2021.08.09
東京五輪の日本代表が獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個。これは過去最多だった16年リオ五輪の41個を上回り史上最多、金メダルも最多となる。
日本はメダル2つを含む入賞9。前回リオ五輪(入賞4)を大きく上回り、1992年バルセロナ、2004年アテネの「8」を抜いて戦後最多の入賞数となった。なお、過去最多は1932年ベルリン五輪の17(※当時は6位まで入賞)。
他競技にメダルラッシュが続くなかで、一見“地味”かもしれないが、陸上日本代表の奮闘は過去最高レベルだった。「史上初!」「○年ぶり!」という文字を、この10日間、何度打ち込んだかわからないほど。そうした偉業と奮闘ぶりをあらためてまとめる。
陸上競技は7月30日からスタートし、五輪全体の最終日である8月8日の午前中に行われた男子マラソンまで、10日間にわたって行われた。日本代表は65名(男子43、女子22)。これは1964年東京大会の68名に次ぐ2番目(女子は最多)で、開催国枠がなかったことを考えれば事実上「史上最多」と言える。
メダル獲得は男子20km競歩の2つで、銀メダル・池田向希(旭化成)と銀メダル・山西利和(愛知製鋼)。この種目で初のメダルを一挙に2つ獲得し、同一種目で複数メダルの獲得は、1936年ベルリン五輪(マラソン、棒高跳、三段跳)以来、85年ぶりだった。

写真/時事
前半戦で大きなインパクトを与えたのが、男子3000m障害の三浦龍司(順大)。この種目には山口浩勢(愛三工業)、青木涼真(Honda)と3人が出場したが、各国出場上限3名が出場したのは57年前の1964年東京五輪以来(奥沢善二・猿渡武嗣・横溝三郎)だった。
そんななか、大会初日の予選で、日本記録保持者の三浦は8分09秒92と自らの日本記録を更新して予選突破。日本人初の8分10秒切り。決勝進出は1972年ミュンヘン五輪の小山隆治(9位)以来、49年ぶりだった。それだけにとどまらず、決勝では果敢なレースを展開してこの種目初の7位入賞。日本男子トラックでの個人入賞は2000年シドニー大会10000m7位・高岡寿成以来21年ぶりのこと。
後半戦のハイライトは女子1500mの田中希実(豊田自動織機TC)だろう。1500mでは田中と、卜部蘭(積水化学)がこの種目で女子初の出場を成し遂げた。そんななか、田中は予選、準決勝と日本記録をマークして決勝進出。世界と対等に戦った決勝では8位入賞の快挙を成し遂げた。
陸上ファン以外には下位入賞で快挙…?と思われるかもしれない。ただ、1500mは男女ともにこれまで世界から遠い種目と言われ続けてきた種目。そもそも、田中も卜部も参加標準記録(4分04秒20)を有効期間内に突破できずワールドランキングでの出場(※有効期間後に田中は4分04秒08の日本新)だった。出場自体が史上初、準決勝では日本女子初の3分台となる3分59秒19をマーク。そして決勝で再び3分台(3分59秒95)を叩き出して8位に入った。女子中距離種目で五輪のファイナル・そして入賞は、1928年アムステルダム五輪800m銀メダルの人見絹枝以来、93年ぶり。女子トラック入賞は1996年アトランタ五輪10000m(千葉真子、川上優子)以来25年ぶりだった。
女子の入賞は田中のほかに、女子10000m7位の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、女子マラソン8位の一山麻緒(ワコール)。10000m入賞は前述のアトランタ五輪以来25年ぶり。廣中は5000mにも出場し、決勝(9位)では14分52秒84をマークし、福士加代子が持っていた日本記録14分53秒22を16年ぶりに更新した。女子マラソンは2004年アテネの3人入賞(金・野口みずき、5位・土佐礼子、7位・坂本直子)以来17年ぶり。女子の入賞自体がアテネ大会以来だった。

写真/時事
男子走幅跳では橋岡優輝(富士通)が6位に入った。決勝進出、入賞ともに1984年ロサンゼルス五輪の臼井淳一(7位)以来37年ぶり。世界選手権(19年8位)と両大会でこの種目入賞は初めてのこと。
入賞以外に目を向けると、女子やり投の北口榛花(JAL)は、この種目では1964年東京大会(佐藤弘子、片山美佐子)以来57年ぶりの決勝進出。女子フィールド種目で決勝進出したのは2000年シドニー走高跳の太田陽子以来21年ぶりだった。また、男子走高跳の戸邉直人(JAL)は予選を突破。決勝では13位だったが、ファイナルは1972年ミュンヘン大会の冨沢英彦以来、49年ぶりだった。
