【短期集中連載】
駅伝王者・東海大学のコンディショニング
第3弾 正月の大舞台へ、秋冬の「鍛錬期」をいかに過ごすか
主力を欠いた布陣で11月3日の全日本大学駅伝を制し、満天下に選手層の厚さを見せつけた東海大。正月の駅伝でも優勝候補の筆頭だ。しかし、1月の大一番に向けては油断することなく、まさに今、最後の鍛錬期を過ごしている。最も負荷のかかるこの時期をいかに故障や体調不良なく乗り越えていくのか。最終回となる今回は4年生の主力2名が現在進行形で進めるコンディショニングを紹介する。
気温が下がり、なおかつ練習量も増える秋から冬にかけての鍛錬期は体調管理が重要テーマの1つ。中央が両角速駅伝監督
第1弾 トレーニングを継続できる要因とは?(前編) (後編)
第2弾 レースで最大限の力を発揮するために
エネルギー摂取を意識
11月上旬に全日本大学駅伝が終わると、東海大はスタミナ強化のフェーズに入った。この2ヵ月は起伏のあるコースを中心に、徹底的に距離を踏む。
だが、走行距離が増えれば、疲労も蓄積しやすく、故障や体調不良のリスクが高まるのも事実。加えて朝晩の気温も下がるため、コンディショニングも普段以上の配慮が必要になる。東海大ではうがい、手洗いといった基本的な風邪対策を行うだけでなく、サプリメントを利用するなど栄養面にも気を配っている。
「怖いのはインフルエンザ。その対策としてビタミンCなどを積極的にとるようにしています。練習も距離型になりますので、メニューを狙い通りこなせるよう、エネルギーの摂取は常に気にしています」(両角速駅伝監督)
食事をしっかりとることはもちろん、距離走の前に必ず「inゼリー エネルギー」(森永製菓)を摂取し、トレーニングの充実を図っている。
1月の駅伝へ向けた鍛錬と調整のメソッドは、基本的に優勝した前回の流れを踏襲している。違いがあるとすれば、昨年度のこの時期は記録会への出場が少なかったが、今季は11月に多くの選手がトラックで好記録を出している点だ。鍛錬期での試合出場であっても、記録を狙える条件が整えば狙いにいくというスタンスから、東海大の強化施策が昨年度以上に進化していることがわかる。
「注意すべきは、トラックで記録が出た時の感覚を20kmでも求めないことです。トラックレースと20kmのロードの合わせ方は違いますので、選手にそれを理解させながら練習計画を立てています」
12月の合宿を昨年度より1週間増やすなど、距離対策に抜かりはない。指揮官の視線は一直線に正月へ向いている。
東海大駅伝チームが取り入れている森永製菓のinゼリー。左が「inゼリー エネルギー」、右が「inゼリー プロテイン」
駅伝MVP選手のコンディショニング
選手層の厚い東海大だけに、今は毎日の練習にも緊張感が漂う。故障での離脱はもちろん、練習で設定ペースから遅れれば、メンバー争い脱落の可能性が高まるだけに気が抜けない日々が続く。
だが、その雰囲気を楽しむ選手がいる。2019年正月の駅伝では8区で区間新記録を出し、MVPに選ばれた小松陽平(4年)だ。
「北海道出身のせいか、この時期は調子もいいんです。練習で外せない緊張感はありますが、プレッシャーは感じないですね」
そう明るく話す。「MVP」の肩書きも小松にとっては重圧とならず、むしろ注目度の高さを力に変えたい、と前向きだ。
リラックスしながら駅伝への準備を進める小松だが、コンディショニングには細心の注意を払う。トレーナーの治療を積極的に受けるだけでなく、免疫力を維持するため、疲労を残さないよう努めている。
「余裕を持って練習をこなすことと、しっかり食事をとることを意識しています。inゼリーもうまく使ってエネルギーを蓄えたり、回復のために練習直後にプロテインをとったりしています」
その言葉から事後の対策だけでなく、事前の準備にも気を配っている様子がうかがえる。
一方、走りでは感覚を重視するのが小松の個性だ。スピードランナーがそろう東海大ではウエイトトレーニングを行う選手が多いなか、小松は〝軽さのある走り〟を求めるため、一切行っていない。「走りで必要な筋肉は走って鍛える」という考えのもと、自身の感覚を研ぎ澄ませ、強化を進めている。「今回は往路を走りたいですね。でも、区間賞などは狙っていません。チームの総合優勝に貢献したいとだけ考えています」
