2024.01.29
◇第43回大阪国際女子マラソン(1月28日/大阪・ヤンマースタジアム長居発着42.195km)
パリ五輪代表選考のマラソングランドチャンピオン(MGC)ファイナルチャレンジを兼ねた大阪国際女子マラソンが行われ、前田穂南(天満屋)が19年ぶり日本新記録となる2時間18分59秒で2位に入った。
待ちわびた瞬間が19年の時を超えてようやく訪れた。21年東京五輪代表の前田が2005年に野口みずきが出した従来の日本記録(2時間19分12秒)を13秒短縮。MGCファイナルチャレンジ設定記録の2時間21分41秒を大幅に上回った。
東京五輪では力を出し切れず33位に終わった前田。その後、故障を繰り返すなど苦しんだ時期もあった。「また、もう一度しっかりマラソンを走ることができて、走るのはやっぱり楽しいなと思いました」と充実の表情を見せた。
兵庫・尼崎市出身の27歳。プロ野球・阪神の岡田彰布監督のように、レース前まで今大会の目標を「アレ」と表現し、明かさなかったが、狙っていたのは日本記録更新。見事に達成し、「すごくうれしい」と会見では笑顔が絶えなかった。
新谷仁美(積水化学)らペースメーカーが先導するかたちで、設定の1km3分20秒よりもやや速いペースで進む。5kmを16分32秒、10kmを32分59秒で通過。5km16分35秒のペースを保ち、先頭集団は前田、松田瑞生(ダイハツ)、佐藤早也伽(積水化学)ら有力選手が控えていた。
そんななか、前田が大胆なレースを見せる。中間点を1時間9分46秒で通過した直後、一気にギアチェンジ。「15kmまでは我慢して、それ以降は身体が動けば行こうと思っていました」。無理にではなく自然に前へ。ライバルだけでなく、ペースメーカーをも置き去りにした。攻めの走りで20kmからの5kmを16分18秒で駆け抜けると、25kmから30kmまでは16分10秒と、さらにペースアップする。
独走するかたちとなり、不安がなかったわけではない。途中、「飛び出したことを少し後悔した」と漏らすも、「沿道の応援が力になりました」と前田。31km過ぎに優勝したウォルケネシュ・エデサ(エチオピア)にかわされてからも粘る。30km以降は向かい風や突然の雨というあいにくのコンディションだったが、大きく崩れることはなかった。
昨年10月のMGCでは練習はできていたものの「自分の力を出し切ることができず」7位。「その後は、気持ちを切り替え、30kmの変化走や40km走など距離を走り込み、しっかり継続して練習を積んできたので、自信を持ってスタートラインに立つことができました」と振り返る。
これまでの日本女子では4人が2時間20分未満の記録を出しているが、いずれも男女混合レースで出されたもの。しかし、前田は女子の単独レースでアジア系初の2時間18分台をマーク。さらに、女子単独レースでも大体30kmまでペースメーカーが先導していくケースが多いが、前田は中盤から逃げ切りを図った。それだけに日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダーをはじめ、関係者たちはその力走を称える。
言わば、常識を覆す走りで前田は19年閉じていた歴史の扉を開いた。3月10日に行われる名古屋ウィメンズで、前田の記録を上回る選手が出なければ、東京に続く2大会連続での五輪代表が内定する。「まだまだ記録も更新していきたいですし、世界でしっかり勝負できるよう、さらに力をつけていきたい」とさらなる飛躍を誓った。
なお、松田は、前田の飛び出しをきっかけに集団から脱落。それでも、最後まであきらめず、2時間23分07秒で3位。また、佐藤は29km過ぎに3位集団から後退し、2時間24分43秒で5位だった。
文/花木 雫
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2025.05.20
トーエネックの河合拓巳が引退 ニューイヤー駅伝に2度出場「充実した競技生活を送ることができました」
5月20日、トーエネックは所属する河合拓巳が退部したことを発表した。 河合は26歳。愛知・豊橋工高から本格的に走りはじめ、3年時には県高校駅伝1区3位の実績を残す。大学は駿河台大に進み、1年目から箱根駅伝の予選会のメンバ […]
2025.05.20
サニブラウンが渡米 世界陸上まで4ヵ月切り「危機感足りない」日本選手権に向け転戦予定
男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が5月20日、拠点とする米国へと向かうにあたり取材に応じた。 18日のセイコーゴールデングランプリについては「左ハムストリングスの付け根の張りがあった」ことで棄権。「ウ […]
2025.05.20
【プレゼント】クレーマージャパンの 「2025サマーウェア(ボタンダウンポロシャツ)」/2025年6月号
クレーマージャパンは、これから迎える本格的な夏シーズンに向けて「2025サマーウェア」のボタンダウンポロシャツおよび半袖Tシャツの受注生産をオンラインショップでスタートした。 ボタンダウンポロシャツは落ち着いたカラーリン […]
2025.05.19
インターハイ都府県大会 明日は鹿児島 週末は各地で一挙開催 愛知、大阪、福岡はハイレベルな戦いの予感
広島インターハイ(7月25日~29日/広島・ホットスタッフフィールド広島=広島広域公園陸上競技場)を目指し、各地で都府県大会が行われている。 ここまで関東8都県と岐阜が終了し、今週以降はさらに大会が集中する。この1週間の […]
2025.05.19
【男子110mH】木村立樹(桜浜中2) 14秒29=中2歴代5位
5月17日に三重県伊勢市の三重交通Gスポーツの杜伊勢・陸上競技場で行われた第2回南勢記録会の中学男子110mハードルで、中学2年生の木村立樹(桜浜中)が中2歴代5位となる14秒29(+1.8)をマークした。 木村は昨年9 […]
Latest Issue
最新号

2025年6月号 (5月14日発売)
Road to TOKYO
Diamond League JAPANの挑戦
村竹ラシッド、三浦龍司が初戦で世界陸上内定
Road to EKIDEN Season 25-26
学生長距離最新戦力分析