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2020.07.30

PlayBack箱根駅伝1996/古豪・中大が最多14度目のV
PlayBack箱根駅伝1996/古豪・中大が最多14度目のV

早大との一騎打ちを制し、32年ぶりの総合優勝を果たした中大。写真はアンカーの大成貴之

平成以降の箱根駅伝を振り返る「PlayBack箱根駅伝」。今回は古豪・中大が32年ぶりの総合優勝を果たした第72回大会(1996年)を紹介する。大会の歴史を知ることで、正月の箱根路がより楽しみになるかも!?

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プレイバック箱根駅伝 – 写真で振り返るHakone History

中大が32年ぶりの箱根制覇。優勝候補2校が途中棄権の波乱

8区で区間新記録を樹立し、追いすがる早大との差を2分以上も突き放した川波貴臣

出雲駅伝、全日本大学駅伝でいずれも上位を占めた中大、早大、山梨学大、神奈川大が優勝候補に挙げられた第72回大会。前回出場校の中央学大が3年ぶりの予選会敗退を喫した一方で、法大が2年ぶりに本戦出場を果たした。

1区は混戦模様から予選会個人トップだった亜細亜大のビズネ・ヤエ・トゥーラ(4年)が残り600mで抜け出し、大学史上初めて鶴見中継所をトップ通過。優勝候補の4校は早大が9位、中大が11位、神奈川大が14位、山梨学大が最下位(15位)と出遅れた。

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2区では強力なエースを置く早大と中大が驚異のゴボウ抜きを見せた。早大は前回この区間で1時間6分48秒の新記録を樹立した渡辺康幸(4年)が再び快走。自身の持つ区間記録には6秒及ばなかったものの、8人抜きの区間賞で首位に躍り出た。中大も松田和宏(3年)が9人抜きの区間2位で2位に浮上。最後方からのスタートとなった山梨学大のステファン・マヤカ(4年)は、一時6位まで順位を上げたものの、終盤で失速し、9位でのタスキリレーとなった。

3区では早大が首位の座を守った一方で、神奈川大は高津智一(2年)が区間賞の快走で2位へ、山梨学大も中馬大輔(2年)が区間2位の走りで3位へ押し上げた。

4区では、今大会最大のハプニングが発生した。前年の世界選手権マラソン代表の山梨学大・中村祐二(3年)と神奈川大・高嶋康司(2年)が脚を痛めて無念の途中棄権。1大会で複数の大学がリタイアするのは史上初の事例で、まさかのかたちで山梨学大は3連覇の夢が潰えることになった。

2区以降、首位をひた走った早大は5区の小林雅幸(3年)が1時間10分27秒の区間新記録を樹立し、2年連続の往路優勝。4区・榎木和貴(3年)の区間賞で2位に浮上した中大が2分15秒遅れの往路2位。3位の東海大とは約4分の差をつけ、総合優勝争いは名門2校に絞られた。

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6区では中大の工藤利寿(3年)が区間賞の走りで早大を逆転し、16秒のリードを構築。7区で5秒差まで迫られたものの、中大は8区の川波貴臣(4年)が前回大会で1学年下のチームメイト・榎木和貴が樹立した区間記録を15秒更新する1時間5分48秒でその差を2分21秒まで拡大。9区と10区も安定したタスキリレーで逃げ切り、32年ぶりとなる最多14度目の総合優勝と復路優勝を手にした。

早大は3年連続の準優勝。苦手の山下り(6区)で区間12位と低迷したのが響いた。混戦の3位争いは前年まさかの途中棄権に泣いた順大が制して2年ぶりのトップスリー。東海大が過去最高の4位、低迷を続けていた大東大が4年ぶりの好成績となる5位に食い込み、前回予選落ちに泣いた法大も6位へジャンプアップした。7位の亜細亜大は20年ぶりのシード権獲得だった。

シード権争いも熾烈を極めた。9区終了時点で9位の専大と10位の日体大との差は2分32秒。ところが、専大の鈴木利弘(4年)が脱水症状に陥り、みるみるうちにその差が縮まる。日体大の宇野淳(2年)は区間5位の好走で逆転を決め、かろうじてシード権を死守。専大は5年ぶりにシード落ちとなった。

4区で途中棄権となった神奈川大は3区の高津、7区の渡邊聡(1年)、9区の重田眞孝(4年)と3人が区間賞を獲得。総合成績は参考記録となったが、翌年の逆襲を予感させる復路2位の継走を見せた。

