2023.08.30
亡き恩師が勧めたヨンパー
――陸上を始めたきっかけを教えてください。
下田 小さい頃から走ることやかけっこが好きで、小学校の部活動が始まったとき、陸上をやってみようと始めました。4年生の時ですね。
――ほかのスポーツ歴はありますか。
下田 小学校ではサッカー部にも入っていました。中学校に入って部活を1つに絞ることになって、陸上もサッカーもすごく好きだったので迷いましたが、小学6年生の時にハードルで成績を残せたし、団体競技が少し苦手だったので、陸上部に入ることに決めました。中学では110mハードルが専門でした。
――中学時代の実績は。
下田 3年生の時の全国中学生大会(全中の代替大会)110mハードルに出ましたが、予選でハードルを手で倒してしまい、失格になりました。その年の愛知県通信大会で急に14秒18が出て、大会記録を更新したことがうれしかったです。
――豊川高に進学した理由を教えてください。
下田 中3の時に克哉先生から「高校で強くなれる」と勧誘していただいたことや施設など練習環境が良いと感じたからです。本当に強くなることができたので、先生のお陰でここまで来ることができたと思っています。
――高校入学当初の目標は。
下田 最初は110mハードルでがんばろうと思っていましたが、ハードルが高くなります。自分は身体がとても硬いので苦労していたら、5月か6月に克哉先生から「ヨンパーはどうだ?」と勧められて、400mハードルに転向しました。
――転向を勧められたとき、どう思いましたか。
下田 当時はスタミナもなかったので、トラック1周はきついんじゃないかと思いました。それでも練習は続けて、克哉先生が亡くなった1ヵ月後の東三河新人で54秒9が出ました。これはがんばればもっと良いタイムが出るかもしれないと思って、気持ちもヨンパーに完全に切り替わりました。
――2年生の時はインターハイに出場し、4×400mリレーで準決勝進出。400mハードルは左ハムストリングスを痛めて欠場しています。
下田 東海大会で自己ベストを2秒以上更新する51秒40を出しましたが脚に違和感があってそれでもマイルリレーを走ったら、肉離れでした。周りが走っているのを見ると焦って、自分もやらないと置いていかれると無理やり走ってしまうこともあったのが良くなかったです。結局、インターハイでは脚の状態も悪くなって、悔しい結果で終わってしまいました。
――2年生のシーズンが終わり、冬季はどんな取り組みを行いましたか。
下田 最初の頃はまだ脚を痛めていたので、固定式自転車など脚に負担がかからないトレーニングでスタミナをつけました。脚の状態が徐々には良くなってくると、再び痛めない程度に走り込みを始めました。400mや500mの距離を何本か重ねて走るイメージで、ダッシュはそこまでやっていません。ハムストリングスを痛めやすいので、予防の意味で、家や部活のフリー時間にスクワット系のトレーニングにも取り組みました。
――今季はチームのキャプテンだったそうですが、苦労したことはありますか。
下田 人前で話すことが苦手なので、学校の壮行会などのあいさつで緊張したり、部活でもみんなに指示を出したりすることが大変でした。でも、そういう苦手なこともしっかりやってきたことがインターハイに結びついたと思っています。
――目標やあこがれの選手はいますか?
下田 憧れの選手は、黒川和樹さん(法大)や児玉悠作さん(ノジマ)で、目標としているのは小川大輝さん(東洋大)です。
――高校卒業後も競技を続けますか。目標を教えてください。
下田 大学に進んで競技をがんばって、オリンピックや世界陸上のような国際大会で活躍できるような選手になりたいです。
構成/小野哲史
直前に故障もアドレナリンが出た
――豊川高陸上競技部では初のインターハイ優勝※、おめでとうございます。周囲の反応はいかがでしたか。 下田 周りから「おめでとう」という言葉がすごく多くて、うれしかったです。特に競技が終わって自分たちのテントに戻った時、先生や付き添いで来てくれた人、また、自宅に帰って家族から「よくやったな」と言われたことがうれしかったです。 ――予選前日の練習中に左太もも裏を痛めたとうかがいました。それでも優勝した要因は。 下田 自分で言うのも何ですが、本番に強いタイプです。それから、決勝は優勝候補の渕上君(翔太/東福岡3)にも最初から逃げる展開になれば、勝てると思っていて、結果的にそのとおりに、前半から飛ばしてリードを作ったことが勝因と思っています。 ――準決勝は自己新の50秒60、決勝は高校歴代6位の50秒14で大会新記録。脚を痛めていたとは思えないレースでした。 下田 走っている最中はアドレナリンが出て痛みはなかったですが、終わったら若干違和感がありました。脚以外は調子も良く、やる気は誰よりもあったと思うので、脚の問題さえなければ、タイムはもっと出せたかもしれません。 ――400mハードルでは渕上選手を始め、強い選手が多数いました。 下田 優勝候補の渕上君を1番ライバル視していて、他にも50秒を持つ橋本君(諒生/乙訓高3京都)や志村君(武/日本工大駒場高3東京)など警戒する人がたくさんいました。その中で、大会新記録で勝ち切れたことはうれしいですし、これからの競技にもつなげていきたいと思っています。 ――51秒29の大会新で優勝した東海大会では9台目まで15歩で、10台目が17歩でした。インターハイの歩数を教えてください。 下田 インターハイの準決勝と決勝も残り2台は17歩で刻む感じで行きました。前半突っ込んだせいで、後半は脚が上がらなくなっていたからです。それでもあのタイムが出たので、オール15歩にすれば、50秒は切れる気がしています。 ――優勝した8月4日は400mハードル転向を進めた前顧問・鈴木克哉先生の命日だったそうですが、意識していましたか? 下田 はい。特に大会前日は、克哉先生がいればもっと調子良く進めたんじゃないかなと思ったりもしました。そばにいて欲しかったですが、(個人種目は欠場した)昨年の悔しい気持ちを晴らすためにがんばろうと当日を迎えました。インターハイが終わったあと、克哉先生の自宅に伺って、仏壇の前で報告してきました。 ――インターハイ後は高校生として残りの日々をどう過ごしていますか? 下田 1週間ぐらい休んで、秋の大会に向かって練習を再開しました。次の大きな目標は、国体の300mハードルで渕上が持つ高校記録(35秒75)を切って優勝することです。国体まで時間はあるので状態を見ながらやっていくつもりです。 ※……豊川高からは過去にも陸上インターハイで優勝者が生まれたが、いずれも駅伝部所属亡き恩師が勧めたヨンパー
