写真/時事
◇東京五輪(7月30日~8月8日/国立競技場)陸上競技8日目
陸上競技8日目イブニングセッション。地元開催でメダル獲得を目指した男子4×100mリレー決勝はまさかの結末が待っていた。
予選と同じく多田修平(住友電工)、山縣亮太(セイコー)、桐生祥秀(日本生命)、小池祐貴(住友電工)のオーダーで臨んだ日本。予選の結果から、苦戦は必至。攻めるしかなかった。
9レーンからスタート。多田が抜群のスタートを見せて爆走。吹っ切れた走りで予選よりも加速する。これは……そう思った矢先、山縣とのバトンが遠い。多田が食らいついて渡そうとし、山縣もなんとか耐えようとする。だが、つながらなかった。バトンパスを完了しなければいけないテイクオーバーゾーンでつながらず。
リオ五輪銀メダルから金メダルを目指してきた5年の挑戦は、誰も予想していなかった結末で幕を閉じた。
「バトンミスをした原因はわからないが、また見直して改善したい」と多田は声を絞り出した。山縣は「目標を達成するために攻めのバトンでいった。勝負した結果」と表情を変えられない。走れなかった桐生と小池は涙をこらえきれなかった。
「本当に優勝を目指していくには攻めたバトンで。仕方ないところもあるかもしれないが、これを無駄にしないように。失敗したからといって守りに入るのではなく、攻めていった。いつか金メダルを達成できるように頑張りたい」
小池はしばらくの沈黙のあと、こう紡いだ。
リレーにすべてを懸けてきた桐生は「僕が予選からもっと速く走っていれば、多田と山縣さんに余裕を持ってもらえた」と言う。高校時代から常にそうだった。リレーは自分が引っ張る。その強い決意があった。
「東京五輪を目指してきたこれまで(支えてくださった人に)感謝したい。走れていない人もいる。陣地に戻ってありがとうございますと伝えたい」
桐生はうなだれる多田と山縣の元に駆け寄り、仕方ない、と背中を押した。そして、自ら100mの代表を逃し、中国をはじめ他国の躍進を目にしたからこそ、第一人者として続けた。
「世界とは個人でもリレーでも離されている。記録でも結果でもそれは明らか」。インタビューに応える後ろでは歓喜に浸るライバルたちがいる。「後ろがうらやましいです。この舞台で日本の国旗を揚げたかった。トップで走れるように戻ってきたい」。桐生の覚悟だった。
キャプテンシーを発揮した最年長の山縣は「これもスポーツ」だと言った。5年前の歓喜、そして今回の悔しさ。そこまでの過程の苦しさもうれしさも含めて、スポーツなのだ、と。
個人での惨敗もあり、桐生が言うようにもっと進化しなければならないのは確か。シドニー五輪から続けてきた連続入賞が止まった。だが、1996年アトランタ五輪で失敗してから、その悔しさをバネに日本のリレーは2000年からファイナルを続けてきた。
彼らなら、またやってくれる。そう信じる人がたくさんいることは、心に届いているはずだ。

|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.07.14
東京世界陸上アンバサダーに三段跳3連覇・テイラー氏と100mH2大会金メダルのピアソン氏
-
2025.07.14
-
2025.07.13
-
2025.07.13
-
2025.07.12
2025.06.17
2025中学最新ランキング【男子】
-
2025.06.17
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.07.14
DLロンドン女子5000mに田中希実がエントリー! 男子100mで再びライルズ VS テボゴ アレクナ、マフチフ、ボルらも参戦
7月14日、ダイヤモンドリーグ(DL)第11戦のロンドン大会(英国/7月19日)のエントリーリストが発表され、女子5000mに田中希実(New Balance)が登録された。 田中はこれが今季のDL2戦目。7月上旬の日本 […]
2025.07.14
男子走幅跳・城山正太郎が優勝 400m佐藤風雅は45秒50の4位 世界陸上出場目指し、日本選手が欧米の競技会に出場/WAコンチネンタルツアー
7月13日に欧米各地で世界陸連(WA)コンチネンタルツアーの競技会が行われ、9月の東京世界選手権の出場を目指す日本人選手たちが奮闘した。 カナダで開催されたWAコンチネンタルツアー・シルバーのエドモントン招待では、男子走 […]
2025.07.14
17歳のウィルソンが男子400mで44秒10!自らのU18記録を更新 200mは新鋭・ティーマースが19秒73/WAコンチネンタルツアー
7月11日~12日、米国・テネシー州メンフィスで世界陸連(WA)コンチネンタルツアー・シルバーのエド・マーフィー・クラシックが開催され、男子400mでは17歳のQ.ウィルソン(米国)が44秒10のU18世界最高記録で優勝 […]
2025.07.14
【男子1500m】本田桜二郎(鳥取城北高3)3分43秒23=高校歴代5位
第239回東海大長距離競技会は7月13日、神奈川・東海大湘南校舎陸上競技場で行われ、男子1500mで本田桜二郎(鳥取城北3)が高校歴代5位、中国高校新記録となる3分43秒23をマークした。従来の中国高校記録は徳本一善(沼 […]
Latest Issue
最新号

2025年8月号 (7月14日発売)
詳報!日本選手権
IH地区大会