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2022.09.14

酸素の力でアスリートを支える『日本気圧バルク工業アスリートセンター』/PR
酸素の力でアスリートを支える『日本気圧バルク工業アスリートセンター』/PR

来て、見て、使ってその効果、活用術を再確認

静岡県島田市にこのほど新設された日本気圧バルク工業アスリートセンター兼神戸大学スポーツ健康サイエンスラボ。一般開放は10月からの予定だが、その完成を記念し、シドニー五輪女子マラソン金メダリストで日本の高地トレーニングのパイオニアでもある高橋尚子さん(日本気圧バルク工業スペシャルトレーニングアドバイザー)と同ラボの責任者で長年にわたって日本気圧バルク工業とともに酸素の有効活用について共同研究を行なっている神戸大学大学院保健研究学科の藤野英己教授に、あらためて酸素(低圧低酸素・高気圧酸素)の効果や練習法、さらに今回完成した施設の利点、活用術などについて、それぞれの立場からお話をうかがった。 文/花木 雫、撮影/船越陽一郎

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平地にいながらにして高地トレーニングを体感できる施設

日本初の河川敷マラソンコースとしても知られる静岡県の大井川マラソンコース「リバティ」。島田市、藤枝市、焼津市にまたがる全長17.9㎞(現時点、22㎞に延長予定)のコース上に、全天候型トラックの大井川河川敷陸上競技場をはじめ3つの陸上競技場などを有し、信号機もなく専用のマラソンコースのため車などの心配もなく走れることもあり、〝マラソントレーニングのメッカ〟として多くのランナーから親しまれている。
冬でも温暖な気候に加え、周辺には芝生コースとして活用できるゴルフ場や坂道トレーニングに適したロードコース、時に遠州の空っ風としても有名な強風が吹くことから風対策、夏の暑さ対策など、通常のトレーニングに加え、選手個々のニーズに合わせた練習ができることで、実業団をはじめ大学、高校など数多くのチームが合宿地としても活用されている。そのコース沿いにこのほど新しく完成したのが、日本気圧バルク工業アスリートセンター兼神戸大学スポーツ健康サイエンスラボだ。


高橋 藤野教授が、今回新しくできた合宿所としても活用できるアスリートセンターの監修をされたと伺っております。

藤野 はい、そうです。場所の利点、施設の概要などは、これまでに説明のあった通りです。

高橋 大井川マラソンコース「リバティ」は、私も走らせていただきましたが、河川敷でとても走りやすいコースでした。最近では、市民ランナーはもちろん、実業団や大学のトップ選手も合宿で利用するなど、多くの方々に親しまれているようですね。

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大井川マラソンコース「リバティ」を走る高橋さん。マラソン専用コースのため車の心配もなく走れるのが魅力だ

藤野 このトレーニングセンターは、そうした環境を生かした施設となります。また、坂道や芝生路面、さらに遠州の空っ風と呼ばれる強風が吹くことでも知られており、風対策やその風を利用したフォームづくりなどにも役立つ環境となります。

高橋 風の抵抗を考えながら、体幹を意識したフォーム対策など、いろいろな活用が考えられているようですね。

藤野 そうした面も踏まえ、今回完成した施設のコンセプトなどについて少しお話させていただきます。まずは、高地トレーニングを低地にいながらにしてシミュレーションできる施設がトレーニングセンターとなります。国内最大級の低圧低酸素ルームが設置されており、その中で高地トレーニングを体感することができます。

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高橋 私は現役時代、高地トレーニングの合宿地として利用していたアメリカのボルダーに10時間以上かけて移動していました。拠点は標高1600mの地点でしたが、そうした環境をここに来ればすぐに体験できるというわけですね。


最新機器でヘモグロビンや赤血球数などの血液状態がわずか10分程度でわかり、トレーニング効果の「見える化」が可能となる

藤野 低圧低酸素ルームは海抜0mから標高3000mまでの環境に設定することが可能です。低圧低酸素ルームで高地トレーニングを実際にシミュレーションでき、かつ大井川マラソンコース「リバティ」や競技場などを活用し、平地でのスピード練習も併せて実施できるという、自然の高地に赴いて行う高地トレーニングにない利点があります。
さらに、このトレーニングセンターは研究施設を兼ねており、研究で使用するシスメックス社のヘモグロビン測定システムを導入しており、実際のタイムや走りの感覚、体感に加え、赤血球やヘモグロビン値などの血液状態をわずか10分程度で正確に測定することで、練習の効果などを確認することが可能となっています。つまり、トレーニング効果の「見える化」が可能なのです。