自然体で2度目の大舞台に挑む。
「inゼリー」は練習の前に「エネルギー」を、練習後にはリカバリーのために「プロテイン」をとっている小松陽平
今もウエイトトレーニングに励む鬼塚
小松とは対照的に筋力強化をテーマに掲げ、ウエイトトレーニングに積極的なのが鬼塚翔太(4年)だ。今年度は春と夏に分けて合計約3ヵ月、アメリカでトレーニングを実施。ハイレベルな環境に身を置き、自身の筋力不足を痛感したという。
「今までもウエイトをやっていましたが、与えられたメニューをこなしていただけですし、細かい部分がまだまだだなと実感しました。今季は陸上に対する考え方もだいぶ変わってきて、長い目で見た時に今、何をすべきかを自分で考え、取り組めるようになったと思います」
トラックシーズンが終わった今もウエイトトレーニングは継続中。朝晩に粉末のプロテインを摂取しながら身体作りに励んでいる。左足アキレス腱を痛めた影響で全日本を回避したが、その週には練習にも本格復帰し、距離走を中心に走り込みを続ける毎日だ。
「アキレス腱周辺に特化した筋力トレーニングや練習後のアイシング、超音波のケアも最近は始めました。以前から続けている回復のためのinゼリー プロテインも今は練習後のルーティンです」
もともとケガの少ない選手ではあるが、意識の変化に伴い、コンディショニングの取り組みも一層きめ細かいものになったと話す。
1年時から出続けた駅伝もいよいよ最後。トラック志向の強い鬼塚だが、駅伝ではやり残したことがあり、このままでは終われない。
「まだ(出雲以外は)区間賞がありませんので、最後は取りたいと思っています。特に過去2回経験している1区で取れたら、いい終わり方になりますので狙いたいですね」
学生駅伝を最高のかたちで終え、また世界へ向かって走り出すつもりだ。
日常的にウエイトトレーニングを行う鬼塚翔太は粉末のプロテインと「inゼリー」を併用している
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
個性の強い選手が揃う東海大だけあって走りのタイプや目指す姿はそれぞれ。しかし、この連載で見てきた通り、共通するのは持てる力を最大限に発揮するための取り組みを各自が考え、実行できること。それが東海大の強さとなっている。故障者も戻り、戦力が整ってきた今、正月の駅伝に向けての死角は見当たらない。
正月に向けて日々の練習にも熱が入る
<関連リンク>
・森永製菓「inゼリー」
・第1弾 トレーニングを継続できる要因とは?(前編)
・第1弾 トレーニングを継続できる要因とは?(後編)
・第2弾 レースで最大限の力を発揮するために
・こちらの記事は『月刊陸上競技』2020年1月号に掲載したものを一部修正して転載したものです
【短期集中連載】 駅伝王者・東海大学のコンディショニング
第3弾 正月の大舞台へ、秋冬の「鍛錬期」をいかに過ごすか
主力を欠いた布陣で11月3日の全日本大学駅伝を制し、満天下に選手層の厚さを見せつけた東海大。正月の駅伝でも優勝候補の筆頭だ。しかし、1月の大一番に向けては油断することなく、まさに今、最後の鍛錬期を過ごしている。最も負荷のかかるこの時期をいかに故障や体調不良なく乗り越えていくのか。最終回となる今回は4年生の主力2名が現在進行形で進めるコンディショニングを紹介する。
エネルギー摂取を意識
11月上旬に全日本大学駅伝が終わると、東海大はスタミナ強化のフェーズに入った。この2ヵ月は起伏のあるコースを中心に、徹底的に距離を踏む。 だが、走行距離が増えれば、疲労も蓄積しやすく、故障や体調不良のリスクが高まるのも事実。加えて朝晩の気温も下がるため、コンディショニングも普段以上の配慮が必要になる。東海大ではうがい、手洗いといった基本的な風邪対策を行うだけでなく、サプリメントを利用するなど栄養面にも気を配っている。 「怖いのはインフルエンザ。その対策としてビタミンCなどを積極的にとるようにしています。練習も距離型になりますので、メニューを狙い通りこなせるよう、エネルギーの摂取は常に気にしています」(両角速駅伝監督) 食事をしっかりとることはもちろん、距離走の前に必ず「inゼリー エネルギー」(森永製菓)を摂取し、トレーニングの充実を図っている。 