HOME 国内、世界陸上、日本代表
田中希実 涙の3種目挑戦ラストレース「この経験があったからと言えるように」/世界陸上
田中希実 涙の3種目挑戦ラストレース「この経験があったからと言えるように」/世界陸上


◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)9日目

オレゴン世界陸上9日目のイブニングセッションに行われた女子5000m決勝に田中希実(豊田自動織機)が出場。15分19秒35で12位だった。

この冒険が長かったのか、短かったのか。田中のオレゴン世界陸上が終わった。今大会は昨年の東京五輪で出場した1500mと5000mに加えて800mでも出場権を獲得。日本初の同一大会個人3種目挑戦だった。

5000mを終えた田中の目には涙が浮かんでいた。「これまでの世界大会では経験だけじゃなく、タイムか順位かどちらかついてきた。今回は目に見えてタイムや順位が最後までついてこなくて終わるんじゃないかという恐怖がありました」。

果敢に挑んだ3種目。昨年の東京五輪で8位入賞を果たした1500mは初日に予選を突破し、2日目の準決勝を4分05秒79で終え、決勝進出はならなかった。6日目に5000m予選で15分00秒21をマークしてタイムで拾われて通過。翌日の800m予選(2分03秒56=敗退)を挟んで、最後のレースだった。

スタート直後は超スローペース。「他の日本人選手なら先頭にいったかもしれませんが、同じくらいの選手がいるなら」と、“世界のレース”に身を投じた。「展開は考えずにいかに自分を見失わずに」。徐々にペースが上がるなか、必死に食らいつくが、3000m以降は苦しくなり、入賞争いから脱落した。「最後離れてしまったのは全部が中途半端になってしまった悔しさがあります。力不足でした」。田中は肩を落とした。

広告の下にコンテンツが続きます

日本記録更新も入賞もない。それを手にできなのではないか、という恐怖心が常につきまとった。「5000mで最後まで食らいつければ過程が大事と言えたのに」。それでも、田中は挑戦をやめない。「身をもって経験して、初めて結果より過程が大事だと胸を張って言える」。だからこそ、結果を出したいのだと。

「来年の世界選手権をどうするか未確定ですが、今回に懲りるのではなく、この経験があったからこそ次につながる、と言えるように。3種目を狙うのか1種目に絞るのか、その時の心が向くほうに挑戦し続けたい」

確かに東京五輪のような“結果”はなかった。だが、シーズン通して果敢に3種目に挑戦したこと、そしてその小さな身体で全レースを戦い抜いたこと。この事実も五輪入賞と同じように、日本陸上界に刻まれる一つの“結果”だった。

◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)9日目 オレゴン世界陸上9日目のイブニングセッションに行われた女子5000m決勝に田中希実(豊田自動織機)が出場。15分19秒35で12位だった。 この冒険が長かったのか、短かったのか。田中のオレゴン世界陸上が終わった。今大会は昨年の東京五輪で出場した1500mと5000mに加えて800mでも出場権を獲得。日本初の同一大会個人3種目挑戦だった。 5000mを終えた田中の目には涙が浮かんでいた。「これまでの世界大会では経験だけじゃなく、タイムか順位かどちらかついてきた。今回は目に見えてタイムや順位が最後までついてこなくて終わるんじゃないかという恐怖がありました」。 果敢に挑んだ3種目。昨年の東京五輪で8位入賞を果たした1500mは初日に予選を突破し、2日目の準決勝を4分05秒79で終え、決勝進出はならなかった。6日目に5000m予選で15分00秒21をマークしてタイムで拾われて通過。翌日の800m予選(2分03秒56=敗退)を挟んで、最後のレースだった。 スタート直後は超スローペース。「他の日本人選手なら先頭にいったかもしれませんが、同じくらいの選手がいるなら」と、“世界のレース”に身を投じた。「展開は考えずにいかに自分を見失わずに」。徐々にペースが上がるなか、必死に食らいつくが、3000m以降は苦しくなり、入賞争いから脱落した。「最後離れてしまったのは全部が中途半端になってしまった悔しさがあります。力不足でした」。田中は肩を落とした。 日本記録更新も入賞もない。それを手にできなのではないか、という恐怖心が常につきまとった。「5000mで最後まで食らいつければ過程が大事と言えたのに」。それでも、田中は挑戦をやめない。「身をもって経験して、初めて結果より過程が大事だと胸を張って言える」。だからこそ、結果を出したいのだと。 「来年の世界選手権をどうするか未確定ですが、今回に懲りるのではなく、この経験があったからこそ次につながる、と言えるように。3種目を狙うのか1種目に絞るのか、その時の心が向くほうに挑戦し続けたい」 確かに東京五輪のような“結果”はなかった。だが、シーズン通して果敢に3種目に挑戦したこと、そしてその小さな身体で全レースを戦い抜いたこと。この事実も五輪入賞と同じように、日本陸上界に刻まれる一つの“結果”だった。
       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.08.11

