2025.07.13

◇第109回日本選手権・混成競技(7月12、13日/岐阜・岐阜メモリアルセンター長良川競技場)2日目
日本選手権混成競技の2日目が行われ、男子十種競技は右代啓欣(エントリー)が7488点の自己新で初優勝を果たした。
思いが込められた最終種目の1500m。選手紹介の1番上に自分の名前がある。「いつも兄の名前があった。特別な光景でした」。決して得意とは言えないが、果敢に勝負を仕掛けて、5位でしのいだ。ついに“右代”がキングの座に就いた。
「素直にうれしいです。1日目はダメかなと思ったのですが、棒高跳(4m60)で9年ぶりに自己新が跳べてスイッチが入りました」
兄・啓祐(国士舘クラブ)は言わずと知れた日本記録保持者であり、オリンピアンの“キング”。38歳になった今年も5位入賞を果たしている。そんな偉大な兄の背中を追いかけてきた。
「自分で臨んで同じ舞台に立ちました」。兄と比較されることは「仕方ないこと」とわかっていた。だが、どこか「自分の陸上じゃなく、兄の存在があって、認められたいという思いでやっていた」と振り返る。
まだ若手の頃。「人生を懸けて、命を懸けてやっているのか」と兄に聞かれたとき、「何も言えなかった」。兄はまさに、人生を捧げ、世界と戦っていた。
変わるきっかけは4年前。競技成績が残せず、所属先もなくなった。「陸上を辞めなくてはいけない」状況に、初めて自ら動いた。車で日本中を周り、支援者を探し、クラウドファンディングで至近を募って、一念発起して豪州へ。東京高の1年先輩のケンブリッジ飛鳥がよく訪れて「良い」と話していたのがきっかけだった。
片道切符で突撃し、グラウンドに行って「誰か見てくれないか」と直談判。それが、ハードルの五輪メダリストなどを育てたシャロン・ハンナン・コーチだった。そのご主人も跳躍や投てきを指導してくれたことで「身体能力や感覚でごまかしていた」ところから脱却。さらに、帰国してからは各種目の専門コーチを行脚して、「どうすれば跳べる、投げられる」と陸上競技への理解度を高めていった。
今回は「7800点を目指していた」だけに、有力選手不在に「ラッキーだった」。ただ、日本一の重みを誰よりも知る兄はこういった。
「ラッキーとかではない。勝負に勝つのが大事だ。この優勝は大きい」
まだまだ認められた、追いつけたとは思わないが、「今は命を懸けてやってきたと胸を張って言える」。日本一になり、ここからが夢見ている「JAPAN」へのスタートだが、「中学から陸上を続けてきて意味があったと思えた」と右代。紆余曲折を経てたどり着いた日本一を糧に、次のステージへと挑戦していく。
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