2020.09.30
駒大は7区の糟谷悟(左)が前を行く東海大を抜き去り、4連覇へ突き進んだ
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は駒大が7区での逆転劇で史上5校目となる4連覇を飾った第81回大会(2005年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
東海大が初の往路優勝。順大・今井が衝撃の11人抜き
11月の全日本大学駅伝を制し、4連覇へ向けて順風満帆だった駒大に対し、出雲駅伝優勝、全日本2位と1974年以来となる箱根制覇へ戦力が整っていた日大、そしてスーパールーキーの上野裕一郎を加えて出雲・全日本で3位につけた中大による優勝争いが予想された第81回大会。
大会前のコース再計測によって総距離217.9kmと従来よりも1.5kmも長くなったが、コース自体の変更はなかった。
予選会を経て、明大が14年ぶりに、拓大と専大が2年ぶりに本戦復帰を果たした一方で、前回出場校では東農大、国士大、関東学院大が予選会敗退を喫した。
1区では前回区間賞の日体大・鷲見知彦(2年)がレースを引っ張り、中大の上野裕一郎(1年)が何度も仕掛ける展開へ。上野は8km付近で早くも遅れだし、先頭集団は終盤にある六郷橋の下りで亜細亜大・木許史博(4年)がスパートし、そこにただ一人反応できた東海大・丸山敬三(3年)が区間賞を獲得。木許は8秒差で区間2位、鷲見がさらに6秒差で3位と続き、中大は先頭から3分31秒差の19位スタートと苦しい幕開けとなった。
2区では先頭でタスキをもらった東海大のルーキー・伊達秀晃がすばらしい走りを見せた。この区間における1年生最高タイムである1時間8分04秒(区間2位)で走り抜け、後続との差を突き放した。区間賞は14位から12人抜きで2位に浮上した山梨学大のオンベチェ・モカンバ(4年)。1区で上位につけた亜細亜大と日体大が3位、4位で続き、2度目の出場となった城西大がこの時点で5位と健闘した。
東海大は3区の北沢賢悟(4年)、4区の一井裕介(3年)も区間3位と好走し、首位を独走。この間、3区のディラング・サイモン(1年)が区間賞を獲得した日大が2位につけ、駒大が徐々に順位を上げて3位まで押し上げた。
5区では駒大の村上和春(3年)が日大を抜き、先頭の東海大・越川秀宣(4年)の背中を射程圏内に捕らえる。しかし、越川はそこから粘りの走りを見せ、チーム初となる往路優勝を手にした。
往路2位は30秒差で駒大が入り、3位は日大。4位には15位から衝撃の11人抜きを見せた順大・今井正人(2年)が入り、史上初の“1時間10分切り”となる1時間09分12秒という破格の区間記録を打ち立てた。
5区で衝撃の走りを見せた順大の今井正人
6区では中大の野村俊輔(4年)が3年連続の区間賞を獲得。先頭争いは駒大がじわじわと東海大との差を詰め、その差を14秒とした。
そして7区では駒大の糟谷悟(3年)が東海大・角田貴則(4年)を捕らえ、ついに逆転。糟谷は区間賞の活躍で一気に1分06秒もの差をつけた。
駒大は8区の藤井輝(1年)が区間14位と苦戦して27秒差まで詰め寄られたが、9区の塩川雄也(4年)が区間記録を22秒上回る圧巻の走りで突き放し、勝負あり。10区の柴田尚輝(4年)が悠々と逃げ切り、圧巻の4連勝を成し遂げた。4区で区間賞を獲得した主将の田中宏樹(4年)と塩川は史上12人目、13人目となる“4連覇戦士”となった。
後続は接戦となり、最終10区で山田紘之(4年)が区間記録を49秒も更新する爆走を見せた日体大が16年ぶりの好成績となる2位。日大が3位を確保、1区19位から猛烈な追い上げを見せた中大が4位に入った。
シード権争いは神奈川大と早大の争いとなり、早大の高岡弘(3年)が従来の区間記録を14秒上回る快走で追い上げたが、神奈川大も主将の内野雅貴(4年)が区間5位と粘りの走りでシード権を死守し、10位でフィニッシュ。早大はわずか22秒差の11位と涙をのんだ。
前年から最優秀選手に与えられることになった金栗四三杯は5区で11人抜きの区間新記録を樹立した今井が受賞。のちに「山の神」と呼ばれる男が初めて脚光を浴びる大会となった。
<人物Close-up>
糟谷 悟(駒大3年)
愛知・中京大中京高から駒大へ進学し、1年目から駅伝メンバーとして活躍。箱根駅伝ではチームの4連覇に大きく貢献し、1年時は7区区間2位、2年目は10区、3年目は7区で区間賞を獲得した。特に2005年大会では7区で前を行く東海大を抜き去り、逆転優勝の立役者となったことから大きな注目を集めた。大学卒業後はトヨタ紡織に入社し、11年のびわ湖毎日マラソンでは2時間11分17秒の自己ベストで8位に入っている。13年には悪性リンパ腫が発覚したが、闘病生活を乗り越えて16年には全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の最長4区で出場。昨年12月の防府読売マラソンでは36歳にして日本人6番手の2時間14分44秒をマークしている。現在はチームの選手兼任マネージャーを務める。