高橋 練習の効果がすぐに確認できる点は、本当にうれしいですね。長距離、マラソンにはハードな厳しい練習がつきものですが、それが本当に力になっているのか不安になることもあります。きついだけで効果がなければ意味がありません。身体(血液)がどのように変化しているのかがわかるという「トレーニングの見える化」は、選手にとっては、やる気の面などから見てもとても大きいですね。
通常は、定期的に病院などに行って血液検査をする必要がありますが、ここに来れば練習はもちろん、そうした効果、体内の変化なども科学的にすぐに確認することができるなどメリットが大きいと感じます。

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藤野 この施設は最大12人まで宿泊が可能で、練習(低圧低酸素ルーム、高地トレーニング)を行いながら、その効果を確認できる施設となっています。さらに高気圧酸素ルームをはじめ、炭酸浴が可能な浴室などリラックスできる設備も整っており、トレーニング効果を引き出し、確認するには最適な場所だと言えます。


日本気圧バルク工業アスリートセンターの低圧低酸素ルームには最新のトレッドミルを5台も設置している

高橋 低圧低酸素ルームも国内最大級のもので、室内に5台のトレッドミルが設置されるなど、大勢で利用できるのも魅力ですね。国内、平地にいながらにして高地トレーニングをシミュレーションでき、さらに自然を感じながらトレーニングもリフレッシュもできる合宿施設として、いろいろな方々に使ってほしいと感じました。

高地トレーニングのメリットとデメリット

藤野 周囲の環境などを含め施設のコンセプト、メリットなどについてお話してきましたが、ここで再度、高地トレーニングの効果、取り組み方について触れておこうと思います。
近年はがんの検査などにも用いられる線虫を使った低酸素環境と寿命についての実験で、低酸素環境の方が寿命が延びるということがわかってきました(図1)。
酸素は、使い方によって毒になったり薬になったりもします。鉄の錆は高橋さんもご存じだと思いますが、その錆は酸素によって劣化したもので、私たち人間の身体も酸素によって劣化します。できるだけ酸素によって劣化させないようにすることができれば(酸素濃度が薄い・低酸素環境=劣化させない)、それが寿命にも関わってくることになります。

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図1 低酸素環境と寿命

高橋 酸素をたくさん吸った方が身体も楽で身体に良いと勘違いしていました。寿命のことなどを考えれば、それは逆なんですね。

藤野 確かに非常に高い濃度の酸素は身体に害を及ぼしますが、軽度の高気圧酸素であれば、アスリートの疲労回復をはじめ、高齢者や糖尿病患者などの代謝の促進、ケガの治癒の促進など健康に役立つというデータもたくさん出ており、使い方次第ということになります。長時間・期間、濃度の高い高気圧酸素に曝露されていなければ問題はありません。

高橋 そうした酸素のメリット、デメリット、使い方・使い分けの方法をしっかりと理解した上で活用することが大切だということが、先生のご説明から理解することができました。トレーニングはもちろん、普段の生活からうまく使い分けることで、効果なども変わってくるのですね。

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藤野 低酸素環境下では、細胞から低酸素誘導因子(HIF)という物質が出てくるというのがポイントとなります(図2)。通常の環境では分解されてしまうHIFは、低酸素環境下では、分解されずエリスロポイチン、血管を新しくつくるVEGFの産生が向上。脊髄から赤血球が分化して増えることになります(図3)。

図2 低酸素環境のポイント

図3 低酸素環境で血球が増加

高橋 先日、低圧低酸素ルームで20~30分ジョグをした後に検査をした際、その前後で赤血球の量が少し増えていました。

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藤野 そうした短期的な変化も現れますし、当然、継続して低酸素環境下で過ごしたりトレーニングを積むことで、赤血球の量も増え、ヘモグロビン値も上がってくることになります。実際、図3が示す通り、高地トレーニングのメッカでもある中国の昆明で実施した実験データでも、そのことは証明されています。

高橋 私は、マラソン選手としてはヘモグロビン値が低い方でしたが、現役時代は1年の半分近くアメリカのボルダーで過ごしたお陰で、ヘモグロビン値を12ぐらいで保っていました。引退後もボルダーにはたびたび通っており、ヘモグロビン値もキープできていたのですが、コロナ禍、国内で過ごすようになってどんどん値が減り、最近では9まで落ち込んでおり(ヘモグロビン(Hb)の基準値 男性14~18g/dl、女性12~16g/dl)やはり高地で過ごすことで身体に変化があったのだと感じています。