男子110mハードルは泉谷駿介(順大)と金井大旺(ミズノ)が準決勝進出。これは1964年東京大会(安田寛一)以来57年ぶり。2人が進んだのは史上初だった。女子100mハードルで準決勝に寺田明日香(ジャパンクリエイト)が進んだが、これは2000年シドニーの金沢イボンヌ以来21年ぶり。青木益未(七十七銀行)と木村文子(エディオン)と3人が出場したのは初めてだ。男子4×400mリレーは予選敗退ながら3分00秒76をマーク。1996年アトランタ五輪決勝でマークされた日本記録に25年ぶりに並んだ。
今大会は若い力が目立ち、三浦は19歳、田中は21歳。入賞のうち男子マラソンの大迫傑(30歳)を除いて、全員が25歳以下だった。さらに驚くべきは、全員が「悔しがっていた」ということ。田中は1500mについて「針の穴に糸を通すようだった」と予選、準決勝の突破の難易度を語り、次から毎回決勝に行けるほど甘くないことを理解した上で「次は上位入賞を」と話す。三浦は「サンショー(3000m障害)でトップを取りたい」(※月刊陸上競技9月号にインタビュー掲載!)と語っていた。メダルを狙っていた橋岡は「何も考えられなかった」と悔しがり、北口は脇腹痛で決勝はしっかり戦えず「強くなって帰ってきます」と泣き崩れた。いずれも、来年のユージン世界選手権、そして3年後のパリ五輪を見据えて歩みを止めることはない。
一方で、期待の大きかった男子短距離や4×100mリレーは苦戦。100mと200mの両種目に出場して全員がラウンド突破できなかったのは、1928年アムステルダム五輪以来93年ぶりの屈辱だった。4×100mリレーのメダルを狙った結果の決勝途中棄権は仕方ないが、桐生祥秀(日本生命)が話したように、「個人でもリレーでも世界と差がある」ことが浮き彫りになった。100mであれば目指していた「複数人9秒台」を達成したいま、次は「複数回9秒台」の“強さ”が必要。そうした時に悲願のリレー金メダルは現実になるだろう。日本の短距離なら、絶対にできる。
メダルの価値に優劣がないのは当然のこと。それでも陸上競技でメダル獲得や入賞の難易度は非常に高い。「メダルラッシュ」とはいかなかったが、歴史的なシーンが多数誕生した東京五輪。この経験を生かす舞台は、すぐにやってくる。
●陸上日本代表の入賞一覧
・メダル
男子20km競歩
2位 池田向希(旭化成)
3位 山西利和(愛知製鋼)
6位
男子走幅跳 橋岡優輝(富士通)
男子50km競歩 川野将虎(旭化成)
男子マラソン 大迫傑(Nike)
7位
男子3000m障害 三浦龍司(順大)
女子10000m 廣中璃梨佳(日本郵政グループ)
8位
女子1500m 田中希実(豊田自動織機TC)
女子マラソン 一山麻緒(ワコール)
写真/時事
東京五輪の日本代表が獲得したメダルは金27、銀14、銅17の計58個。これは過去最多だった16年リオ五輪の41個を上回り史上最多、金メダルも最多となる。
日本はメダル2つを含む入賞9。前回リオ五輪(入賞4)を大きく上回り、1992年バルセロナ、2004年アテネの「8」を抜いて戦後最多の入賞数となった。なお、過去最多は1932年ベルリン五輪の17(※当時は6位まで入賞)。
他競技にメダルラッシュが続くなかで、一見“地味”かもしれないが、陸上日本代表の奮闘は過去最高レベルだった。「史上初!」「○年ぶり!」という文字を、この10日間、何度打ち込んだかわからないほど。そうした偉業と奮闘ぶりをあらためてまとめる。
陸上競技は7月30日からスタートし、五輪全体の最終日である8月8日の午前中に行われた男子マラソンまで、10日間にわたって行われた。日本代表は65名(男子43、女子22)。これは1964年東京大会の68名に次ぐ2番目(女子は最多)で、開催国枠がなかったことを考えれば事実上「史上最多」と言える。
メダル獲得は男子20km競歩の2つで、銀メダル・池田向希(旭化成)と銀メダル・山西利和(愛知製鋼)。この種目で初のメダルを一挙に2つ獲得し、同一種目で複数メダルの獲得は、1936年ベルリン五輪(マラソン、棒高跳、三段跳)以来、85年ぶりだった。
写真/時事
前半戦で大きなインパクトを与えたのが、男子3000m障害の三浦龍司(順大)。この種目には山口浩勢(愛三工業)、青木涼真(Honda)と3人が出場したが、各国出場上限3名が出場したのは57年前の1964年東京五輪以来(奥沢善二・猿渡武嗣・横溝三郎)だった。
そんななか、大会初日の予選で、日本記録保持者の三浦は8分09秒92と自らの日本記録を更新して予選突破。日本人初の8分10秒切り。決勝進出は1972年ミュンヘン五輪の小山隆治(9位)以来、49年ぶりだった。それだけにとどまらず、決勝では果敢なレースを展開してこの種目初の7位入賞。日本男子トラックでの個人入賞は2000年シドニー大会10000m7位・高岡寿成以来21年ぶりのこと。
