2020.12.09
5区で区間賞を獲得して往路優勝、総合優勝の立役者となった日体大の服部翔大(右)
平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は日体大が10年ぶり30回目の総合優勝を果たした第89回大会(2013年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?
5区区間賞の日体大・服部が金栗杯受賞
中大がまさかの途中棄権で連続シードが28でストップ
全日本大学駅伝を大会新で連覇した駒大と、前回王者で全日本2位の東洋大による「2強」の優勝争いが予想された第89回大会。10月の予選会では40年連続で本戦出場を続けていた東海大が敗退したほか、前年11位の国士大、同14位の拓大も本戦へ駒を進めなかった。一方で大東大と法大が3年ぶり、日大が2年ぶりに本戦出場をつかんだ。
強烈な向かい風が吹き荒ぶ中でスタートした1区は、16km手前でスパートをかけた東洋大の田口雅也に法大の西池和人、明大の文元慧がつく、2年生3人の争いとなった。19km付近で再度ペースを上げた田口が区間賞を獲得。14秒差の2位で明大、さらにその1秒差で法大が続き、前々回王者の早大、出雲駅伝優勝の青学大が17位、18位と出遅れた。
2区では東洋大の設楽啓太(3年)が首位を独走する一方で、13位でスタートした日大のガンドゥ・ベンジャミン(4年)が猛烈な勢いで迫っていく。13位でスタートしたベンジャミンはあっという間に2位まで順位を上げ、最後の上り坂で設楽を捕らえて12人抜きを達成。区間賞を獲得する走りでトップ中継を果たした。
3区では双子の兄からタスキを受けた東洋大の設楽悠太(3年)が日大を抜いてトップを爆走。区間1位の走りで後続に2分41秒の大差をつけた。駒大が中村匠吾(2年)の3人抜きで2位へ浮上。早大も大迫傑(3年)が区間2位と好走して12位から3位へ躍り出た。
首位をひた走る東洋大は4区でやや詰められたものの、そのままトップで5区へ中継。日体大が2位に上がり、3位に早大、4位に明大と続き、駒大は4区で区間19位と振るわず、10位まで順位を落とした。
山上りの5区では日体大の服部翔大(3年)と早大の山本修平(2年)が東洋大を猛追し、12km手前で首位に躍り出る。その後、服部が山本を振り切り、最終的には2分35秒の大差をつけて26年ぶりの往路優勝を決めた。2位に早大、3位に東洋大、4位に明大と上位の顔ぶれは変わらず、13位から関口頌悟(2年)が8人抜きの快走を見せた法大が5位に食い込んだ。
復路は日体大の強さが際立った。6区の鈴木悠介(3年)が区間7位で山を下ると、7区の高田翔二(4年)、8区の高柳祐也(4年)、9区の矢野圭吾(3年)、10区の谷永雄一(4年)は区間2位でまとめ、終わってみれば6区で2位に浮上した東洋大に5分近くの差をつけて30年ぶり10回目の総合優勝を勝ち取った。前年19位からの優勝は史上最大の“V字回復”だった。
陸上部では日本インカレの総合優勝か箱根駅伝の優勝時のみに許される「エッサッサ」。大手町では30年ぶりに披露された
往路9位から3位まで順位を上げた駒大が復路優勝。6区の千葉健太、9区の上野渉、10区の後藤田健介と4年生3人の区間賞で優勝候補の意地を見せた。
4位争いはし烈を極め、帝京大の熊崎健人(2年)と早大の田口大貴(2年)がフィニッシュ直前までデッドヒートを繰り広げた。お互いスパートするタイミングを見計らい、先に勝負を仕掛けた熊崎が同タイムながらわずかに先着。チームの過去最高順位タイを手繰り寄せた。
予選会から勝ち上がった法大が9位で7年ぶりにシード権を獲得。10位の中央学大も4年ぶりにシード校へ返り咲いた。
一方で5区では城西大と中大が途中棄権となるアクシデントも発生。中大は1985年から続けていた連続シードが「28」で途切れたが、8区の永井秀篤(2年)が参考記録ながら区間1位の記録を36秒も上回る“幻の区間賞”の走りで名門の意地を見せた。