藤野 さらに高地では、毛細血管を増やす血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の細胞内濃度が上昇。実際に毛細血管が増えることになります。図4はマウスを使った実験データとなりますが、標高400m と標高4000mではまったく異なることがわかっていただけると思います。

図4 低酸素環境で毛細血管が増加

高橋 毛細血管が増えることによる日常生活のメリットはありますか。

藤野 一番は、疲れやすさなどに影響が出てきます。コロナ禍、最近は、高齢者などは特にあまり外に出ない生活が続いていると思われます。動かないでいると毛細血管は自然と減ってきます。毛細血管が減ると酸素を筋肉に届けることができなくなり、徐々に持久力がなくなってきます。少し動いただけでもしんどくなりやすくなる。体力の低下、さらには冷え性などにもつながってきます。

高橋 そう考えると低圧低酸素ルームは、アスリートだけではなく高齢者などいろんな方々の健康にも役立つ機器だと言えますね。

藤野 まさにその通りだと思います。ここまでは低酸素環境、高地トレーニングのメリットについてお話してきました。続いては反対のデメリットについても触れておこうと思います。まず一つ目は、酸素が薄いがゆえに質の高いトレーニングができないということ。さらに量的にも下げざるを得なくなります。

高橋 私もボルダーで行う練習と日本の平地とでは、1㎞のペースが同じだと負荷はまったく違うと実感していました。

藤野 実際、実業団チームなどからも「練習の質・量が下がる」というお話を耳にします。チームによっていろいろなトレーニングが試されているところで、図5の高地に滞在し、練習は平地で行うリビングハイ・トレーニングローなども一つの例と言えます。
高地に滞在し、低酸素環境に順化していくことで毛細血管が増え、赤血球やヘモグロビン値の増加につながります。その上で、平地に降りて普段と変わらぬトレーニングを行なう。移動に時間はかかりますが、トレーニング効果としてはアップするものと考えられます。
こうした高地環境下のトレーニングを、移動を伴わず可能にするのが、今回できたアスリートセンターとなります。

図5 高地(低圧低酸素)トレーニングの利点・欠点

高橋 低圧低酸素ルームに入れば高地と同じ環境に身を置くことになりますし、そこで過ごしたり、トレーニングを積むことで、海外などに赴くことなく、同じような効果のトレーニングが可能となるのは、本当にすばらしいことだと思います。ボルダーへの移動を経験している私としては、その時間、手間を短縮できるメリットは大きいですね。

藤野 高橋さんの場合、高地でトレーニングを積み、大会に合わせて数週間前に帰国するというのが通常のパターンだったと思います。しかし、こうした施設を活用することで、ぎりぎりまで効果を落とすことなく高地トレーニングに打ち込むことができます。

高橋 高地トレーニングの場合、高地順化した身体が2週間程度で元の状態に戻ってしまうと言われており、私もそうした効果、その後の仕上げのトレーニングなどを逆算して帰国していました。男子選手の場合は、さらにスピード練習にも時間を割くことが多く、難しさがあったと思います。このようなトレーニングセンターがあればそうした心配が少なくなるのはメリットではないでしょうか。お話を聞き、目的に合わせていろんな使い方があると感じました。

藤野 陸上競技に限らず、高地トレーニングに取り組むいろいろな競技のアスリートから高地トレーニング、低酸素トレーニングには、向き不向き、高地順化を含め個人差があるとお聞きします。

高橋 そうですね。私が現役時代に所属したチームにも向いている選手、高地に来ると調子を落としてしまう選手など、いろいろなタイプの選手がいました。

藤野 低酸素環境の順化を含め、持久力タイプの選手、そうでない選手には、どうやら遺伝子が関係しているのではないかという研究が進んでいます。論文なども数多く発表されており、いずれはこの施設でも、そうした遺伝子を分析できる設備を整えていければと考えています。

高橋 とても興味深いお話ですね。長距離タイプ、さらに高地トレーニングの向き不向きなども判断できるようになるとすれば、いろいろな無駄や時間が節約できることになりますね。