久光製薬が東京世界陸上の公式サプライヤーに決定 「サロンパス」は9年連続で世界シェア1位

8月8日、世界陸連は久光製薬が9月に開催される東京世界選手権の公式サプライヤーに選定されたことを発表した。 久光製薬は医薬品メーカーとして、さまざまな商品を展開。主力商品の「サロンパス」は市販の鎮痛消炎貼付剤として9年連 […]

NEWS 11月開催の丹後大学駅伝がクラウドファンディングを開始 青学大のオープン参加に加え、小中学生対象の陸上教室を企画

2025.08.11

11月開催の丹後大学駅伝がクラウドファンディングを開始 青学大のオープン参加に加え、小中学生対象の陸上教室を企画

11月15日に開催される丹後大学駅伝(第87回関西学生対校駅伝)の開催に向けて、今年も会場となる京都府京丹後市と主催の関西学連が中心となり、クラウドファンディングを実施している。 丹後大学駅伝は関西学生駅伝のナンバーワン […]

NEWS 福井ナイトゲームズの確定エントリー発表!村竹ラシッド、鵜澤飛羽、﨑山雄太ら世界陸上内定者が登録

2025.08.11

福井ナイトゲームズの確定エントリー発表!村竹ラシッド、鵜澤飛羽、﨑山雄太ら世界陸上内定者が登録

福井陸協は8月15、16日に開催される、日本グランプリシリーズ「Athlete Night Games in FUKUI2025」の確定エントリーリストを発表した。 男子110mハードルでは東京世界選手権代表に内定してい […]

NEWS トロシアンカが十種競技でU20世界新! 15歳ドゥアラが女子100m、4×100mR2冠/U20欧州選手権

2025.08.11

トロシアンカが十種競技でU20世界新! 15歳ドゥアラが女子100m、4×100mR2冠/U20欧州選手権

8月7日から10日、フィンランド・タンペレででU20欧州選手権が開催され、男子十種競技(U20規格)ではH.トロシアンカ(ポーランド)が8514点(10秒74、7m26、15m48、1m94、46秒21/14秒23、43 […]

NEWS 男子4×100mRで御船が中学歴代2位の42秒13 三段跳・迫田大輝が14m43 男子100m柏田琉依は10秒68の大会新V 全中前に中学生が好記録

2025.08.11

男子4×100mRで御船が中学歴代2位の42秒13 三段跳・迫田大輝が14m43 男子100m柏田琉依は10秒68の大会新V 全中前に中学生が好記録

8月9日、10日の両日、鹿児島市の白波スタジアムで第46回九州中学校競技会が行われ、男子4×100mリレーでは御船(熊本)が42秒13の中学歴代2位、九州中学新記録で優勝を飾った。 御船も県中学総体では42秒38の中学歴 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年9月号 (8月12日発売)

2025年9月号 (8月12日発売)

衝撃の5日間
広島インターハイ特集!
桐生祥秀 9秒99