HOME 特集

2020.09.30

【展望】100m桐生VSケンブリッジ 至極の最速決定戦/日本選手権展望
【展望】100m桐生VSケンブリッジ 至極の最速決定戦/日本選手権展望


 10月1日から3日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催される日本選手権。メインイベントとなるのが男子100mだ。昨年100m、200mの2種目を2年ぶりに制したサニブラウン・アブデル・ハキームはエントリーせず、山縣亮太(セイコー)は欠場が発表されたものの、桐生祥秀(日本生命)とケンブリッジ飛鳥(Nike)を軸に、今年もハイレベルな争いとなりそうだ。

 今年初めての大きな大会となった8月23日のセイコーゴールデングランプリ東京(以下、GGP/国立競技場)。100mは、およそ1時間半のリカバリーで行われた予選と決勝で、桐生とケンブリッジが2本とも同じようなレースを見せた。10秒14(-0. 2)で優勝した桐生、10秒16で2位のケンブリッジ。予選でも顔を合わせ、桐生が10秒09(+0.7)、ケンブリッジが10秒11と、やはり100分の2秒差でフィニッシュしている。

 ライバル対決・第2ラウンドは、8月29日に福井で行われたAthlete Night Games in FUKUI。ここでもケンブリッジと桐生が好調を維持。GGPと違うのは、予選、決勝ともケンブリッジが先着したことだった。

 予選はケンブリッジが10秒05(+0.9)、桐生は10秒07。ケンブリッジは3年前に出した10秒08の自己記録を更新した。それをさらに縮めたのが、約2時間後の決勝。日本歴代7位タイの10秒03(+1. 0)で突っ走ったケンブリッジが、10秒06の桐生を突き放した。

 昨年のドーハ世界選手権代表の住友電工コンビ・小池祐貴と多田修平もGGPに続いて出場し、小池が10秒19で3位、多田は10秒21で4位。多田は予選のほうが良くて、10秒18(+1.5)。2人とも今季初めて10秒1台に乗せてきた。

 今季は桐生とケンブリッジがややリードしている感がある。昨年の日本選手権は桐生が2位で、ケンブリッジは8位。

 昨年の日本選手権後、桐生を指導する土江寛裕コーチは「サニブラウンはギアが6速まであるのに、桐生は5速。今後はどう6速を作るか」と話していたが、まさしくそこが桐生の追求すべきところになるのだろう。

広告の下にコンテンツが続きます

 今はいつ、どんなレースでも10秒0台で走れる力がついている。総合的な体力アップで、終盤に身体が反ることもなくなった。桐生が9秒98の自己記録を更新して、さらにその上を目指すためには「トップギアが足りない」(土江コーチ)というのが現状で、きれいに走るだけでなく、中盤でもっと暴れることができれば、アベレージをさらに引き上げられる。

 ストレングスコーチについて身体作りをしてきたケンブリッジは「自分がコントロールできる筋力をつけるようにして、思い通り使えるようになった」と話し、スタート時の「低い姿勢からの加速も苦手ではなくなってきた」。自分では「(10秒08を出した)2017年よりも、今のほうが9秒台に近いところにいる気がする」。ついに10秒03まで来た。

 桐生が優勝すれば、東洋大1年だった2014年以来、6年ぶりのこと。それを阻止してケンブリッジが勝てば、4年ぶりになる。

 この2人に割って入るとすれば、小池だろう。初出場した2年前の日本選手権100mが4位、昨年はサニブラウン、桐生に次いで3位。GGPも福井も納得のいくレースではなく、福井では「まだスパイクを履いた走りに身体が慣れていなくて、思いっきり加速できない」と、予選も決勝もスタートで出遅れた。スピードの出力は「まだ6~7割」だそうだ。

 続く翌週の富士北麓では、100mと200mに1本ずつ出場。100mは10秒33(+0.8 /3着)で、「感覚は悪くない。少しずつスパイクの使い方、力の出し方が戻ってきた」と話していた。

 ここまで日本代表経験者を挙げてきたが、もう1人忘れてはいけないのが200mをメインにする飯塚翔太(ミズノ)だ。昨年の日本選手権は、100mで4位に入っている男子短距離界のリーダー。今年は8月初めの静岡県選手権で、10秒13(+2. 0)の自己サード記録をマークしている。2種目で日本選手権に合わせてくるだろう。

 そのほか、決勝進出を狙う存在は、竹田一平(スズキAC)、岩崎浩太郎(ユティック)あたりか。福井で32歳にして初めて10秒2台をマークした草野誓也(Accel)、学生陣では水久保漱至(城西大)や宮本大輔(東洋大)とデーデー・ブルーノ(東海大)の3年生コンビなど、幅広い世代の中で準決勝は激戦となりそうだ。また、GGPで10秒27をマークした栁田大輝(東農大二2群馬)の走りにも注目したい。

