【WEB特別記事】MGC直前展望/「3枠」のイスを勝ち取るのは?(男子編)

【WEB特別記事】MGC直前展望
「3枠」のイスを勝ち取るのは?(男子編)

2020東京五輪マラソン代表選考会である「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)が9月15日、東京都渋谷区の明治神宮外苑いちょう並木を発着点に開催される。
上位2名が東京五輪の代表に内定し、3位の選手も今年秋以降に始まる「MGCファイナルチャレンジ」で「MGCファイナルチャレンジ派遣設定記録」突破者が現れなければ代表となる。夢の舞台へのキップをつかむのはどの選手か。

男子は『4強』の構図

選ばれし31人で3枠を争う男子は『4強』の構図だ。表1の通り、2017年以降の最高記録をランキング化すると、大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)、設楽悠太(Honda)、井上大仁(MHPS)、服部勇馬(トヨタ自動車)がそのまま上位に収まる。一方で、タイムだけでは測れない要素があるからこそ序列がつけられない面がある。ここではタイプ別に整理してみよう。

<表1>MGC出場選手の過去2年間のベストタイム

2.05.50★ 大迫  傑(NikeORPJT) 2018.10. 7 シカゴ 3位
2.06.11★ 設楽 悠太(Honda) 2018. 2.25 東 京 2位
2.06.54★ 井上 大仁(MHPS) 2018. 2.25 東 京 5位
2.07.27★ 服部 勇馬(トヨタ自動車) 2018.12. 2 福 岡 優勝
2.07.57★ 藤本  拓(トヨタ自動車) 2018.10. 7 シカゴ 8位
2.08.08★ 木滑  良(MHPS) 2018. 2.25 東 京 7位
2.08.16★ 中村 匠吾(富士通) 2018. 9.16 ベルリン 4位
2.08.42★ 山本 憲二(マツダ) 2019. 3.10 びわ湖 7位
2.08.45★ 宮脇 千博(トヨタ自動車) 2018. 2.25 東 京 8位
2.08.58★ 佐藤 悠基(日清食品グループ) 2018. 2.25 東 京 10位
2.09.12★ 山本 浩之(コニカミノルタ) 2017. 2.26 東 京 10位
2.09.27★ 上門 大祐(大塚製薬) 2017.12. 3 福 岡 6位
2.09.29★ 橋本  崚(GMOアスリーツ) 2019. 2. 3 別府大分 5位
2.09.30★ 岩田 勇治(MHPS) 2019. 2. 3 別府大分 6位
2.09.32 中本健太郎(安川電機) 2017. 2. 5 別府大分 優勝
2.09.34★ 園田  隼(黒崎播磨) 2018. 2. 4 別府大分 2位
2.09.36★ 荻野 皓平(富士通) 2018. 2.25 東 京 12位
2.09.43★ 一色 恭志(GMOアスリーツ) 2018. 2.25 東 京 13位
2.09.47★ 村澤 明伸(日清食品グループ) 2018. 2.25 東 京 14位
2.09.52★ 福田  穣(西鉄) 2018. 7. 1 ゴールドコースト 3位
2.10.01★ 竹ノ内佳樹(NTT西日本) 2017.12. 3 福 岡 7位
2.10.02★ 髙久  龍(ヤクルト) 2019. 4.28 ハンブルク 7位
2.10.12★ 大塚 祥平(九電工) 2018. 2. 4 別府大分 3位
2.10.18★ 神野 大地(セルソース) 2018. 2.25 東 京 18位
2.10.21★ 堀尾 謙介(トヨタ自動車) 2019. 3. 3 東 京 5位
2.10.21★ 鈴木 健吾(富士通) 2018. 2.25 東 京 19位
2.10.30 今井 正人(トヨタ自動車九州) 2019. 3. 3 東 京 6位
2.10.35★ 藤川 拓也(中国電力) 2019. 3. 3 東 京 7位
2.10.50★ 河合 代二(トーエネック) 2019. 3.10 びわ湖 11位
2.11.29★ 岡本 直己(中国電力) 2018. 8.26 北海道 優勝
2.12.02 谷川 智浩(コニカミノルタ) 2018. 8.26 北海道 3位

★=自己ベスト

まず、記録の面でリードするのが昨年2月の東京マラソンで15年ぶりに日本記録を更新した設楽と、その設楽の記録を昨年10月のシカゴで塗り替え、日本人初の2時間5分台に突入した大迫だ。ともに2016年リオ五輪はトラック種目で出場しており、スピード面でも日本トップレベルの走力を誇る。

ただし、大迫はマラソンでは優勝経験がなく、設楽も優勝は今年7月のゴールドコースト(豪州)のみ。両選手ともマラソンでは世界大会にも出場していない。それに対して経験や勝負強さでまさるのが井上だ。何と言っても昨年8月のアジア大会で金メダルを獲得した実績が光り、2017年にはマラソンで世界選手権にも出場している(26位)。

日本記録を打ち立てた設楽には先着を許したものの、昨年の東京マラソンは2時間6分54秒(現・日本歴代5位)で走っており、その実力はタイムの上でも証明済み。トラックや駅伝でも安定した強さを示し、この井上をMGCの本命に推す意見も少なくない。

服部は昨年12月の福岡国際マラソンを日本歴代9位の2時間7分27秒で制している。福岡国際で日本人が優勝したのは14年ぶりで、記録と勝負強さの両面で強さをアピールした。

