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2022.07.23

女子400mH夢の50秒台突入!!マクローリンが50秒68!男子400mノーマンが地元で悲願の世界一!/世界陸上Day8
女子400mH夢の50秒台突入!!マクローリンが50秒68!男子400mノーマンが地元で悲願の世界一!/世界陸上Day8

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目

オレゴン世界陸上8日目は5種目で決勝が行われ、最終種目女子400mハードルではシドニー・マクローリン(米国)が歴史的大記録を打ち立てた。

スタートから他を圧倒し、刻んだタイムは「50秒68」。自身が1ヵ月前の全米選手権で出したばかりの世界記録(51秒41)を0.73秒も塗り替え、女子では史上初となる「50秒台」で地元優勝を成し遂げた。
マクローリンは昨年6月の全米五輪トライアルで女子初の51秒台(51秒90)を出しており、1年強でこの種目の歴史を大きく進めたことになる。

2位のフェムケ・ボル(オランダ)も銅メダルだった昨年の東京五輪で出した世界歴代3位の自己ベスト(52秒03)に迫る52秒27をマークしながらも、1秒59もの大差。フラットレースの400mの決勝進出ラインが50秒65だったことを思えば、どれだけ飛び抜けた記録かがわかる。

これで、マクローリン自身は通算4度目の世界新。昨年の東京五輪でも金メダルに輝いている。そんな彼女にとっても、地元世界陸上を制したことは特別なことだった。相当な重圧もあっただろう。これほどのパフォーマンスを出し切ったにもかかわらず、フィニッシュ後はしばらく座り込んでいた。

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「乳酸がたまっていたのと、起こったことを楽しむために少し時間を取っていたの」とマクローリン。力を出し尽くし、プレッシャーからも解放され、快挙の喜びを静かに味わった。

3位だったダリラ・ムハンマドは「50秒台は間違いなく可能だと思っていた」と話したうえで、さらなる歴史の扉へと言及する。「49秒台も可能だと思う、シドニーならね」。

マクローリン自身も「完璧なレースというものはなく、改善すべき点は常にあると思います」と言う。さすがに、すぐに現実のものとなるとは思わないが、「神から与えられた贈り物や才能を解放し、やってきたことのすべてをレースにぶつけるだけ」というマクローリンの走りは、これからますます注目を集めることになるだろう。

男子400mでは、米国男子ロングスプリントを背負うべき才能、24歳のマイケル・ノーマンが接戦を44秒30で制し、ついに世界一に立った。

21歳にして世界歴代5位の43秒45をマークし、2020年には100m9秒台(9秒86)、200m19秒台(19秒70)、400m43秒台を出した史上2人目のスプリンターに。これほどの能力を持ちながら、19年ドーハ世界陸上はケガ明けの影響で準決勝で敗退。昨年の東京五輪は5位と、大舞台でなかなか結果を出せていなかった。

念願の金メダルに、フィニッシュ後は感無量の表情を見せたノーマン。いよいよ、マイケル・ジョンソンの米国記録(43秒18)、ウエイド・ファン・ニーケアク(南アフリカ)の世界記録(43秒03)、そして夢の「42秒台」突入へ。日本人のDNAも受け継ぐノーマンの活躍は、これからが本番だ。

午前6時15分(現地時間)スタートの女子35㎞競歩は、初日の20kmのメダリストたちが再び熱戦を展開。20km覇者のキンバリー・ガルシア・レオン(ペルー)が2時間39分16秒で初代女王に輝き、2冠獲得の偉業を達成した。2時間40分03秒で2位にカタジナ・ズジェブウォ(ポーランド)、2時間40分37秒で3位に切陽什姐(中国)に続き、上位3位は20km競歩とまったく同じ順位となった。

このほか、女子400mはショーナ・ミラー・ウイボ(バハマ)が今季世界最高の49秒11で制覇。五輪は昨年の東京で2連覇を達成しているが、世界陸上では念願の初タイトルだった。女子やり投はケルセイ・リー・バーバー(豪州)が2投目の66m91で逃げ切り、2連覇を飾った。