<総合成績>
1位 駒澤大学 11.03.48(往路1位、復路1位)
2位 日本体育大学 11.07.23(往路2位、復路4位)
3位 日本大学 11.07.48(往路3位、復路6位)
4位 中央大学 11.07.49(往路5位、復路8位)
5位 順天堂大学 11.08.47(往路12位、復路2位)
6位 東海大学 11.10.32(往路6位、復路7位)
7位 亜細亜大学 11.11.40(往路13位、復路3位)
8位 法政大学 11.13.53(往路7位、復路5位)
9位 中央学院大学 11.14.35(往路4位、復路10位)
10位 神奈川大学 11.14.49(往路9位、復路9位)
========シード権ライン=========
11位 早稲田大学 11.15.11(往路8位、復路13位)
12位 大東文化大学 11.17.23(往路11位、復路15位)
13位 東洋大学 11.18.45(往路16位、復路12位)
14位 山梨学院大学 11.20.58(往路10位、復路17位)
15位 城西大学 11.22.49(往路17位、復路11位)
16位 帝京大学 11.25.03(往路15位、復路16位)
17位 専修大学 11.25.14(往路14位、復路18位)
18位 明治大学 11.28.23(往路19位、復路14位)
19位 拓殖大学 11.35.08(往路18位、復路19位)
OP 関東学連選抜 11.26.38
<区間賞>
1区(21.4km)丸山敬三(東海大3) 1.02.52
2区(23.2km)O.モカンバ(山梨学大4)1.07.47
3区(21.5km)D.サイモン(日 大1) 1.03.23
4区(21.0km)田中宏樹(駒 大4) 1.02.05
5区(20.9km)今井正人(順 大2) 1.09.12=区間新
6区(20.8km)野村俊輔(中 大4) 1.00.01
7区(21.3km)糟谷 悟(駒 大3) 1.04.07
8区(21.5km)奥田 実(中 大4) 1.04.26
9区(23.2km)塩川雄也(駒 大4) 1.08.38=区間新
10区(23.1km)山田紘之(日体大4) 1.09.05=区間新
東海大が初の往路優勝。順大・今井が衝撃の11人抜き
11月の全日本大学駅伝を制し、4連覇へ向けて順風満帆だった駒大に対し、出雲駅伝優勝、全日本2位と1974年以来となる箱根制覇へ戦力が整っていた日大、そしてスーパールーキーの上野裕一郎を加えて出雲・全日本で3位につけた中大による優勝争いが予想された第81回大会。 大会前のコース再計測によって総距離217.9kmと従来よりも1.5kmも長くなったが、コース自体の変更はなかった。 予選会を経て、明大が14年ぶりに、拓大と専大が2年ぶりに本戦復帰を果たした一方で、前回出場校では東農大、国士大、関東学院大が予選会敗退を喫した。 1区では前回区間賞の日体大・鷲見知彦(2年)がレースを引っ張り、中大の上野裕一郎(1年)が何度も仕掛ける展開へ。上野は8km付近で早くも遅れだし、先頭集団は終盤にある六郷橋の下りで亜細亜大・木許史博(4年)がスパートし、そこにただ一人反応できた東海大・丸山敬三(3年)が区間賞を獲得。木許は8秒差で区間2位、鷲見がさらに6秒差で3位と続き、中大は先頭から3分31秒差の19位スタートと苦しい幕開けとなった。 2区では先頭でタスキをもらった東海大のルーキー・伊達秀晃がすばらしい走りを見せた。この区間における1年生最高タイムである1時間8分04秒(区間2位)で走り抜け、後続との差を突き放した。区間賞は14位から12人抜きで2位に浮上した山梨学大のオンベチェ・モカンバ(4年)。1区で上位につけた亜細亜大と日体大が3位、4位で続き、2度目の出場となった城西大がこの時点で5位と健闘した。 東海大は3区の北沢賢悟(4年)、4区の一井裕介(3年)も区間3位と好走し、首位を独走。この間、3区のディラング・サイモン(1年)が区間賞を獲得した日大が2位につけ、駒大が徐々に順位を上げて3位まで押し上げた。 5区では駒大の村上和春(3年)が日大を抜き、先頭の東海大・越川秀宣(4年)の背中を射程圏内に捕らえる。しかし、越川はそこから粘りの走りを見せ、チーム初となる往路優勝を手にした。 往路2位は30秒差で駒大が入り、3位は日大。4位には15位から衝撃の11人抜きを見せた順大・今井正人(2年)が入り、史上初の“1時間10分切り”となる1時間09分12秒という破格の区間記録を打ち立てた。 