HOME 国内、世界陸上

2025.02.16

レジェンド岡田久美子が自己2番目の記録で2位「本当の集大成」6度目世界陸上に照準/日本選手権20km競歩
レジェンド岡田久美子が自己2番目の記録で2位「本当の集大成」6度目世界陸上に照準/日本選手権20km競歩

2位の岡田久美子(25年日本選手権20km競歩)

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース)

東京世界選手権代表選考会を兼ねた第108回日本選手権20km競歩が2月16日行われ、女子は藤井菜々子(エディオン)が1時間26分33秒の日本新記録で3年連続4回目の優勝を遂げた。

日本記録(1時間27分41秒)を破られたものの、33歳になったレジェンド・岡田久美子(富士通)が、自己2番目、パフォーマンス日本歴代5位となる1時間28分17秒を叩き出して2位に入った。東京世界選手権の参加標準記録(1時間29分00秒)を突破。選考次第ではあるが、自身6度目の世界選手権代表入りへ前進した。

藤井は1km4分20秒前後のハイペースで進むなか、徐々に離れたものの「ベテランらしく」焦らずに歩を進める。昨年のパリ五輪(男女混合競歩リレー)以降、「身体を変えたことと、脚ではなく上半身をしっかり使って振り子のように歩く。ストライドやピッチではなく、速くて一定のリズムやテンポを意識してきました」。最後まで苦しい表情はなく、中盤は1km4分25秒前後を刻み、ラストも4分21秒まで上げてフィニッシュした。

藤井の日本記録を祝福し、「1時間26分台、これで日本女子競歩の歴史が動きました」。悔しさよりもうれしさが勝ったと言うが、その“歴史”を切り開き、作ってきたのは他でもない岡田自身だった。

これまで日本記録をすべて塗り替え、世界選手権は15年北京から23年ブダペストまで5大会連続代表入り。ドーハ世界選手権で6位入賞。何度も何度も、大きな壁に跳ね返されてきた。ケガに泣き、東京五輪後は所属先が決まらぬ不安もあった。23年ブダペストは新境地35kmで代表入りしたが、直前の腰のケガで欠場。引退もよぎった。

広告の下にコンテンツが続きます

そこで、女子やり投の北口榛花(JAL)の勧めで、治療院「SSSA」で姿勢から見直した。伴侶でもある森岡紘一朗コーチの支えもあり、不死鳥のごとく蘇ったのが前回大会の2位。さらに、男女混合競歩リレーでは恋い焦がれた五輪での入賞(8位)。

その反動もあり、「精神的な疲労もあり、うまく噛み合わなかった」。東京世界選手権まで、本当に続けられるのか。自問自答の日々が長く続いた。練習はしていたが、その過程でふくらはぎを2度肉離れ。ただ、1月に入ってからようやく「身体が変わってきたのも感じた」。気持ちも徐々に高まり「もうやるしかない」と覚悟を決めた。参加標準記録突破は「ベテランの意地でした」と茶目っ気たっぷりに笑った。

これで6度目の世界選手権代表入りに近づいた岡田。「もう何回目かもわかりません」。ここ数年はいつも『集大成』としてきたが、「詐欺みたい」と苦笑い。ここまで続け、しかも復活し、進化・成長した姿を見せられるのは「覚悟を持ってやっているからですかね。人生を豊かにできるよう、中途半端にはしないように取り組んできました」。