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<人物Close-up>
榎木和貴(中 大3)
同学年の松田和宏(現・学法石川高監督)らとともに90年代の中大を支えた中心人物。箱根駅伝では1年時から8区、8区、4区、4区を担い、史上14人目となる4年連続区間賞を達成。2年時には区間新記録を樹立している。卒業後は旭化成へ進み、2000年の別府大分毎日マラソン優勝などの実績を誇った。02年に現役引退後は、沖電気ランニングコーチ、トヨタ紡織プレイングコーチ、同監督を経て、2019年2月に創価大の監督に就任。1年目から箱根駅伝出場を果たし、過去最高の9位で大学初となるシード権獲得を牽引した。

<総合成績>
1位 中央大学   11.04.15(往路2位、復路1位)
2位 早稲田大学  11.08.52(往路1位、復路5位)
3位 順天堂大学  11.16.39(往路6位、復路4位)
4位 東海大学   11.16.49(往路3位、復路7位)
5位 大東文化大学 11.17.16(往路7位、復路6位)
6位 法政大学   11.18.17(往路4位、復路9位)
7位 亜細亜大学  11.19.58(往路8位、復路8位)
8位 東京農業大学 11.20.50(往路5位、復路13位)
9位 日本体育大学 11.24.22(往路11位、復路10位)
========シード権ライン=========
10位 専修大学   11.24.46(往路9位、復路14位)
11位 東洋大学   11.27.27(往路12位、復路12位)
12位 駒澤大学   11.28.02(往路10位、復路15位)
13位 日本大学   11.37.29(往路13位、復路11位)
途中棄権 山梨学院大学 記録なし(往路ー位、復路3位)
途中棄権 神奈川大学  記録なし(往路ー位、復路2位)

<区間賞>
1区(21.3km)ビズネ・ヤエ・トゥーラ(亜細亜大4)1.03.26
2区(23.0km)渡辺康幸(早 大4) 1.06.54
3区(21.3km)高津智一(神奈川大2)1.03.32
4区(20.9km)榎木和貴(中 大3) 1.02.15
5区(20.7km)小林雅幸(早 大3) 1.10.27=区間新
6区(20.7km)工藤利寿(中 大3)   59.59
7区(21.2km)渡邊 聡(神奈川大1)1.05.19
8区(21.3km)川波貴臣(中 大4) 1.05.48=区間新
9区(23.0km)重田眞孝(神奈川大4)1.10.20
10区(21.3km)渡辺高志(山梨学大4)1.05.39

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中大が32年ぶりの箱根制覇。優勝候補2校が途中棄権の波乱

