【WEB特別記事】MGC直前展望/「3枠」のイスを勝ち取るのは?(女子編)

【WEB特別記事】MGC直前展望
「3枠」のイスを勝ち取るのは?(女子編)

2020東京五輪マラソン代表選考会である「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)が9月15日、東京都渋谷区の明治神宮外苑いちょう並木を発着点に開催される。
上位2名が東京五輪の代表に内定し、3位の選手も今年秋以降に始まる「MGCファイナルチャレンジ」で「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」突破者が現れなければ代表となる。夢の舞台へのキップをつかむのはどの選手か。

女子は混戦模様
カギは松田と鈴木の状態

男子の31人に対し、女子は12人という少人数での争いとなる。どの選手にも何らかの不確定要素があり、男子以上の混戦となりそうだ。

2017年以降の最高記録(表1)では17年の名古屋で2時間21分36秒をマークした安藤友香(ワコール)がトップ。だが、その後は3戦して最も速かったのが今年のロンドンで出した2時間26分47秒で、〝本命〟とは言いがたい。

<表1>MGC出場選手の2017年以降のベストタイム

2.21.36★ 安藤 友香(ワコール) 2017. 3.12 名古屋 2位
2.22.23★ 松田 瑞生(ダイハツ) 2018. 9.16 ベルリン 5位
2.23.07★ 関根 花観(日本郵政グループ) 2018. 3.11 名古屋 3位
2.23.48★ 前田 穂南(天満屋) 2018. 1.28 大阪国際 2位
2.23.52★ 岩出 玲亜(アンダーアーマー) 2019. 3.10 名古屋 5位
2.24.09 福士加代子(ワコール) 2019. 3.10 名古屋 8位
2.24.19★ 上原 美幸(第一生命グループ) 2019. 3.10 名古屋 9位
2.24.33★ 一山 麻緒(ワコール) 2019. 3. 3 東 京 7位
2.25.25 前田 彩里(ダイハツ) 2019. 3.10 名古屋 10位
2.25.46 小原  怜(天満屋) 2019. 1.27 大阪国際 2位
2.26.33★ 野上 恵子(十八銀行) 2018. 3.11 名古屋 5位
2.28.32★ 鈴木亜由子(日本郵政グループ) 2018. 8.26 北海道 優勝

★=自己ベスト

近年の実績でナンバーワンなのは昨年2時間22分台を2度マークしている松田瑞生(ダイハツ)だろう。ただ、昨年9月のベルリンを最後にマラソンには出場しておらず、今季はトラックでもやや精彩を欠く。上位候補であるのは間違いないが、果たしてMGC本番にどんな状態で臨めるか。

それに対して、好調さが目立つのが鈴木亜由子(日本郵政グループ)だ。マラソン経験は優勝した昨年8月の北海道だけだが、今季は5月の日本選手権10000mでも終盤まで優勝争いを演じるなど健在ぶりをアピール。5000mと10000mで日本トップクラスの実力を持ち、マラソンにも高い適性を示していることから、自身2度目のマラソンとなるMGCで優勝する可能性も十分にある。

女子は混戦模様。その中でも鈴木亜由子(日本郵政グループ、手前)と松田瑞生(ダイハツ、その左)が有力視される

また、今年3月の名古屋で上位を占めた岩出玲亜(アンダーアーマー)や福士加代子(ワコール)には勢いがある。特に福士は1月末の大阪国際女子マラソンで転倒して途中棄権しながらも短期間で立て直しており、状態は上向きと見ていいだろう。

一方、2017年以降の「ワーストタイム」(表2)を参照すると、2時間22分台の松田が圧倒的。それ以外では上原美幸(第一生命グループ)の安定感が光る。初マラソンの東京で2時間24分33秒をマークし、その1ヵ月後のロンドンを2時間27分台でまとめている一山麻緒(ワコール)もダークホースと言えそうだ。

<表2>MGC出場選手の2017年以降のワーストタイム(途中棄権と夏レースを除く)

2.22.44 松田 瑞生(ダイハツ) 2018. 1.28 大阪国際 優勝
2.23.07▽ 関根 花観(日本郵政グループ) 2018. 3.11 名古屋 3位
2.24.09▽ 福士加代子(ワコール) 2019. 3.10 名古屋 8位
2.25.46 上原 美幸(第一生命グループ) 2018. 9.16 ベルリン 9位
2.27.27 一山 麻緒(ワコール) 2019. 4.28 ロンドン 15位
2.27.37▲ 安藤 友香(ワコール) 2018. 1.28 大阪国際 3位
2.27.44 小原  怜(天満屋) 2018. 3.11 名古屋 8位
2.28.32▽ 鈴木亜由子(日本郵政グループ) 2018. 8.26 北海道 優勝
2.30.54 前田 彩里(ダイハツ) 2018. 3.11 名古屋 15位
2.31.10 岩出 玲亜(アンダーアーマー) 2017.11.12 さいたま 5位
2.32.19 前田 穂南(天満屋) 2017. 1.29 大阪国際 12位
2.38.23 野上 恵子(十八銀行) 2019. 3. 3 東 京 20位

▲は夏マラソンを除いたタイム、▽は該当記録が1つのみ(初マラソンなど)

逆に、昨年の名古屋ウィメンズ以降マラソンを走っていない関根花観(日本郵政グループ)はその後、トラックも含めてレースの出走機会が少なく、状態は不透明(追記=9月13日に欠場を表明)。2時間23分48秒の自己記録を持ち、上位候補と目される前田穂南(天満屋)も、2年間で2時間30分をオーバーしたレースが2回あり、外した時は落ち込みが大きい。

女子はピークパフォーマンスの高さよりも、レース当日をどんな状態で迎えるかで結果が大きく変わりそうだ。

<解説>「2段階選抜」による選考

MGCに出場できるのは日本陸連が定める条件をクリアした男子31人、女子12人。2017年8月の北海道から始まった「MGCシリーズ」で規定のタイム(大会ごとに異なる)を上回って上位に入るか、それ以外の大会も含めて

1)男子2時間8分30秒以内、女子2時間24分00秒以内
2)期間内の上位2つの記録の平均が、男子2時間11分00秒以内、女子2時間28分00秒以内

という条件を満たせばMGCの出場権が獲得できる仕組みだ。そして、MGCで2位以内に入れば東京五輪の代表に内定。3位の選手は保留となり、秋から始まる「MGCファイナルチャレンジ」で「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録(男子2時間5分49秒、女子2時間22分22秒)」突破者が現れなければ代表となる。
なお、MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録は、男女ともMGCシリーズ期間中での最高タイムをそれぞれ1秒上回る数字が設定されており、男子にいたっては2018年に出された日本記録の2時間5分50秒よりも1秒速い。これは非常に高いハードルとなるため、東京五輪を目指す選手はまずMGCでの「3枠」を目指すことになる。
つまり、代表になるためには「MGCに出るためのレース」と「東京五輪に出るためのレース(=MGC)」という2つのマラソンで結果を残すことが必要となる。また、MGCの開催日を残暑の残る9月に設定することで、夏に開催される東京五輪本番に向けて暑さへの対応力も見ることができる。この〝2段階選抜〟で代表候補を絞り込むことで、公平なルールのもと五輪本番でより力が発揮できそうな選手を代表に選べるわけだ。

文/山本慎一郎

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