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【展望】2022年最初の「駅伝日本一」は?富士通、旭化成、トヨタ、Hondaが大激戦の予感/ニューイヤー駅伝


連覇を狙う富士通。写真は前回大会の5区・塩尻和也(左)から6区・鈴木健吾への中継

新年の幕開けを告げる第66回全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝inぐんま)は2022年1月1日、前橋市の群馬県庁前をスタート、群馬県内を周回する7区間100kmのコースに、各地域予選を突破した37チームが出場して開催される。

「3強対決」に注目が集まった前回は、その前評判通りに4連覇中の旭化成、5年ぶりの王座奪還を狙ったトヨタ自動車、東日本予選を制して勢いに乗る富士通が激戦を展開。中盤で抜け出した富士通が12年ぶり3度目の優勝、2位がトヨタ自動車、3位が旭化成と、V候補の力と力のぶつかり合いに沸いた。

今回もその「3強」の総合力が充実しているのは変わらない。ただ、そこに今年のトラック、ロードで存在感を高めてきたHondaが初優勝へ意気上がる。いずれも、夏の東京五輪で日本代表として世界と戦った選手たちを擁しており、オリンピアン同士の直接対決の行方が、チームの結果を左右することになるだろう。


6年ぶり優勝を目指すトヨタ自動車(写真は前回5区の服部勇馬)

3強は五輪代表、日本記録保持者らずらり

その中で、総合力で一歩リードするのは連覇を狙う富士通か。東京五輪にマラソンの中村匠吾、5000mの松枝博輝、坂東悠太の3名を送り出し、マラソン日本記録保持者・鈴木健吾、2016年リオ五輪3000m障害代表・塩尻和也を擁する布陣は壮観だ。

前回は1区・松枝の区間賞で先手を取り、2区でいったん下げた順位を3区・坂東で挽回。最長22.4kmの4区・中村がエース対決を制してトップに立つと、5区・塩尻、6区・鈴木で独走態勢を築く盤石のレース運びを見せた。

11月の東日本予選では、酷暑のマラソンを経た中村と、10月にシカゴ・マラソンを走った鈴木を外しても、Hondaを8秒差で下して2連覇を達成。選手層の厚さも示し、2年連続「駅伝日本一」に向けて弾みをつけた。

富士通のポイントは、毎年課題となるインターナショナル区間の2区をどうしのぐかと、4区か。中村が前回のような走りをできる状態であれば、その再現は十分にあり得る。

ここ数年、常に優勝争いを繰り広げてきたトヨタ自動車と旭化成も、トヨタ自動車はマラソン代表・服部勇馬、旭化成は10000m代表・相澤晃を擁し、王座奪回に燃えている。

7年連続3位以内と抜群の安定感を誇るトヨタ自動車だが、優勝は15年、16年を連覇して以降は遠ざかっている。今年も、11月の中部予選で世界大会のトラックで4度の入賞実績を誇るビダン・カロキが臀部を痛めて失速。トヨタ紡織に8連覇を阻止された。また、五輪で熱中症になった服部も、状態をじっくりと見極めながら調整中と、不安要素は残る。

ただ、早大卒の2年目・太田智樹が新戦力として台頭。11月の八王子ロングディスタンス10000mで27分33秒13(日本歴代7位)、ハーフマラソンで1時間1分39秒、5000mも13分35秒70と各種目で自己記録を短縮して、主要区間を担える存在へと急成長を遂げた。2年連続3区で、初マラソン挑戦を目指す西山雄介を含めて、3~5区が機能すれば、6年ぶりの頂点が見えてくる。


連覇ストップの雪辱を期す旭化成(写真は九州実業団駅伝1区の相澤晃)

旭化成はカネボウとともに最多59回目の出場。5連覇を逃して再スタートのレースは、ルーキーだった前回は膝に違和感が出て出場を直前に回避した相澤が、満を持して初の上州路に登場してチームを牽引する。オレゴン世界選手権の参加標準記録(27分28秒00)を狙った八王子ロングディスタンス10000mは27分58秒35にとどまったが、駅伝を見据えて準備中だ。

その八王子で鎧坂哲哉が27分41秒78、茂木圭次郞が自己新の27分44秒17と好走。前々回に、6区でトヨタ自動車を突き放して4連覇の立役者となった小野知大も、一時の低迷から復調してきた。市田孝や村山謙太、大六野秀畝ら、連覇を牽引してきたメンバーも健在だ。

