
写真/Getty Images for World Athletics
◇第29回世界競歩チーム選手権(3月5日/オマーン・マスカット)
これが「世界王者」の底力だ。男子20km競歩で山西利和(愛知製鋼)が金メダルのフィニッシュテープを切ると、普段は冷静沈着な男が、「どうだ!」と言わんばかりにそのテープを振って感情を爆発させた。
2019年ドーハ世界選手権王者として臨んだ昨年の東京五輪では、マッシモ・スタノ(イタリア)、池田向希(旭化成)に次いで銅メダル。ライバルたちに終始マークされる立場から、本来の実力を出し切れたとは言い難い結果となった。
だが、この日はその悔しさを晴らすかのように他を圧倒した。気温25度を超える中東の暑さに最初の1周(2km)が8分34秒というスローな出足だったが、4kmを過ぎてスッと前に出る。
8kmを過ぎて、この大会の連覇が懸かる池田にいったんは追いつかれたものの、10km付近から再び引き離した。その後は、独り旅。五輪の頃よりもひと回り大きく見える身体は、より一層フォームの安定感を生んでいるよう。最後まで動きを乱すことなく、1時間22分52秒で金メダルを手にした。
「今回はチーム選手権ということで、日本チームとして金メダルを取りにきていたので、レース展開についても、そのためのベストの選択ができるようなものをチョイスししました。(4kmを過ぎたところで)先頭に出たのは僕の独断でしたが、池田も来てくれた。個人間で順位を意識する瞬間もあったけれど、同時に、日本チームとして、どうやって勝ちにいくかということを、うまく両立しようとしました。コースは、坂が非常に多く、少しタフでしたが、その特性を生かしてレースをうまく進めることができました」(山西)
オレゴン世界選手権は、前回優勝者としてすでにワイルドカードでの出場権を持つ。五輪で失いかけた王者のプライドを取り戻した山西が、陸上の本場・アメリカで連覇に挑む。
池田は山西に離されてから、一時後続に迫られる場面もあったが、2位の座はキープ。連覇は逃したものの1時間23分29秒で銀メダルを手にし、日本勢ワン・ツー・フィニッシュを決めた。
「2位でしたが、本当に収穫のあるレースができたかなと思います」と池田。一度、山西に引き離されたものの、先頭に追いつくと山西から『後ろとの差を広げていこう』と声を掛けられ、勇気づけられたと振り返る。「今まで経験したことのないようなアップダウンの激しいコースだったが、これも経験になったし、ある意味、(それに対応できる)メンタル面の強さが結果に出たのかなと思います」と話した。
4年前のこの大会で初めて日の丸のユニフォームを着て出場し、いきなり優勝。池田にとってはまさに世界への登竜門となったレースは、今回は悔しさの残るものとなった。しかし、オレゴン世界選手権派遣設定記録(1時間21分00秒)に届かず、国内選考レースもあと1つ(全日本競歩能美大会/3月20日)残されているとはいえ、2大会連続の世界選手権代表入りに向けては大きくアピール。再び、世界で山西に挑戦する時がやってくるだろう。
初の日本代表だった諏方元郁(愛知製鋼)は1時間27分51秒で23位。上位3人の合計順位で争う国別団体は25点のエクアドルが優勝し、日本は1点差で2位だった。
同日に行われた男子35km競歩では、東京五輪6位入賞の川野将虎(旭化成)が2時間37分36秒で4位。オレゴン世界選手権の派遣設定記録(2時間30分00秒)は突破できなかったものの、東洋大時代からのチームメイト・池田と同じく代表入りには前進した。
初代表だった高橋和生(ADワークスグループ)は2時間39分08秒で10位。勝木隼人(自衛隊体育学校)は3時間3分01秒で44位だった。
前日の女子20km競歩で日本勢過去最高の5位に入った藤井菜々子(エディオン)を含め、日本勢は出場3種目でメダル2、入賞2と、改めて世界に「競歩大国」としての強さを示した。
■日本人成績
・男子20km競歩
1位 山西 利和(愛知製鋼) 1時間22分52秒
2位 池田 向希(旭化成) 1時間23分29秒
23位 諏方 元郁(愛知製鋼) 1時間27分51秒
国別団体 2位 26点
・男子50km競歩
4位 川野 将虎(旭化成) 2時間37分36秒
10位 高橋和生(ADワークスグループ) 2時間39分08秒
43位 勝木隼人(自衛隊体育学校) 3時間3分01秒
国別団体 4位 57点