1月の駅伝へ向けた鍛錬と調整のメソッドは、基本的に優勝した前回の流れを踏襲している。違いがあるとすれば、昨年度のこの時期は記録会への出場が少なかったが、今季は11月に多くの選手がトラックで好記録を出している点だ。鍛錬期での試合出場であっても、記録を狙える条件が整えば狙いにいくというスタンスから、東海大の強化施策が昨年度以上に進化していることがわかる。 「注意すべきは、トラックで記録が出た時の感覚を20kmでも求めないことです。トラックレースと20kmのロードの合わせ方は違いますので、選手にそれを理解させながら練習計画を立てています」 12月の合宿を昨年度より1週間増やすなど、距離対策に抜かりはない。指揮官の視線は一直線に正月へ向いている。
駅伝MVP選手のコンディショニング
選手層の厚い東海大だけに、今は毎日の練習にも緊張感が漂う。故障での離脱はもちろん、練習で設定ペースから遅れれば、メンバー争い脱落の可能性が高まるだけに気が抜けない日々が続く。 だが、その雰囲気を楽しむ選手がいる。2019年正月の駅伝では8区で区間新記録を出し、MVPに選ばれた小松陽平(4年)だ。 「北海道出身のせいか、この時期は調子もいいんです。練習で外せない緊張感はありますが、プレッシャーは感じないですね」 そう明るく話す。「MVP」の肩書きも小松にとっては重圧とならず、むしろ注目度の高さを力に変えたい、と前向きだ。 リラックスしながら駅伝への準備を進める小松だが、コンディショニングには細心の注意を払う。トレーナーの治療を積極的に受けるだけでなく、免疫力を維持するため、疲労を残さないよう努めている。 「余裕を持って練習をこなすことと、しっかり食事をとることを意識しています。inゼリーもうまく使ってエネルギーを蓄えたり、回復のために練習直後にプロテインをとったりしています」 その言葉から事後の対策だけでなく、事前の準備にも気を配っている様子がうかがえる。 一方、走りでは感覚を重視するのが小松の個性だ。スピードランナーがそろう東海大ではウエイトトレーニングを行う選手が多いなか、小松は〝軽さのある走り〟を求めるため、一切行っていない。「走りで必要な筋肉は走って鍛える」という考えのもと、自身の感覚を研ぎ澄ませ、強化を進めている。「今回は往路を走りたいですね。でも、区間賞などは狙っていません。チームの総合優勝に貢献したいとだけ考えています」 自然体で2度目の大舞台に挑む。
今もウエイトトレーニングに励む鬼塚
小松とは対照的に筋力強化をテーマに掲げ、ウエイトトレーニングに積極的なのが鬼塚翔太(4年)だ。今年度は春と夏に分けて合計約3ヵ月、アメリカでトレーニングを実施。ハイレベルな環境に身を置き、自身の筋力不足を痛感したという。 「今までもウエイトをやっていましたが、与えられたメニューをこなしていただけですし、細かい部分がまだまだだなと実感しました。今季は陸上に対する考え方もだいぶ変わってきて、長い目で見た時に今、何をすべきかを自分で考え、取り組めるようになったと思います」 トラックシーズンが終わった今もウエイトトレーニングは継続中。朝晩に粉末のプロテインを摂取しながら身体作りに励んでいる。左足アキレス腱を痛めた影響で全日本を回避したが、その週には練習にも本格復帰し、距離走を中心に走り込みを続ける毎日だ。 「アキレス腱周辺に特化した筋力トレーニングや練習後のアイシング、超音波のケアも最近は始めました。以前から続けている回復のためのinゼリー プロテインも今は練習後のルーティンです」 もともとケガの少ない選手ではあるが、意識の変化に伴い、コンディショニングの取り組みも一層きめ細かいものになったと話す。 1年時から出続けた駅伝もいよいよ最後。トラック志向の強い鬼塚だが、駅伝ではやり残したことがあり、このままでは終われない。 「まだ(出雲以外は)区間賞がありませんので、最後は取りたいと思っています。特に過去2回経験している1区で取れたら、いい終わり方になりますので狙いたいですね」 学生駅伝を最高のかたちで終え、また世界へ向かって走り出すつもりだ。

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