2025.05.16

今年9月、陸上の世界選手権(世界陸上)が34年ぶりに東京・国立競技場で開催される。今回で20回目の節目を迎える世界陸上。日本で開催されるのは1991年の東京、2007年の大阪を含めて3回目で、これは同一国で最多だ。
これまで数々のスーパースター、名勝負が生まれた世界陸上の各大会の様子を紹介する『世界陸上プレイバック』。2001年にカナダのエドモントンで行われた第8回大会を振り返る。
ゼレズニーが大会新で3大会ぶり金
男子やり投ではヤン・ゼレズニー(チェコ)が現在も大会記録として残る92m80で3大会ぶり3大会目の金メダルを獲得した。
ゼレズニーは世界記録を3度更新し、1996年にマークした98m48は今も破られていない。五輪は92年のバルセロナ大会から3連覇、世界陸上でも93年、95年と連覇したが、97年は9位、99年は銅メダルと苦戦が続いていた。
王座奪回を狙った今大会は1投目に前回王者のアキ・パルヴィアイネン(フィンランド)が91m31でトップに立つなか、ゼレズニーは全体4番目の81m76にとどまる。それでも2投目に92m80で逆転すると、そのまま逃げ切り3大会ぶりに金メダルを奪還した。
35歳でハイレベルな争いを制したゼレズニーにとって、これが最後の世界タイトルとなった。
男子円盤投はラルス・リーデル(ドイツ)が69m72の大会新記録で、2大会ぶり5回目の金メダルを獲得した。
リーデルは91年の東京大会からこの種目で4連覇を達成したレジェンド。しかし、前回大会は銅メダルに終わり、5連覇を阻まれていた。
3投目を終えた時点では66m74で3位。この時点では2000年のシドニー五輪金メダリストのウィルギリウス・アレクナ(リトアニア)が69m40でトップに立っていた。
リーデルは4投目に69m50を投げてトップに立つと、5投目には69m72とさらに記録を伸ばす。一方、アレクナは4投目以降に記録を伸ばせず、リーデルが世界王者の座を取り戻した。
男子走幅跳ではイバン・ペドロソ(キューバ)が8m40で4連覇を達成。2回目に8m23(-0.9)を跳んでトップに立つと、5回目には8m40(+1.2)でライバルたちを引き離した。
男子100mではモーリス・グリーンが80m付近で肉離れを起こしながらも9秒82(-0.2)で3連覇を達成。前年のシドニー五輪で100mと4×100mリレーの2冠を達成した強さを見せつけた。
また、今大会は接戦が多かった大会でもある。男子マラソンはゲザハン・アベラ(エチオピア)とサイモン・ビウォット(ケニア)の一騎打ち。競技場までデッドヒートは続いたが、残り200mほどでアベラがスパートし、わずか1秒差で競り勝った。
女子走幅跳では95年イエテボリ大会で金メダルを獲得しているフィオナ・メイ(イタリア)とシドニー五輪金メダリストのタチアナ・コトワ(ロシア)が競り合った。3回目にメイが7m02(+2.6)を跳び、コトワも4回目に7m01(+3.6)をマークして1cm差に迫るも、逆転とはならず、メイが3大会ぶりに金メダルを獲得した。
女子10000mはデラルツ・ツルとベルハネ・アデレのエチオピア勢がフィニッシュ直前まで激しく競り合う展開となる。わずかにツルが先着して、その差は0.04秒。さらにゲテ・ワミも3位に入り、エチオピア勢3人がメダルを独占した。
室伏広治、為末大が日本人初の快挙
日本からは男子32選手、女子20選手が出場。入賞は史上最多の8を数えた。
世界大会投てき種目で日本初のメダリストとなったのが男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)で、82m92を放って銀メダルを獲得した。
室伏の父・重信も「アジアの鉄人」と呼ばれたハンマー投選手で、アジア大会で5連覇を経験。世界陸上にも第1回大会に出場している。
広治も父と同じくハンマー投の道に進み、世界トップレベルの選手に成長したが、前年のシドニー五輪では9位と入賞まであと一歩届かなかった。
26歳で迎えた4回目の世界陸上はシモン・ジョルコフスキ(ポーランド)が1投目に81m88で先行するが、室伏が2投目に82m46を投げて逆転。3、4投目も81m台を記録し、金メダルが視界に入る。
しかし、ジョルコフスキが5投目に自己記録を91cmも更新する83m38の大アーチで逆転。室伏も直後の5投目に82m92と記録を伸ばしたが、6投目は82m61に終わり、再逆転とはならなかったが、日本投てき界の歴史を大きく変えた。
トラック種目でも日本人初の快挙を成し遂げた選手がいる。男子400mハードルの為末大(法大)が銅メダルを獲得し、世界大会の男子トラック種目で初のメダリストとなった。
準決勝で48秒10の日本新記録をマークした為末は、決勝でも積極的な走りを見せる。300mを過ぎた時点でハディ・スーアン・アル・ソマイリー(サウジアラビア)と並んでトップ。9台目を越えてからフェリックス・サンチェス(ドミニカ共和国)とファブリツィオ・モリ(イタリア)に抜かれたが、最後の粘りで、ソマイリーに競り勝った。

男子400mハードルで銅メダルを獲得した為末大
記録は今も日本記録として残る47秒89。為末の前半攻める走りは1995年のイエテボリ大会で7位入賞を果たした山崎一彦と同じ攻めのスタイルで、大舞台において最高のパフォーマンスを見せた。
女子マラソンでは土佐礼子(三井海上)が2時間26分06秒で銀メダルを獲得。チームメイトの渋井陽子も2時間26分33秒で4位入賞を果たした。
