2021.09.17
学生長距離Close-upインタビュー
近藤幸太郎 Kondo Kotaro 青山学院大学3年
「月陸Online」限定で大学長距離選手のインタビューをお届けする「学生長距離Close-upインタビュー」。11回目は、青学大のエースに成長した近藤幸太郎(3年)に話を聞いた。
愛知・豊川工高(現・豊川工科高)から「憧れ」だった青学大の門を叩き、1年目で箱根駅伝エントリーメンバー入り。2年目の昨年度は10000mで28分35秒28まで記録を短縮し、今年の箱根駅伝では7区区間3位の好走で復路優勝に貢献。さらに今季は5000m、10000mで青学大記録を更新し、フレッシュグリーンのエースとして、2度目の「学生三大駅伝3冠」を目指すチームを牽引する。
3年目のブレイク、青学大のエースへ
今季は4月の日本学連10000m記録会で青学大記録となる28分10秒50をマーク。5月には日本選手権10000mにも出場し、B組5着(全体18位)と健闘。約2週間後の関東インカレ2部10000mでも6位入賞(日本人4位)を果たした。
その勢いはとどまることを知らず、さらに7月のホクレンディスタンスチャレンジ士別大会5000mで13分34秒88の自己ベストをマーク。トラック2種目で青学大記録保持者となった。
チーム内には今季の5000m13分台ランナーが22人そろい、三大駅伝経験者も多数。その圧倒的な戦力を有する青学大にあって、近藤の実績は頭一つ抜けている。
「今年は箱根駅伝が終わってからの冬季練習もしっかりできました。そこから良い流れでトラックシーズンに入れて結果を出すことができたと要因だと思います。トラックシーズンは目標タイムを追いかけ過ぎず、走れば記録がついてくるという良い流れができてきたと思います」
陸上引退から一転、憧れの常勝軍団へ
5つ年上の姉の影響もあって、小学2年から東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子も在籍していた地元の豊橋陸上クラブで陸上を始めた近藤。短距離からスタートし、小学5年の頃に1000mに出場するなど、中長距離への適性を見出していった。
「5年から短距離へ通用しないなと感じるようになって、長距離のほうが得意だと感じるようになりました。自分が輝ける場所は長い距離なのかなと感じて、徐々に転向した感じです」
だが愛知・代田中時代には一時陸上を辞めようと考えた挫折を味わった。中学2年時には3000mで9分ひとケタのタイムを持っていたが、3年時は故障で思うように走れない時期が続き、全国大会出場も逃した。今でも全中出場を逃した最後の県総体は「周りのライバルが全国を決めるなかで自分だけがダメで、試合後にロッカールームでずっと泣いていました」と、悔しい思い出として残っているという。
それでも走ることを続けたのは走る仲間と一緒にいる楽しさ、そして「憧れ」だった青学大の存在だった。
「中学では豊橋市のTTランナーズで練習していました。そこでは地元が同じだった吉居大和(中大)とも練習したりもしましたね。練習は週1、2回でしたが楽しかったので陸上は好きでしたね。あとは青学大が当時活躍し始めた頃で、格好良くて、自分もあのチームに入れたらと思っていました」
その想いが実現したのは愛知・豊川工2年時。東海総体5000mで3位に入ったことで、青学大からの誘いが飛び込んできた。
「自分の中でも高校時代で一番印象に残っているレースです。正直3番に入れるとも思っていませんでしたが、それが青学大に誘われるきっかけとなりました。声をかけられたときはずっと憧れだったので、本当にうれしかったです」
考える力を養なった高校時代
青トレで故障せず、継続した練習で成長
無事是名馬――。青学大の原晋監督が継続した練習で頭角を現してきた選手を形容する際によく口にするが、まさに近藤を評するのにふさわしい言葉だ。
豊川工時代は3年間で毎年顧問が入れ替わる環境を経験。「強豪校ではない分、先生と相談しながらメニューを組んだり、自分で考えて、体と相談しながら、さじ匙加ができるようになったと思います」と、選手によってはマイナスになりかねない状況でも、近藤は自身の成長につながっていると感じている。
