2022.09.14

昨年の東京五輪に続いて、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)は女子5000mと10000mの2種目で初の世界選手権代表入りを果たした。「自己ベスト更新」を目指したオレゴンでは、日本記録(14分52秒84)を持つ5000mこそ15分02秒03の予選敗退に終わったが、10000mで狙い通りの自己新となる30分39秒71(日本歴代2位)をマークした。12位で五輪に続いての入賞は果たせなかったが、大きな収穫を得たレースに。思うように走れない時期を乗り越えて立った大舞台。世界と戦えば戦うほど、もっと上へという思いは強くなる。
構成/向永拓史
初の高地合宿を経てオレゴン入り
前半シーズンを終え、廣中が走ったのは日本選手権と世界選手権だけ。レースを絞ったのではなく、春先から調子が上がらず走れなかった。シーズンイン間近の貧血が影響し、5月の日本選手権10000mはぶっつけ本番に。大きな不安を抱えながらも代表権をもぎ取った。
「元々、貧血は持っていて特に夏場はなりやすいんです。少しずつ克服できていたのですが、2020年はすごく苦しんでいました。だから、東京五輪は延期になったことで出られるようになったんです。管理栄養士さんにアドバイスをもらいながら少しずつ工夫して改善してきました。
ただ、再び今年の3月末から4月にかけて、なかなか思うように走れない日々が続きました。朝の集団走でもきつくなって、すぐに息が上がる。検査をすると貧血が発覚しました。というのも、例年2、3月は脚を痛めることが多いのですが、この冬は結構走り込めたんです。その反動だったのかなと思っています。3月までは走り込めていたので、筋力を落とさないようにバイクトレーニングで体力面を維持していました。
トラックに向けてスピードに移行する練習が積めずに、もどかしさも不安も大きかったです。5月の10000mは『自分を信じて走るだけ』と思って臨みました。まずは3位以内にしっかり入ろうということで、5000mまでは溜めて、残りの5000mでしっかり走ってラストに備える。優勝を勝ち取れたのは本当にうれしかったです」
続く6月の日本選手権5000mまでは順調に練習も消化。ただ、コンディションとは「違った不安」があったという。2位に入って2種目で代表入りを決めたが、レース後の涙が印象的だった。
「髙橋(昌彦)監督とも話して、こっちもまずは3位以内に入って切符を取るのが一番だという考えでした。ただ、自分の中では2連覇や、自分らしいレースをしたいという気持ちが強かったんです。それを意識し過ぎるあまり硬くなってしまいました。レース前には一昨年の日本選手権(20年12月※田中希実と一騎打ちに敗れて東京代表即内定ならず)の悔しさを思い出して不安になりました。いろいろな葛藤があって、最終刺激でもレース中でも身体の反応として硬さが出ていたと思います」
何とか代表入りを決めた廣中は、世界選手権に向けて米国ボルダーへ飛んだ。高地合宿は初めてのこと。不安よりも「楽しみ」でいっぱいだったという。
「試合の遠征だけでなく、合宿から海外に行くのが楽しみでした。新しい場所に行くのもワクワク感があります。日程は6月下旬から7月中旬までで、そのまま世界選手権に向かいました。着いたその日と、翌日は酸素が入ってこない感覚がありました。ジョグをするだけでも頭が〝きゅ~っ〟となる感じ。でも、どんどんと慣れていきました。
ボルダーにはいろいろなコースがあるのですが、車で10分ほど行ったところの土のコースを14㎞ほど走ったり、山に向かっていく小川沿いのコースを往復したり、トラック練習は中学校の400mグラウンドを使わせてもらいました。一度だけ、さらにボルダーから1000mほど上がった標高2700 ~ 2800mの場所まで行ってポイント練習をしました。雲が本当に近くにあるんです。そこではさらに空気が薄くて酸素がなかなか入ってこない。かなりきつくてダメージがあるのですが、反面、高地では身体が軽く感じるのでスピードも出ます。ビルドアップ走などは日本にいる時よりもむしろ質の高い練習ができました」
この続きは2022年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
定期購読はこちらから
昨年の東京五輪に続いて、廣中璃梨佳(日本郵政グループ)は女子5000mと10000mの2種目で初の世界選手権代表入りを果たした。「自己ベスト更新」を目指したオレゴンでは、日本記録(14分52秒84)を持つ5000mこそ15分02秒03の予選敗退に終わったが、10000mで狙い通りの自己新となる30分39秒71(日本歴代2位)をマークした。12位で五輪に続いての入賞は果たせなかったが、大きな収穫を得たレースに。思うように走れない時期を乗り越えて立った大舞台。世界と戦えば戦うほど、もっと上へという思いは強くなる。
構成/向永拓史
初の高地合宿を経てオレゴン入り