金栗四三杯(最優秀選手)は5区で区間賞を獲得して総合優勝の立役者となった服部が獲得。強風が吹き荒れ、全体的に記録水準は低かったものの、名門の復活、ごぼう抜き、熾烈なアンカー争いなど見応えのある大会だった。
<人物Close-up>
服部翔大(日体大3年)
埼玉栄高では2年時と3年時に全国都道府県対抗駅伝の1区で区間賞を獲得。鳴り物入りで入学した日体大でも1年時から活躍し、箱根駅伝では1年時に3区区間2位、2年時は1区区間2位と好走した。2年目の箱根では総合19位と沈み、大会終了後に下級生ながらキャプテンに任命される。そして迎えた3年時の箱根では、強風吹き荒れる5区で区間賞を獲得し、2位からの逆転劇で26年ぶりの往路優勝、30年ぶりの総合優勝の立役者となった。4年時にはユニバーシアードの日本代表としても活躍し、10000m6位、ハーフマラソン5位という成績を残す。4年目の箱根も5区を走ったが、わずか1秒差で区間賞を逃す区間2位。チームも総合3位で連覇を逃したが、箱根では4回出場してすべて区間2位以内と抜群の安定感を見せた。大学卒業後は実業団のHondaを経て、現在は日立物流に所属し、11月の東日本実業団駅伝では5区区間4位と好走している。
<総合成績>
1位 日本体育大学 11.13.26(往路1位、復路2位)
2位 東洋大学 11.18.20(往路3位、復路4位)
3位 駒澤大学 11.19.23(往路9位、復路1位)
4位 帝京大学 11.21.39(往路7位、復路3位)
5位 早稲田大学 11.21.39(往路2位、復路8位)
6位 順天堂大学 11.24.43(往路8位、復路7位)
7位 明治大学 11.25.14(往路4位、復路13位)
8位 青山学院大学 11.25.59(往路6位、復路9位)
9位 法政大学 11.26.40(往路5位、復路15位)
10位 中央学院大学 11.27.34(往路13位、復路5位)
========シード権ライン=========
11位 山梨学院大学 11.28.24(往路11位、復路11位)
12位 大東文化大学 11.30.46(往路12位、復路16位)
13位 関東学連選抜 11.31.50(往路10位、復路17位)
14位 國學院大學 11.33.28(往路14位、復路12位)
15位 日本大学 11.35.23(往路15位、復路14位)
16位 神奈川大学 11.37.36(往路18位、復路6位)
17位 東京農業大学 11.39.13(往路17位、復路10位)
18位 上武大学 11.42.44(往路16位、復路18位)
途中棄権 城西大学 記録なし
途中棄権 中央大学 記録なし
<区間賞>
1区(21.4km)田口雅也(東洋大2) 1.03.32
2区(23.2km)N.ベンジャミン(日 大4)1.08.46
3区(21.5km)設楽悠太(東洋大3) 1.04.36
4区(18.5km)田中秀幸(順 大4) 57.16
5区(23.4km)服部翔大(日体大3) 1.20.35
6区(20.8km)千葉健太(駒 大4) 58.15
7区(21.3km)我那覇和真(神奈川大1)1.04.47
8区(21.5km)高橋宗司(青学大2) 1.06.46
9区(23.2km)上野 渉(駒 大4) 1.09.50
10区(23.1km)後藤田健介(駒 大4)1.10.49
5区区間賞の日体大・服部が金栗杯受賞 中大がまさかの途中棄権で連続シードが28でストップ
全日本大学駅伝を大会新で連覇した駒大と、前回王者で全日本2位の東洋大による「2強」の優勝争いが予想された第89回大会。10月の予選会では40年連続で本戦出場を続けていた東海大が敗退したほか、前年11位の国士大、同14位の拓大も本戦へ駒を進めなかった。一方で大東大と法大が3年ぶり、日大が2年ぶりに本戦出場をつかんだ。 強烈な向かい風が吹き荒ぶ中でスタートした1区は、16km手前でスパートをかけた東洋大の田口雅也に法大の西池和人、明大の文元慧がつく、2年生3人の争いとなった。19km付近で再度ペースを上げた田口が区間賞を獲得。14秒差の2位で明大、さらにその1秒差で法大が続き、前々回王者の早大、出雲駅伝優勝の青学大が17位、18位と出遅れた。 