HOME 特集

2020.09.30

【展望】スプリントハードル頂上決戦は日本記録に期待/日本選手権展望
【展望】スプリントハードル頂上決戦は日本記録に期待/日本選手権展望

史上初の13秒2台決着に期待

 10月1日から3日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催される日本選手権。男子110mハードルの優勝争いの中心は言わずもがな、13秒2台の自己記録を持つ2人だ。

 昨年、高山峻野(ゼンリン)は13秒25を含め、4回も日本記録を樹立した(タイ記録含む)。強化してきたスピードと、重心を高く保つハードリングがマッチして高次元のパフォーマンスを連発。ドーハ世界選手権では準決勝に進出し、ファイナルまであと一歩に迫った。

広告の下にコンテンツが続きます

一方、18年に出した日本記録(13秒36)を塗り替えられ、悔しいシーズンを過ごしたのが金井大旺(ミズノ)。昨年6月の日本選手権では準決勝で不正スタートにより失格した。世界選手権に出場したものの予選敗退に終わっている。

だが理由は明確で、進化を求めてスピードやパワーが向上したことでハードリングと噛み合わなかったから。競技会再開後の初戦となった8月2日の法大競技会で13秒34の自己新。しっかり修正して今シーズンを迎えた。

 今季の仕上がり具合は金井が上。8月のAthlete Night Gamesで日本歴代2位となる13秒27(+1.4)、全日本実業団予選でも最後は流して13秒38(+1.7、※決勝は大事を取って棄権)と安定している。高山も福井では13秒34をマークしたものの、肩のケガなどの影響もあり「金井君が強いのでついていきたい」と漏らす。

 普段から交流があり、ライバルでもある2人。日本選手権は17年以降、高山・金井・高山とタイトルを分け合ってきたが、互いに〝絶好調〟でぶつかり合っているレースは少ない。日本選手権でそれが実現した時、日本人初の13秒2台決着、さらに13秒1台突入も十分にあり得る。

 本来であれば、2人を追う1番手が泉谷駿介(順大)だが、春先に左脚、8月1日の順大競技会(走幅跳)で右脚を肉離れ。予定していたGGP、福井は見送った。復調すれば2人に食らいつく力があり、本番までにどこまで調子を戻せる
か。

福井では石川周平(富士通)が恩師・谷川聡(現・筑波大監督)の記録に並ぶ13秒39をマークした。他にもスプリントが向上している野本周成(愛媛陸協)が日本歴代8位タイの13秒45と好調。伸び盛りの村竹ラシッド(順大)も注目だ。また、17年ロンドン世界選手権代表で13秒40のベストを持つ増野元太(メイスンワーク)が約2年ぶりにレース復帰。金井が「少し気を緩めると順位が落ちる」と言うほど、まさに多士済々だ。

■男子110mH今季8傑
13.27 1.4 金井 大旺(ミズノ) 8.29
13.34 1.4 高山 峻野(ゼンリン) 8.29
13.39 1.4 石川 周平(富士通) 8.29
13.45 1.4 野本 周成(愛媛陸協) 8.29
13.57 1.5 藤井 亮汰(三重県スポ協) 8.29
13.60 1.4 高橋 佑輔(DAC) 8.29
13.62 1.4 増野 元太(メイスンワークAC) 8.29
13.64 1.4 栗城アンソニー(新潟アルビレックスRC) 8.29

優勝には12秒台が不可欠


 女子100mハードルは引退・出産、ラグビー経験を経て昨シーズン競技復帰を果たし、日本人初の12秒台(97)に突入した寺田明日香(パソナグループ)が軸になるかと思われた。

 だが、それに待ったをかけたのが青木益未(七十七銀行)。Athlete Night Games決勝では、12秒93(+2. 1)と自身の日本記録を追い風参考ながら上回った寺田を抑えた。そのタイムは12秒87。11月末まで対象期間外とはいえ、東京五輪の参加標準記録12秒84も視界に入る快走だった。

 元々はスプリンターでスピードには自信を持つ青木。今年から男子の高山と一緒にトレーニングするようになって技術が格段に向上し、「スピードに合うハードルができるようになってきた」と好調の要因を語る。

 一方、寺田も「世界を目指した時に、もっと目に見えるような変化をしなければ」と話し、強化されたスピードを最大限生かせるような走りを追求していく。

 昨年、ドーハ世界選手権代表で日本選手権6度優勝の木村文子(エディオン)は来年を見据えて出場せず。その次に続くのは、清山ちさと(いちご)。昨年、13秒20をマークすると、7月には13秒13。100mでも11秒84(予選)の自己新と波に乗っている。GGP、福井でも青木と寺田に次ぐ3位で、福井の予選では13秒03(+3.7)だった。

