HOME ニュース、国内

2021.09.26

金井大旺&矢澤航がライバルたちと最後の決戦 金井「最後は振り絞って」意地の大会新V/全日本実業団
金井大旺&矢澤航がライバルたちと最後の決戦 金井「最後は振り絞って」意地の大会新V/全日本実業団


◇全日本実業団対抗(9月24~26日/大阪・ヤンマースタジアム長居)3日目

全日本実業団対抗の3日目、男子110mハードルが行われた。

広告の下にコンテンツが続きます

偉大なハードラー2人が最後の大舞台を終えた。リオ五輪代表の矢澤航(デサントTC)と東京五輪代表の金井大旺(ミズノ)の法大OB2人は今シーズン限りでの引退を表明。これが最後の全日本実業団であり、ライバルたちとの最後の勝負の場だった。

レースは石川周平(富士通)が先行するが、最後は金井が胸を突き出して制した。「勝ちたいレース。必ず勝つと奮い立たせてスタートラインに立てました。最後は振り絞って。勝ちたいという気持ちが出たと思います」。13秒48(+1.1)の大会記録Vは意地だった。

東京五輪シーズンを最後に現役を退き、父の跡を継ぐために歯科医となるための道へと進むと決めた金井。集大成として臨んだ東京五輪は予選で転倒。ファイナル進出という夢は叶わなかった。以降、「五輪が終わってからは秋の試合に向けて気持ちを作り直そうと目標は立てましたが気持ちがついてこなかったです」と言う金井。それでも、記録会は残すとはいえ、これが大舞台は最後。「前日は寂しさもあり、みんなから『最後だね』と声をかけられた」と思うところはあった。だからこそ、感謝の気持ちを、この110mに込めた。

その金井が憧れ、ずっと追いかけてきたのが矢澤だった。その矢澤もしっかり予選を通過して決勝に進んだのは「らしさ」だろう。「特別な思いがあるかなと思っていたのですが、スタートに立ったら『横の選手に勝ちたい』という気持ちが出ました。終わりだな、という感じはなかったです」。長く世界から遠ざかっていた110mハードル。その中で、矢澤は全中、インターハイを制し、インカレ、日本選手権も制し、そしてリオ五輪に出場した。みんながその背中を追ってきた。

広告の下にコンテンツが続きます

「僕一人でやってきたという気持ちはないんです。上に強い先輩たちがいて、増野(元太)が出てきて、一番近くにいた金井が結果的に扉を開いてくれました。一人ひとりが貪欲になった結果。その一人になれていたのならうれしいです」

2013年に2020年オリンピックの舞台が東京に決まってから、そこを目指してやってきた。その道が閉ざされたことで現役引退を決断。「いろんな方の支えがあってこそ続けられました。近くに金井がいて、どんどん吸収して、僕を超えていった。そんな彼と練習できることが幸せでした」。今後は社業に専念。指導する側については「どうなるかはわかりません」と笑った。

「大学生の時から吸収させてもらった矢澤さんと最後決勝で走れてよかった」と金井。先輩、後輩で積み上げてきた思いは、残る日本のスプリントハードルに引き継がれる。金井が思う、世界で戦うために必要なことは。「国内で切磋琢磨すること。13秒1を出しても代表が厳しい状況。そういう状況がプラスになっていると思いますし、この状況をどんどん上げていってほしいです」。一緒に戦ってきた高山峻野(ゼンリン)は「またオンラインゲームで勝負します」と笑いつつ「2人には本当に感謝しています」と偉大な先輩、そして同志を労った。

金井、矢澤はこの後、記録会に出場してスパイクを脱ぐ予定。13秒3台が当たり前になり、優勝争いができない状況にまでステージが上がった日本男子110mハードル。その中心にいた2人に大きな拍手を送りたい。

