HOME 国内、世界陸上、日本代表
田中希実、山本有真の5000m“共闘” 迷う田中を後押しした山本の「私に作ってほしいペースがあったら言ってください」/東京世界陸上
田中希実、山本有真の5000m“共闘” 迷う田中を後押しした山本の「私に作ってほしいペースがあったら言ってください」/東京世界陸上

東京世界陸上女子5000m予選に出場した山本有真と田中希実

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)6日目

東京世界陸上6日目のイブニングセッションが行われ、女子5000m予選1組で田中希実(New Balance)と山本有真(積水化学)と“共闘”で世界に挑んだ。

初日の1500mで予選敗退した田中。どんなレースプランで5000mに挑むか迷いが生じていた。自分が世界の舞台で結果を出してきたパターンは、中盤でペースを上げて「タメを作ること」。だが、その覚悟が定まらなかった。

広告の下にコンテンツが続きます

そこに手を差し伸べたのが、山本だった。レース前日の食事の際に、山本は田中にこう伝えた。

「私に作ってほしいペースがあったら言ってください」

同じ日本チームの一員とはいえ、同じ決勝を争うライバルでもある。だが、山本には「田中さんにはどうしても予選を突破してほしい」という強い思いがあった。

昨年のパリ五輪も、予選で同じ組になった。山本は今回のように先頭に立っただけでなく、集団から抜け出して一時独走態勢を築いた。結果としてともに予選敗退になったが、田中から「有真ちゃんについていけば良かった」と言われたことを思い出す。

田中にとっても、山本の言葉は迷いや怖さの中から「最後のピースをはめてくれた言葉」だったという。田中は山本に伝えた。

「スローな展開からのラスト勝負はきついので、スローになったら72秒ぐらいで6周半押してほしい」――。山本はそれを受け入れ、実行に移した。

スローペースになりかけるなか、田中、山本が集団の前に出る。そして、山本がトップに立ち、最初の1周を70秒で入った。1000mを2分57秒、2000mを5分59秒で引っ張る。

そして、残り6周で田中が前に出てペースを上げる。3000mあたりから集団の人数が徐々に絞られ、残り1000mで9人。残り1周で8人となり、田中は決勝進出の安全圏に入った。

田中は14分47秒14の5着を占め、2大会連続の決勝に進出。山本は15分36秒29の18着でフィニッシュ。すると田中が両手を握り、感謝の言葉をかける。山本は「すごくうれしい」と振り返る。

「まだまだ田中さんには追いつけないですが、次こそはという強い気持ちで頑張っていきたい」と山本。アシストではなく、ともにファイナルへ。山本はその思いを強くした。

◇東京世界陸上(9月13日~21日/国立競技場)6日目 東京世界陸上6日目のイブニングセッションが行われ、女子5000m予選1組で田中希実(New Balance)と山本有真(積水化学)と“共闘”で世界に挑んだ。 初日の1500mで予選敗退した田中。どんなレースプランで5000mに挑むか迷いが生じていた。自分が世界の舞台で結果を出してきたパターンは、中盤でペースを上げて「タメを作ること」。だが、その覚悟が定まらなかった。 そこに手を差し伸べたのが、山本だった。レース前日の食事の際に、山本は田中にこう伝えた。 「私に作ってほしいペースがあったら言ってください」 同じ日本チームの一員とはいえ、同じ決勝を争うライバルでもある。だが、山本には「田中さんにはどうしても予選を突破してほしい」という強い思いがあった。 昨年のパリ五輪も、予選で同じ組になった。山本は今回のように先頭に立っただけでなく、集団から抜け出して一時独走態勢を築いた。結果としてともに予選敗退になったが、田中から「有真ちゃんについていけば良かった」と言われたことを思い出す。 田中にとっても、山本の言葉は迷いや怖さの中から「最後のピースをはめてくれた言葉」だったという。田中は山本に伝えた。 「スローな展開からのラスト勝負はきついので、スローになったら72秒ぐらいで6周半押してほしい」――。山本はそれを受け入れ、実行に移した。 スローペースになりかけるなか、田中、山本が集団の前に出る。そして、山本がトップに立ち、最初の1周を70秒で入った。1000mを2分57秒、2000mを5分59秒で引っ張る。 そして、残り6周で田中が前に出てペースを上げる。3000mあたりから集団の人数が徐々に絞られ、残り1000mで9人。残り1周で8人となり、田中は決勝進出の安全圏に入った。 田中は14分47秒14の5着を占め、2大会連続の決勝に進出。山本は15分36秒29の18着でフィニッシュ。すると田中が両手を握り、感謝の言葉をかける。山本は「すごくうれしい」と振り返る。 「まだまだ田中さんには追いつけないですが、次こそはという強い気持ちで頑張っていきたい」と山本。アシストではなく、ともにファイナルへ。山本はその思いを強くした。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.19

世界陸上銅の勝木隼人がエントリー 女子は前回Vの谷純花ら/元旦競歩

東京陸協は26年1月1日に開催される第74回元旦競歩(兼東京選手権競歩)のエントリー選手を発表した。 男子20kmには、9月の東京世界選手権35kmで銅メダルに輝いた勝木隼人(自衛隊体育学校)がエントリー。23年ワールド […]

NEWS 箱根駅伝Stories/東海大のスピードスター・兵藤ジュダ リベンジの1区で「やっぱり区間賞がほしい」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/東海大のスピードスター・兵藤ジュダ リベンジの1区で「やっぱり区間賞がほしい」

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 失意から復活、トラックで勢い 前回の箱根駅伝予選会で総合14位に終わ […]

NEWS 箱根駅伝Stories/前回の雪辱期する中央学大・市川大世 「区間5位以内を目指して積極的な走りを」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/前回の雪辱期する中央学大・市川大世 「区間5位以内を目指して積極的な走りを」

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 全日本では4人抜きの力走 3年ぶりに11月の全日本大学駅伝に戻ってき […]

NEWS 箱根駅伝Stories/過去最高順位を見据える城西大 強力4年生軸に「アッと驚くような試合がしたい」

2025.12.19

箱根駅伝Stories/過去最高順位を見据える城西大 強力4年生軸に「アッと驚くような試合がしたい」

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 主要区間の経験者残る 前回6位の城西大がチーム最高成績の3位以内を目 […]

NEWS 予選会と5000m平均はともに仙台育英トップ 2番手は学法石川 鳥取城北は安定感/全国高校駅伝・データ編男子

2025.12.19

予選会と5000m平均はともに仙台育英トップ 2番手は学法石川 鳥取城北は安定感/全国高校駅伝・データ編男子

男子第76回全国高校駅伝(12月21日/京都・7区間42.195km)に出場する58校を都道府県大会と地区大会で出されたタイムと、5000mのチーム内上位7人の平均タイム(12月上旬判明分)でランキング化した。 男子レー […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top