【学生駅伝ストーリー】箱根駅伝予選会のエントリー選手が発表! 〝立川決戦〟のゆくえはいかに

箱根駅伝予選会のエントリー選手が発表!
〝立川決戦〟のゆくえはいかに

今月26日に東京都立川市で開催される「第96回箱根駅伝予選会」の出場校と各校のエントリー選手(最大14人)が15日、関東学連から発表された。10月12日発売の『月刊陸上競技11月号』でも予選会の展望記事を掲載したが、あらためて各校のエントリー選手を見ながら大会のゆくえを分析していく。

上位10校が本戦出場権を獲得

箱根駅伝予選会は東京・立川市の陸上自衛隊立川駐屯地をスタート、国営昭和記念公園にフィニッシュする21.0975kmのコースで行われる。選考方法は従来通りで、各校10名以上12名以下が出走。各校の上位10人の合計タイムで争われる。

前回より従来の20kmからハーフマラソンへと変わり、さらに5年おきの〝記念大会〟だった前回と違って通過校が2年前までの「10」に戻った。果たしてどの大学が正月の箱根路への切符をつかむのか。

10000m27分台ランナー阿部弘輝が外れる

各校のエントリーリストを見ると、有力選手が何人か外れているのが見て取れる。その中でも、一番の衝撃は明大・阿部弘輝(4年)のリスト漏れだろう。10000mのベストは昨年の日本リスト3位となる27分56秒45。今年はユニバーシアードでも10000mで銀メダルを獲得するなど学生長距離界の中心選手だっただけに、チームにとっては大きな戦力ダウンとなった。

<主なエントリー漏れ選手>
選手名  (所属)    10000mPB  ハーフPB  主な実績
田母神一喜(中大4)   30.19.46   ―  18年日本インカレ1500m3位※主将
加井 虎造(中大3)   29.08.09 1.06.26 19年関東インカレ1部10000m⑯
新迫 志希(早大4)   29.07.06 1.04.03 19年箱根駅伝9区⑨
半澤 黎斗(早大2)   29.25.05 1.06.55 18年全日本大学駅伝5区⑭
濱田  諒(日体大4)  29.27.67 1.04.29 19年箱根駅伝6区⑨
森田 諒太(日体大4)  29.18.75 1.05.10 19年箱根駅伝8区⑮
岩室 天輝(日体大3)  29.20.58 1.04.12 18年全日本大学駅伝6区③
阿部  涼(日大4)   29.38.52 1.03.54 19年関東インカレ1部ハーフ⑧
内山 涼太(東京国際大4)29.28.21 1.08.00 19年箱根駅伝10区⑱※主将
渡邊 和也(東京国際大3)27.47.79 1.04.43 18年箱根駅伝7区⑦
芳賀宏太郎(東京国際大2)29.37.81 1.06.41 19年箱根駅伝7区⑥
阿部 弘輝(明大4)   27.56.45 1.02.16 19年ユニバーシアード10000m②
佐々木大輔(明大4)   28.58.25 1.03.44 18年全日本大学駅伝8区⑬
中島 大就(明大4)   28.37.35 1.03.48 19年箱根駅伝2区⑱
P.ギトンガ(国士大3)  28.13.38 1.02.55 19年関東インカレ1部5000m③
鴨川 源太(上武大4)  29.45.71 1.03.47 19年箱根駅伝3区⑲
石井 闘志(流通経大2) 30.39.83 1.04.49 18年箱根予選会119位※関東学生連合選出
藤井 亮矢(武蔵野学大4)29.30.31 1.04.18 17年箱根駅伝7区⑰(関東学生連合)

その他にも、早大は1月の箱根駅伝で9区区間9位と好走した新迫志希(4年)、5000mで13分58秒08を持つ半澤黎斗(2年)がエントリー外。日大は関東インカレ1部ハーフマラソン8位の阿部涼(4年)が外れ、東京国際大は世界選手権出場経験のある31歳の渡邊和也(3年)、前回の箱根駅伝で当時1年生ながら7区区間6位と好走した芳賀宏太郎(2年)らがリストから漏れた。

10000mPB上位10人平均は中大がトップ!

各校エントリー選手の10000m自己ベストを集計し、上位10人の平均タイムを出したものが以下の表だ。

①中 大   29.16.15
②早 大   29.20.12
③城西大   29.20.76
④創価大   29.22.06
⑤明 大   29.22.94
⑥東京国際大 29.24.48
⑦日 大   29.26.09
⑧日体大   29.31.53
⑨神奈川大  29.32.94
⑩大東大   29.34.83
=====通過ライン=====
⑪山梨学大  29.37.05
⑫国士大   29.38.02
⑬専 大   29.47.69
⑭上武大   29.49.79
⑮麗澤大   29.53.62
⑯亜細亜大  29.57.15
⑰東農大   29.57.38
※前回の箱根駅伝出場校+昨年の予選会上位16位までを集計
※留学生が複数いる大学は記録の良い選手を反映
※小数点第3位以下は切り捨て

中大の駅伝主将としてチームを牽引する舟津彰馬(4年)

ランキングトップは中大。10月6日の中大記録会で主力の多くが自己記録を更新し、大きく平均タイムを伸ばした。28分35秒07を持つ駅伝主将の舟津彰馬(4年)を中心に、出場全チームで最多9人が29分30秒を切っている。

2位の早大から城西大、創価大、明大までは3秒差以内でほぼ僅差。6位の東京国際大は28分04秒55のイェゴン・ヴィンセント(1年)、7位の日大は27分57秒36のチャールズ・ドゥング(1年)と、留学生の存在が大きく平均タイムの底上げに貢献している。ちなみにドゥングは昨年度まで実業団の小森コーポレーションに在籍していた23歳で、今年の3月にハーフマラソンで1時間2分12秒の自己新をマーク。10000mの自己ベストは実業団時代(16年)のものだが、その力は決して衰えていない。

トップ通過、本戦出場ラインのゆくえは?

