◇オレゴン世界陸上(7月15日~24日/米国・オレゴン州ユージン)10日目
オレゴン世界陸上10日目のイブニングセッションに行われた女子100mハードル準決勝2組に出場した福部真子(日本建設工業)が、12秒82(+0.9)の日本記録を樹立した。
ここぞという集中力、大舞台での強さは、まさに福部の真骨頂。初の世界陸上で準決勝進出を果たし、1レーンに入った。「いつも通り」。落ち着いた表情でスタートラインに立つ。同組には世界記録保持者のケンドラ・ハリソン(米国)と、今季好調のトビ・アムサン(ナイジェリア)。スタートしてすぐにどんどんと離れていくのがわかった。
「1台目の入りで少し浮いてしまって、そこからは立て直すのに必死でした」。走っている感触としては「13秒台かな」というほど。それだけ、世界は圧倒的だった。トップのアムサンは、ハリソンの目の前で世界記録を更新する、脅威の12秒12。だが、福部は自分の走りに徹してフィニッシュし、日本記録を更新した。「ビックリです。手応えがなかったです」と目をまんまるにする福部。「やった、という思いはありましたが、まだあんまり……」と実感が湧かないのも正直な感想だろう。
これまで福部真子の代名詞といえば「インターハイ3連覇」だった。“天才”と言われ続け、中学時代には四種競技で全中を制し、ハードルに専念した広島皆実高時代にインターハイを3連覇。これは城島直美、寺田明日香(ジャパンクリエイト)に続く史上3人目の快挙だった。
だが、日体大進学後はなかなかタイトルに届かず。400mハードルに挑戦した時期もあった。高校時代の自己記録を更新するまでに3年。卒業と同時に引退もよぎったが競技を続けることに。その後もコロナ禍などの影響もあり練習環境を転々としつつ、2020年の後半からは「応援してくれる人がたくさんいるところで、自分の走りを見てもらいたい」と、地元・広島を拠点に再スタートを切った。
今季は快進撃。日本選手権で初優勝を果たすと、直後の布勢スプリントでは12秒台突入となる12秒93をマークした。ワールドランキングで世界陸上初出場を決めると、ついに日本記録保持者に。「天才、インターハイ3連覇が重圧になることもあった」。福部はその肩書きを、自らの力で受け止め、消化し、日本トップハードラーへと成長を遂げた。
世界を経験し、日本記録を樹立しても「満足できない」と福部。「世界の壁は高かった。一生に1度あるかどうかのレースを経験できました。世界との差を意識しながら練習していきます」。納得のいかないレースだったからこそ、「12秒7~6が見えてきます」。そのためにも「ここからの試合でもう一回、12秒8台を狙っていきます」。
紆余曲折を経てたどり着いた大舞台での快挙。“日本記録保持者・福部真子”はパリ五輪を目指して、これからもさまざまなハードルを飛び越えて成長していく。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.07.03
男子円盤投世界記録保持者・アレクナ 来季からオレゴン大に編入
2025.07.02
日本選手権初日のスタートリスト発表!100m予選でサニブラウンと桐生祥秀が同組
-
2025.07.02
-
2025.07.02
-
2025.07.02
-
2025.07.02
2025.07.02
HOKAの新作レーシングシューズ「ROCKET X 3」が7月2日に新登場!
-
2025.07.01
-
2025.06.17
-
2025.06.04
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.07.03
男子円盤投世界記録保持者・アレクナ 来季からオレゴン大に編入
7月2日、米国のオレゴン大は男子円盤投の世界記録保持者であるマイコラス・アレクナ(リトアニア)が、来季からチームに加入することを発表した。 アレクナは2002年生まれの22歳。シドニー、アテネ五輪で2度金メダルを獲得して […]
2025.07.02
青学大・小河原陽琉が5000m13分56秒66で全体トップ 3000mは鳥井健太が8分12秒74/絆記録会
第15回絆記録挑戦会が7月2日、東京・町田GIONスタジアムで行われ、青学大勢が多数出場した。 男子5000mは1月の箱根駅伝10区区間賞で、5月の関東インカレ(2部)1500mで2位に入っていた小河原陽琉(2年)が13 […]
2025.07.02
日本選手権初日のスタートリスト発表!100m予選でサニブラウンと桐生祥秀が同組
東京世界選手権の代表選考会を兼ねた第109回日本選手権の1日目のスタートリストが発表された。 男子100m予選は全7組。9秒96で東京世界選手権の参加標準記録(10秒00)をただ1人突破しているサニブラウン・アブデル・ハ […]
2025.07.02
駒大・佐藤圭汰が日本選手権5000mスタートリストから外れる 東京世界陸上出場厳しく
日本陸連は7月2日、今年9月の東京世界選手権代表選考を兼ねた日本選手権(東京・国立競技場)第1日(7月4日)のスタートリストを発表し、男子5000mにエントリーしていた佐藤圭汰(駒大)が外れた。佐藤は出場資格獲得条件の一 […]
2025.07.02
「TOKYO ナイトリレーフェス in 国立競技場」が10月17日開催!東京レガシーハーフマラソンの前々日イベント 7 月2日から参加者募集
一般財団法人東京マラソン財団は7月2日、東京レガシーハーフマラソン2025(10月19日)の前々日イベントとして、10月17日に「TOKYO ナイトリレーフェス in 国立競技場」を開催することを発表した。 国立競技場内 […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会