HOME 国内、大学

2021.09.18

女子やり投・武本紗栄が高校以来の日本一に涙「ずっと悔しい思いしてきた」亡き友の思い胸に成長/日本IC
女子やり投・武本紗栄が高校以来の日本一に涙「ずっと悔しい思いしてきた」亡き友の思い胸に成長/日本IC


◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)1日目

第90回日本インカレの初日、女子やり投は大体大4年の武本紗栄が59m90を投げて初優勝を飾った。

久しぶりの日本一のタイトルに、思わず目に涙を浮かべる。「ずっと悔しい思いをしてきました」。兵庫・市尼崎高3年時にはインターハイと国体の2冠。将来を期待されたスロワーだった。しかし、大体大に進学後は環境の変化などもあり、なかなか結果が出ない。インターハイで投げた56m44の自己記録は2年間止まったままだった。

「自己ベストももう出せないのかなと思った時期もありました」。だが、栗山佳也監督や高校時代から身体のケアを見てもらっているトレーナー、仲間たちに支えられたという。昨年の日本インカレで57m43を投げて2位に入ると、この冬は「最後のシーズン」ということでこれまで以上に充実したトレーニングを積んだ。

その成果が如実に表れ、今年は4月の織田記念で57m83の自己新、6月には木南記念で58m98をマーク。そして数日後の日本学生個人選手権で62m39を投げて優勝した。東京五輪の参加標準記録(64m00)にも近づくビッグアーチ。結果的に、参加標準記録も届かず、ワールドランキングでも惜しいところで代表入りはならなかったが、大きな自信を得たシーズンとなった。

今大会前は「正直、あまり調子は良くなかった」と、背中の痛みもあって不安は大きかったという武本。それでも1回目に59m09を放つと、2回目に59m90を投げた。その後は「追われる立場という中で精神的に弱さが出て一発伸ばせなかった。力がなかったです」と言うが、同学年のライバル・上田百寧(福岡大)、山下実花子(九州共立大院)らを抑えてタイトルをゲット。U20日本選手権、学生個人選手権は制しているが、世代別チャンピオンシップとしては「高校時代以来の日本一。うれしいです」と目を真っ赤にした。

後半の試技で記録が伸ばせずに苦しい時、武本はある思いを胸に込めていた。「美史、頼むから投げさせて……ってお願いしていました」。市尼崎高の同級生で、同じインターハイでハンマー投と円盤投の2冠を達成していた中村美史さん。中京大に進学して世界を目指していたが、昨年8月に不慮の事故で20歳の若さでこの世を去った。1回忌には実家を訪れて、美史さんの母からもエールをもらった。「今年の活躍は美史の力もあると思います。美史の分まで頑張りたい」。

あとわずかで届かなかった東京五輪は「悔しくてあまり見られなかった」。それでも、「五輪前の自分よりも、東京五輪を終わってからのほうがオリンピックに出たいという気持ちは強くなりました」と武本。今は「3年後までの目標を、月ごとに細かく立てて取り組んでいます」と、精神面でも成長を遂げている。

「私は身体も小さいしウエイトトレーニングも強いわじゃないし、スピードもそんなにない。それでも62mを投げられたので、ここからしっかり土台を作っていけば、安定して投げられると思います」。久々の日本一に輝いた女子やり投のホープは、まだまだ伸びしろ十分だ。