藤野 スポーツはもちろん、人生においても、自分の体質、身体のことをあらかじめ知っておくことはとても重要で、病気の予防などはもちろん、健康な日々を過ごす大きな要素の一つになると考えています。

高橋 科学、医学の進歩はすごいですね。そうした進歩に加え、こうした施設を活用することで、さらにトレーニング効果をアップさせることができる。ぜひとも多くのみなさんにこのアスリートセンターを活用していただき、自分にマッチしたトレーニング法を見つけ、パフォーマンスアップ、健康増進につなげてほしいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

「持久力強化のためのアスリート食」を提案

高地滞在中や高地トレーニングを行なっている期間中は、体調管理に加え、平地での普段の練習中以上に栄養補給(炭水化物や鉄分など)、水分の摂取が重要となる。
持久力強化に必要なヘモグロビンを増やすために特に必要な栄養素が鉄。鉄分を多く含み、その吸収を助けるビタミンCやたんぱく質を効果的に摂取するメニューに、レバニラ炒め、あさりとほうれん草のパスタ、ひじきと大豆の煮もの、カツオのたたきなどがある。
鉄分は吸収しにくい性質があり、食事と一緒にタンニンを含むコーヒーなどを飲むと、せっかく摂った鉄分が体外に流れてしまうので注意が必要だ。さらに毛細血管を強化する食事には、Tie2(血管の細胞にある受容体)の活性因子を含むとされるシナモンやビバーチ(過剰摂取は注意)、ルイボスティーなどがあり、これもあわせて覚えておきたい。
また、酸化を防ぐ抗酸化食材、腸内環境を整える食材も意識し、食事をとることでパフォーマンスアップにつながる。「トレーニングの見える化」の一環として、こうしたアスリート食のメニューなども日本気圧バルク工業アスリートセンターで提案していく予定となっている。

持久力強化のためのアスリート食
1.ヘモグロビンを増やす
鉄を多く含む食材
ヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質
鉄の吸収を高めるビタミンCの摂取
2.毛細血管を強化する
Tie2の活性因子を含む食材
3.酸化を防ぐ
抗酸化成分を含む食材
4.腸内環境を整える
食物繊維・発酵食品

ヘモグロビンを増やす食事

酸化を防ぐ食事

究極のアスリートランチ

<関連リンク>
日本気圧バルク工業スリートセンター
日本気圧バルク工業

来て、見て、使ってその効果、活用術を再確認 静岡県島田市にこのほど新設された日本気圧バルク工業アスリートセンター兼神戸大学スポーツ健康サイエンスラボ。一般開放は10月からの予定だが、その完成を記念し、シドニー五輪女子マラソン金メダリストで日本の高地トレーニングのパイオニアでもある高橋尚子さん(日本気圧バルク工業スペシャルトレーニングアドバイザー)と同ラボの責任者で長年にわたって日本気圧バルク工業とともに酸素の有効活用について共同研究を行なっている神戸大学大学院保健研究学科の藤野英己教授に、あらためて酸素(低圧低酸素・高気圧酸素)の効果や練習法、さらに今回完成した施設の利点、活用術などについて、それぞれの立場からお話をうかがった。 文/花木 雫、撮影/船越陽一郎

