HOME 駅伝

2022.12.31

名城大を牽引した主将・小林成美「感謝の気持ちを表したかったけど…」と涙 母校・都大路Vも刺激に力走/富士山女子駅伝
名城大を牽引した主将・小林成美「感謝の気持ちを表したかったけど…」と涙 母校・都大路Vも刺激に力走/富士山女子駅伝

名城大のダブルエース山本有真と小林成美(2022年富士山女子駅伝)

◇富士山女子駅伝(12月30日/富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園:7区間43.4km)

富士山女子駅伝 全成績と区間賞一覧をチェック!

富士山女子駅伝が行われ、名城大が最多タイに並ぶ5連覇を達成した。絶対女王・名城大を牽引してきたのが主将の小林成美(4年)。1年時から全駅伝に出場し、負け知らずで卒業する。

広告の下にコンテンツが続きます

盟友・山本有真からタスキを受けるとき、「今までありがとう。頑張ってね」と声をかけられた。「感動的な言葉がきて、こんなのじゃ走れないじゃんって思いました」と笑う。気持ち切り替えてスタート。表情は苦しい。本調子ではないのは明らかだが、それでも懸命に腕を振り、脚を運ぶ。たとえ長い区間を走れなくても、フィニッシュテープを切れなくても、やはり、名城大のエースは小林だった。

強豪・長野東高から鳴り物入りで入部。すでにチームは常勝軍団だったが、「強いところで成長したい」と名城大へ進んだ。昨年は10000mで当時学生記録(現・歴代2位)の31分22秒34をマーク。オレゴン世界選手権の参加標準記録も突破した。

ところが、小林はことごとく不運に見舞われる。内定を取ったワールドユニバーシティゲームズは2度延期。オレゴン世界選手権代表入りしたものの、空港で新型コロナウイルス陽性となって渡米できなかった。

ただ、小林は常にチームのことを考えて走ってきた。日本代表を幾度となく逃した時も「駅伝で」と常に話していた小林。「私は後輩たちと距離を置いて引っ張るタイプ。有真が補ってくれて支えてくれました」。今季はなかなか思うようなパフォーマンスができず、調子が上がらないまま駅伝シーズンに向かうことに。それでも、選手層の厚いチームにあって、米田勝朗監督は絶対に外さなかった。それだけ信頼を置いている。

全日本大学女子駅伝、そして最後の富士山女子駅伝も制して今年も2冠達成。4年間、一度も負けず、トップを走り続けた。「ずっと先頭を走らせてもらえて、アンカーの醍醐味も味わえて、本当に贅沢な4年間でした」。そして、後輩たちへの最後のメッセージ――。

「後輩たちに支えてもらったなと思っています。感謝の気持ちを……」。言葉に詰まり、大粒の涙がこぼれる。「感謝の気持ちを走りで表わしたかったけど」。心強い同期、そして突き上げてくる後輩たちがいる。ただ、みんな、小林の走りに魅了され、背中を追いかけて成長してきた。

きっと小林にあこがれているだろう、長野東高の後輩たちは、自分たちが果たせなかった全国高校駅伝制覇の夢を達成。「本当はこの目で見たかったですが、練習でテレビも見られませんでした」と笑いつつ、「刺激になりました」と背中を押された。

卒業後は三井住友海上で競技を続ける。「大好きな走ることを極めて、陸上人生を築いていきたい」。数々の名選手が羽ばたいてきた名城大。小林もまた、その伝統に深く刻まれた偉大なキャプテンだった。

■小林成美の二大駅伝成績
1年時 全日本1区9位、富士山6区1位
2年時 全日本3区1位(区間新)、富士山7区1位(区間新)
3年時 全日本5区3位、富士山7区1位
4年時 全日本5区6位、富士山6区3位