東京世界選手権は、「北京の時にいいなと思っていた」競技場でのスタート・フィニッシュ。きっと大声援が贈られる。

「本当の集大成。幸せな気持ちでゴールしたいです。メダル、とは今日のタイムでは言えませんが、最後まで自分らしく頑張って入賞を目指します」

どんな逆境にもめげず、地道にコツコツ。日本が誇るレジェンドウォーカーの姿を目に焼き付けなければならない。

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース) 東京世界選手権代表選考会を兼ねた第108回日本選手権20km競歩が2月16日行われ、女子は藤井菜々子(エディオン)が1時間26分33秒の日本新記録で3年連続4回目の優勝を遂げた。 日本記録(1時間27分41秒)を破られたものの、33歳になったレジェンド・岡田久美子(富士通)が、自己2番目、パフォーマンス日本歴代5位となる1時間28分17秒を叩き出して2位に入った。東京世界選手権の参加標準記録(1時間29分00秒)を突破。選考次第ではあるが、自身6度目の世界選手権代表入りへ前進した。 藤井は1km4分20秒前後のハイペースで進むなか、徐々に離れたものの「ベテランらしく」焦らずに歩を進める。昨年のパリ五輪(男女混合競歩リレー)以降、「身体を変えたことと、脚ではなく上半身をしっかり使って振り子のように歩く。ストライドやピッチではなく、速くて一定のリズムやテンポを意識してきました」。最後まで苦しい表情はなく、中盤は1km4分25秒前後を刻み、ラストも4分21秒まで上げてフィニッシュした。 藤井の日本記録を祝福し、「1時間26分台、これで日本女子競歩の歴史が動きました」。悔しさよりもうれしさが勝ったと言うが、その“歴史”を切り開き、作ってきたのは他でもない岡田自身だった。 これまで日本記録をすべて塗り替え、世界選手権は15年北京から23年ブダペストまで5大会連続代表入り。ドーハ世界選手権で6位入賞。何度も何度も、大きな壁に跳ね返されてきた。ケガに泣き、東京五輪後は所属先が決まらぬ不安もあった。23年ブダペストは新境地35kmで代表入りしたが、直前の腰のケガで欠場。引退もよぎった。 そこで、女子やり投の北口榛花(JAL)の勧めで、治療院「SSSA」で姿勢から見直した。伴侶でもある森岡紘一朗コーチの支えもあり、不死鳥のごとく蘇ったのが前回大会の2位。さらに、男女混合競歩リレーでは恋い焦がれた五輪での入賞(8位)。 その反動もあり、「精神的な疲労もあり、うまく噛み合わなかった」。東京世界選手権まで、本当に続けられるのか。自問自答の日々が長く続いた。練習はしていたが、その過程でふくらはぎを2度肉離れ。ただ、1月に入ってからようやく「身体が変わってきたのも感じた」。気持ちも徐々に高まり「もうやるしかない」と覚悟を決めた。参加標準記録突破は「ベテランの意地でした」と茶目っ気たっぷりに笑った。 これで6度目の世界選手権代表入りに近づいた岡田。「もう何回目かもわかりません」。ここ数年はいつも『集大成』としてきたが、「詐欺みたい」と苦笑い。ここまで続け、しかも復活し、進化・成長した姿を見せられるのは「覚悟を持ってやっているからですかね。人生を豊かにできるよう、中途半端にはしないように取り組んできました」。 東京世界選手権は、「北京の時にいいなと思っていた」競技場でのスタート・フィニッシュ。きっと大声援が贈られる。 「本当の集大成。幸せな気持ちでゴールしたいです。メダル、とは今日のタイムでは言えませんが、最後まで自分らしく頑張って入賞を目指します」 どんな逆境にもめげず、地道にコツコツ。日本が誇るレジェンドウォーカーの姿を目に焼き付けなければならない。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.04.30

26年ブダペスト開催の「世界陸上アルティメット選手権」やり投・北口榛花が出場権獲得

世界陸連(WA)は4月29日、2026年に新設する「世界陸上アルティメット選手権」の大会500日前を受け、昨年のパリ五輪の金メダリストに出場資格を与えることを発表した。女子やり投で金メダルを獲得した北口榛花(JAL)も含 […]

NEWS 100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

2025.04.30

100mH寺田明日香 恩師の訃報に「熱意と愛情を少しでも次の世代へ引き継げるように」

福島千里や寺田明日香ら女子短距離を中心に数々の名選手を育成した中村宏之氏が4月29日に79歳で他界したことを受け、寺田が自身のSNSを更新して思いを綴った。 寺田は北海道・恵庭北高時代に中村氏の指導を受け、100mハード […]

NEWS 9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート

2025.04.30

9月の東京世界陸上に都内の子どもを無料招待 引率含め40,000人 6月から応募スタート

東京都は今年9月に国立競技場をメイン会場として開かれる世界選手権に都内の子どもたちを無料招待すると発表した。 「臨場感あふれる会場での観戦を通じて、都内の子供たちにスポーツの素晴らしさや夢と希望を届ける」というのが目的。 […]

NEWS 新しい形の競技会「THE GAME」が9月14日 大阪・万博記念競技場で開催決定!

2025.04.30

新しい形の競技会「THE GAME」が9月14日 大阪・万博記念競技場で開催決定!

「陸上競技の魅力を最大限に引き出し、観客と選手の双方にとって忘れられない体験を」をコンセプトに、三重県で開催されてきた『THE GAME』。今年は会場を大阪府。万博記念競技場を移して、9月14日に行われることが決まった。 […]

NEWS 中村宏之氏が79歳で死去 福島千里、寺田明日香、伊藤佳奈恵ら女子短距離日本記録保持者を育成

2025.04.30

中村宏之氏が79歳で死去 福島千里、寺田明日香、伊藤佳奈恵ら女子短距離日本記録保持者を育成

女子短距離で数々のトップ選手を育成した北海道ハイテクアスリートクラブ前監督の中村宏之氏が4月29日に逝去した。享年79。 中村氏は1945年6月9日生まれ。北海道・札幌東高,日体大で三段跳、走幅跳選手として活躍し、卒業後 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年4月号 (3月14日発売)

2025年4月号 (3月14日発売)

東京世界選手権シーズン開幕特集
Re:Tokyo25―東京世界陸上への道―
北口榛花(JAL) 
三浦龍司(SUBARU)
赤松諒一×真野友博
豊田 兼(トヨタ自動車)×高野大樹コーチ
Revenge
泉谷駿介(住友電工)

page top