 昨年、13秒1台を連発したのが福部真子(日本建設工業)や、田中佑美(立命大)ら実績のある選手に加え、鈴木美帆(長谷川体育施設)や島野真生(日体大)も好調。2度の世界選手権代表を誇る紫村仁美(東邦銀行)も復調してきた。

寺田が勝てば10年ぶり、青木は2年ぶりの優勝を狙う。勝つためには日本記録更新は必須か。公認での「史上初12秒台決着」が見られるかも知れない。

■100mH今季8傑
13.03 0.3 寺田明日香(パソナグループ) 8.23
13.08 1.7 青木 益未(七十七銀行) 8.29
13.13 2.0 清山ちさと(いちご) 7.18
13.27 0.3 田中 佑美(立命大4) 8.23
13.27 1.7 紫村 仁美(東邦銀行) 8.29
13.30 0.3 鈴木 美帆(長谷川体育施設) 8.23
13.33 0.3 福部 真子(日本建設工業AC) 8.23
13.36 1.7 中島ひとみ(長谷川体育施設) 8.29
13.36 1.3 藤原 未来(住友電工) 9. 6
13.36 0.6 島野 真生(日体大1) 9.13

※「月刊陸上競技」10月号掲載をベースに加筆、修正したものです。

史上初の13秒2台決着に期待

 10月1日から3日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムで開催される日本選手権。男子110mハードルの優勝争いの中心は言わずもがな、13秒2台の自己記録を持つ2人だ。  昨年、高山峻野(ゼンリン)は13秒25を含め、4回も日本記録を樹立した(タイ記録含む)。強化してきたスピードと、重心を高く保つハードリングがマッチして高次元のパフォーマンスを連発。ドーハ世界選手権では準決勝に進出し、ファイナルまであと一歩に迫った。 一方、18年に出した日本記録(13秒36)を塗り替えられ、悔しいシーズンを過ごしたのが金井大旺(ミズノ)。昨年6月の日本選手権では準決勝で不正スタートにより失格した。世界選手権に出場したものの予選敗退に終わっている。 だが理由は明確で、進化を求めてスピードやパワーが向上したことでハードリングと噛み合わなかったから。競技会再開後の初戦となった8月2日の法大競技会で13秒34の自己新。しっかり修正して今シーズンを迎えた。  今季の仕上がり具合は金井が上。8月のAthlete Night Gamesで日本歴代2位となる13秒27(+1.4)、全日本実業団予選でも最後は流して13秒38(+1.7、※決勝は大事を取って棄権)と安定している。高山も福井では13秒34をマークしたものの、肩のケガなどの影響もあり「金井君が強いのでついていきたい」と漏らす。  普段から交流があり、ライバルでもある2人。日本選手権は17年以降、高山・金井・高山とタイトルを分け合ってきたが、互いに〝絶好調〟でぶつかり合っているレースは少ない。日本選手権でそれが実現した時、日本人初の13秒2台決着、さらに13秒1台突入も十分にあり得る。  本来であれば、2人を追う1番手が泉谷駿介(順大)だが、春先に左脚、8月1日の順大競技会(走幅跳)で右脚を肉離れ。予定していたGGP、福井は見送った。復調すれば2人に食らいつく力があり、本番までにどこまで調子を戻せる か。 福井では石川周平(富士通)が恩師・谷川聡(現・筑波大監督)の記録に並ぶ13秒39をマークした。他にもスプリントが向上している野本周成(愛媛陸協)が日本歴代8位タイの13秒45と好調。伸び盛りの村竹ラシッド(順大)も注目だ。また、17年ロンドン世界選手権代表で13秒40のベストを持つ増野元太(メイスンワーク)が約2年ぶりにレース復帰。金井が「少し気を緩めると順位が落ちる」と言うほど、まさに多士済々だ。 ■男子110mH今季8傑 13.27 1.4 金井 大旺(ミズノ) 8.29 13.34 1.4 高山 峻野(ゼンリン) 8.29 13.39 1.4 石川 周平(富士通) 8.29 13.45 1.4 野本 周成(愛媛陸協) 8.29 13.57 1.5 藤井 亮汰(三重県スポ協) 8.29 13.60 1.4 高橋 佑輔(DAC) 8.29 13.62 1.4 増野 元太(メイスンワークAC) 8.29 13.64 1.4 栗城アンソニー(新潟アルビレックスRC) 8.29