◇富士山女子駅伝(12月30日/富士山本宮浅間大社前~富士総合運動公園:7区間43.4km) 富士山女子駅伝 全成績と区間賞一覧をチェック! 富士山女子駅伝が行われ、名城大が最多タイに並ぶ5連覇を達成した。絶対女王・名城大を牽引してきたのが主将の小林成美(4年)。1年時から全駅伝に出場し、負け知らずで卒業する。 盟友・山本有真からタスキを受けるとき、「今までありがとう。頑張ってね」と声をかけられた。「感動的な言葉がきて、こんなのじゃ走れないじゃんって思いました」と笑う。気持ち切り替えてスタート。表情は苦しい。本調子ではないのは明らかだが、それでも懸命に腕を振り、脚を運ぶ。たとえ長い区間を走れなくても、フィニッシュテープを切れなくても、やはり、名城大のエースは小林だった。 強豪・長野東高から鳴り物入りで入部。すでにチームは常勝軍団だったが、「強いところで成長したい」と名城大へ進んだ。昨年は10000mで当時学生記録(現・歴代2位)の31分22秒34をマーク。オレゴン世界選手権の参加標準記録も突破した。 ところが、小林はことごとく不運に見舞われる。内定を取ったワールドユニバーシティゲームズは2度延期。オレゴン世界選手権代表入りしたものの、空港で新型コロナウイルス陽性となって渡米できなかった。 ただ、小林は常にチームのことを考えて走ってきた。日本代表を幾度となく逃した時も「駅伝で」と常に話していた小林。「私は後輩たちと距離を置いて引っ張るタイプ。有真が補ってくれて支えてくれました」。今季はなかなか思うようなパフォーマンスができず、調子が上がらないまま駅伝シーズンに向かうことに。それでも、選手層の厚いチームにあって、米田勝朗監督は絶対に外さなかった。それだけ信頼を置いている。 全日本大学女子駅伝、そして最後の富士山女子駅伝も制して今年も2冠達成。4年間、一度も負けず、トップを走り続けた。「ずっと先頭を走らせてもらえて、アンカーの醍醐味も味わえて、本当に贅沢な4年間でした」。そして、後輩たちへの最後のメッセージ――。 「後輩たちに支えてもらったなと思っています。感謝の気持ちを……」。言葉に詰まり、大粒の涙がこぼれる。「感謝の気持ちを走りで表わしたかったけど」。心強い同期、そして突き上げてくる後輩たちがいる。ただ、みんな、小林の走りに魅了され、背中を追いかけて成長してきた。 きっと小林にあこがれているだろう、長野東高の後輩たちは、自分たちが果たせなかった全国高校駅伝制覇の夢を達成。「本当はこの目で見たかったですが、練習でテレビも見られませんでした」と笑いつつ、「刺激になりました」と背中を押された。 卒業後は三井住友海上で競技を続ける。「大好きな走ることを極めて、陸上人生を築いていきたい」。数々の名選手が羽ばたいてきた名城大。小林もまた、その伝統に深く刻まれた偉大なキャプテンだった。 ■小林成美の二大駅伝成績 1年時 全日本1区9位、富士山6区1位 2年時 全日本3区1位(区間新)、富士山7区1位(区間新) 3年時 全日本5区3位、富士山7区1位 4年時 全日本5区6位、富士山6区3位

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.03

明大主将に短距離・神戸毅裕が就任 「紫紺の矜持を重んじ、研鑽を重ねる」

明大競走部は、チームのホームページで12月1日からスタートした新体制を発表し、主将には短距離ブロックの神戸毅裕が就任した。 神戸は東京・明星学園高出身。高校時代はインターハイ南関東大会4×100mリレーで優勝したほか、U […]

NEWS 世界陸上銅メダルの藤井菜々子に那珂川市市民栄誉賞&北九州市民スポーツ大賞

2025.12.02

世界陸上銅メダルの藤井菜々子に那珂川市市民栄誉賞&北九州市民スポーツ大賞

9月の東京世界選手権女子20km競歩で銅メダルを獲得した藤井菜々子(エディオン)が、出身地である福岡県那珂川市の市民栄誉賞、そして高校時代を過ごした北九州市の北九州市民スポーツ大賞を受賞することが決まり、12月2日に両市 […]

NEWS サニブラウンがピックルボール初体験!子どもたちと真剣勝負「スポーツの力あらためて感じる」

2025.12.02

サニブラウンがピックルボール初体験!子どもたちと真剣勝負「スポーツの力あらためて感じる」

ピックルボール普及のためのイベントTORAY PICKLEBALL EXPERIENCEが12月2日に東京の有明アーバンスポーツ内のコートで行われ、男子短距離のサニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)が参加した。 ピック […]

NEWS 東洋大男子長距離が4社と契約 “昇り龍”を描いた鉄紺の新ユニフォームも発表「頂点目指し力強く上昇」

2025.12.02

東洋大男子長距離が4社と契約 “昇り龍”を描いた鉄紺の新ユニフォームも発表「頂点目指し力強く上昇」

東洋大は12月2日、陸上競技部男子長距離部門において、セブン銀行(本社:東京都千代田区)、カカクコム(本社:東京都渋谷区)が運営する「求人ボックス」、ECC(本社:大阪市北区)、ビースタニング(本社:東京都渋谷区)が運営 […]

NEWS Hondaに法大・大島史也、東海大の主力2人が来季加入!「培ってきた走力と探究心を最大限に発揮」

2025.12.02

Hondaに法大・大島史也、東海大の主力2人が来季加入!「培ってきた走力と探究心を最大限に発揮」

Hondaは12月2日、来年4月1日に入部する選手として、法大の大島史也、東海大の花岡寿哉と兵藤ジュダの3選手を発表した。 大島は千葉・専大松戸高出身。今年は関東インカレ5000mで7位入賞などがある。5000mは13分 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年12月号 (11月14日発売)

2025年12月号 (11月14日発売)

EKIDEN REVIEW
全日本大学駅伝
箱根駅伝予選会
高校駅伝&実業団駅伝予選

Follow-up Tokyo 2025

page top