記録で優位に立つ大迫、設楽か、勝負強さの井上、服部か。実績では以上の『4強』が抜きん出ており、甲乙つけがたい。他の選手はこの構図をいかに崩せるかだろう。

マラソンで日本記録を持ち、MGCでも優勝候補と見られる大迫傑(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)

「安定感」で見る個々の実力

有力選手を挙げていくときりがないので、ここでは別の切り口を紹介しよう。

表2はMGCファイナリストの2017年以降の「ワーストタイム」を速い順に並べたものだ。なお、途中棄権や真夏である8月のレースは対象から外している。

<表2>MGC出場選手の過去2年間のワーストタイム(途中棄権と夏レースを除く)

2.10.21▽ 堀尾 謙介(トヨタ自動車) 2019. 3. 3 東 京 5位
2.10.25 設楽 悠太(Honda) 2018.12. 2 福 岡 4位
2.10.26 服部 勇馬(トヨタ自動車) 2018. 5. 6 プラハ 5位
2.10.28 大迫  傑(NikeORPJT) 2017. 4.17 ボストン 3位
2.10.33 山本 浩之(コニカミノルタ) 2019. 3.10 びわ湖 10位
2.11.34 中本健太郎(安川電機) 2019. 4.28 クラクフ 2位
2.11.36 鈴木 健吾(富士通) 2019. 4.28 ハンブルク 13位
2.11.53▲ 井上 大仁(MHPS) 2019. 4.15 ボストン 12位
2.13.29 橋本  崚(GMOアスリーツ) 2017. 2.26 東 京 20位
2.13.33 岡本 直己(中国電力) 2017. 2.26 東 京 21位
2.14.52 中村 匠吾(富士通) 2019. 3. 3 東 京 15位
2.15.07 佐藤 悠基(日清食品グループ) 2019. 3. 3 東 京 16位
2.15.10 大塚 祥平(九電工) 2017. 3. 5 びわ湖 16位
2.15.19 山本 憲二(マツダ) 2017. 3. 5 びわ湖 18位
2.15.30 藤本  拓(トヨタ自動車) 2018. 3. 4 びわ湖 15位
2.15.43 一色 恭志(GMOアスリーツ) 2017.12.17 防府読売 8位
2.15.49 上門 大祐(大塚製薬) 2019. 2. 3 別府大分 22位
2.15.58▲ 園田  隼(黒崎播磨) 2019. 4.15 ボストン 18位
2.16.24 藤川 拓也(中国電力) 2017. 3. 5 びわ湖 24位
2.16.51 宮脇 千博(トヨタ自動車) 2017. 3. 5 びわ湖 25位
2.17.00 今井 正人(トヨタ自動車九州) 2017.10. 8 アイントホーフェン 10位
2.17.19 木滑  良(MHPS) 2019. 3. 3 東 京 26位
2.17.51 村澤 明伸(日清食品グループ) 2017. 3. 5 びわ湖 28位
2.18.16▲ 福田  穣(西鉄) 2018. 3. 4 びわ湖 23位
2.18.33 谷川 智浩(コニカミノルタ) 2018. 2. 4 別府大分 28位
2.19.28 神野 大地(セルソース) 2018.12. 2 福 岡 29位
2.19.51 髙久  龍(ヤクルト) 2018.12. 2 福 岡 30位
2.20.29 竹ノ内佳樹(NTT西日本) 2018. 3. 4 びわ湖 30位
2.23.13 河合 代二(トーエネック) 2018. 3. 4 びわ湖 42位
2.24.00 岩田 勇治(MHPS) 2018. 3. 4 びわ湖 46位
2.24.55 荻野 皓平(富士通) 2017.12. 3 福 岡 41位

▲は夏マラソンを除いたタイム、▽は該当記録が1つのみ(初マラソンなど)
※井上大仁の東北・みやぎ復興マラソンは除外

すなわち、この表は各選手の「安定感」や「底力」を示す一つの指標となるだろう。もちろん、レースの出場回数は選手によって異なり、堀尾謙介(トヨタ自動車)のようにマラソンを1度しか走っていない選手もいるが、それ以外は1レースごとに異なる条件の中で落ち込みをいかに抑えたかを垣間見ることができる。

堀尾を除くと上位を占めるのは設楽、服部、大迫がトップスリー。特筆すべきは期間中に3レースを走って途中棄権が1度の山本浩之(コニカミノルタ)だ。完走した2大会は最低でも2時間10分台でまとめている。

一方で井上は17年の世界選手権とアジア大会、練習の一環とみられる「東北・みやぎ復興マラソン」を除くと今年4月のボストンが2時間11分53秒で、これが期間内でのワーストだ。『4強』の構図は堅そうだが、ボストンの結果をどう見るかで井上の評価は分かれるだろう。

それ以外の選手では、36歳のベテランである中本健太郎(安川電機)が6番目にランクイン。マラソン経験が2回の鈴木健吾(富士通)が7番目で、ここまでが2時間11分台だ。スローペースになると思わぬ選手にチャンスがめぐってくるかもしれない。

逆に、〝4強崩し〟の有力候補と見られる佐藤悠基(日清食品グループ)や中村匠吾(富士通)らは、自身の持ち味を生かせる展開に持ち込むことが勝負のカギと言えるだろう。

文/山本慎一郎

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