2021.09.15
東京五輪の代表選考レースとなった5月3日の日本選手権10000m。見事代表権をつかんだ伊藤達彦(Honda)に最後まで食らいついたのが、当時20歳の田澤廉(3年)と同19歳の鈴木芽吹(2年)による駒大コンビだった。驚くべきはそのタイム。田澤が日本人学生歴代2位の27分39秒21、鈴木が同3位の27分41秒68と、大迫傑(早大)が2013年に樹立した27分38秒31に肉薄した。
自国開催の五輪という一生に一度の大チャンスに挑戦した前半戦を振り返り、どんな言葉を残したのか。練習では
バチバチに刺激し合いながら、普段は仲の良い先輩・後輩である2人に今シーズンの振り返りと今後について語り合
ってもらった。
●構成/奥村 崇
課題と収穫のあった前半戦
――前半シーズンを振り返って、それぞれ感想をお願いします。
田澤 僕は10000m27分30秒、5000m13分30秒あたりを目標に置いていて、それに近いタイムにはなったのですが……、この1年満足のいくレースがないなぁと思っているんです。日本選手権で2位になったり、良いタイムを出せたりしても、自分が満足のいくレー
スだったかというと、そうではなかったです。
鈴木 箱根駅伝が終わってから、1年の目標を考えた時に、10000mで27分台、5000mで13分35秒を出したいと決めました。それが今シーズン前半で達成できて、いい感じで走れた前半戦だったと思います。
―― 鈴木選手は当初の目標を大きく上回った驚きはありますか。
鈴木 10000mに関しては、自分でも驚きました(27分41秒68)。まさかそこまでいくとは思っていなかったんですけど、5000mに関しては日本選手権や関東インカレの後から田澤さんや唐澤(拓海、2年)とスピード練習を一緒にやる中で、今までにないくらいのいい練習ができていて、正直、13分25秒くらいはいくかなという感覚があったので、そこまで驚きはなかったです(7月に13分27秒83)。
田澤 鈴木はいずれはくるだろうなとは思っていましたけど、自分が想像していたより早く上がってきたので、日本選手権では驚きはありましたね。3年生の後半あたりから本格化するかな、と思っていました。
でも、一緒に練習する中で自分と同レベルの練習をこなせているので、自分と鈴木と唐澤を含めた3人は確実に学生でもトップレベルにいるんじゃないかなと思います。といっても、一緒に練習し始めたのは日本選手権後なので、その前は正直そこまで意識していなかったです。
――日本選手権10000mで競り合った時に、意識する相手として現れた感じですか。
田澤 日本選手権の6000mあたりで鈴木が出てきた時は、鈴木はもう離れているかな、と思っていたんです。急に現れたので「やばいな」と思いました(笑)。ラストで伊藤(達彦/ Honda)さんが出た時についていくこともできたのですけど、絶対に芽吹に負けたくなかったので、それは控えてパワーを貯めました。「行け」と言われたら行けたんですけど、プライドを持って鈴木に勝ったほうが良いと思いました。
鈴木 僕は27分台を出せればいいと思っていました。なるべくオリンピックの参加標準記録(27分28秒00)を狙うペースに行けるところまでついていって、最後は離れてもぎりぎりまとめて、27分台を出すというプランでした。
5000mの通過(13分50秒前後)でも結構余裕があって。6000 ~ 7000mあたりで先頭に出たのですが、そこからはいっぱいいっぱいの状態でした。後ろに田澤さんがいるのはわかっていて、きついなりに前に出られないようには、ちょっとがんばりました。でも、田澤さんに勝つにはまだまだでした。
――シーズン前期で見えた課題は何ですか。
鈴木 日本選手権ではしっかりタイムを出せたのですが、1年の時に経験した駅伝に当てはめて、それに相当するタイムで走ることは想像できません。これはまだ、勢いで出したタイム。27分41秒というタイムを、しっかり自分の実力に転換していくことが大切だと、日本選手権の時に思いました。
――田澤選手はこの1年、満足のいくレースがないということでしたが。
田澤 例えば、日本選手権で伊藤さんが出た時に思い切ってついていったらどうだったかなとか、レースを終えてから、こうすれば良かったとか、ここでこうしていればもっと違っていたのかとか、そう考える要点が試合では多かったです。1年目はただがむしゃらについて記録を出していった感じでしたが、もう3年目になって、やはり自分の力でどこまでいけるかを考えていかなくてはいけない。そこが満足のいくレースが最近は少ない理由だと思います。
この続きは2021年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