◇全日本実業団対抗(9月24~26日/大阪・ヤンマースタジアム長居)3日目 全日本実業団対抗の3日目、男子110mハードルが行われた。 偉大なハードラー2人が最後の大舞台を終えた。リオ五輪代表の矢澤航(デサントTC)と東京五輪代表の金井大旺(ミズノ)の法大OB2人は今シーズン限りでの引退を表明。これが最後の全日本実業団であり、ライバルたちとの最後の勝負の場だった。 レースは石川周平(富士通)が先行するが、最後は金井が胸を突き出して制した。「勝ちたいレース。必ず勝つと奮い立たせてスタートラインに立てました。最後は振り絞って。勝ちたいという気持ちが出たと思います」。13秒48(+1.1)の大会記録Vは意地だった。 東京五輪シーズンを最後に現役を退き、父の跡を継ぐために歯科医となるための道へと進むと決めた金井。集大成として臨んだ東京五輪は予選で転倒。ファイナル進出という夢は叶わなかった。以降、「五輪が終わってからは秋の試合に向けて気持ちを作り直そうと目標は立てましたが気持ちがついてこなかったです」と言う金井。それでも、記録会は残すとはいえ、これが大舞台は最後。「前日は寂しさもあり、みんなから『最後だね』と声をかけられた」と思うところはあった。だからこそ、感謝の気持ちを、この110mに込めた。 その金井が憧れ、ずっと追いかけてきたのが矢澤だった。その矢澤もしっかり予選を通過して決勝に進んだのは「らしさ」だろう。「特別な思いがあるかなと思っていたのですが、スタートに立ったら『横の選手に勝ちたい』という気持ちが出ました。終わりだな、という感じはなかったです」。長く世界から遠ざかっていた110mハードル。その中で、矢澤は全中、インターハイを制し、インカレ、日本選手権も制し、そしてリオ五輪に出場した。みんながその背中を追ってきた。 「僕一人でやってきたという気持ちはないんです。上に強い先輩たちがいて、増野(元太)が出てきて、一番近くにいた金井が結果的に扉を開いてくれました。一人ひとりが貪欲になった結果。その一人になれていたのならうれしいです」 2013年に2020年オリンピックの舞台が東京に決まってから、そこを目指してやってきた。その道が閉ざされたことで現役引退を決断。「いろんな方の支えがあってこそ続けられました。近くに金井がいて、どんどん吸収して、僕を超えていった。そんな彼と練習できることが幸せでした」。今後は社業に専念。指導する側については「どうなるかはわかりません」と笑った。 「大学生の時から吸収させてもらった矢澤さんと最後決勝で走れてよかった」と金井。先輩、後輩で積み上げてきた思いは、残る日本のスプリントハードルに引き継がれる。金井が思う、世界で戦うために必要なことは。「国内で切磋琢磨すること。13秒1を出しても代表が厳しい状況。そういう状況がプラスになっていると思いますし、この状況をどんどん上げていってほしいです」。一緒に戦ってきた高山峻野(ゼンリン)は「またオンラインゲームで勝負します」と笑いつつ「2人には本当に感謝しています」と偉大な先輩、そして同志を労った。 金井、矢澤はこの後、記録会に出場してスパイクを脱ぐ予定。13秒3台が当たり前になり、優勝争いができない状況にまでステージが上がった日本男子110mハードル。その中心にいた2人に大きな拍手を送りたい。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.12.22

佐久長聖1年の橋本蒼平が5000m14分30秒50でトップ/SGH文スポ チャレンジ

12月23日、滋賀県守山市のSGホールディングスグループ陸上競技場で令和7年度SGH文スポ チャレンジ競技会が開催された。 同大会は主に前日の全国高校駅伝(男子)に出場した学校のうち、出走できなかった選手たちを中心に参加 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

2025.12.22

箱根駅伝Stories/継続中最長シード・東洋大 激動のシーズンに高まる結束力 2年生世代が台頭

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 「チームのために走る」 20年連続で箱根駅伝のシード権を守り続けてい […]

NEWS 箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

2025.12.22

箱根駅伝Stories/悔しさを味わってきた東農大・原田洋輔 「がっつり爪痕を残したい」 地元・戸塚で貢献を

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 10月の箱根駅伝予選会で東農大は6位を占め、2 […]

NEWS 箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

2025.12.22

箱根駅伝Stories/ハーフで強さ示してきた帝京大・島田晃希 「エース区間を走りたい」期待の“大器”最後の舞台へ

新春の風物詩・第102回箱根駅伝に挑む選手やチームを取り上げる「箱根駅伝Stories」。学生三大駅伝最終決戦に向かうそれぞれの歩みや思いを紹介する。 身近にあった箱根駅伝 この1年で帝京大の長距離種目の歴代記録がガラリ […]

NEWS 大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

2025.12.22

大学対校男女混合駅伝のアンバサダーに堀未央奈が就任!来年2月15日開催、22チーム出場

第6回全国大学対校男女混合駅伝の大会要項が公開され、大会アンバサダーに元乃木坂46の堀未央奈さんが選ばれた。 堀さんは乃木坂46の2期生として加入し、『バレッタ』でセンターを務めるなど人気メンバーとして活躍。21年3月に […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年1月号 (12月12日発売)

2026年1月号 (12月12日発売)

箱根駅伝観戦ガイド&全国高校駅伝総展望
大迫傑がマラソン日本新
箱根駅伝「5強」主将インタビュー
クイーンズ駅伝/福岡国際マラソン
〔新旧男子100m高校記録保持者〕桐生祥秀×清水空跳

page top