日本陸上界が誇るレジェンド・福士加代子(ワコール)が最後の舞台に選んだのは、挫折も栄光も味わった大阪だった。
大阪ハーフマラソンに出場した福士は1時間16分04秒で30位。途中、何度も脚が止まりそうになりながら、ヤンマースタジアム長居に笑顔で戻ってきた。あのとき、転んでも笑顔だった最後の直線。右手を何度も挙げて拍手に応え、笑顔でフィニッシュラインを切った。福士加代子のアスリート人生が幕を閉じた。
「こんなボロボロになるはずじゃなかった。かっこよく終わるイメージでしたがあんな感じになった」。レース後は「きつい」と連呼と笑った。
最後まで「速く、かっこよく走る」ことにこだわりがあった。最後のレースを前に出場した都道府県対抗女子駅伝の後は「もう少し仕上げたい」と語っていた福士。追い求めてきた速さはなかったかもしれないが、その姿は誰が見てもかっこよかった。
「最初と最後がここでよかった」。青森・五所川原工高から2000年にワコールに入社。トラックで数々の金字塔を打ち立てて「トラックの女王」と称された。満を持してマラソンに挑戦したのが2008年の大阪国際女子。その時は後半でエネルギー切れを起こし、途中何度も転倒しながらフィニッシュにたどり着いた。
マラソンは「嫌なことだらけ」。だからこそ「隠しようがない。マラソン練習は自分と会話するしかない。自分と向き合えたのはマラソンのお陰」。この日も「最初のきつかったレースを思い出した」。最後のレースを終え、「全部ひっくるめて(マラソンが)好きになった」。
それでも福士は笑顔で走り続けた。13年に初優勝(優勝者がドーピング違反のため繰り上げ)を飾ると、同年のモスクワ世界選手権で銅メダルを獲得。16年も優勝し、自身4度目、マラソンでは初のオリンピックとなるリオ五輪代表をつかみ取った。挫折も栄光も、大阪で味わった。
今後はワコールに残ってランニングイベントなどに参加する予定。「だらだらな生活をして、朝も起きない。夜まで起きている」。走るとすれば「体型維持のため」と笑った。
「走るのが楽しかった辞めたくなかった。でも、走れなくなったので終わりにします!」
女子長距離界を牽引し続けてきたレジェンドは、最後の最後まで笑顔で走り続けた。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
Latest articles 最新の記事
2025.05.24
平松希叶が2年連続ハードル2冠 楠田ゆうなは400mH11年ぶり大会新&100mH大会タイ 神村学園勢が女子中長距離で強さ/IH鹿児島県大会
広島インターハイ(7月25日~29日)に向けた都府県大会が5月上旬から各地で行われ、高校生たちが熱戦を繰り広げている。 鹿児島県大会は5月20日から23日までの4日間、白波スタジアム(県立鴨池陸上競技場)で行われた。 平 […]
2025.05.24
伊勢路への「7枠」を懸けた10000mレース! 例年より1ヵ月早く平塚で今夜開催/全日本大学駅伝関東選考会
◇全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会(5月24日/神奈川・レモンガススタジアム平塚) 第57回全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会が5月24日に例年より約1ヵ月早く行われる。 エントリー選手の10000m上位8人の合計タイ […]
2025.05.23
北口榛花がDL2戦目のラバトを欠場 セイコーGGPではSBの64m16でV
女子やり投の北口榛花(JAL)が今季3戦目の予定だったダイヤモンドリーグ(DL)ラバト大会(5月25日)を欠場すると発表した。チームがSNSを通じて伝え、「コンディション不良」としている。 北口は昨年のパリ五輪で金メダル […]
2025.05.23
2025年主要大会スケジュール
4月 12日(土)第33回金栗記念選抜中長距離大会2025(熊本総合) 12日(土)第109回日本選手権10000m(熊本総合) 12日(土)~13日(日)第79回出雲陸上(島根・浜山) 15日(火)~18日(金)第6回 […]
Latest Issue
最新号

2025年6月号 (5月14日発売)
Road to TOKYO
Diamond League JAPANの挑戦
村竹ラシッド、三浦龍司が初戦で世界陸上内定
Road to EKIDEN Season 25-26
学生長距離最新戦力分析