日本選手権
男子100mスケジュール
10月1日 予選 15:30~、準決勝 19:30~
10月2日 決勝 20:30~

■100m今季8傑
10.03 1.0 ケンブリッジ飛鳥(Nike) 8.29
10.04 1.4 桐生 祥秀(日本生命) 8. 1
10.13 2.0 飯塚 翔太(ミズノ) 8. 2
10.14 1.8 水久保漱至(城西大4) 9.12
10.18 1.5 多田 修平(住友電工) 8.29
10.19 1.0 小池 祐貴(住友電工) 8.29
10.20 1.8 デーデー・ブルーノ(東海大) 9.12
10.21 0.9 東田 旺洋(茨城陸協) 8.29

※「月刊陸上競技」10月号掲載をベースに加筆、修正したものです。

 10月1日から3日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催される日本選手権。メインイベントとなるのが男子100mだ。昨年100m、200mの2種目を2年ぶりに制したサニブラウン・アブデル・ハキームはエントリーせず、山縣亮太(セイコー)は欠場が発表されたものの、桐生祥秀(日本生命)とケンブリッジ飛鳥(Nike)を軸に、今年もハイレベルな争いとなりそうだ。  今年初めての大きな大会となった8月23日のセイコーゴールデングランプリ東京(以下、GGP/国立競技場)。100mは、およそ1時間半のリカバリーで行われた予選と決勝で、桐生とケンブリッジが2本とも同じようなレースを見せた。10秒14(-0. 2)で優勝した桐生、10秒16で2位のケンブリッジ。予選でも顔を合わせ、桐生が10秒09(+0.7)、ケンブリッジが10秒11と、やはり100分の2秒差でフィニッシュしている。  ライバル対決・第2ラウンドは、8月29日に福井で行われたAthlete Night Games in FUKUI。ここでもケンブリッジと桐生が好調を維持。GGPと違うのは、予選、決勝ともケンブリッジが先着したことだった。  予選はケンブリッジが10秒05(+0.9)、桐生は10秒07。ケンブリッジは3年前に出した10秒08の自己記録を更新した。それをさらに縮めたのが、約2時間後の決勝。日本歴代7位タイの10秒03(+1. 0)で突っ走ったケンブリッジが、10秒06の桐生を突き放した。  昨年のドーハ世界選手権代表の住友電工コンビ・小池祐貴と多田修平もGGPに続いて出場し、小池が10秒19で3位、多田は10秒21で4位。多田は予選のほうが良くて、10秒18(+1.5)。2人とも今季初めて10秒1台に乗せてきた。  今季は桐生とケンブリッジがややリードしている感がある。昨年の日本選手権は桐生が2位で、ケンブリッジは8位。  昨年の日本選手権後、桐生を指導する土江寛裕コーチは「サニブラウンはギアが6速まであるのに、桐生は5速。今後はどう6速を作るか」と話していたが、まさしくそこが桐生の追求すべきところになるのだろう。  今はいつ、どんなレースでも10秒0台で走れる力がついている。総合的な体力アップで、終盤に身体が反ることもなくなった。桐生が9秒98の自己記録を更新して、さらにその上を目指すためには「トップギアが足りない」(土江コーチ)というのが現状で、きれいに走るだけでなく、中盤でもっと暴れることができれば、アベレージをさらに引き上げられる。  ストレングスコーチについて身体作りをしてきたケンブリッジは「自分がコントロールできる筋力をつけるようにして、思い通り使えるようになった」と話し、スタート時の「低い姿勢からの加速も苦手ではなくなってきた」。自分では「(10秒08を出した)2017年よりも、今のほうが9秒台に近いところにいる気がする」。ついに10秒03まで来た。  桐生が優勝すれば、東洋大1年だった2014年以来、6年ぶりのこと。それを阻止してケンブリッジが勝てば、4年ぶりになる。  この2人に割って入るとすれば、小池だろう。初出場した2年前の日本選手権100mが4位、昨年はサニブラウン、桐生に次いで3位。GGPも福井も納得のいくレースではなく、福井では「まだスパイクを履いた走りに身体が慣れていなくて、思いっきり加速できない」と、予選も決勝もスタートで出遅れた。スピードの出力は「まだ6~7割」だそうだ。  続く翌週の富士北麓では、100mと200mに1本ずつ出場。100mは10秒33(+0.8 /3着)で、「感覚は悪くない。少しずつスパイクの使い方、力の出し方が戻ってきた」と話していた。  ここまで日本代表経験者を挙げてきたが、もう1人忘れてはいけないのが200mをメインにする飯塚翔太(ミズノ)だ。昨年の日本選手権は、100mで4位に入っている男子短距離界のリーダー。今年は8月初めの静岡県選手権で、10秒13(+2. 0)の自己サード記録をマークしている。2種目で日本選手権に合わせてくるだろう。  そのほか、決勝進出を狙う存在は、竹田一平(スズキAC)、岩崎浩太郎(ユティック)あたりか。福井で32歳にして初めて10秒2台をマークした草野誓也(Accel)、学生陣では水久保漱至(城西大)や宮本大輔(東洋大)とデーデー・ブルーノ(東海大)の3年生コンビなど、幅広い世代の中で準決勝は激戦となりそうだ。また、GGPで10秒27をマークした栁田大輝(東農大二2群馬)の走りにも注目したい。 日本選手権 男子100mスケジュール 10月1日 予選 15:30~、準決勝 19:30~ 10月2日 決勝 20:30~ ■100m今季8傑 10.03 1.0 ケンブリッジ飛鳥(Nike) 8.29 10.04 1.4 桐生 祥秀(日本生命) 8. 1 10.13 2.0 飯塚 翔太(ミズノ) 8. 2 10.14 1.8 水久保漱至(城西大4) 9.12 10.18 1.5 多田 修平(住友電工) 8.29 10.19 1.0 小池 祐貴(住友電工) 8.29 10.20 1.8 デーデー・ブルーノ(東海大) 9.12 10.21 0.9 東田 旺洋(茨城陸協) 8.29 ※「月刊陸上競技」10月号掲載をベースに加筆、修正したものです。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.01.21