平地にいながらにして高地トレーニングを体感できる施設

日本初の河川敷マラソンコースとしても知られる静岡県の大井川マラソンコース「リバティ」。島田市、藤枝市、焼津市にまたがる全長17.9㎞(現時点、22㎞に延長予定)のコース上に、全天候型トラックの大井川河川敷陸上競技場をはじめ3つの陸上競技場などを有し、信号機もなく専用のマラソンコースのため車などの心配もなく走れることもあり、〝マラソントレーニングのメッカ〟として多くのランナーから親しまれている。 冬でも温暖な気候に加え、周辺には芝生コースとして活用できるゴルフ場や坂道トレーニングに適したロードコース、時に遠州の空っ風としても有名な強風が吹くことから風対策、夏の暑さ対策など、通常のトレーニングに加え、選手個々のニーズに合わせた練習ができることで、実業団をはじめ大学、高校など数多くのチームが合宿地としても活用されている。そのコース沿いにこのほど新しく完成したのが、日本気圧バルク工業アスリートセンター兼神戸大学スポーツ健康サイエンスラボだ。
高橋 藤野教授が、今回新しくできた合宿所としても活用できるアスリートセンターの監修をされたと伺っております。 藤野 はい、そうです。場所の利点、施設の概要などは、これまでに説明のあった通りです。 高橋 大井川マラソンコース「リバティ」は、私も走らせていただきましたが、河川敷でとても走りやすいコースでした。最近では、市民ランナーはもちろん、実業団や大学のトップ選手も合宿で利用するなど、多くの方々に親しまれているようですね。 大井川マラソンコース「リバティ」を走る高橋さん。マラソン専用コースのため車の心配もなく走れるのが魅力だ 藤野 このトレーニングセンターは、そうした環境を生かした施設となります。また、坂道や芝生路面、さらに遠州の空っ風と呼ばれる強風が吹くことでも知られており、風対策やその風を利用したフォームづくりなどにも役立つ環境となります。 高橋 風の抵抗を考えながら、体幹を意識したフォーム対策など、いろいろな活用が考えられているようですね。 藤野 そうした面も踏まえ、今回完成した施設のコンセプトなどについて少しお話させていただきます。まずは、高地トレーニングを低地にいながらにしてシミュレーションできる施設がトレーニングセンターとなります。国内最大級の低圧低酸素ルームが設置されており、その中で高地トレーニングを体感することができます。 高橋 私は現役時代、高地トレーニングの合宿地として利用していたアメリカのボルダーに10時間以上かけて移動していました。拠点は標高1600mの地点でしたが、そうした環境をここに来ればすぐに体験できるというわけですね。 最新機器でヘモグロビンや赤血球数などの血液状態がわずか10分程度でわかり、トレーニング効果の「見える化」が可能となる 藤野 低圧低酸素ルームは海抜0mから標高3000mまでの環境に設定することが可能です。低圧低酸素ルームで高地トレーニングを実際にシミュレーションでき、かつ大井川マラソンコース「リバティ」や競技場などを活用し、平地でのスピード練習も併せて実施できるという、自然の高地に赴いて行う高地トレーニングにない利点があります。 さらに、このトレーニングセンターは研究施設を兼ねており、研究で使用するシスメックス社のヘモグロビン測定システムを導入しており、実際のタイムや走りの感覚、体感に加え、赤血球やヘモグロビン値などの血液状態をわずか10分程度で正確に測定することで、練習の効果などを確認することが可能となっています。つまり、トレーニング効果の「見える化」が可能なのです。 高橋 練習の効果がすぐに確認できる点は、本当にうれしいですね。長距離、マラソンにはハードな厳しい練習がつきものですが、それが本当に力になっているのか不安になることもあります。きついだけで効果がなければ意味がありません。身体(血液)がどのように変化しているのかがわかるという「トレーニングの見える化」は、選手にとっては、やる気の面などから見てもとても大きいですね。 通常は、定期的に病院などに行って血液検査をする必要がありますが、ここに来れば練習はもちろん、そうした効果、体内の変化なども科学的にすぐに確認することができるなどメリットが大きいと感じます。 藤野 この施設は最大12人まで宿泊が可能で、練習(低圧低酸素ルーム、高地トレーニング)を行いながら、その効果を確認できる施設となっています。さらに高気圧酸素ルームをはじめ、炭酸浴が可能な浴室などリラックスできる設備も整っており、トレーニング効果を引き出し、確認するには最適な場所だと言えます。 日本気圧バルク工業アスリートセンターの低圧低酸素ルームには最新のトレッドミルを5台も設置している 高橋 低圧低酸素ルームも国内最大級のもので、室内に5台のトレッドミルが設置されるなど、大勢で利用できるのも魅力ですね。国内、平地にいながらにして高地トレーニングをシミュレーションでき、さらに自然を感じながらトレーニングもリフレッシュもできる合宿施設として、いろいろな方々に使ってほしいと感じました。