8区で区間新記録を樹立し、追いすがる早大との差を2分以上も突き放した川波貴臣 出雲駅伝、全日本大学駅伝でいずれも上位を占めた中大、早大、山梨学大、神奈川大が優勝候補に挙げられた第72回大会。前回出場校の中央学大が3年ぶりの予選会敗退を喫した一方で、法大が2年ぶりに本戦出場を果たした。 1区は混戦模様から予選会個人トップだった亜細亜大のビズネ・ヤエ・トゥーラ(4年)が残り600mで抜け出し、大学史上初めて鶴見中継所をトップ通過。優勝候補の4校は早大が9位、中大が11位、神奈川大が14位、山梨学大が最下位(15位)と出遅れた。 2区では強力なエースを置く早大と中大が驚異のゴボウ抜きを見せた。早大は前回この区間で1時間6分48秒の新記録を樹立した渡辺康幸(4年)が再び快走。自身の持つ区間記録には6秒及ばなかったものの、8人抜きの区間賞で首位に躍り出た。中大も松田和宏(3年)が9人抜きの区間2位で2位に浮上。最後方からのスタートとなった山梨学大のステファン・マヤカ(4年)は、一時6位まで順位を上げたものの、終盤で失速し、9位でのタスキリレーとなった。 3区では早大が首位の座を守った一方で、神奈川大は高津智一(2年)が区間賞の快走で2位へ、山梨学大も中馬大輔(2年)が区間2位の走りで3位へ押し上げた。 4区では、今大会最大のハプニングが発生した。前年の世界選手権マラソン代表の山梨学大・中村祐二(3年)と神奈川大・高嶋康司(2年)が脚を痛めて無念の途中棄権。1大会で複数の大学がリタイアするのは史上初の事例で、まさかのかたちで山梨学大は3連覇の夢が潰えることになった。 2区以降、首位をひた走った早大は5区の小林雅幸(3年)が1時間10分27秒の区間新記録を樹立し、2年連続の往路優勝。4区・榎木和貴(3年)の区間賞で2位に浮上した中大が2分15秒遅れの往路2位。3位の東海大とは約4分の差をつけ、総合優勝争いは名門2校に絞られた。 6区では中大の工藤利寿(3年)が区間賞の走りで早大を逆転し、16秒のリードを構築。7区で5秒差まで迫られたものの、中大は8区の川波貴臣(4年)が前回大会で1学年下のチームメイト・榎木和貴が樹立した区間記録を15秒更新する1時間5分48秒でその差を2分21秒まで拡大。9区と10区も安定したタスキリレーで逃げ切り、32年ぶりとなる最多14度目の総合優勝と復路優勝を手にした。 早大は3年連続の準優勝。苦手の山下り(6区)で区間12位と低迷したのが響いた。混戦の3位争いは前年まさかの途中棄権に泣いた順大が制して2年ぶりのトップスリー。東海大が過去最高の4位、低迷を続けていた大東大が4年ぶりの好成績となる5位に食い込み、前回予選落ちに泣いた法大も6位へジャンプアップした。7位の亜細亜大は20年ぶりのシード権獲得だった。 シード権争いも熾烈を極めた。9区終了時点で9位の専大と10位の日体大との差は2分32秒。ところが、専大の鈴木利弘(4年)が脱水症状に陥り、みるみるうちにその差が縮まる。日体大の宇野淳(2年)は区間5位の好走で逆転を決め、かろうじてシード権を死守。専大は5年ぶりにシード落ちとなった。 4区で途中棄権となった神奈川大は3区の高津、7区の渡邊聡(1年)、9区の重田眞孝(4年)と3人が区間賞を獲得。総合成績は参考記録となったが、翌年の逆襲を予感させる復路2位の継走を見せた。 <人物Close-up> 榎木和貴(中 大3) 同学年の松田和宏(現・学法石川高監督)らとともに90年代の中大を支えた中心人物。箱根駅伝では1年時から8区、8区、4区、4区を担い、史上14人目となる4年連続区間賞を達成。2年時には区間新記録を樹立している。卒業後は旭化成へ進み、2000年の別府大分毎日マラソン優勝などの実績を誇った。02年に現役引退後は、沖電気ランニングコーチ、トヨタ紡織プレイングコーチ、同監督を経て、2019年2月に創価大の監督に就任。1年目から箱根駅伝出場を果たし、過去最高の9位で大学初となるシード権獲得を牽引した。 <総合成績> 1位 中央大学   11.04.15(往路2位、復路1位) 2位 早稲田大学  11.08.52(往路1位、復路5位) 3位 順天堂大学  11.16.39(往路6位、復路4位) 4位 東海大学   11.16.49(往路3位、復路7位) 5位 大東文化大学 11.17.16(往路7位、復路6位) 6位 法政大学   11.18.17(往路4位、復路9位) 7位 亜細亜大学  11.19.58(往路8位、復路8位) 8位 東京農業大学 11.20.50(往路5位、復路13位) 9位 日本体育大学 11.24.22(往路11位、復路10位) ========シード権ライン========= 10位 専修大学   11.24.46(往路9位、復路14位) 11位 東洋大学   11.27.27(往路12位、復路12位) 12位 駒澤大学   11.28.02(往路10位、復路15位) 13位 日本大学   11.37.29(往路13位、復路11位) 途中棄権 山梨学院大学 記録なし(往路ー位、復路3位) 途中棄権 神奈川大学  記録なし(往路ー位、復路2位) <区間賞> 1区(21.3km)ビズネ・ヤエ・トゥーラ(亜細亜大4)1.03.26 2区(23.0km)渡辺康幸(早 大4) 1.06.54 3区(21.3km)高津智一(神奈川大2)1.03.32 4区(20.9km)榎木和貴(中 大3) 1.02.15 5区(20.7km)小林雅幸(早 大3) 1.10.27=区間新 6区(20.7km)工藤利寿(中 大3)   59.59 7区(21.2km)渡邊 聡(神奈川大1)1.05.19 8区(21.3km)川波貴臣(中 大4) 1.05.48=区間新 9区(23.0km)重田眞孝(神奈川大4)1.10.20 10区(21.3km)渡辺高志(山梨学大4)1.05.39 PlayBack箱根駅伝1995/山梨学大が早大とのマッチレース制して2連覇 【学生駅伝ストーリー】77歳の“新指揮官”青葉監督が目指す名門・日大「箱根シード権への道」 【学生駅伝ストーリー】東海大黄金世代、それぞれの4年間(1)館澤亨次 頼れる主将 【学生駅伝ストーリー】“高校最速”から学生長距離界のトップへ。お互いをライバルと認め合う早大・中谷雄飛と駒大・田澤廉 【学生駅伝ストーリー】相澤晃を育てた「ガクセキ・メソッド」と東洋大での4年間

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