35kmを過ぎた時点でシドニー五輪銀メダリストのリディア・シモン(ルーマニア)、土佐、渋井の3人に先頭が絞られる。37km過ぎで渋井が遅れ、シモンと土佐の争いに。残り1kmでシモンが仕掛け、土佐はついていくことができなかったが、見事な銀メダルとなった。
男子マラソンでは油谷繁(中国電力)が2時間14分07秒で5位、森下由輝(旭化成)が2時間17分05秒で8位とダブル入賞。男子20km競歩では柳澤哲(綜合警備保障)が1時間22分11秒で7位に入っている。
トラック種目では松田亮(広島経大)、末續慎吾(東海大)、藤本俊之(東海大)、朝原宣治(大阪ガス)のメンバーで挑んだ4×100mリレーが38秒96で4位となり、3大会ぶり入賞を果たした。
ゼレズニーが大会新で3大会ぶり金
男子やり投ではヤン・ゼレズニー(チェコ)が現在も大会記録として残る92m80で3大会ぶり3大会目の金メダルを獲得した。 ゼレズニーは世界記録を3度更新し、1996年にマークした98m48は今も破られていない。五輪は92年のバルセロナ大会から3連覇、世界陸上でも93年、95年と連覇したが、97年は9位、99年は銅メダルと苦戦が続いていた。 王座奪回を狙った今大会は1投目に前回王者のアキ・パルヴィアイネン(フィンランド)が91m31でトップに立つなか、ゼレズニーは全体4番目の81m76にとどまる。それでも2投目に92m80で逆転すると、そのまま逃げ切り3大会ぶりに金メダルを奪還した。 35歳でハイレベルな争いを制したゼレズニーにとって、これが最後の世界タイトルとなった。 男子円盤投はラルス・リーデル(ドイツ)が69m72の大会新記録で、2大会ぶり5回目の金メダルを獲得した。 リーデルは91年の東京大会からこの種目で4連覇を達成したレジェンド。しかし、前回大会は銅メダルに終わり、5連覇を阻まれていた。 3投目を終えた時点では66m74で3位。この時点では2000年のシドニー五輪金メダリストのウィルギリウス・アレクナ(リトアニア)が69m40でトップに立っていた。 リーデルは4投目に69m50を投げてトップに立つと、5投目には69m72とさらに記録を伸ばす。一方、アレクナは4投目以降に記録を伸ばせず、リーデルが世界王者の座を取り戻した。 男子走幅跳ではイバン・ペドロソ(キューバ)が8m40で4連覇を達成。2回目に8m23(-0.9)を跳んでトップに立つと、5回目には8m40(+1.2)でライバルたちを引き離した。 男子100mではモーリス・グリーンが80m付近で肉離れを起こしながらも9秒82(-0.2)で3連覇を達成。前年のシドニー五輪で100mと4×100mリレーの2冠を達成した強さを見せつけた。 また、今大会は接戦が多かった大会でもある。男子マラソンはゲザハン・アベラ(エチオピア)とサイモン・ビウォット(ケニア)の一騎打ち。競技場までデッドヒートは続いたが、残り200mほどでアベラがスパートし、わずか1秒差で競り勝った。 女子走幅跳では95年イエテボリ大会で金メダルを獲得しているフィオナ・メイ(イタリア)とシドニー五輪金メダリストのタチアナ・コトワ(ロシア)が競り合った。3回目にメイが7m02(+2.6)を跳び、コトワも4回目に7m01(+3.6)をマークして1cm差に迫るも、逆転とはならず、メイが3大会ぶりに金メダルを獲得した。 女子10000mはデラルツ・ツルとベルハネ・アデレのエチオピア勢がフィニッシュ直前まで激しく競り合う展開となる。わずかにツルが先着して、その差は0.04秒。さらにゲテ・ワミも3位に入り、エチオピア勢3人がメダルを独占した。室伏広治、為末大が日本人初の快挙
日本からは男子32選手、女子20選手が出場。入賞は史上最多の8を数えた。 世界大会投てき種目で日本初のメダリストとなったのが男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)で、82m92を放って銀メダルを獲得した。 室伏の父・重信も「アジアの鉄人」と呼ばれたハンマー投選手で、アジア大会で5連覇を経験。世界陸上にも第1回大会に出場している。 広治も父と同じくハンマー投の道に進み、世界トップレベルの選手に成長したが、前年のシドニー五輪では9位と入賞まであと一歩届かなかった。 26歳で迎えた4回目の世界陸上はシモン・ジョルコフスキ(ポーランド)が1投目に81m88で先行するが、室伏が2投目に82m46を投げて逆転。3、4投目も81m台を記録し、金メダルが視界に入る。 しかし、ジョルコフスキが5投目に自己記録を91cmも更新する83m38の大アーチで逆転。室伏も直後の5投目に82m92と記録を伸ばしたが、6投目は82m61に終わり、再逆転とはならなかったが、日本投てき界の歴史を大きく変えた。 トラック種目でも日本人初の快挙を成し遂げた選手がいる。男子400mハードルの為末大(法大)が銅メダルを獲得し、世界大会の男子トラック種目で初のメダリストとなった。 準決勝で48秒10の日本新記録をマークした為末は、決勝でも積極的な走りを見せる。300mを過ぎた時点でハディ・スーアン・アル・ソマイリー(サウジアラビア)と並んでトップ。9台目を越えてからフェリックス・サンチェス(ドミニカ共和国)とファブリツィオ・モリ(イタリア)に抜かれたが、最後の粘りで、ソマイリーに競り勝った。 [caption id="attachment_170195" align="alignnone" width="800"]
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