高地トレーニングのメリットとデメリット

藤野 周囲の環境などを含め施設のコンセプト、メリットなどについてお話してきましたが、ここで再度、高地トレーニングの効果、取り組み方について触れておこうと思います。 近年はがんの検査などにも用いられる線虫を使った低酸素環境と寿命についての実験で、低酸素環境の方が寿命が延びるということがわかってきました(図1)。 酸素は、使い方によって毒になったり薬になったりもします。鉄の錆は高橋さんもご存じだと思いますが、その錆は酸素によって劣化したもので、私たち人間の身体も酸素によって劣化します。できるだけ酸素によって劣化させないようにすることができれば(酸素濃度が薄い・低酸素環境=劣化させない)、それが寿命にも関わってくることになります。 図1 低酸素環境と寿命 高橋 酸素をたくさん吸った方が身体も楽で身体に良いと勘違いしていました。寿命のことなどを考えれば、それは逆なんですね。 藤野 確かに非常に高い濃度の酸素は身体に害を及ぼしますが、軽度の高気圧酸素であれば、アスリートの疲労回復をはじめ、高齢者や糖尿病患者などの代謝の促進、ケガの治癒の促進など健康に役立つというデータもたくさん出ており、使い方次第ということになります。長時間・期間、濃度の高い高気圧酸素に曝露されていなければ問題はありません。 高橋 そうした酸素のメリット、デメリット、使い方・使い分けの方法をしっかりと理解した上で活用することが大切だということが、先生のご説明から理解することができました。トレーニングはもちろん、普段の生活からうまく使い分けることで、効果なども変わってくるのですね。 藤野 低酸素環境下では、細胞から低酸素誘導因子(HIF)という物質が出てくるというのがポイントとなります(図2)。通常の環境では分解されてしまうHIFは、低酸素環境下では、分解されずエリスロポイチン、血管を新しくつくるVEGFの産生が向上。脊髄から赤血球が分化して増えることになります(図3)。 図2 低酸素環境のポイント 図3 低酸素環境で血球が増加 高橋 先日、低圧低酸素ルームで20~30分ジョグをした後に検査をした際、その前後で赤血球の量が少し増えていました。 藤野 そうした短期的な変化も現れますし、当然、継続して低酸素環境下で過ごしたりトレーニングを積むことで、赤血球の量も増え、ヘモグロビン値も上がってくることになります。実際、図3が示す通り、高地トレーニングのメッカでもある中国の昆明で実施した実験データでも、そのことは証明されています。 高橋 私は、マラソン選手としてはヘモグロビン値が低い方でしたが、現役時代は1年の半分近くアメリカのボルダーで過ごしたお陰で、ヘモグロビン値を12ぐらいで保っていました。引退後もボルダーにはたびたび通っており、ヘモグロビン値もキープできていたのですが、コロナ禍、国内で過ごすようになってどんどん値が減り、最近では9まで落ち込んでおり(ヘモグロビン(Hb)の基準値 男性14~18g/dl、女性12~16g/dl)やはり高地で過ごすことで身体に変化があったのだと感じています。 藤野 さらに高地では、毛細血管を増やす血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の細胞内濃度が上昇。実際に毛細血管が増えることになります。図4はマウスを使った実験データとなりますが、標高400m と標高4000mではまったく異なることがわかっていただけると思います。 図4 低酸素環境で毛細血管が増加 高橋 毛細血管が増えることによる日常生活のメリットはありますか。 藤野 一番は、疲れやすさなどに影響が出てきます。コロナ禍、最近は、高齢者などは特にあまり外に出ない生活が続いていると思われます。動かないでいると毛細血管は自然と減ってきます。毛細血管が減ると酸素を筋肉に届けることができなくなり、徐々に持久力がなくなってきます。少し動いただけでもしんどくなりやすくなる。体力の低下、さらには冷え性などにもつながってきます。 高橋 そう考えると低圧低酸素ルームは、アスリートだけではなく高齢者などいろんな方々の健康にも役立つ機器だと言えますね。 藤野 まさにその通りだと思います。ここまでは低酸素環境、高地トレーニングのメリットについてお話してきました。続いては反対のデメリットについても触れておこうと思います。まず一つ目は、酸素が薄いがゆえに質の高いトレーニングができないということ。さらに量的にも下げざるを得なくなります。 高橋 私もボルダーで行う練習と日本の平地とでは、1㎞のペースが同じだと負荷はまったく違うと実感していました。 藤野 実際、実業団チームなどからも「練習の質・量が下がる」というお話を耳にします。チームによっていろいろなトレーニングが試されているところで、図5の高地に滞在し、練習は平地で行うリビングハイ・トレーニングローなども一つの例と言えます。 