優勝には12秒台が不可欠

 女子100mハードルは引退・出産、ラグビー経験を経て昨シーズン競技復帰を果たし、日本人初の12秒台(97)に突入した寺田明日香(パソナグループ)が軸になるかと思われた。  だが、それに待ったをかけたのが青木益未(七十七銀行)。Athlete Night Games決勝では、12秒93(+2. 1)と自身の日本記録を追い風参考ながら上回った寺田を抑えた。そのタイムは12秒87。11月末まで対象期間外とはいえ、東京五輪の参加標準記録12秒84も視界に入る快走だった。  元々はスプリンターでスピードには自信を持つ青木。今年から男子の高山と一緒にトレーニングするようになって技術が格段に向上し、「スピードに合うハードルができるようになってきた」と好調の要因を語る。  一方、寺田も「世界を目指した時に、もっと目に見えるような変化をしなければ」と話し、強化されたスピードを最大限生かせるような走りを追求していく。  昨年、ドーハ世界選手権代表で日本選手権6度優勝の木村文子(エディオン)は来年を見据えて出場せず。その次に続くのは、清山ちさと(いちご)。昨年、13秒20をマークすると、7月には13秒13。100mでも11秒84(予選)の自己新と波に乗っている。GGP、福井でも青木と寺田に次ぐ3位で、福井の予選では13秒03(+3.7)だった。  昨年、13秒1台を連発したのが福部真子(日本建設工業)や、田中佑美(立命大)ら実績のある選手に加え、鈴木美帆(長谷川体育施設)や島野真生(日体大)も好調。2度の世界選手権代表を誇る紫村仁美(東邦銀行)も復調してきた。 寺田が勝てば10年ぶり、青木は2年ぶりの優勝を狙う。勝つためには日本記録更新は必須か。公認での「史上初12秒台決着」が見られるかも知れない。 ■100mH今季8傑 13.03 0.3 寺田明日香(パソナグループ) 8.23 13.08 1.7 青木 益未(七十七銀行) 8.29 13.13 2.0 清山ちさと(いちご) 7.18 13.27 0.3 田中 佑美(立命大4) 8.23 13.27 1.7 紫村 仁美(東邦銀行) 8.29 13.30 0.3 鈴木 美帆(長谷川体育施設) 8.23 13.33 0.3 福部 真子(日本建設工業AC) 8.23 13.36 1.7 中島ひとみ(長谷川体育施設) 8.29 13.36 1.3 藤原 未来(住友電工) 9. 6 13.36 0.6 島野 真生(日体大1) 9.13 ※「月刊陸上競技」10月号掲載をベースに加筆、修正したものです。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.11.26

【学生長距離Close-upインタビュー】全日本大学駅伝1区区間賞の志學館大・中村晃斗 「結果にこだわっていきたい」

学生長距離Close-upインタビュー 中村 晃斗 Nakamura Akito 志學館大3年 「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。54回目は、志 […]

NEWS 熊本信愛女学院高の元監督・山口和也さん死去 五輪1万m7位・川上優子さん、世界陸上マラソン4位・飛瀬貴子さんらを指導

2025.11.26

熊本信愛女学院高の元監督・山口和也さん死去 五輪1万m7位・川上優子さん、世界陸上マラソン4位・飛瀬貴子さんらを指導

熊本信愛女学院高(熊本)の元陸上競技部監督で、長年多くのランナーを育てた山口和也さんが11月23日、病気のため亡くなった。71歳。 1980年に同校に赴任した山口さん。当時の日本女子長距離は黎明期であったが、山口さんは高 […]

NEWS 世界クロカンU20代表選考会エントリー確定 インターハイ&国スポV新妻遼己や本田桜二郎ら 女子は細見芽生、真柴愛里

2025.11.26

世界クロカンU20代表選考会エントリー確定 インターハイ&国スポV新妻遼己や本田桜二郎ら 女子は細見芽生、真柴愛里

日本陸連は11月26日、第46回世界クロスカントリー選手権(2026年1月10日/米国・タラハシー)の男女U20日本代表代表選考会(11月30日/京都)の確定エントリーリストを発表した。 男子は当初エントリーしていた24 […]

NEWS パリ五輪4×400mR金のウィルソンが地元のメリーランド大に進学決定

2025.11.26

パリ五輪4×400mR金のウィルソンが地元のメリーランド大に進学決定

男子短距離のQ.ウィルソン(米国)がメリーランド大へ入学することが発表された。 ウィルソンは2008年生まれの17歳。23年ごろから400mで頭角を現し、同年の米国室内選手権で優勝するなど注目を浴びた。今年6月には400 […]

NEWS 男子3000m障害・ジャガーが現役引退 リオ五輪銀、ロンドン世界陸上銅など活躍 「別れの時が来た」

2025.11.26

男子3000m障害・ジャガーが現役引退 リオ五輪銀、ロンドン世界陸上銅など活躍 「別れの時が来た」

2016年リオ五輪の男子3000m障害で銀メダルに輝いたE.ジャガー(米国)が引退を表明した。 ジャガーは35歳。ジュニア時代には中長距離でU20世界選手権1500m7位などの成績を収め、シニアでは3000m障害で世界的 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top