2022.12.13
【コラム番外編】
編集部が独断で選ぶ2022年トラック&フィールド
「ONE SCENE」
世界選手権が行われた2022年は、日本人初の世界選手権100mファイナリスト誕生や世界最高峰ダイヤモンドリーグのファイナルに日本人選手が2人出場するなど、日本陸上界の歴史に刻まれた1年となった。今年も編集部員コラム「番外編」として編集部員が独断(?)と偏見(?)と思い入れたっぷり(?)に、2022年に心を揺さぶられた「ONE SCENE」を選出しました。みなさんが選ぶ「ONE SCENE」は?
「世界のスプリンターが唯一本気で走る舞台」に
サニブラウンが立つ!(小川雅生)
世界のトップスプリンターが唯一「本気で走る場所」、それが世界大会の男子100mファイナル。その舞台に立った日本人は、1932年ロサンゼルス五輪6位の吉岡隆徳のみ。その後、五輪も、世界選手権も、セミファイナルには進出できても、その壁を越えることはできなかった。
この夏、オレゴン世界選手権男子100m決勝、1レーンにサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が立った。18歳で海を渡り、プロアスリートとして世界水準に身を置くことで、誰もが認めるその才能に磨きをかけてきた。結果は7位だったが、ファイナルの舞台を走り切ったこと自体が偉業だ。
だが、サニブラウン自身は「こんなところで満足はしていられない」。目指すのは「世界一」。拠点とするアメリカの強さをまざまざと見せつけられた。その差を埋めるための日々が、この時から始まったのだ。
三浦龍司(順大)〝驚異〟のスパート(井上 敦)
4月の金栗記念選抜中長距離男子1500m。残り200mで、三浦龍司選手(順大)は先頭を走る遠藤日向選手(住友電工)と1秒余りの差。コーナーで少し詰めたが、遠藤選手の優位は変わらないと思った。だが、最後の直線でどんどんその差が縮まり、フィニッシュ直前で逆転。私の手元で残り200m26秒9、ラスト400mは55秒8~9ぐらいでカバーして、当時の日本歴代2位(3分36秒59)をマークした。
三浦選手のフォームは美しい。特に腕を前後に振って、脇が開かない。スパートに入るとスプリンターに近くなる。そういえば、不破聖衣来選手(拓大)もしっかりと前後に腕を振る。
長距離で世界と戦うためのヒントが三浦選手にあるような気がする。
タイトルに〝驚異〟とつけたが、それは国内での話。世界は残り400mを53~54秒。前半がスローペースなら50~51秒で回ってくる。
髙良彩花(筑波大) 過去の自分に勝った瞬間(向永拓史)
今年は世界陸上をはじめ、国内外の主要大会を取材した。歴史的な瞬間にもたくさん立ち会うことができたが、日本インカレ初日の出来事は忘れられない。
女子走幅跳で髙良彩花選手(筑波大)が、4年ぶりの自己ベストとなる6m50(+0.7)をマーク。これは女子では最古だった大会記録を35年ぶりに更新する記録だった。
スタンドからは大きな拍手が贈られたのだが、おそらくこの拍手は大会新記録によるものだけではない。
多くの学生たちは、髙良彩花という小柄で偉大なジャンパーが、高校時代に出した6m44の高校記録という呪縛に苦しみながら、それでも挑み、跳び続け、過去の自分を超えた瞬間だったということがわかっていたのだと思う。
その後、インタビューした時に髙良選手は「こんなににもみんな喜んでくれて、温かかったです」と振り返ると、その大きな瞳からあったかい涙がこぼれた。
史上初! 全中男子110mHで中学記録保持者対決(大久保雅文)
中学では2022年も好記録が相次いだが、男子110mハードルでは、8月の全中を前に村田隼選手(立花中3兵庫)と岩本咲真選手(八屋中3福岡)がともに13秒68の中学記録を樹立。全中では2人の対決に注目が集まった。岩本選手は予選から得意のスタートで鋭く飛び出すと13秒60(+1.1)をマークし、決勝ではさらに記録を短縮する13秒51(+0.4)で優勝。得意とする昨年までの中学記録を0.23秒も上回る破格のタイムだった。