「また指導者が変わることでいろんな景色を見れましたし、自分で吸収する力、考えられる力をつけられた3年間だったと思います」
それは青学大のやり方ともマッチしていたと考える。近藤は入学後、チームの代名詞となっている「青トレ」の取り組みを積極的に行なってきた。「1年目からコアトレーニングや下肢トレーニング、そしてケアを人一倍やるようにしてきた。ここには強くなるためのノウハウ、ヒントが常にある」と考え、故障せずに3年間継続した練習をできているのが「一番の成長要因」と振り返る。
学生駅伝3冠へ
「エースとして区間新記録の走りを」
学生駅伝経験者の主力選手たちと。左から2人目が近藤
トラックシーズン後も、好調を維持しており、夏合宿でも順調に練習を消化。今後は日本インカレ5000mを経て、青学大のエースとして学生駅伝シーズンを迎えようとしている。
「ここまでは順調です。日本インカレは合宿の流れから出場するので走ってみないとわかりませんが、トップを目指して走りたいです。そこから三大駅伝3冠という目標に全員で向かっていければと思います」
個人としての目標は「箱根で区間賞を逃した7区をもう一度走りたい気持ちもありますが、それは怒られると思うので……」と前置きしつつ、「しっかりエース区間で勝負することを考えています。ライバル校のエースを意識して負けないように区間新記録を狙う走りをしたいです」ときっぱり。
今季の駅伝シーズンは、フレッシュグリーンを牽引するエース・近藤の走りに注目だ。
◎こんどう・こうたろう/2001年1月30日生まれ。愛知県出身。代田中→豊川工高(現・豊川工科高)→青学大。自己記録5000m13分34秒88、10000m28分10秒50。ハーフマラソン1時間3分42秒。高校時代は5000mで2年時、3年時とインターハイに駒を進めたが、ともに予選落ち。3年秋のレースで14分08秒50と好タイムをマークした。青学大では1年時からハーフマラソンで1時間3分42秒で走るなど長い距離の適性を示し、箱根駅伝のエントリーメンバーに選出(出走はなし)。2年時には全日本大学駅伝2区区間13位、箱根7区で区間3位と主力選手として活躍した。今季は5000mと10000mで青学大記録を更新するなどトラックで躍動。エースとして、駅伝3冠を目標に掲げるチームを牽引している。
文/田中 葵
3年目のブレイク、青学大のエースへ
今季は4月の日本学連10000m記録会で青学大記録となる28分10秒50をマーク。5月には日本選手権10000mにも出場し、B組5着(全体18位)と健闘。約2週間後の関東インカレ2部10000mでも6位入賞(日本人4位)を果たした。 その勢いはとどまることを知らず、さらに7月のホクレンディスタンスチャレンジ士別大会5000mで13分34秒88の自己ベストをマーク。トラック2種目で青学大記録保持者となった。 チーム内には今季の5000m13分台ランナーが22人そろい、三大駅伝経験者も多数。その圧倒的な戦力を有する青学大にあって、近藤の実績は頭一つ抜けている。 「今年は箱根駅伝が終わってからの冬季練習もしっかりできました。そこから良い流れでトラックシーズンに入れて結果を出すことができたと要因だと思います。トラックシーズンは目標タイムを追いかけ過ぎず、走れば記録がついてくるという良い流れができてきたと思います」陸上引退から一転、憧れの常勝軍団へ
5つ年上の姉の影響もあって、小学2年から東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子も在籍していた地元の豊橋陸上クラブで陸上を始めた近藤。短距離からスタートし、小学5年の頃に1000mに出場するなど、中長距離への適性を見出していった。 「5年から短距離へ通用しないなと感じるようになって、長距離のほうが得意だと感じるようになりました。自分が輝ける場所は長い距離なのかなと感じて、徐々に転向した感じです」 だが愛知・代田中時代には一時陸上を辞めようと考えた挫折を味わった。