高地に滞在し、低酸素環境に順化していくことで毛細血管が増え、赤血球やヘモグロビン値の増加につながります。その上で、平地に降りて普段と変わらぬトレーニングを行なう。移動に時間はかかりますが、トレーニング効果としてはアップするものと考えられます。 こうした高地環境下のトレーニングを、移動を伴わず可能にするのが、今回できたアスリートセンターとなります。 図5 高地(低圧低酸素)トレーニングの利点・欠点 高橋 低圧低酸素ルームに入れば高地と同じ環境に身を置くことになりますし、そこで過ごしたり、トレーニングを積むことで、海外などに赴くことなく、同じような効果のトレーニングが可能となるのは、本当にすばらしいことだと思います。ボルダーへの移動を経験している私としては、その時間、手間を短縮できるメリットは大きいですね。 藤野 高橋さんの場合、高地でトレーニングを積み、大会に合わせて数週間前に帰国するというのが通常のパターンだったと思います。しかし、こうした施設を活用することで、ぎりぎりまで効果を落とすことなく高地トレーニングに打ち込むことができます。 高橋 高地トレーニングの場合、高地順化した身体が2週間程度で元の状態に戻ってしまうと言われており、私もそうした効果、その後の仕上げのトレーニングなどを逆算して帰国していました。男子選手の場合は、さらにスピード練習にも時間を割くことが多く、難しさがあったと思います。このようなトレーニングセンターがあればそうした心配が少なくなるのはメリットではないでしょうか。お話を聞き、目的に合わせていろんな使い方があると感じました。 藤野 陸上競技に限らず、高地トレーニングに取り組むいろいろな競技のアスリートから高地トレーニング、低酸素トレーニングには、向き不向き、高地順化を含め個人差があるとお聞きします。 高橋 そうですね。私が現役時代に所属したチームにも向いている選手、高地に来ると調子を落としてしまう選手など、いろいろなタイプの選手がいました。 藤野 低酸素環境の順化を含め、持久力タイプの選手、そうでない選手には、どうやら遺伝子が関係しているのではないかという研究が進んでいます。論文なども数多く発表されており、いずれはこの施設でも、そうした遺伝子を分析できる設備を整えていければと考えています。 高橋 とても興味深いお話ですね。長距離タイプ、さらに高地トレーニングの向き不向きなども判断できるようになるとすれば、いろいろな無駄や時間が節約できることになりますね。 藤野 スポーツはもちろん、人生においても、自分の体質、身体のことをあらかじめ知っておくことはとても重要で、病気の予防などはもちろん、健康な日々を過ごす大きな要素の一つになると考えています。 高橋 科学、医学の進歩はすごいですね。そうした進歩に加え、こうした施設を活用することで、さらにトレーニング効果をアップさせることができる。ぜひとも多くのみなさんにこのアスリートセンターを活用していただき、自分にマッチしたトレーニング法を見つけ、パフォーマンスアップ、健康増進につなげてほしいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
「持久力強化のためのアスリート食」を提案 高地滞在中や高地トレーニングを行なっている期間中は、体調管理に加え、平地での普段の練習中以上に栄養補給(炭水化物や鉄分など)、水分の摂取が重要となる。 持久力強化に必要なヘモグロビンを増やすために特に必要な栄養素が鉄。鉄分を多く含み、その吸収を助けるビタミンCやたんぱく質を効果的に摂取するメニューに、レバニラ炒め、あさりとほうれん草のパスタ、ひじきと大豆の煮もの、カツオのたたきなどがある。 鉄分は吸収しにくい性質があり、食事と一緒にタンニンを含むコーヒーなどを飲むと、せっかく摂った鉄分が体外に流れてしまうので注意が必要だ。さらに毛細血管を強化する食事には、Tie2(血管の細胞にある受容体)の活性因子を含むとされるシナモンやビバーチ(過剰摂取は注意)、ルイボスティーなどがあり、これもあわせて覚えておきたい。 また、酸化を防ぐ抗酸化食材、腸内環境を整える食材も意識し、食事をとることでパフォーマンスアップにつながる。「トレーニングの見える化」の一環として、こうしたアスリート食のメニューなども日本気圧バルク工業アスリートセンターで提案していく予定となっている。
持久力強化のためのアスリート食 1.ヘモグロビンを増やす 鉄を多く含む食材 ヘモグロビンなどの材料になるたんぱく質 鉄の吸収を高めるビタミンCの摂取 2.毛細血管を強化する Tie2の活性因子を含む食材 3.酸化を防ぐ 抗酸化成分を含む食材 4.腸内環境を整える 食物繊維・発酵食品
ヘモグロビンを増やす食事 酸化を防ぐ食事 究極のアスリートランチ
<関連リンク> 日本気圧バルク工業スリートセンター 日本気圧バルク工業

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