日本勢は、女子やり投で北口榛花(JAL)が63m27で銅メダル獲得の快挙。五輪、世界陸上を通じて日本女子フィールド種目で史上初めてのメダルを、最終投てきの逆転でつかみ取った。同じく決勝に進んだ武本紗栄(佐賀県スポ協)は57m93で11位だったが、世界大会初出場で奮闘した。

4×100mリレーの男子は、新型コロナウイルスに感染した小池祐貴(住友電工)に続き、100mで日本人初入賞(7位)を果たしたサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が疲労などのため出場できず。1走から坂井隆一郎(大阪ガス)、鈴木涼太(スズキ)、上山紘輝(住友電工)、栁田大輝(東洋大)と、全員が世界大会初出場というオーダーに。38秒78で4着と力を尽くしたが、2走、3走のバトンパスが乱れてオーバーゾーンと判定され、失格となった。

女子は11年テグ大会以来11年ぶりの出場。1走から青木益未(七十七銀行)、君嶋愛梨沙(土木管理総合)、兒玉芽生(ミズノ)、御家瀬緑(住友電工)のオーダーで挑み、43秒33の日本新記録をマークした。2011年のセイコーゴールデングランプリ川崎で日本選抜Aが出した記録(43秒39)を11年ぶりに更新。7着ではあったが、昨年の東京五輪に続いての世界大会で、確かな足跡を残した。

女子35㎞競歩は世界大会初出場の園田世玲奈(NTN)が、自身の持つ日本最高記録(2時間45分48秒)を上回る2時間45分09秒で9位。残り400mまでは8位だったが、あと一歩で入賞を逃した。男子棒高跳は今大会の日本勢最多5大会連続出場の山本聖途(トヨタ自動車)が5m30と5m50を一発でクリアし、5m65も2回目で成功。初出場ながら6位に入賞した13年モスクワ大会以来の決勝進出に迫ったが、続く5m75が超えられずに予選敗退となった。

■8日目優勝者一覧
【男子】
400m マイケル・ノーマン(米国) 44秒30
【女子】
400m ショーナ・ミラー・ウイボ(バハマ) 49秒11
400mH シドニー・マクローリン(米国) 50秒68=世界新
35km競歩 キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー) 2時間39分16秒
やり投 ケルセイ・リー・バーバー(豪州) 66m91