◇日本インカレ(9月17~19日/埼玉・熊谷スポーツ公園)1日目 第90回日本インカレの初日、女子やり投は大体大4年の武本紗栄が59m90を投げて初優勝を飾った。 久しぶりの日本一のタイトルに、思わず目に涙を浮かべる。「ずっと悔しい思いをしてきました」。兵庫・市尼崎高3年時にはインターハイと国体の2冠。将来を期待されたスロワーだった。しかし、大体大に進学後は環境の変化などもあり、なかなか結果が出ない。インターハイで投げた56m44の自己記録は2年間止まったままだった。 「自己ベストももう出せないのかなと思った時期もありました」。だが、栗山佳也監督や高校時代から身体のケアを見てもらっているトレーナー、仲間たちに支えられたという。昨年の日本インカレで57m43を投げて2位に入ると、この冬は「最後のシーズン」ということでこれまで以上に充実したトレーニングを積んだ。 その成果が如実に表れ、今年は4月の織田記念で57m83の自己新、6月には木南記念で58m98をマーク。そして数日後の日本学生個人選手権で62m39を投げて優勝した。東京五輪の参加標準記録(64m00)にも近づくビッグアーチ。結果的に、参加標準記録も届かず、ワールドランキングでも惜しいところで代表入りはならなかったが、大きな自信を得たシーズンとなった。 今大会前は「正直、あまり調子は良くなかった」と、背中の痛みもあって不安は大きかったという武本。それでも1回目に59m09を放つと、2回目に59m90を投げた。その後は「追われる立場という中で精神的に弱さが出て一発伸ばせなかった。力がなかったです」と言うが、同学年のライバル・上田百寧(福岡大)、山下実花子(九州共立大院)らを抑えてタイトルをゲット。U20日本選手権、学生個人選手権は制しているが、世代別チャンピオンシップとしては「高校時代以来の日本一。うれしいです」と目を真っ赤にした。 後半の試技で記録が伸ばせずに苦しい時、武本はある思いを胸に込めていた。「美史、頼むから投げさせて……ってお願いしていました」。市尼崎高の同級生で、同じインターハイでハンマー投と円盤投の2冠を達成していた中村美史さん。中京大に進学して世界を目指していたが、昨年8月に不慮の事故で20歳の若さでこの世を去った。1回忌には実家を訪れて、美史さんの母からもエールをもらった。「今年の活躍は美史の力もあると思います。美史の分まで頑張りたい」。 あとわずかで届かなかった東京五輪は「悔しくてあまり見られなかった」。それでも、「五輪前の自分よりも、東京五輪を終わってからのほうがオリンピックに出たいという気持ちは強くなりました」と武本。今は「3年後までの目標を、月ごとに細かく立てて取り組んでいます」と、精神面でも成長を遂げている。 「私は身体も小さいしウエイトトレーニングも強いわじゃないし、スピードもそんなにない。それでも62mを投げられたので、ここからしっかり土台を作っていけば、安定して投げられると思います」。久々の日本一に輝いた女子やり投のホープは、まだまだ伸びしろ十分だ。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2024.10.27

ケジェルチャがハーフマラソンで世界新! キプリモの記録を3年ぶり塗り替える57分30秒 女子ゲティチも歴代2位の1時間3分04秒/バレンシアハーフ

10月27日、バレンシア・ハーフマラソンがスペインで行われ、男子ではY.ケジェルチャ(エチオピア)が57分30秒の世界新記録で優勝した。従来の世界記録は2021年のリスボンでJ.キプリモ(ウガンダ)が樹立した57分31秒 […]

NEWS 甲南大が女子4×200mR学生新記録! インカレ四継Vメンバーで1分35秒42

2024.10.27

甲南大が女子4×200mR学生新記録! インカレ四継Vメンバーで1分35秒42

10月27日、兵庫県伊丹市の住友総合グランド陸上競技場で、第13回日本記録挑戦記録会が行われ、女子4×200mリレーで甲南大が日本学生新、日本歴代3位の1分35秒42をマークした。 甲南大のオーダーは1走から奥野由萌、岡 […]

NEWS 拓大7位で2年ぶりシード!中盤上位の奮闘、5区・不破聖衣来「1つでも前へ」/全日本大学駅伝

2024.10.27

拓大7位で2年ぶりシード!中盤上位の奮闘、5区・不破聖衣来「1つでも前へ」/全日本大学駅伝

◇第42回全日本大学女子駅伝(10月27日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km) 第42回全日本大学女子駅伝が行われ、立命大が2時間3分03秒で9年ぶり11度目の優勝を飾った。 拓大が2時間6分4 […]

NEWS 城西大が復活の3位!4区まで「100点」の継走で20年ぶりトップスリー/全日本大学女子駅伝

2024.10.27

城西大が復活の3位!4区まで「100点」の継走で20年ぶりトップスリー/全日本大学女子駅伝

◇第42回全日本大学女子駅伝(10月27日/宮城・弘進ゴムアスリートパーク仙台発着・6区間38.0km) 第42回全日本大学女子駅伝が行われ、立命大が2時間3分03秒で9年ぶり11度目の優勝を飾った。 城西大が2時間5分 […]

NEWS 智辯カレッジが男女そろって優勝! 3年連続で区間賞独占/奈良県高校駅伝

2024.10.27

智辯カレッジが男女そろって優勝! 3年連続で区間賞独占/奈良県高校駅伝

全国高校駅伝の出場権を懸けた奈良県高校駅伝が10月27日、橿原市の県立橿原公苑陸上競技場外周コースで行われ、智辯カレッジが男女ともに優勝。8年連続8回目の全国出場を決めた。 男子は、1区(10km)の和田拓真(3年)が2 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2024年11月号 (10月11日発売)

2024年11月号 (10月11日発売)

●ベルリンマラソン
●DLファイナル
●インカレ、実業団
●箱根駅伝予選会展望

page top