◇第40回大阪国際女子マラソン(1月30日/大阪・ヤンマースタジアム長居発着)
日本歴代5位となる2時間20分52秒の自己新で地元・大阪を駆け抜け、この大会3戦3勝とした。それでも松田瑞生(ダイハツ)はフィニッシュ後に「悔しい」と目に涙を浮かべた。
気温8度、風もほとんど感じない絶好のコンディション。日本記録も見据える男子ペースメーカーに序盤からついたのは松田と上杉真穂(スターツ)の2人だけだった。「世界選手権の代表を目指す」と松田。5km通過は16分28秒。「前半から果敢に攻めた」と言うが、このあたりで山中美和子監督は「少しペースが落ちて心配なところがあった」と振り返る。ハーフは1時間9分57秒で通過した。
30kmを手前に上杉が遅れ、松田は男子ペースメーカーに囲まれるかたちで「半歩後ろ」でしっかり歩を進める。後半もややペースが落ちたが、最後は切り替えてペースアップ。日本人女子で5人目の2時間21分切りで、見事に優勝を飾った。
松田は「2年ぶりに大阪に帰ってこられて優勝できた」と喜んだのもつかの間「率直に悔しかった」と涙。「自分の目標は達成できなかった」。オレゴン世界選手権の派遣設定記録は2時間23分18秒。松田はそれ以上に、「最低ライン」として目指したのが、一山麻緒(ワコール)が20年の名古屋ウィメンズマラソンでマークした国内日本最高記録となる2時間20分29秒だった。その記録を目指すことに意味があった。
19年9月の東京五輪選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で4位となり、夢の東京五輪代表は勝ち取ることができなかった。残す1枠の代表を目指し再起を誓った松田は、20年の大阪国際女子マラソンで2時間21分47の自己新。代表をたぐり寄せた…はずだった。だが、続く名古屋で一山がその記録を上回り、松田は東京五輪の補欠に回った。
涙に暮れた松田だが、再び前を向き、走り出した。「自分が沈んでいるときにたくさん励ましていただいた。山中監督が支えてくれた。涙で終わりたくなかった」。世界を目指す覚悟を決めた。
トレーニングは積んできたが、最終調整が月経と重なったことで「ハマらない感覚があった」が、「最終的に7割くらいには状態を戻してこられた」と言う。今大会、レース中は「世界の選手だったらここでどう走るか」とイメージ。後半苦しんだところは「粘り切れなかったのは弱さであり課題」と振り返る。それだけ、さらに高みを目指している証だ。
これでオレゴン世界選手権の代表入りへ猛アピール。さらに、パリ五輪MGCの女子第一号となったが、「まだ世界選手権しか見えていない。目の前の目標に向けて取り組んだ結果、パリ五輪があるのではないかと思います」と松田は言う。
これまでは「大きな目標を口に出して負けてしまう」。その強気な姿勢も松田の強さを支えてきた。だが、大阪で快走し東京五輪は決まりだろう、と宣言して代表を逃した経験を経て、より大人のアスリートへと成長。好記録を出してなお「また、松田瑞生ここにあり、という走りができるように精進します」と首を垂れた。
この後の3月6日の東京、同13日の名古屋を経てオレゴン世界選手権代表が決まる。「(代表に内定したら)課題を埋めて自信を持ってスタートラインに立って、トップ争いができれば」。今度こそ世界の舞台へ。地元・浪速路は松田にとって十分な助走になった。
◇2位・上杉も世界選手権派遣設定突破!
積極的な走りを見せた上杉は日本歴代11位となる2時間22分29秒の大幅自己新で2位。オレゴン世界選手権の派遣設定記録を突破し、MGCの出場権も獲得した。上杉は「すなおにうれしい。たくさんのことを学ぼうと格上に果敢に挑戦しました」と充実感を漂わせる。
松田と同学年の26歳で、千葉・日体大柏高卒で14年にスターツに入社。これが7度目のマラソンで、昨年のこの大会で出した2時間24分52秒が自己ベストだった。
3位の松下菜摘(天満屋)も日本歴代15位となる2時間23分05秒の好記録。6位の佐藤早也伽(積水化学)までがパリ五輪MGCの出場権を獲得した。
■松田瑞生のマラソン全成績
18年1月 大阪国際女子 2時間22分44秒(優勝)
18年9月 ベルリン 2時間22分23秒(5位)
19年9月 MGC 2時間29分51秒(4位)
20年1月 大阪国際女子 2時間21分47秒(優勝)
21年3月 名古屋 2時間21分51秒(優勝)
22年1月 大阪国際女子 2時間20分52秒(優勝)

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
-
2025.04.30
2025.04.29
100mH田中佑美が予選トップ通過も決勝棄権「故障ではない」昨年の結婚も明かす/織田記念
-
2025.04.28
-
2025.04.26
2025.04.12
3位の吉居大和は涙「想像していなかったくらい悔しい」/日本選手権10000m
-
2025.04.01
-
2025.04.12
-
2025.04.12
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2022.12.20
-
2023.04.01
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.04.30
【連載】上田誠仁コラム雲外蒼天/第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」
山梨学大の上田誠仁顧問の月陸Online特別連載コラム。これまでの経験や感じたこと、想いなど、心のままに綴っていただきます! 第56回「昭和100年とスポーツ用具の進化」 昨年は記念大会となる第100回箱根駅伝が開催され […]
2025.04.30
【高校生FOCUS】男子競歩・山田大智(西脇工高)インターハイで昨夏の雪辱誓う 高校記録更新にも挑戦
FOCUS! 高校生INTERVIEW 山田大智 Yamada Daichi 西脇工高3兵庫 2025年シーズンが本格的に始まり、高校陸上界では記録会、競技会が次々と開かれています。その中で好記録も生まれており、男子50 […]
2025.04.30
5.3静岡国際、パリ五輪代表の坂井隆一郎、200m世界陸上標準突破の水久保漱至らが欠場
5月3日に行われる静岡国際のエントリーリストが更新され、現時点で欠場届を提出した選手が判明した。 男子100mはパリ五輪代表の坂井隆一郎(大阪ガス)が欠場。坂井は4月13日の出雲陸上で脚を痛め、29日の織田記念の出場も見 […]
2025.04.30
26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得
世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]
Latest Issue
最新号

2025年4月号 (3月14日発売)
東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL)
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)