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)8日目 オレゴン世界陸上8日目は5種目で決勝が行われ、最終種目女子400mハードルではシドニー・マクローリン(米国)が歴史的大記録を打ち立てた。 スタートから他を圧倒し、刻んだタイムは「50秒68」。自身が1ヵ月前の全米選手権で出したばかりの世界記録(51秒41)を0.73秒も塗り替え、女子では史上初となる「50秒台」で地元優勝を成し遂げた。 マクローリンは昨年6月の全米五輪トライアルで女子初の51秒台(51秒90)を出しており、1年強でこの種目の歴史を大きく進めたことになる。 2位のフェムケ・ボル(オランダ)も銅メダルだった昨年の東京五輪で出した世界歴代3位の自己ベスト(52秒03)に迫る52秒27をマークしながらも、1秒59もの大差。フラットレースの400mの決勝進出ラインが50秒65だったことを思えば、どれだけ飛び抜けた記録かがわかる。 これで、マクローリン自身は通算4度目の世界新。昨年の東京五輪でも金メダルに輝いている。そんな彼女にとっても、地元世界陸上を制したことは特別なことだった。相当な重圧もあっただろう。これほどのパフォーマンスを出し切ったにもかかわらず、フィニッシュ後はしばらく座り込んでいた。 「乳酸がたまっていたのと、起こったことを楽しむために少し時間を取っていたの」とマクローリン。力を出し尽くし、プレッシャーからも解放され、快挙の喜びを静かに味わった。 3位だったダリラ・ムハンマドは「50秒台は間違いなく可能だと思っていた」と話したうえで、さらなる歴史の扉へと言及する。「49秒台も可能だと思う、シドニーならね」。 マクローリン自身も「完璧なレースというものはなく、改善すべき点は常にあると思います」と言う。さすがに、すぐに現実のものとなるとは思わないが、「神から与えられた贈り物や才能を解放し、やってきたことのすべてをレースにぶつけるだけ」というマクローリンの走りは、これからますます注目を集めることになるだろう。 男子400mでは、米国男子ロングスプリントを背負うべき才能、24歳のマイケル・ノーマンが接戦を44秒30で制し、ついに世界一に立った。 21歳にして世界歴代5位の43秒45をマークし、2020年には100m9秒台(9秒86)、200m19秒台(19秒70)、400m43秒台を出した史上2人目のスプリンターに。これほどの能力を持ちながら、19年ドーハ世界陸上はケガ明けの影響で準決勝で敗退。昨年の東京五輪は5位と、大舞台でなかなか結果を出せていなかった。 念願の金メダルに、フィニッシュ後は感無量の表情を見せたノーマン。いよいよ、マイケル・ジョンソンの米国記録(43秒18)、ウエイド・ファン・ニーケアク(南アフリカ)の世界記録(43秒03)、そして夢の「42秒台」突入へ。日本人のDNAも受け継ぐノーマンの活躍は、これからが本番だ。 午前6時15分(現地時間)スタートの女子35㎞競歩は、初日の20kmのメダリストたちが再び熱戦を展開。20km覇者のキンバリー・ガルシア・レオン(ペルー)が2時間39分16秒で初代女王に輝き、2冠獲得の偉業を達成した。2時間40分03秒で2位にカタジナ・ズジェブウォ(ポーランド)、2時間40分37秒で3位に切陽什姐(中国)に続き、上位3位は20km競歩とまったく同じ順位となった。 このほか、女子400mはショーナ・ミラー・ウイボ(バハマ)が今季世界最高の49秒11で制覇。五輪は昨年の東京で2連覇を達成しているが、世界陸上では念願の初タイトルだった。女子やり投はケルセイ・リー・バーバー(豪州)が2投目の66m91で逃げ切り、2連覇を飾った。 日本勢は、女子やり投で北口榛花(JAL)が63m27で銅メダル獲得の快挙。五輪、世界陸上を通じて日本女子フィールド種目で史上初めてのメダルを、最終投てきの逆転でつかみ取った。同じく決勝に進んだ武本紗栄(佐賀県スポ協)は57m93で11位だったが、世界大会初出場で奮闘した。 4×100mリレーの男子は、新型コロナウイルスに感染した小池祐貴(住友電工)に続き、100mで日本人初入賞(7位)を果たしたサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が疲労などのため出場できず。1走から坂井隆一郎(大阪ガス)、鈴木涼太(スズキ)、上山紘輝(住友電工)、栁田大輝(東洋大)と、全員が世界大会初出場というオーダーに。38秒78で4着と力を尽くしたが、2走、3走のバトンパスが乱れてオーバーゾーンと判定され、失格となった。 女子は11年テグ大会以来11年ぶりの出場。1走から青木益未(七十七銀行)、君嶋愛梨沙(土木管理総合)、兒玉芽生(ミズノ)、御家瀬緑(住友電工)のオーダーで挑み、43秒33の日本新記録をマークした。2011年のセイコーゴールデングランプリ川崎で日本選抜Aが出した記録(43秒39)を11年ぶりに更新。7着ではあったが、昨年の東京五輪に続いての世界大会で、確かな足跡を残した。 女子35㎞競歩は世界大会初出場の園田世玲奈(NTN)が、自身の持つ日本最高記録(2時間45分48秒)を上回る2時間45分09秒で9位。残り400mまでは8位だったが、あと一歩で入賞を逃した。男子棒高跳は今大会の日本勢最多5大会連続出場の山本聖途(トヨタ自動車)が5m30と5m50を一発でクリアし、5m65も2回目で成功。初出場ながら6位に入賞した13年モスクワ大会以来の決勝進出に迫ったが、続く5m75が超えられずに予選敗退となった。 ■8日目優勝者一覧 【男子】 400m マイケル・ノーマン(米国) 44秒30 【女子】 400m ショーナ・ミラー・ウイボ(バハマ) 49秒11 400mH シドニー・マクローリン(米国) 50秒68=世界新 35km競歩 キンバリー・ガルシア・レオン(ペルー) 2時間39分16秒 やり投 ケルセイ・リー・バーバー(豪州) 66m91

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