5区で衝撃の走りを見せた順大の今井正人 6区では中大の野村俊輔(4年)が3年連続の区間賞を獲得。先頭争いは駒大がじわじわと東海大との差を詰め、その差を14秒とした。 そして7区では駒大の糟谷悟(3年)が東海大・角田貴則(4年)を捕らえ、ついに逆転。糟谷は区間賞の活躍で一気に1分06秒もの差をつけた。 駒大は8区の藤井輝(1年)が区間14位と苦戦して27秒差まで詰め寄られたが、9区の塩川雄也(4年)が区間記録を22秒上回る圧巻の走りで突き放し、勝負あり。10区の柴田尚輝(4年)が悠々と逃げ切り、圧巻の4連勝を成し遂げた。4区で区間賞を獲得した主将の田中宏樹(4年)と塩川は史上12人目、13人目となる“4連覇戦士”となった。 後続は接戦となり、最終10区で山田紘之(4年)が区間記録を49秒も更新する爆走を見せた日体大が16年ぶりの好成績となる2位。日大が3位を確保、1区19位から猛烈な追い上げを見せた中大が4位に入った。 シード権争いは神奈川大と早大の争いとなり、早大の高岡弘(3年)が従来の区間記録を14秒上回る快走で追い上げたが、神奈川大も主将の内野雅貴(4年)が区間5位と粘りの走りでシード権を死守し、10位でフィニッシュ。早大はわずか22秒差の11位と涙をのんだ。 前年から最優秀選手に与えられることになった金栗四三杯は5区で11人抜きの区間新記録を樹立した今井が受賞。のちに「山の神」と呼ばれる男が初めて脚光を浴びる大会となった。 <人物Close-up> 糟谷 悟(駒大3年) 愛知・中京大中京高から駒大へ進学し、1年目から駅伝メンバーとして活躍。箱根駅伝ではチームの4連覇に大きく貢献し、1年時は7区区間2位、2年目は10区、3年目は7区で区間賞を獲得した。特に2005年大会では7区で前を行く東海大を抜き去り、逆転優勝の立役者となったことから大きな注目を集めた。大学卒業後はトヨタ紡織に入社し、11年のびわ湖毎日マラソンでは2時間11分17秒の自己ベストで8位に入っている。13年には悪性リンパ腫が発覚したが、闘病生活を乗り越えて16年には全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)の最長4区で出場。昨年12月の防府読売マラソンでは36歳にして日本人6番手の2時間14分44秒をマークしている。現在はチームの選手兼任マネージャーを務める。 <総合成績> 1位 駒澤大学 11.03.48(往路1位、復路1位) 2位 日本体育大学 11.07.23(往路2位、復路4位) 3位 日本大学 11.07.48(往路3位、復路6位) 4位 中央大学 11.07.49(往路5位、復路8位) 5位 順天堂大学 11.08.47(往路12位、復路2位) 6位 東海大学 11.10.32(往路6位、復路7位) 7位 亜細亜大学 11.11.40(往路13位、復路3位) 8位 法政大学 11.13.53(往路7位、復路5位) 9位 中央学院大学 11.14.35(往路4位、復路10位) 10位 神奈川大学 11.14.49(往路9位、復路9位) ========シード権ライン========= 11位 早稲田大学 11.15.11(往路8位、復路13位) 12位 大東文化大学 11.17.23(往路11位、復路15位) 13位 東洋大学 11.18.45(往路16位、復路12位) 14位 山梨学院大学 11.20.58(往路10位、復路17位) 15位 城西大学 11.22.49(往路17位、復路11位) 16位 帝京大学 11.25.03(往路15位、復路16位) 17位 専修大学 11.25.14(往路14位、復路18位) 18位 明治大学 11.28.23(往路19位、復路14位) 19位 拓殖大学 11.35.08(往路18位、復路19位) OP 関東学連選抜 11.26.38 <区間賞> 1区(21.4km)丸山敬三(東海大3) 1.02.52 2区(23.2km)O.モカンバ(山梨学大4)1.07.47 3区(21.5km)D.サイモン(日 大1) 1.03.23 4区(21.0km)田中宏樹(駒 大4) 1.02.05 5区(20.9km)今井正人(順 大2) 1.09.12=区間新 6区(20.8km)野村俊輔(中 大4) 1.00.01 7区(21.3km)糟谷 悟(駒 大3) 1.04.07 8区(21.5km)奥田 実(中 大4) 1.04.26 9区(23.2km)塩川雄也(駒 大4) 1.08.38=区間新 10区(23.1km)山田紘之(日体大4) 1.09.05=区間新
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