一方の2位の村田選手も後半まで岩本選手に食らいつき13秒70と従来の大会記録を更新。ともに持ち味を発揮して、史上初の中学記録保持者同士の対決にふさわしい勝負となった。両選手ともにハードルに限らず、スプリント種目や混成競技でも非凡な才能を見せている。今後、110mハードル以外の種目にチャレンジしてもさらなる躍進が期待でき、高校、大学での活躍が今から楽しみだ。
東福岡 男子マイル19年ぶりの高校新 3分07秒81!(松永貴允)

赤色バトンを史上最速でフィニッシュラインに運んだ東福岡高カルテットは、電光掲示板のタイムを見て喜びを爆発させた。
会場は陸上の聖地・国立競技場。10月2日に行われた日本選手権男子4×400mリレー決勝の大舞台だ。前日の予選を通過しただけでもすごいことなのに、高校生が大学生チーム相手に5位と善戦し、そこで1つ目の衝撃を受ける。
そしてその数十秒後、電光掲示板に表示されたタイムを見て2つ目の衝撃が聖地を駆け巡った。
「3分07秒81」――。
2003年に成田高(千葉)が樹立した“不滅の高校記録”を0.51秒上回り、高校生が初めて3分07秒台の領域に突入した瞬間だった。
4人の400m自己記録は、1走の庄籠大翔(2年)が47秒19、2走の渕上翔太(2年)は400mハードル50秒89(高2歴代4位)、3走の小坂洸樹(2年)が48秒56、4走の冨永湧平(3年)は46秒69。大学生チームと言われてもおかしくない豪華ラインナップだ。
このうち来年3月に卒業するのはアンカーの冨永だけで、この日控えだった黒木海翔(2年)も9月に100mで高2歴代5位の10秒29(+1.4)をマークし、翌月のU18大会を制する実力者だ。インターハイ3連覇が懸かる来年は、どこまで記録を更新するのだろうか。
同レースで8位だった相洋高(神奈川)や男子4×100mリレーで6位に入った洛南高(京都)らの奮闘も含め、高校生の底知れぬポテンシャルに興奮冷めやらぬ一日だった。
残酷な1秒(船越陽一郎)
世界選手権の男子35km競歩。何時間も歩き続けて競い合い、その結果がたった1秒の差で決まってしまうという残酷な瞬間。シャッターを切りながら胸がぎゅうっと絞めつけられる思いで撮った。
【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ日本陸上界2021年「ONE SCENE」
【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ日本陸上界2020年「ONE SCENE」
【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ日本陸上界2019年「ONE SCENE」
世界のトップスプリンターが唯一「本気で走る場所」、それが世界大会の男子100mファイナル。その舞台に立った日本人は、1932年ロサンゼルス五輪6位の吉岡隆徳のみ。その後、五輪も、世界選手権も、セミファイナルには進出できても、その壁を越えることはできなかった。この夏、オレゴン世界選手権男子100m決勝、1レーンにサニブラウン・アブデル・ハキーム(タンブルウィードTC)が立った。18歳で海を渡り、プロアスリートとして世界水準に身を置くことで、誰もが認めるその才能に磨きをかけてきた。結果は7位だったが、ファイナルの舞台を走り切ったこと自体が偉業だ。だが、サニブラウン自身は「こんなところで満足はしていられない」。目指すのは「世界一」。拠点とするアメリカの強さをまざまざと見せつけられた。その差を埋めるための日々が、この時から始まったのだ。三浦龍司(順大)〝驚異〟のスパート(井上 敦)
4月の金栗記念選抜中長距離男子1500m。残り200mで、三浦龍司選手(順大)は先頭を走る遠藤日向選手(住友電工)と1秒余りの差。コーナーで少し詰めたが、遠藤選手の優位は変わらないと思った。だが、最後の直線でどんどんその差が縮まり、フィニッシュ直前で逆転。私の手元で残り200m26秒9、ラスト400mは55秒8~9ぐらいでカバーして、当時の日本歴代2位(3分36秒59)をマークした。三浦選手のフォームは美しい。特に腕を前後に振って、脇が開かない。スパートに入るとスプリンターに近くなる。そういえば、不破聖衣来選手(拓大)もしっかりと前後に腕を振る。長距離で世界と戦うためのヒントが三浦選手にあるような気がする。