――陸上を始めたきっかけを教えてください。 下田 小さい頃から走ることやかけっこが好きで、小学校の部活動が始まったとき、陸上をやってみようと始めました。4年生の時ですね。 ――ほかのスポーツ歴はありますか。 下田 小学校ではサッカー部にも入っていました。中学校に入って部活を1つに絞ることになって、陸上もサッカーもすごく好きだったので迷いましたが、小学6年生の時にハードルで成績を残せたし、団体競技が少し苦手だったので、陸上部に入ることに決めました。中学では110mハードルが専門でした。 ――中学時代の実績は。 下田 3年生の時の全国中学生大会(全中の代替大会)110mハードルに出ましたが、予選でハードルを手で倒してしまい、失格になりました。その年の愛知県通信大会で急に14秒18が出て、大会記録を更新したことがうれしかったです。 ――豊川高に進学した理由を教えてください。 下田 中3の時に克哉先生から「高校で強くなれる」と勧誘していただいたことや施設など練習環境が良いと感じたからです。本当に強くなることができたので、先生のお陰でここまで来ることができたと思っています。 ――高校入学当初の目標は。 下田 最初は110mハードルでがんばろうと思っていましたが、ハードルが高くなります。自分は身体がとても硬いので苦労していたら、5月か6月に克哉先生から「ヨンパーはどうだ?」と勧められて、400mハードルに転向しました。 ――転向を勧められたとき、どう思いましたか。 下田 当時はスタミナもなかったので、トラック1周はきついんじゃないかと思いました。それでも練習は続けて、克哉先生が亡くなった1ヵ月後の東三河新人で54秒9が出ました。これはがんばればもっと良いタイムが出るかもしれないと思って、気持ちもヨンパーに完全に切り替わりました。 [caption id="attachment_113291" align="alignnone" width="800"]
インターハイ決勝では先行策が功を奏した下田選手(左)。右は渕上翔太選手(東福岡高3)[/caption]
――2年生の時はインターハイに出場し、4×400mリレーで準決勝進出。400mハードルは左ハムストリングスを痛めて欠場しています。
下田 東海大会で自己ベストを2秒以上更新する51秒40を出しましたが脚に違和感があってそれでもマイルリレーを走ったら、肉離れでした。周りが走っているのを見ると焦って、自分もやらないと置いていかれると無理やり走ってしまうこともあったのが良くなかったです。結局、インターハイでは脚の状態も悪くなって、悔しい結果で終わってしまいました。
――2年生のシーズンが終わり、冬季はどんな取り組みを行いましたか。
下田 最初の頃はまだ脚を痛めていたので、固定式自転車など脚に負担がかからないトレーニングでスタミナをつけました。脚の状態が徐々には良くなってくると、再び痛めない程度に走り込みを始めました。400mや500mの距離を何本か重ねて走るイメージで、ダッシュはそこまでやっていません。ハムストリングスを痛めやすいので、予防の意味で、家や部活のフリー時間にスクワット系のトレーニングにも取り組みました。
――今季はチームのキャプテンだったそうですが、苦労したことはありますか。
下田 人前で話すことが苦手なので、学校の壮行会などのあいさつで緊張したり、部活でもみんなに指示を出したりすることが大変でした。でも、そういう苦手なこともしっかりやってきたことがインターハイに結びついたと思っています。
――目標やあこがれの選手はいますか?
下田 憧れの選手は、黒川和樹さん(法大)や児玉悠作さん(ノジマ)で、目標としているのは小川大輝さん(東洋大)です。
――高校卒業後も競技を続けますか。目標を教えてください。
下田 大学に進んで競技をがんばって、オリンピックや世界陸上のような国際大会で活躍できるような選手になりたいです。
構成/小野哲史
下田隼人 PROFILE
◎しもだ・はやと/2005年4月17日生まれ。愛知県出身。牟呂中―豊川高。小4で陸上を始め、中学時代は110mハードルが専門。3年時の自己ベスト14秒18は20年の中学全国リスト4位の記録だった。高校で400mハードルに転向すると、1年秋の東海新人でこの年のベストなる53秒57で優勝。2年時のインターハイは故障で個人での出場を見送っている。今季はインターハイ愛知県大会400mハードルで11ヵ月ぶりの自己新となる51秒39をマークすると、東海大会、インターハイ本番と自己記録を更新し、一気に頂点に立った。このほかにも6月のU20日本選手権では3位に入っている。主な種目の自己ベストは100m10秒61(23年)、200m21秒64(22年)、400m47秒99(22年)、400mH50秒14(23年)、300mH36秒96(23年) [caption id="attachment_113292" align="alignnone" width="800"]
誇らしげに部旗を掲げる下田選手[/caption] RECOMMENDED おすすめの記事
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