2025.06.09
◇天皇賜盃第94回日本学生対校選手権(6月5日~8日/岡山・JFE晴れの国スタジアム)
学生日本一を決める日本インカレが4日間にわたって行われた。
大会最終日。女子400mハードルで前回優勝の山本亜美(現・富士通)のあと引き継ぐかたちで新女王になったのが立命大の瀧野未来(2年)だった。京都橘高時代に56秒90の高校記録を樹立し、高校の偉大な先輩でもある山本の背中を追って立命大へ。前回の400mハードルでは山本と瀧野でワンツーだった。
臙脂のユニフォームをまといった瀧野は、2度目の日本インカレとなる岡山で激走する。400mハードルを57秒22で初優勝し、笑顔でスタンドの仲間に手を振ってから2時間半後。今度は大粒の涙をトラックにこぼした。
「情けなかったです…」
連覇を狙った4×400mリレーでアンカーを務めた瀧野は、トップでバトンを受けたが、残り200mあたりで園田学園大に逆転を許した。最後まで懸命に身体を動かしたが、あと少し足りなかった。3分36秒28は従来の大会記録を上回り、昨年出したチーム最高記録も塗り替えたが、連覇ならず2位だった。
「絶対に2連覇したかったのですが、最後に自分が抜かれてしまって弱いところが出ました」
インカレ4日間、毎日走ったが体力は限界ぎりぎりだった。
瀧野は5月27日から31日まで韓国・クミで行われたアジア選手権で、山本とともに代表に。あこがれだった先輩と一緒に日の丸を背負うのは一つの夢だった。いずれも本調子とはいかず、そろって予選敗退。しばらくトラックを見つめて悔しさを刻んだ。
翌日、アジア選手権のサブトラックで、筑波大の谷川聡コーチにハードリングや身体の使い方を教えてもらい、練習していたのが印象的だった。

アジア選手権で予選敗退に終わった女子400mHの山本と瀧野

予選敗退の翌日にはサブトラックでともに練習していた
ソウルまで4時間ほどのバス移動などを経て、すぐに岡山へ。初日の4×100mリレー予選から登場すると、4走を務めて44秒47の学生新(学生歴代3位)をマークした。「4走は急きょ決まりました。優勝を狙えるチームというのがうれしいです。学生新はうれしいですが、これは(学生記録として)の残らないので、決勝も頑張ります」と言い、「疲れはあります」と笑った瀧野の長い戦いが始まった。
2日目の午後に400mハードルの予選を走り、59秒58の1着。約3時間後の4継決勝は1走を走って3位に入った。翌日は13時25分に400mハードル準決勝を走って57秒89とタイムを上げると、4×400mリレー予選は“免除”。仲間たちが2組2着でしっかり決勝へのバトンをつないでくれた。
最終日は朝10時50分に400mハードル決勝。「56秒台をどうしても出したかったので悔しさは残るのですが、ここ最近の中では前半からしっかり走れました。どうしても第3コーナーあたりで“休憩”みたいになるのですが、今日はそこもしっかり行けたと思います」と息を整えながら振り返る。

400mH優勝とマイルリレーの涙。激走した岡山でのインカレを糧に次は日本一を取りに行く
愛くるしい笑顔を見せつつ、明らかに体力が奪われているのも目に見えてわかった。「正直、もう死にそうなくらいしんどいんですが、その中でどこまで走れるか」。連日、30度近い暑さのなか「総合優勝も懸かっていて、暑いのにあんなにたくさん応援してくれる。自分がしんどくてもできることをしたいと思っています」。
そして、フィナーレを飾るマイルリレー。逆転されたものの、激走した瀧野のもとには先輩・後輩が駆け寄ってエースの走りと称えた。「みんなが自分の目標に向かって頑張って、応援も一生懸命してくれました。本当に良いチームだなって思います」。それを瀧野自身が体現していたからこそ、仲間はエールを送り、誰も責めはしなかった。
次は日本選手権。4連覇している山本と、あの舞台でいよいよ相まみえる。「亜美先輩とバチバチだと思うのですが、2人で高め合って頑張りたいし……優勝したいなって思います」。超ハードスケジュールというハードルを越えた瀧野は、一回り成長して国立競技場の舞台に立つ。
文/向永拓史



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