前回は区間賞ゼロと、各区間で一歩攻めきれない面があったが、最多25回目の優勝を誇る名門としては、今回は譲れないレースとなるだろう。


伊藤達彦(写真は東日本実業団1区)ら若手の台頭で勢いに乗るHonda

伊藤達彦が牽引するHondaが追う

この「3強」に勝るとも劣らない戦力を有するのがHondaだ。これまで、マラソン元日本記録保持者の設楽悠太が引っ張ってきたが、東京五輪には10000mの伊藤達彦、3000m障害の青木涼真が出場し、マラソンで日本歴代5位の2時間6分26秒を持つ土方英和、全日本実業団対抗選手権10000m日本人トップの小山直城ら、入社3年以内の若手が次々と躍動している。

12月の福岡国際マラソンを20kmで途中棄権した設楽の状態は気になるところだが、中堅、ベテラン組との歯車が噛み合えば、1971年創部以来初の優勝が視野に入る。

そのなかでカギとなるのは、やはり4区に入るであろう伊藤の存在。五輪こそ22位にとどまったが、初優勝した5月の日本選手権、八王子ロングディスタンスと、10000mでいずれも27分30秒台と抜群の安定感を見せる。前回はレース中に疲労骨折するアクシデントがあったが、その雪辱への強い気持ちを持ち、持ち前のガッツある走りがチームを勇気づけそうだ。

さらに注目は、前回4位の日立物流と、2年ぶりの関西王者に輝いたSGホールディングスだろう。

前々回の21位から大きくジャンプアップした日立物流は、前回アンカーで3人抜きを演じた服部翔大が故障でメンバーから外れたが、東日本では優勝した富士通と13秒差、2位のHondaには5秒差の3位。八王子ロングディスタンス10000mでは、牟田祐樹がチーム日本人新となる27分56秒25をマークするなど、さらに力をつけてきた印象だ。

成長著しいのがSGホールディングス。2018~19年は30位台、20年は22位だったが、前回は10位まで盛り返した。選手兼アドバイザーとして前回4区区間賞と引っ張る佐藤悠基を中心に、学生駅伝で名を馳せた選手たちが多数在籍。さらに、1500mで2度日本選手権を制したスピードランナー・戸田雅稀も新加入し、穴のない布陣が整う。

佐川急便時代の2000年(8位)以来の入賞はもちろん、過去最高の7位(1996年)も十分視野に入る。関西勢としても入賞すれば12年ぶりだ。

このほか、2年連続入賞中のJR東日本、マラソンで2時間6分台を持つ高久龍と小椋裕介が牽引するヤクルト、昨年の福岡国際マラソン王者・吉田祐也を擁するGMOインターネットグループ、エース・井上大仁が軸となる前回6位の三菱重工、細谷恭平や田村友佑らホープがそろう黒崎播磨などが上位候補に挙がる。

また、住友電工は前回3区で18人抜きを見せた田村和希がエントリーから外れたが、米国を拠点にする5000m日本選手権覇者の遠藤日向が3年ぶりに出場の見込み。中部王者のトヨタ紡織、中国を初めて制した中電工なども含め、入賞ラインは例年以上の激戦となりそうだ。

初出場はなく、大阪府警と武田薬品が6年ぶりに、SUBARU、小森コーポレーション、NTN、西鉄は2年ぶりの上州路復帰を果たした。

今回も前回と同様、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、主催者は沿道での観戦自粛が求めている。だが、レースは1区から目の離せない展開の予感。2022年、最初の「駅伝王者」に輝くのは、果たしてどのチームか。

■「4強」のエントリー選手一覧

●富士通(前回優勝)
田中佳祐
中村匠吾
横手健
潰滝大記
松枝博輝
鈴木健吾
塩尻和也
坂東悠汰
中村大成
浦野雄平
塩澤稀夕
チャールズ・ロキア

●トヨタ自動車(前回2位)
大石港与
藤本拓
田中秀幸
宮脇千博
服部勇馬
西山雄介
堀尾謙介
青木祐人
太田智樹
佐藤敏也
西山和弥
ビダン・カロキ

●旭化成(前回3位)
鎧坂哲哉
市田孝
大六野秀畝
茂木圭次郎
相澤晃
小野知大
ベヌエル・モゲニ
村山謙太
齋藤椋
荻野太成
安藤大樹
今井崇人

●Honda(前回5位)
設楽悠太
田口雅也
松村優樹
木村 慎
山中秀仁
小山直城
中山 顕
青木涼真
伊藤達彦
土方英和
ジャクソン・カベサ
川瀬 翔矢

文/小川雅生

●第66回全日本実業団対抗駅伝
2022年1月1日 午前9時15分スタート
群馬県庁発着 7区間100.0km
TBS系列28局生中継
大会HP

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