前半シーズンを終え、廣中が走ったのは日本選手権と世界選手権だけ。レースを絞ったのではなく、春先から調子が上がらず走れなかった。シーズンイン間近の貧血が影響し、5月の日本選手権10000mはぶっつけ本番に。大きな不安を抱えながらも代表権をもぎ取った。 「元々、貧血は持っていて特に夏場はなりやすいんです。少しずつ克服できていたのですが、2020年はすごく苦しんでいました。だから、東京五輪は延期になったことで出られるようになったんです。管理栄養士さんにアドバイスをもらいながら少しずつ工夫して改善してきました。 ただ、再び今年の3月末から4月にかけて、なかなか思うように走れない日々が続きました。朝の集団走でもきつくなって、すぐに息が上がる。検査をすると貧血が発覚しました。というのも、例年2、3月は脚を痛めることが多いのですが、この冬は結構走り込めたんです。その反動だったのかなと思っています。3月までは走り込めていたので、筋力を落とさないようにバイクトレーニングで体力面を維持していました。 トラックに向けてスピードに移行する練習が積めずに、もどかしさも不安も大きかったです。5月の10000mは『自分を信じて走るだけ』と思って臨みました。まずは3位以内にしっかり入ろうということで、5000mまでは溜めて、残りの5000mでしっかり走ってラストに備える。優勝を勝ち取れたのは本当にうれしかったです」 続く6月の日本選手権5000mまでは順調に練習も消化。ただ、コンディションとは「違った不安」があったという。2位に入って2種目で代表入りを決めたが、レース後の涙が印象的だった。 「髙橋(昌彦)監督とも話して、こっちもまずは3位以内に入って切符を取るのが一番だという考えでした。ただ、自分の中では2連覇や、自分らしいレースをしたいという気持ちが強かったんです。それを意識し過ぎるあまり硬くなってしまいました。レース前には一昨年の日本選手権(20年12月※田中希実と一騎打ちに敗れて東京代表即内定ならず)の悔しさを思い出して不安になりました。いろいろな葛藤があって、最終刺激でもレース中でも身体の反応として硬さが出ていたと思います」 何とか代表入りを決めた廣中は、世界選手権に向けて米国ボルダーへ飛んだ。高地合宿は初めてのこと。不安よりも「楽しみ」でいっぱいだったという。 「試合の遠征だけでなく、合宿から海外に行くのが楽しみでした。新しい場所に行くのもワクワク感があります。日程は6月下旬から7月中旬までで、そのまま世界選手権に向かいました。着いたその日と、翌日は酸素が入ってこない感覚がありました。ジョグをするだけでも頭が〝きゅ~っ〟となる感じ。でも、どんどんと慣れていきました。 ボルダーにはいろいろなコースがあるのですが、車で10分ほど行ったところの土のコースを14㎞ほど走ったり、山に向かっていく小川沿いのコースを往復したり、トラック練習は中学校の400mグラウンドを使わせてもらいました。一度だけ、さらにボルダーから1000mほど上がった標高2700 ~ 2800mの場所まで行ってポイント練習をしました。雲が本当に近くにあるんです。そこではさらに空気が薄くて酸素がなかなか入ってこない。かなりきつくてダメージがあるのですが、反面、高地では身体が軽く感じるのでスピードも出ます。ビルドアップ走などは日本にいる時よりもむしろ質の高い練習ができました」 この続きは2022年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2026.04.15
東京世界陸上マラソン金のジェプチルチルが疲労骨折 4月26日のロンドンマラソン欠場
-
2026.04.14
-
2026.04.14
-
2026.04.14
-
2026.04.14
-
2026.04.13
2026.04.12
5000m山口智規が強さ示す「一つかたちになった」早大後輩の鈴木、増子も好走/金栗記念
2026.04.09
吉川崚がJAL入社!「夢がかなった」一般社員として就職活動し内定 ロス五輪目指し競技続行
-
2026.04.11
-
2026.04.12
-
2026.04.12
-
2026.04.13
2026.03.16
GMO・吉田圭太と100mHの安達楓恋が結婚!「これからも二人で」青学大の先輩後輩
-
2026.03.31
-
2026.03.31
Latest articles 最新の記事
2026.04.15
世界競歩チーム選手権代表が帰国 マラソン金の勝木隼人「物足りない」ハーフ吉川は「メダル見えるところに来た」
4月12日にブラジルで行われた世界競歩チーム選手権の日本代表が4月15日に帰国し、選手たちが取材に応じた。 男子マラソンで金メダルを獲得した勝木隼人(自衛隊体育学校)。終始、先頭を歩く一人旅のレースに「ロングの練習よりも […]
2026.04.15
吉田克久氏の退職の会が開催 和歌山北高時代にインターハイ総合優勝、ロンドン五輪代表・九鬼巧らを育成
和歌山北高校などで長く指導した吉田克久氏の退職の会が、和歌山市内のホテルで開催された。 吉田氏は大体大を卒業し、和歌山県の教員に。「陸上競技を通して感謝の気持ちを育てる」という信念のもと、生徒一人ひとりと真摯に向き合う指 […]
2026.04.15
東京世界陸上マラソン金のジェプチルチルが疲労骨折 4月26日のロンドンマラソン欠場
女子長距離のP.ジェプチルチル(ケニア)が疲労骨折のため4月26日に英国で開催されるロンドンマラソンを欠場することが発表された。 ジェプチルチルは東京五輪、東京世界選手権のマラソンで金メダルを獲得している32歳。ハーフマ […]
2026.04.14
お詫びと訂正(月刊陸上競技2026年5月号)
月刊陸上競技2026年5月号の内容に一部誤りがございました。 154ページの実業団情報で一部誤りがありました。 広告の下にコンテンツが続きます 正しいデータの情報を掲載するとともに、関係者の皆様にお詫びをし、訂正いたしま […]
Latest Issue
最新号
2026年5月号 (4月14日発売)
2026シーズン展望
中距離特集ほか