前述の10000mの平均タイムや、今年の勢い、これまでの予選会での実績などを踏まえ、今大会の勢力図を予想した。

A(上位候補)早大、東京国際大
B(通過濃厚)中大、神奈川大、明大、城西大
C(通過候補)日体大、日大、創価大
D(ボーダー付近)大東大、山梨学大
E(チャレンジ校)国士大、上武大、麗澤大、専大、東農大など

昨年の駒大のような大本命チームは不在だが、エントリー選手を見る限りは早大と東京国際大が一歩抜けている印象だ。早大は主力数名がエントリーから外れたものの、エースの太田智樹(4年)を中心に、中谷雄飛(2年)、井川龍人(1年)といった強力な下級生の存在が心強い。予選会出場は13年ぶりで誰も〝立川決戦〟を経験していないのが不安要素だが、高い総合力を武器に上位に食い込んでくることは間違いなさそうだ。東京国際大はケニア人留学生のヴィンセント、伊藤達彦(4年)の強力2本柱で大量貯金が狙え、6月の全日本大学駅伝選考会に続くトップ通過を狙う。

東京国際大の伊藤達彦(4年)は7月にイタリア・ナポリで開催されたユニバーシアードのハーフマラソン銅メダリスト

10000mの平均トップの中大や、予選会巧者の神奈川大、大エースの阿部が抜けながらも高い総合力を持つ明大、昨年の全日本大学駅伝2区区間賞の実績を持つ荻久保寛也(4年)がいる城西大も「通過濃厚」と言っていいだろう。

日体大と日大は比較的通過の可能性が高いものの、ともに主力のエントリー漏れが気になるところ。日体大はずば抜けたエースが不在で、日大は日本人エースの阿部が抜けた穴をカバーできるかが勝負の分かれ目だ。ちなみに日体大は現在71年連続で箱根駅伝に出場中。今春から横山順一部長が駅伝監督を兼任、OBの小野木俊コーチが現場を担当する新体制となっており、伝統校の真価が問われる大会となりそうだ。創価大は今年の春から榎木和貴新監督が指揮を執り、初の予選会に挑む。ポテンシャルは高いだけに、ミスのない堅実な走りができれば3年ぶり3度目の箱根路が見えてくる。

一方、大東大と山梨学大は厳しい戦いが予想される。大東大は川澄克弥と奈良凌介の4年生コンビが強力だが、その次にあたる中間層が他校と比べてやや劣る。6月の全日本大学駅伝選考会でも9位で落選しているほか、エースの川澄は今季不調が続いている。山梨学大は新たな留学生となるボニフェス・ムルワ(1年)が加入したが、4月に10000m28分17秒36を記録して以降は際立った成績を残せていない。主力の首藤貴樹(4年)、坪井海門(2年)らの健闘が通過のカギとなりそうだ。

ボーダー争いに加わりたい「チャレンジ校」のうち、前回本戦に出場しているのが国士大と上武大。両校は昨年度よりも選手層が厚いとは言えず、苦戦が強いられることは間違いない。ただし、国士大は留学生のライモイ・ヴィンセント(2年)が全体トップを狙えるほどの実力を秘め、上武大は毎年ギリギリの通過ながら11年連続で本戦出場を続けている〝ノウハウ〟がある。1人のミスが致命傷となりうるが、上位校が崩れればチャンスはある。

初出場の機運が高まっているのが麗澤大だ。昨年は〝次点〟の12位。その時の主力が多く残り、関東インカレ2部ハーフマラソン7位のエース・国川恭朗(4年)を中心に〝下克上〟を狙う。

出場校は前回よりも4校増加

前回大会は桜美林大のレダマ・キサイサ(先頭)が序盤で独走態勢を築き、学生歴代2位の1時間0分44秒で2年連続個人トップに輝いた

個人成績は、昨年まで2年連続トップのレダマ・キサイサ(桜美林大4)が最有力。昨年自身が樹立した1時間0分44秒を超えられるか。日本人では城西大の荻久保、東京国際大の伊藤、早大の太田智樹(4年)、専大の長谷川柊(4年)あたりが上位候補だ。条件さえそろえば1時間1分台のハイレベルな争いになることも考えられる。

城西大の荻久保寛也(4年)。昨年の全日本大学駅伝2区で区間賞を獲得するなど高いポテンシャルを誇る

出場校全体に目を移すと、今年は前回よりも4校多い43チームがリストに名を連ねた。なかでも唯一初出場を決めたのが群馬県に拠点を置く育英大だ。2018年4月に開学したばかりで、当然部員も1、2年生のみ。チームは2024年の第100回大会の本戦出場を目指している。3年ぶりの出場となった東工大院には、昨年、今年と拓大の8区として箱根駅伝に連続出場した白髪大輝(M1年)がエントリー。10000mのベストは29分33秒57。大学院でも文武両道の道を突き進んでいる。

箱根駅伝のシード校を目指す強豪校から、久しぶりの本戦返り咲きを狙う名門校、初出場に意気込む新興校まで、さまざまなドラマが渦巻く〝立川決戦〟。今年はどんな名勝負が生まれるだろうか。

文/松永貴允

第96回箱根駅伝エントリー選手一覧(関東学連)