2022.10.11
◇第34回出雲全日本大学選抜駅伝競走(10月10日・島根県出雲市)
優勝を狙う多くのチームが3区までの前半重視のオーダーを組むなか、4区を勝負区間に据えたのが國學院大だった。
「勝ちに行くなら、駅伝では絶対に勝てる区間を作らないといけない。4区は6.2kmと距離が短く、5〜6番手の選手を配するのがセオリーだと思いますが、そこにあえて日本インカレ2位(5000m)の選手をぶつけました。シナリオ的にはそこで逆転を狙います」
レース前、前田康弘監督はこう話しており、「つなぎの区間」と見られがちな4区には、エース格の1人で主将の中西大翔(4年)を配した。
とはいえ、1〜3区も疎かにしたわけではない。1区にはU20日本選手権5000m準優勝の青木瑠郁(1年)、2区にはハーフマラソン日本人学生歴代2位タイの記録をもつ山本歩夢(2年)、3区には日本学生ハーフマラソン覇者の平林清澄(2年)と、勢いのある下級生を並べた。
そして、向かい風予想の4区、5区には、中西、藤本竜と力強い走りの4年生を配し、アンカーには接戦になった場合を想定してスパート力のある伊地知賢造(3年)を起用した。前年の経験やセオリーを度外視した、優勝を狙いにいくオーダーを組んだ。
「3区までに30秒差以内だったら、正直なところ、逆転シナリオがあった。4区で先頭に立てれば勝機はあると思っていたのですが…」(前田監督)
しかし、指揮官の想定を上回る走りを見せたのが駒大だった。選手たちは十分に力を発揮したが、常に駒大に先行され、じわじわと差を広げられた。3区を終えた時点では52秒差が開いた。
勝負に出た4区では、中西大がその期待に応えて区間賞の走りを見せた。だが、32秒前にいた青学大までは捕らえて2位に浮上したものの、先頭の駒大には届かなかった。
ただ、3年前の初優勝時には、37秒あった差を土方英和(現・旭化成)は逆転して優勝を飾っているだけに、その再現の可能性は十分にあった。実際、5区の序盤には、中大と競り合いながらじわじわと駒大との差を詰めていった。
「(駒大との差が)30秒切ってきたので、このままだったら、まだわからないと思っていたんですけど、安原(太陽)君が冷静でしたね」(前田監督)
アンカー勝負に持ち込みたかったが、5区の後半に差を付けられ、アンカーの伊地知がタスキを受けたのは45秒差の3位だった。結局、指揮官の期待通りの走りを選手たちは見せたものの、相手が一枚も二枚も上手だった。逆転のシナリオを完遂ならず、2位でレースを終えた。
当初の目標だった「3位以内」という目標は達成したものの、ひと夏を越えてチームの状態は良く、優勝を意識して臨んでいただけに悔しさが残った。
「2位で悔しいと思えるのは、チームとして成長しているから。距離が長くなるほど、自分たちには有利になると思うので、全日本と箱根はしっかりと優勝を目指したい」と主将の中西は、決意を新たに、気を引き締め直した。出雲路で味わった悔しさは、伊勢路と箱根路で晴らす覚悟だ。
文/和田悟志

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)