男子ハーフでマンツが59分17秒の北米新!女子もケラティ・フレズギが自身の北米記録更新/ヒューストンマソン

1月19日、米国テキサス州でヒューストンマラソンが開催され、ハーフマラソンでは男子、女子ともに北米記録が樹立された。 男子では、59分17秒で優勝した20歳のA.ゴベナ(エチオピア)と最後まで競り合ったA.マンツ(米国) […]

NEWS 【プレゼント】ハーツ&ハーツクリニックの 「スーパーシール」 ~「レギュラー」と「ベタ貼り」セット/2025年2月号

2025.01.21

【プレゼント】ハーツ&ハーツクリニックの 「スーパーシール」 ~「レギュラー」と「ベタ貼り」セット/2025年2月号

ハーツ&ハーツクリニックのベストセラー商品である独自の「周波数加工®」…「ハーツ加工®」を施した「スーパーシール」。 貼るだけで呼吸が楽になり、ピッチ&ストライドアップをアシストするなど、アスリート間で非常に高 […]

NEWS 青学大の皆渡星七が悪性リンパ腫を公表「がんになっても箱根を目指したい」

2025.01.20

青学大の皆渡星七が悪性リンパ腫を公表「がんになっても箱根を目指したい」

今年の第101回箱根駅伝で連覇を達成した青学大に所属する皆渡星七(3年)が自身のSNSを更新し、昨年11月に「悪性リンパ腫」と診断されたことを公表した。 皆渡は大阪・関大北陽高出身。昨年は箱根駅伝のメンバー16人にも入っ […]

NEWS 【プレゼント】鼻パッドのないスポーツサングラス「AirFly」 クレーマージャパン限定モデル!/2025年2月号

2025.01.20

【プレゼント】鼻パッドのないスポーツサングラス「AirFly」 クレーマージャパン限定モデル!/2025年2月号

眼鏡の聖地・福井県鯖江市で誕生し、より良いパフォーマンスを求めるすべてのアスリート、スポーツを愛する人へ、世界特許取得の鼻パッドのないスポーツサングラスとして人気を博している「AirFly(エアフライ)」。この製品を生み […]

NEWS 棒高跳・諸田実咲が4m25 シュマンスキが男子60mHで7秒41/WAインドアツアー

2025.01.20

棒高跳・諸田実咲が4m25 シュマンスキが男子60mHで7秒41/WAインドアツアー

1月19日、ルクセンブルクで世界陸連(WA)室内ツアー・シルバーのCMCMルクセンブルク室内が開催され、女子棒高跳に日本記録保持者の諸田実咲(アットホーム)が出場し、4m25で6位に入った。 諸田は4m00から跳び始め、 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年2月号 (1月14日発売)

2025年2月号 (1月14日発売)

駅伝総特集!
箱根駅伝
ニューイヤー駅伝
高校駅伝、中学駅伝
富士山女子駅伝

page top