2024.02.29
高校時代は「いつか彼らと同じ土俵で勝負したい」
伊福が走り始めたのは小学校高学年のとき。地元・京都で開催される大文字駅伝に出場するためだった。
実は剣道では団体戦で全国大会に出場し、日本武道館で試合をした実績がある。それにもかかわらず、大文字駅伝で予選会敗退だった悔しさもあって、中学からは本格的に陸上を始めた。
中学では全国大会の実績はなかったものの、京都市や府の大会で入賞するまで力をつけた。中学時代の顧問が洛南高出身だったこともあって、陸上の名門・洛南高に進んだ。
だが、強豪校ではなかなか駅伝のメンバーを勝ち取れなかった。1学年上には三浦龍司(現・順大)、赤星雄斗(現・駒大)、同期には若林宏樹(現・青学大)、1学年下には佐藤圭汰(現・駒大)がいて、「そういった強い選手との差は毎日意識させられました。いつかは彼らと同じ土俵に立って勝負したいと思っていました」と振り返る。
そんな気持ちを胸の内に抱きつつ、高校卒業後は指定校推薦で早大に進んだ。
大学に進んで、距離走などの長い距離を走る練習が増えると、伊福の才能が開花。2年生で箱根駅伝に出場を果たし、8区区間10位とまずまずの走りを見せた。
しかし、さらなる飛躍を誓ったはずの3年目は山あり谷あり。まずは前半戦で苦しんだ。
「2年生でちょっとずつ結果が出始めて、(3年目は)トラックシーズンから頑張ろうという気持ちが大きかったのですが、意気込み過ぎたのか、空回りしてしまい、全然走れませんでした。夏合宿も、脚を痛めたり、貧血や体調不良があったりして、練習の参加率が悪かったんです」
夏を越えて、9月に5000mで自己新、10月にはハーフマラソンでセカンドベストをマークするなど復調を見せた。その矢先、アンカーに抜擢された全日本大学駅伝で、脱水症状に見舞われてしまう。
「ここからっていう時にああなってしまって、今年はもう無理だろうなと思っていました」と、気持ちが切れてしまい、一度は箱根を諦めかけたという。
ところが、「結果的には、それが良かったのかな」と言うように、そこからは自分のペースで競技に取り組むと、12月2日の日体大長距離競技会では10000mで28分55秒78の自己ベストをマーク。それで自信をつかみ、箱根では2年連続の8区で区間5位と好走した。そして、冒頭の通り、延岡での活躍につなげてみせた。
強い時の早大は、必ずと言っていいほど、指定校推薦や一般入試で入学した“一般組”の活躍がある。伊福もまた“一般組”の一人だ。だが、当人にとっては一般組もスポーツ推薦組も関係はない。
「関東インカレは恐らくハーフマラソンになると思いますが、優勝や表彰台を目指したい。全日本の選考会もありますが、前半シーズンで良い流れを作って夏合宿を迎えて、しっかり自信を持てるような夏にしたい。そして、駅伝シーズンは、全部の駅伝でチーム目標を達成できるように、区間賞争いができる選手になりたいです。やっぱり優勝争いや上位に入るチームは全員が区間3位以内とか、区間上位で走っている。一般も推薦も関係なく、全員がそういう走りをしなければいけないと思っています」
大学ラストイヤーは、早大の主力として堂々と戦う覚悟がある。

2024年箱根駅伝では8区区間5位と好走した早大の伊福陽太
◎いふく・ようた/2002年12月23日生まれ、京都府京都市出身。西賀茂中→洛南高→早大。自己記録5000m14分07秒53、10000m28分55秒78、ハーフ1時間2分50秒。
文/和田悟志
学生ながら初マラソンで快走
今年に入ってから各地の大会で大学生ランナーの活躍が続いている。 早大の伊福陽太(3年)もその1人。2月11日に開催された延岡西日本マラソンで初マラソンに挑むと、学生歴代6位(当時)の2時間9分26秒で大会新優勝を飾った。 昨年の同大会も、先輩の佐藤航希(4年)が制しており、早大勢の連覇となった。 「(延岡に出場したのは)去年、航希さんが走られたのが大きかった。記録を狙うという意味では、大阪や別大(別府大分)など別の大会のほうが良かったかもしれませんが、30km以降もしっかり先頭集団で上位争いをするという意味では、延岡のレベルがちょうどいい。そういう経験ができると思ったので出場しました」 意図していた通り、中間点を過ぎても伊福は先頭集団でレースを進めていた。そして、25kmでペースメーカーが外れると、思い切って勝負に出た。 「何事も経験。良い方向に転んでも、悪いほうに転んでも、良い経験になると思ったので思い切り行けたのが良かったと思います」 伊福はそのまま逃げ切って、優勝を果たした。「良くて2時間10分台、悪くても2時間11分台の間に収めようと思っていました」と言うように、史上最年少でのサブ10(2時間10分切り)は想定以上の記録だった。 早大の先輩では瀬古利彦、渡辺康幸、佐藤敦之といった名だたるランナーが在学中にマラソンに挑んで世界の舞台に羽ばたいていった。 