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東京五輪の代表選考レースとなった5月3日の日本選手権10000m。見事代表権をつかんだ伊藤達彦(Honda)に最後まで食らいついたのが、当時20歳の田澤廉(3年)と同19歳の鈴木芽吹(2年)による駒大コンビだった。驚くべきはそのタイム。田澤が日本人学生歴代2位の27分39秒21、鈴木が同3位の27分41秒68と、大迫傑(早大)が2013年に樹立した27分38秒31に肉薄した。
自国開催の五輪という一生に一度の大チャンスに挑戦した前半戦を振り返り、どんな言葉を残したのか。練習では
バチバチに刺激し合いながら、普段は仲の良い先輩・後輩である2人に今シーズンの振り返りと今後について語り合
ってもらった。
●構成/奥村 崇
課題と収穫のあった前半戦
――前半シーズンを振り返って、それぞれ感想をお願いします。 田澤 僕は10000m27分30秒、5000m13分30秒あたりを目標に置いていて、それに近いタイムにはなったのですが……、この1年満足のいくレースがないなぁと思っているんです。日本選手権で2位になったり、良いタイムを出せたりしても、自分が満足のいくレー スだったかというと、そうではなかったです。 鈴木 箱根駅伝が終わってから、1年の目標を考えた時に、10000mで27分台、5000mで13分35秒を出したいと決めました。それが今シーズン前半で達成できて、いい感じで走れた前半戦だったと思います。 ―― 鈴木選手は当初の目標を大きく上回った驚きはありますか。 鈴木 10000mに関しては、自分でも驚きました(27分41秒68)。まさかそこまでいくとは思っていなかったんですけど、5000mに関しては日本選手権や関東インカレの後から田澤さんや唐澤(拓海、2年)とスピード練習を一緒にやる中で、今までにないくらいのいい練習ができていて、正直、13分25秒くらいはいくかなという感覚があったので、そこまで驚きはなかったです(7月に13分27秒83)。 田澤 鈴木はいずれはくるだろうなとは思っていましたけど、自分が想像していたより早く上がってきたので、日本選手権では驚きはありましたね。3年生の後半あたりから本格化するかな、と思っていました。 でも、一緒に練習する中で自分と同レベルの練習をこなせているので、自分と鈴木と唐澤を含めた3人は確実に学生でもトップレベルにいるんじゃないかなと思います。といっても、一緒に練習し始めたのは日本選手権後なので、その前は正直そこまで意識していなかったです。
――日本選手権10000mで競り合った時に、意識する相手として現れた感じですか。
田澤 日本選手権の6000mあたりで鈴木が出てきた時は、鈴木はもう離れているかな、と思っていたんです。急に現れたので「やばいな」と思いました(笑)。ラストで伊藤(達彦/ Honda)さんが出た時についていくこともできたのですけど、絶対に芽吹に負けたくなかったので、それは控えてパワーを貯めました。「行け」と言われたら行けたんですけど、プライドを持って鈴木に勝ったほうが良いと思いました。
鈴木 僕は27分台を出せればいいと思っていました。なるべくオリンピックの参加標準記録(27分28秒00)を狙うペースに行けるところまでついていって、最後は離れてもぎりぎりまとめて、27分台を出すというプランでした。
5000mの通過(13分50秒前後)でも結構余裕があって。6000 ~ 7000mあたりで先頭に出たのですが、そこからはいっぱいいっぱいの状態でした。後ろに田澤さんがいるのはわかっていて、きついなりに前に出られないようには、ちょっとがんばりました。でも、田澤さんに勝つにはまだまだでした。
――シーズン前期で見えた課題は何ですか。
鈴木 日本選手権ではしっかりタイムを出せたのですが、1年の時に経験した駅伝に当てはめて、それに相当するタイムで走ることは想像できません。これはまだ、勢いで出したタイム。27分41秒というタイムを、しっかり自分の実力に転換していくことが大切だと、日本選手権の時に思いました。
――田澤選手はこの1年、満足のいくレースがないということでしたが。
田澤 例えば、日本選手権で伊藤さんが出た時に思い切ってついていったらどうだったかなとか、レースを終えてから、こうすれば良かったとか、ここでこうしていればもっと違っていたのかとか、そう考える要点が試合では多かったです。1年目はただがむしゃらについて記録を出していった感じでしたが、もう3年目になって、やはり自分の力でどこまでいけるかを考えていかなくてはいけない。そこが満足のいくレースが最近は少ない理由だと思います。
この続きは2021年9月14日発売の『月刊陸上競技10月号』をご覧ください。
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