◇アジア選手権(5月27日~5月31日/韓国・クミ) 3日目
2年に一度開かれるアジア選手権の3日目が行われ、女子10000mは廣中璃梨佳(日本郵政グループ)が30分56秒32で銀メダルを獲得した。
前日の18時20分にスタートしたこの種目。強烈な風が吹き、すぐに強い雨が降り始めた。「動きが良くなってきた。よし、ここから行くぞ」というタイミングだった5200mでまさかのレース中断。「ビックリしましたが、選手の安全を考えてくれたからこそ」の判断だと受け入れた。
ただ、「思った以上に身体が冷えておなかが痛くなったりしました」。夜もなかなか寝られなかったという。それでも、「すぐに(翌朝)10時15分スタートと決めてくれたので、準備しました。朝のレースは新鮮で、ウォーミングアップ中も何時なんだろうって思っていました」と笑う。色々なアクシデントにも動じない強さは「社会人7年目で、ケガなどいろいろな経験を経たからこそ、ドンと構えられるようになりました」。
5200mを走り終えてから、16時間足らずでの10000mがスタート。前日とは打って変わって強い日差しが戻り、気温も上昇した。スタート直後から飛び出したのは「順位ばかり考えてスローになるのが嫌だったのと、世界選手権に向けて自信になるレースをしたかった」から。ただ、1600mからは一気にV.ジェプチュンバ(バーレーン)とD.ジェプケメイ(カザフスタン)が飛び出す。
「先頭のペース変動が前日もすごかったので、ついて消耗するよりは後半追いかけよう」。これまで、積極的なフロントランを持ち味としてきたが、「引き出しを増やせた」。6000mでジェプケメイとの差は縮まらないが、ジェプチュンバをかわして2位に浮上。「もう少しリラックスして肩の力を抜いて走れるといいのですが」と反省するも、ラストもしっかり切り替えて前を追いかけた。
残り2000mで帽子を投げ、スパート態勢に。ラストはなかなか差が縮まらなかったが、2023年12月の日本選手権以来の30分台は、自己3番目。レース中断、翌日の再レース、高温という条件での激走に「久しぶりに出すことができてうれしい」と笑顔が弾けた。
東京五輪で5000m日本新(当時)、10000m7位入賞。そこから何度も日の丸を背負ったが、23年のアジア大会(中国・杭州)以来の日本代表。昨年は膝のケガが長引いてパリ五輪出場を逃した。ここまで長期間のケガは初めてだった。その間もできる限りのトレーニングをしただけでなく、いろいろなことにも挑戦。自分と向き合った。廣中は「いろいろな人が支えてくれた」と感謝の言葉を並べるが、支えたトレーナーは「彼女が強くなりたい、戻りたいという気持ちを持ち続けたからこそ」と話す。
今年は日本選手権10000mを31分13秒78で制すると、そこから5000m2連戦も15分19秒23(織田記念)、15分05秒69(ゴールデンゲームズ)と上げてきた。「スタミナは十分ついたのですが、まだスピードが足りない」。今回の結果で10000mでワールドランキングも大幅に上昇し、東京世界選手権の出場権獲得に大きく近づいた。7月上旬の5000mでも有力に挙がる。
「またこうして日本代表に戻って来られるようにしたいです」
完全復活を遂げた日本長距離のエース。再び国立競技場で輝く準備が整った。
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