「いずれ更新されると思いますが、早稲田の歴史に自分の名前を残すことができてうれしいです」 偉大な先輩たちの記録を飛び越えて、伊福は新たな早大記録を打ち立てた。 もともと長い距離を得意としていた。昨年の青梅マラソンでは、起伏のある難コースを1時間33分05秒の好記録で学生トップの6位に入っており、早くからマラソン挑戦を意識していた。 今年1月の箱根駅伝後は、ジョグの量を増やしたり、40kmの距離走を1回だけ実施したりと、短期間ながらマラソンに向けた準備をしてきた。 「距離走の30kmと40kmとでは全然違いました。(1kmあたり)3分20秒前後のペースでしたが、35kmを超えたぐらいからきつくて、最後はペースを落としてしまいました。本番はもっとペースが速いし、手応えよりも若干の不安が残りました」 そんな不安もなんのその。本番では見事な走りを見せた。チームもちょうど延岡で合宿中で、沿道ではチームメイトが団扇などを片手に声援を送った。 「元気が出ました」 仲間の応援も伊福の快走を後押しした。高校時代は「いつか彼らと同じ土俵で勝負したい」
伊福が走り始めたのは小学校高学年のとき。地元・京都で開催される大文字駅伝に出場するためだった。 実は剣道では団体戦で全国大会に出場し、日本武道館で試合をした実績がある。それにもかかわらず、大文字駅伝で予選会敗退だった悔しさもあって、中学からは本格的に陸上を始めた。 中学では全国大会の実績はなかったものの、京都市や府の大会で入賞するまで力をつけた。中学時代の顧問が洛南高出身だったこともあって、陸上の名門・洛南高に進んだ。 だが、強豪校ではなかなか駅伝のメンバーを勝ち取れなかった。1学年上には三浦龍司(現・順大)、赤星雄斗(現・駒大)、同期には若林宏樹(現・青学大)、1学年下には佐藤圭汰(現・駒大)がいて、「そういった強い選手との差は毎日意識させられました。いつかは彼らと同じ土俵に立って勝負したいと思っていました」と振り返る。 そんな気持ちを胸の内に抱きつつ、高校卒業後は指定校推薦で早大に進んだ。 大学に進んで、距離走などの長い距離を走る練習が増えると、伊福の才能が開花。2年生で箱根駅伝に出場を果たし、8区区間10位とまずまずの走りを見せた。 しかし、さらなる飛躍を誓ったはずの3年目は山あり谷あり。まずは前半戦で苦しんだ。 「2年生でちょっとずつ結果が出始めて、(3年目は)トラックシーズンから頑張ろうという気持ちが大きかったのですが、意気込み過ぎたのか、空回りしてしまい、全然走れませんでした。夏合宿も、脚を痛めたり、貧血や体調不良があったりして、練習の参加率が悪かったんです」 夏を越えて、9月に5000mで自己新、10月にはハーフマラソンでセカンドベストをマークするなど復調を見せた。その矢先、アンカーに抜擢された全日本大学駅伝で、脱水症状に見舞われてしまう。 「ここからっていう時にああなってしまって、今年はもう無理だろうなと思っていました」と、気持ちが切れてしまい、一度は箱根を諦めかけたという。 ところが、「結果的には、それが良かったのかな」と言うように、そこからは自分のペースで競技に取り組むと、12月2日の日体大長距離競技会では10000mで28分55秒78の自己ベストをマーク。それで自信をつかみ、箱根では2年連続の8区で区間5位と好走した。そして、冒頭の通り、延岡での活躍につなげてみせた。 強い時の早大は、必ずと言っていいほど、指定校推薦や一般入試で入学した“一般組”の活躍がある。伊福もまた“一般組”の一人だ。だが、当人にとっては一般組もスポーツ推薦組も関係はない。 「関東インカレは恐らくハーフマラソンになると思いますが、優勝や表彰台を目指したい。全日本の選考会もありますが、前半シーズンで良い流れを作って夏合宿を迎えて、しっかり自信を持てるような夏にしたい。そして、駅伝シーズンは、全部の駅伝でチーム目標を達成できるように、区間賞争いができる選手になりたいです。やっぱり優勝争いや上位に入るチームは全員が区間3位以内とか、区間上位で走っている。一般も推薦も関係なく、全員がそういう走りをしなければいけないと思っています」 大学ラストイヤーは、早大の主力として堂々と戦う覚悟がある。 [caption id="attachment_129551" align="alignnone" width="800"]
2024年箱根駅伝では8区区間5位と好走した早大の伊福陽太[/caption]
◎いふく・ようた/2002年12月23日生まれ、京都府京都市出身。西賀茂中→洛南高→早大。自己記録5000m14分07秒53、10000m28分55秒78、ハーフ1時間2分50秒。
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