タイトルに〝驚異〟とつけたが、それは国内での話。世界は残り400mを53~54秒。前半がスローペースなら50~51秒で回ってくる。髙良彩花(筑波大) 過去の自分に勝った瞬間(向永拓史)
今年は世界陸上をはじめ、国内外の主要大会を取材した。歴史的な瞬間にもたくさん立ち会うことができたが、日本インカレ初日の出来事は忘れられない。女子走幅跳で髙良彩花選手(筑波大)が、4年ぶりの自己ベストとなる6m50(+0.7)をマーク。これは女子では最古だった大会記録を35年ぶりに更新する記録だった。スタンドからは大きな拍手が贈られたのだが、おそらくこの拍手は大会新記録によるものだけではない。多くの学生たちは、髙良彩花という小柄で偉大なジャンパーが、高校時代に出した6m44の高校記録という呪縛に苦しみながら、それでも挑み、跳び続け、過去の自分を超えた瞬間だったということがわかっていたのだと思う。その後、インタビューした時に髙良選手は「こんなににもみんな喜んでくれて、温かかったです」と振り返ると、その大きな瞳からあったかい涙がこぼれた。史上初! 全中男子110mHで中学記録保持者対決(大久保雅文)
中学では2022年も好記録が相次いだが、男子110mハードルでは、8月の全中を前に村田隼選手(立花中3兵庫)と岩本咲真選手(八屋中3福岡)がともに13秒68の中学記録を樹立。全中では2人の対決に注目が集まった。岩本選手は予選から得意のスタートで鋭く飛び出すと13秒60(+1.1)をマークし、決勝ではさらに記録を短縮する13秒51(+0.4)で優勝。得意とする昨年までの中学記録を0.23秒も上回る破格のタイムだった。一方の2位の村田選手も後半まで岩本選手に食らいつき13秒70と従来の大会記録を更新。ともに持ち味を発揮して、史上初の中学記録保持者同士の対決にふさわしい勝負となった。両選手ともにハードルに限らず、スプリント種目や混成競技でも非凡な才能を見せている。今後、110mハードル以外の種目にチャレンジしてもさらなる躍進が期待でき、高校、大学での活躍が今から楽しみだ。東福岡 男子マイル19年ぶりの高校新 3分07秒81!(松永貴允)
赤色バトンを史上最速でフィニッシュラインに運んだ東福岡高カルテットは、電光掲示板のタイムを見て喜びを爆発させた。会場は陸上の聖地・国立競技場。10月2日に行われた日本選手権男子4×400mリレー決勝の大舞台だ。前日の予選を通過しただけでもすごいことなのに、高校生が大学生チーム相手に5位と善戦し、そこで1つ目の衝撃を受ける。そしてその数十秒後、電光掲示板に表示されたタイムを見て2つ目の衝撃が聖地を駆け巡った。「3分07秒81」――。2003年に成田高(千葉)が樹立した“不滅の高校記録”を0.51秒上回り、高校生が初めて3分07秒台の領域に突入した瞬間だった。4人の400m自己記録は、1走の庄籠大翔(2年)が47秒19、2走の渕上翔太(2年)は400mハードル50秒89(高2歴代4位)、3走の小坂洸樹(2年)が48秒56、4走の冨永湧平(3年)は46秒69。大学生チームと言われてもおかしくない豪華ラインナップだ。このうち来年3月に卒業するのはアンカーの冨永だけで、この日控えだった黒木海翔(2年)も9月に100mで高2歴代5位の10秒29(+1.4)をマークし、翌月のU18大会を制する実力者だ。インターハイ3連覇が懸かる来年は、どこまで記録を更新するのだろうか。同レースで8位だった相洋高(神奈川)や男子4×100mリレーで6位に入った洛南高(京都)らの奮闘も含め、高校生の底知れぬポテンシャルに興奮冷めやらぬ一日だった。残酷な1秒(船越陽一郎)
世界選手権の男子35km競歩。何時間も歩き続けて競い合い、その結果がたった1秒の差で決まってしまうという残酷な瞬間。シャッターを切りながら胸がぎゅうっと絞めつけられる思いで撮った。【コラム番外編】編集部が独断で選ぶ日本陸上界2021年「ONE SCENE」
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