 三段跳は森本麻里子(内田建設AC)と髙島真織子(九電工)の一騎打ち。自己記録は森本が13m56(日本歴代3位)、髙島は13m48(同6位)。いち早く日本人2人目の14mに入るのはどちらか。円盤投は日本記録(59m03)の郡菜々佳(新潟アルビレックスRC)と齋藤真希(東女体大)が好調。ともに今年は57mオーバーを見せており、ハイレベルな投げ合いが見られそうだ。 代表争い、そして日本一を懸けた熱戦は、6月9日から12日まで大阪・ヤンマースタジアム長居を舞台に繰り広げられる。 【日本選手権見どころチェック】男子編 日本選手権歴代優勝者 トップアスリート選手名鑑 ◇テレビ情報 <NHK BS1・総合テレビ> ●第1日:6月24日(木) BS1:午後6時00分~7時50分 ●第2日:6月25日(金) BS1:午後6時30分~7時30分 総合:午後7時30分~8時42分 ●第3日:6月26日(土) BS1:午後3時30分~4時00分 総合:午後4時00分~6時00分 ●第4日:6月27日(日) BS1:午後3時30分~4時00分 総合:午後4時00分~6時00分 ※中継時間帯以外は日本陸連公式YouTubeチャンネルでライブ配信 ◇日本選手権特設サイト(日本陸連)
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