2区では東洋大の設楽啓太(3年)が首位を独走する一方で、13位でスタートした日大のガンドゥ・ベンジャミン(4年)が猛烈な勢いで迫っていく。13位でスタートしたベンジャミンはあっという間に2位まで順位を上げ、最後の上り坂で設楽を捕らえて12人抜きを達成。区間賞を獲得する走りでトップ中継を果たした。 3区では双子の兄からタスキを受けた東洋大の設楽悠太(3年)が日大を抜いてトップを爆走。区間1位の走りで後続に2分41秒の大差をつけた。駒大が中村匠吾(2年)の3人抜きで2位へ浮上。早大も大迫傑(3年)が区間2位と好走して12位から3位へ躍り出た。 首位をひた走る東洋大は4区でやや詰められたものの、そのままトップで5区へ中継。日体大が2位に上がり、3位に早大、4位に明大と続き、駒大は4区で区間19位と振るわず、10位まで順位を落とした。 山上りの5区では日体大の服部翔大(3年)と早大の山本修平(2年)が東洋大を猛追し、12km手前で首位に躍り出る。その後、服部が山本を振り切り、最終的には2分35秒の大差をつけて26年ぶりの往路優勝を決めた。2位に早大、3位に東洋大、4位に明大と上位の顔ぶれは変わらず、13位から関口頌悟(2年)が8人抜きの快走を見せた法大が5位に食い込んだ。 復路は日体大の強さが際立った。6区の鈴木悠介(3年)が区間7位で山を下ると、7区の高田翔二(4年)、8区の高柳祐也(4年)、9区の矢野圭吾(3年)、10区の谷永雄一(4年)は区間2位でまとめ、終わってみれば6区で2位に浮上した東洋大に5分近くの差をつけて30年ぶり10回目の総合優勝を勝ち取った。前年19位からの優勝は史上最大の“V字回復”だった。 陸上部では日本インカレの総合優勝か箱根駅伝の優勝時のみに許される「エッサッサ」。大手町では30年ぶりに披露された 往路9位から3位まで順位を上げた駒大が復路優勝。6区の千葉健太、9区の上野渉、10区の後藤田健介と4年生3人の区間賞で優勝候補の意地を見せた。 4位争いはし烈を極め、帝京大の熊崎健人(2年)と早大の田口大貴(2年)がフィニッシュ直前までデッドヒートを繰り広げた。お互いスパートするタイミングを見計らい、先に勝負を仕掛けた熊崎が同タイムながらわずかに先着。チームの過去最高順位タイを手繰り寄せた。 予選会から勝ち上がった法大が9位で7年ぶりにシード権を獲得。10位の中央学大も4年ぶりにシード校へ返り咲いた。 一方で5区では城西大と中大が途中棄権となるアクシデントも発生。中大は1985年から続けていた連続シードが「28」で途切れたが、8区の永井秀篤(2年)が参考記録ながら区間1位の記録を36秒も上回る“幻の区間賞”の走りで名門の意地を見せた。 金栗四三杯(最優秀選手)は5区で区間賞を獲得して総合優勝の立役者となった服部が獲得。強風が吹き荒れ、全体的に記録水準は低かったものの、名門の復活、ごぼう抜き、熾烈なアンカー争いなど見応えのある大会だった。 <人物Close-up> 服部翔大(日体大3年) 埼玉栄高では2年時と3年時に全国都道府県対抗駅伝の1区で区間賞を獲得。鳴り物入りで入学した日体大でも1年時から活躍し、箱根駅伝では1年時に3区区間2位、2年時は1区区間2位と好走した。2年目の箱根では総合19位と沈み、大会終了後に下級生ながらキャプテンに任命される。そして迎えた3年時の箱根では、強風吹き荒れる5区で区間賞を獲得し、2位からの逆転劇で26年ぶりの往路優勝、30年ぶりの総合優勝の立役者となった。4年時にはユニバーシアードの日本代表としても活躍し、10000m6位、ハーフマラソン5位という成績を残す。4年目の箱根も5区を走ったが、わずか1秒差で区間賞を逃す区間2位。チームも総合3位で連覇を逃したが、箱根では4回出場してすべて区間2位以内と抜群の安定感を見せた。大学卒業後は実業団のHondaを経て、現在は日立物流に所属し、11月の東日本実業団駅伝では5区区間4位と好走している。 <総合成績> 1位 日本体育大学 11.13.26(往路1位、復路2位) 2位 東洋大学 11.18.20(往路3位、復路4位) 3位 駒澤大学 11.19.23(往路9位、復路1位) 4位 帝京大学 11.21.39(往路7位、復路3位) 5位 早稲田大学 11.21.39(往路2位、復路8位) 6位 順天堂大学 11.24.43(往路8位、復路7位) 7位 明治大学 11.25.14(往路4位、復路13位) 8位 青山学院大学 11.25.59(往路6位、復路9位) 9位 法政大学 11.26.40(往路5位、復路15位) 10位 中央学院大学 11.27.34(往路13位、復路5位) ========シード権ライン========= 11位 山梨学院大学 11.28.24(往路11位、復路11位) 12位 大東文化大学 11.30.46(往路12位、復路16位) 13位 関東学連選抜 11.31.50(往路10位、復路17位) 14位 國學院大學 11.33.28(往路14位、復路12位) 15位 日本大学 11.35.23(往路15位、復路14位) 16位 神奈川大学 11.37.36(往路18位、復路6位) 17位 東京農業大学 11.39.13(往路17位、復路10位) 18位 上武大学 11.42.44(往路16位、復路18位) 途中棄権 城西大学 記録なし 途中棄権 中央大学 記録なし <区間賞> 1区(21.4km)田口雅也(東洋大2) 1.03.32 2区(23.2km)N.ベンジャミン(日 大4)1.08.46 3区(21.5km)設楽悠太(東洋大3) 1.04.36 4区(18.5km)田中秀幸(順 大4) 57.16 5区(23.4km)服部翔大(日体大3) 1.20.35 6区(20.8km)千葉健太(駒 大4) 58.15 7区(21.3km)我那覇和真(神奈川大1)1.04.47 8区(21.5km)高橋宗司(青学大2) 1.06.46 9区(23.2km)上野 渉(駒 大4) 1.09.50 10区(23.1km)後藤田健介(駒 大4)1.10.49RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking 人気記事ランキング
-
2024.12.12
-
2024.12.12
-
2024.12.11
2024.12.07
不破聖衣来が10000mに出場し12位でフィニッシュ 完全復活へ実戦積む/エディオンDC
-
2024.11.24
-
2024.11.20
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2024.12.12
日本GPシリーズチャンピオンは福部真子と筒江海斗!種目別800mは落合晃&久保凛の高校日本記録保持者コンビがV、女子1500m田中希実が4連覇
日本グランプリ(GP)シリーズ2024のシリーズチャンピオンが発表され、男子は400mハードルの筒江海斗(ST-WAKO)、女子は100mハードルの福部真子(日本建設工業)と、ともにパリ五輪のハードル種目代表が初の栄冠に […]
2024.12.12
世界陸連が6つの世界記録を承認 川野将虎が男子35km初代世界記録保持者に
12月11日、世界陸連は5月から10月にかけて誕生した世界記録を正式に承認したことを発表した。 10月27日の日本選手権35km競歩(山形・高畠)で、川野将虎(旭化成)が樹立した2時間21分47秒も世界記録として認定。同 […]
2024.12.12
月刊陸上競技2025年1月号
Contents W別冊付録 箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望 大会報道 福岡国際マラソン 吉田祐也 日本歴代3位の激走 涙の復活劇 全日本実業団対抗女子駅伝 JP日本郵政グループ 4年ぶりV 地域実業団駅伝 中学 […]
Latest Issue 最新号
2024年12月号 (11月14日発売)
全日本大学駅伝
第101回箱根駅伝予選会
高校駅伝都道府県大会ハイライト
全日本35㎞競歩高畠大会
佐賀国民スポーツ大会