後半戦のハイライトは女子1500mの田中希実(豊田自動織機TC)だろう。1500mでは田中と、卜部蘭(積水化学)がこの種目で女子初の出場を成し遂げた。そんななか、田中は予選、準決勝と日本記録をマークして決勝進出。世界と対等に戦った決勝では8位入賞の快挙を成し遂げた。
陸上ファン以外には下位入賞で快挙…?と思われるかもしれない。ただ、1500mは男女ともにこれまで世界から遠い種目と言われ続けてきた種目。そもそも、田中も卜部も参加標準記録(4分04秒20)を有効期間内に突破できずワールドランキングでの出場(※有効期間後に田中は4分04秒08の日本新)だった。出場自体が史上初、準決勝では日本女子初の3分台となる3分59秒19をマーク。そして決勝で再び3分台(3分59秒95)を叩き出して8位に入った。女子中距離種目で五輪のファイナル・そして入賞は、1928年アムステルダム五輪800m銀メダルの人見絹枝以来、93年ぶり。女子トラック入賞は1996年アトランタ五輪10000m(千葉真子、川上優子)以来25年ぶりだった。
女子の入賞は田中のほかに、女子10000m7位の廣中璃梨佳(日本郵政グループ)、女子マラソン8位の一山麻緒(ワコール)。10000m入賞は前述のアトランタ五輪以来25年ぶり。廣中は5000mにも出場し、決勝(9位)では14分52秒84をマークし、福士加代子が持っていた日本記録14分53秒22を16年ぶりに更新した。女子マラソンは2004年アテネの3人入賞(金・野口みずき、5位・土佐礼子、7位・坂本直子)以来17年ぶり。女子の入賞自体がアテネ大会以来だった。
写真/時事
男子走幅跳では橋岡優輝(富士通)が6位に入った。決勝進出、入賞ともに1984年ロサンゼルス五輪の臼井淳一(7位)以来37年ぶり。世界選手権(19年8位)と両大会でこの種目入賞は初めてのこと。
入賞以外に目を向けると、女子やり投の北口榛花(JAL)は、この種目では1964年東京大会(佐藤弘子、片山美佐子)以来57年ぶりの決勝進出。女子フィールド種目で決勝進出したのは2000年シドニー走高跳の太田陽子以来21年ぶりだった。また、男子走高跳の戸邉直人(JAL)は予選を突破。決勝では13位だったが、ファイナルは1972年ミュンヘン大会の冨沢英彦以来、49年ぶりだった。
男子110mハードルは泉谷駿介(順大)と金井大旺(ミズノ)が準決勝進出。これは1964年東京大会(安田寛一)以来57年ぶり。2人が進んだのは史上初だった。女子100mハードルで準決勝に寺田明日香(ジャパンクリエイト)が進んだが、これは2000年シドニーの金沢イボンヌ以来21年ぶり。青木益未(七十七銀行)と木村文子(エディオン)と3人が出場したのは初めてだ。男子4×400mリレーは予選敗退ながら3分00秒76をマーク。1996年アトランタ五輪決勝でマークされた日本記録に25年ぶりに並んだ。
今大会は若い力が目立ち、三浦は19歳、田中は21歳。入賞のうち男子マラソンの大迫傑(30歳)を除いて、全員が25歳以下だった。さらに驚くべきは、全員が「悔しがっていた」ということ。田中は1500mについて「針の穴に糸を通すようだった」と予選、準決勝の突破の難易度を語り、次から毎回決勝に行けるほど甘くないことを理解した上で「次は上位入賞を」と話す。三浦は「サンショー(3000m障害)でトップを取りたい」(※月刊陸上競技9月号にインタビュー掲載!)と語っていた。メダルを狙っていた橋岡は「何も考えられなかった」と悔しがり、北口は脇腹痛で決勝はしっかり戦えず「強くなって帰ってきます」と泣き崩れた。いずれも、来年のユージン世界選手権、そして3年後のパリ五輪を見据えて歩みを止めることはない。
一方で、期待の大きかった男子短距離や4×100mリレーは苦戦。100mと200mの両種目に出場して全員がラウンド突破できなかったのは、1928年アムステルダム五輪以来93年ぶりの屈辱だった。4×100mリレーのメダルを狙った結果の決勝途中棄権は仕方ないが、桐生祥秀(日本生命)が話したように、「個人でもリレーでも世界と差がある」ことが浮き彫りになった。100mであれば目指していた「複数人9秒台」を達成したいま、次は「複数回9秒台」の“強さ”が必要。そうした時に悲願のリレー金メダルは現実になるだろう。日本の短距離なら、絶対にできる。
メダルの価値に優劣がないのは当然のこと。それでも陸上競技でメダル獲得や入賞の難易度は非常に高い。「メダルラッシュ」とはいかなかったが、歴史的なシーンが多数誕生した東京五輪。この経験を生かす舞台は、すぐにやってくる。
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7位
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8位
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