・女子20km競歩
5位 藤井菜々子(エディオン) 1時間33分16秒
写真/Getty Images for World Athletics
◇第29回世界競歩チーム選手権(3月5日/オマーン・マスカット)
これが「世界王者」の底力だ。男子20km競歩で山西利和(愛知製鋼)が金メダルのフィニッシュテープを切ると、普段は冷静沈着な男が、「どうだ!」と言わんばかりにそのテープを振って感情を爆発させた。
2019年ドーハ世界選手権王者として臨んだ昨年の東京五輪では、マッシモ・スタノ(イタリア)、池田向希(旭化成)に次いで銅メダル。ライバルたちに終始マークされる立場から、本来の実力を出し切れたとは言い難い結果となった。
だが、この日はその悔しさを晴らすかのように他を圧倒した。気温25度を超える中東の暑さに最初の1周(2km)が8分34秒というスローな出足だったが、4kmを過ぎてスッと前に出る。
8kmを過ぎて、この大会の連覇が懸かる池田にいったんは追いつかれたものの、10km付近から再び引き離した。その後は、独り旅。五輪の頃よりもひと回り大きく見える身体は、より一層フォームの安定感を生んでいるよう。最後まで動きを乱すことなく、1時間22分52秒で金メダルを手にした。
「今回はチーム選手権ということで、日本チームとして金メダルを取りにきていたので、レース展開についても、そのためのベストの選択ができるようなものをチョイスししました。(4kmを過ぎたところで)先頭に出たのは僕の独断でしたが、池田も来てくれた。個人間で順位を意識する瞬間もあったけれど、同時に、日本チームとして、どうやって勝ちにいくかということを、うまく両立しようとしました。コースは、坂が非常に多く、少しタフでしたが、その特性を生かしてレースをうまく進めることができました」(山西)
オレゴン世界選手権は、前回優勝者としてすでにワイルドカードでの出場権を持つ。五輪で失いかけた王者のプライドを取り戻した山西が、陸上の本場・アメリカで連覇に挑む。
池田は山西に離されてから、一時後続に迫られる場面もあったが、2位の座はキープ。連覇は逃したものの1時間23分29秒で銀メダルを手にし、日本勢ワン・ツー・フィニッシュを決めた。
「2位でしたが、本当に収穫のあるレースができたかなと思います」と池田。一度、山西に引き離されたものの、先頭に追いつくと山西から『後ろとの差を広げていこう』と声を掛けられ、勇気づけられたと振り返る。「今まで経験したことのないようなアップダウンの激しいコースだったが、これも経験になったし、ある意味、(それに対応できる)メンタル面の強さが結果に出たのかなと思います」と話した。
4年前のこの大会で初めて日の丸のユニフォームを着て出場し、いきなり優勝。池田にとってはまさに世界への登竜門となったレースは、今回は悔しさの残るものとなった。しかし、オレゴン世界選手権派遣設定記録(1時間21分00秒)に届かず、国内選考レースもあと1つ(全日本競歩能美大会/3月20日)残されているとはいえ、2大会連続の世界選手権代表入りに向けては大きくアピール。再び、世界で山西に挑戦する時がやってくるだろう。
初の日本代表だった諏方元郁(愛知製鋼)は1時間27分51秒で23位。上位3人の合計順位で争う国別団体は25点のエクアドルが優勝し、日本は1点差で2位だった。
同日に行われた男子35km競歩では、東京五輪6位入賞の川野将虎(旭化成)が2時間37分36秒で4位。オレゴン世界選手権の派遣設定記録(2時間30分00秒)は突破できなかったものの、東洋大時代からのチームメイト・池田と同じく代表入りには前進した。
初代表だった高橋和生(ADワークスグループ)は2時間39分08秒で10位。勝木隼人(自衛隊体育学校)は3時間3分01秒で44位だった。
前日の女子20km競歩で日本勢過去最高の5位に入った藤井菜々子(エディオン)を含め、日本勢は出場3種目でメダル2、入賞2と、改めて世界に「競歩大国」としての強さを示した。
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10位 高橋和生(ADワークスグループ) 2時間39分08秒
43位 勝木隼人(自衛隊体育学校) 3時間3分01秒
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