中学2年時には3000mで9分ひとケタのタイムを持っていたが、3年時は故障で思うように走れない時期が続き、全国大会出場も逃した。今でも全中出場を逃した最後の県総体は「周りのライバルが全国を決めるなかで自分だけがダメで、試合後にロッカールームでずっと泣いていました」と、悔しい思い出として残っているという。 それでも走ることを続けたのは走る仲間と一緒にいる楽しさ、そして「憧れ」だった青学大の存在だった。 「中学では豊橋市のTTランナーズで練習していました。そこでは地元が同じだった吉居大和(中大)とも練習したりもしましたね。練習は週1、2回でしたが楽しかったので陸上は好きでしたね。あとは青学大が当時活躍し始めた頃で、格好良くて、自分もあのチームに入れたらと思っていました」 その想いが実現したのは愛知・豊川工2年時。東海総体5000mで3位に入ったことで、青学大からの誘いが飛び込んできた。 「自分の中でも高校時代で一番印象に残っているレースです。正直3番に入れるとも思っていませんでしたが、それが青学大に誘われるきっかけとなりました。声をかけられたときはずっと憧れだったので、本当にうれしかったです」考える力を養なった高校時代 青トレで故障せず、継続した練習で成長
無事是名馬――。青学大の原晋監督が継続した練習で頭角を現してきた選手を形容する際によく口にするが、まさに近藤を評するのにふさわしい言葉だ。 豊川工時代は3年間で毎年顧問が入れ替わる環境を経験。「強豪校ではない分、先生と相談しながらメニューを組んだり、自分で考えて、体と相談しながら、さじ匙加ができるようになったと思います」と、選手によってはマイナスになりかねない状況でも、近藤は自身の成長につながっていると感じている。 「また指導者が変わることでいろんな景色を見れましたし、自分で吸収する力、考えられる力をつけられた3年間だったと思います」 それは青学大のやり方ともマッチしていたと考える。近藤は入学後、チームの代名詞となっている「青トレ」の取り組みを積極的に行なってきた。「1年目からコアトレーニングや下肢トレーニング、そしてケアを人一倍やるようにしてきた。ここには強くなるためのノウハウ、ヒントが常にある」と考え、故障せずに3年間継続した練習をできているのが「一番の成長要因」と振り返る。学生駅伝3冠へ 「エースとして区間新記録の走りを」
学生駅伝経験者の主力選手たちと。左から2人目が近藤 トラックシーズン後も、好調を維持しており、夏合宿でも順調に練習を消化。今後は日本インカレ5000mを経て、青学大のエースとして学生駅伝シーズンを迎えようとしている。 「ここまでは順調です。日本インカレは合宿の流れから出場するので走ってみないとわかりませんが、トップを目指して走りたいです。そこから三大駅伝3冠という目標に全員で向かっていければと思います」 個人としての目標は「箱根で区間賞を逃した7区をもう一度走りたい気持ちもありますが、それは怒られると思うので……」と前置きしつつ、「しっかりエース区間で勝負することを考えています。ライバル校のエースを意識して負けないように区間新記録を狙う走りをしたいです」ときっぱり。 今季の駅伝シーズンは、フレッシュグリーンを牽引するエース・近藤の走りに注目だ。 ◎こんどう・こうたろう/2001年1月30日生まれ。愛知県出身。代田中→豊川工高(現・豊川工科高)→青学大。自己記録5000m13分34秒88、10000m28分10秒50。ハーフマラソン1時間3分42秒。高校時代は5000mで2年時、3年時とインターハイに駒を進めたが、ともに予選落ち。3年秋のレースで14分08秒50と好タイムをマークした。青学大では1年時からハーフマラソンで1時間3分42秒で走るなど長い距離の適性を示し、箱根駅伝のエントリーメンバーに選出(出走はなし)。2年時には全日本大学駅伝2区区間13位、箱根7区で区間3位と主力選手として活躍した。今季は5000mと10000mで青学大記録を更新するなどトラックで躍動。エースとして、駅伝3冠を目標に掲げるチームを牽引している。 文/田中 葵
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