HOME 国内、特集、世界陸上、日本代表
【高平慎士の視点】パリ五輪への兆しを感じた男子4×100mR 世界の水準向上の中でメダルを取る戦略を/世界陸上
【高平慎士の視点】パリ五輪への兆しを感じた男子4×100mR 世界の水準向上の中でメダルを取る戦略を/世界陸上

5位に入賞した男子4×100mRの4走サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)

ハンガリー・ブダペストで開催されている第19回世界選手権(8月19日~27日)で行われた男子4×100mリレー。日本は坂井隆一郎(大阪ガス)、栁田大輝(東洋大)、小池祐貴(住友電工)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)のオーダーで予選を37秒71で3着通過し、決勝は37秒83で5位入賞を果たした。2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、そのレースを振り返ってもらった。

◇ ◇ ◇

広告の下にコンテンツが続きます

まずは、2021年東京五輪の決勝途中棄権、22年オレゴン世界選手権の予選失格を経て、ファイナル、そして入賞に復帰することができました。これは大事にしないといけないと思います。

7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会でタイムを出せないと、この大会に出場することすらできませんでした。そういういった崖っぷちの状況から、メダル争いができるまでになったことは、評価できます。

そのうえで、世界の上位国が固まりながらも、新しい国も出てきて、出場16ヵ国のどこにもメダルのチャンスがあるというレベルの中では、やはり失敗は許されません。3走の小池選手から4走のサニブラウン選手へのバトンパスでミスが出たこと、予選3着から9レーンになったことなど、この結果からパリ五輪にどうつなげていくのか。日本として考えていく必要があるでしょう。

全体としては、今の力を発揮したレースになったと思います。サニブラウン選手が、今大会5本目をしっかりと走り切りました。バトンパスさえ問題なければ銅メダルは確実、銀メダルの可能性も十分にあったでしょう。ということは、3走までにいい位置でもってくればメダル争いができるということです。

1走の坂井選手も、今の状態の中ではやるべきことはやれたと思います。後半の失速はありましたが、コンディションがもっと上がれば改善できる部分です。

栁田選手が、日本の2走を任せられる存在になったのは一番の収穫でしょう。私の時代の末續慎吾さんのような安定感をさらに見せられるようになれば、しばらく2走を任せられる選手の有力候補。米国のフレッド・カーリー、イタリアのラモント・マルセル・ジェイコブスら世界トップスプリンターを相手に、「自分がどうにかしよう」と思っても簡単にはできない区間です。2走は「耐える」ことが必要。その役割を十分に果たせたのではないかと感じました。

小池選手も、しっかりとつないだと思います。内側から攻められたといった印象はそこまでありませんでした。接触があったとのことですが、東京五輪も含め、近年はそういったことを想定した準備が必要になっていることは否めません。アクシデントに対して対応する力も求められます。

5位を「悔しい」と言える位置まで、戻ることができました。そして、「十分に戦える」こともわかりました。とはいえ、世界のレベルも前述のように上がっています。

米国は個々の走力では手が付けられないレベルですし、昨年は落ち込んだ東京五輪王者のイタリアも、銀メダルまで持ち直してきました。若手が育つジャマイカや、英国、フランス、南アフリカ、ブラジル、今回は予選落ちでしたが実績のあるカナダ、トリニダードトバゴらを相手に、メダル争いを続けていくためには、なにをすべきか。やはり、世界の情勢を把握して戦略を立て、それを実行していくことが求められます。

もちろん、個々の走力アップが欠かせないことは間違いありません。それに加えて、バトンパスの“実行力”をさらに追及する必要があるでしょう。大事な場面で「当たり前のことを当たり前にやる」ことの大切さは、今回も改めて感じさせられました。

パリ五輪の出場権は、出場16ヵ国中の14ヵ国が来年5月の世界リレー(バハマ・ナッソー)で決まります。個人での代表争いの中で、リレーにどれだけの価値を示し、チームジャパンが一丸となって同じ方向を目指していけるのか。その構想をどのように練っていくのか。

若手が世界の経験を積み、これまで日本の4×100mリレーを牽引してきた桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)、多田修平選手(住友電工)らがメンバー争いに加われば、さらに戦力に厚みを増します。さらなる若手の台頭もあるでしょう。

パリ五輪に向けて、いい形で進んでいってほしいと願います。

ハンガリー・ブダペストで開催されている第19回世界選手権(8月19日~27日)で行われた男子4×100mリレー。日本は坂井隆一郎(大阪ガス)、栁田大輝(東洋大)、小池祐貴(住友電工)、サニブラウン・アブデル・ハキーム(東レ)のオーダーで予選を37秒71で3着通過し、決勝は37秒83で5位入賞を果たした。2008年北京五輪4×100mリレー銀メダリストの高平慎士さん(富士通一般種目ブロック長)に、そのレースを振り返ってもらった。 ◇ ◇ ◇ まずは、2021年東京五輪の決勝途中棄権、22年オレゴン世界選手権の予選失格を経て、ファイナル、そして入賞に復帰することができました。これは大事にしないといけないと思います。 7月のダイヤモンドリーグ・ロンドン大会でタイムを出せないと、この大会に出場することすらできませんでした。そういういった崖っぷちの状況から、メダル争いができるまでになったことは、評価できます。 そのうえで、世界の上位国が固まりながらも、新しい国も出てきて、出場16ヵ国のどこにもメダルのチャンスがあるというレベルの中では、やはり失敗は許されません。3走の小池選手から4走のサニブラウン選手へのバトンパスでミスが出たこと、予選3着から9レーンになったことなど、この結果からパリ五輪にどうつなげていくのか。日本として考えていく必要があるでしょう。 全体としては、今の力を発揮したレースになったと思います。サニブラウン選手が、今大会5本目をしっかりと走り切りました。バトンパスさえ問題なければ銅メダルは確実、銀メダルの可能性も十分にあったでしょう。ということは、3走までにいい位置でもってくればメダル争いができるということです。 1走の坂井選手も、今の状態の中ではやるべきことはやれたと思います。後半の失速はありましたが、コンディションがもっと上がれば改善できる部分です。 栁田選手が、日本の2走を任せられる存在になったのは一番の収穫でしょう。私の時代の末續慎吾さんのような安定感をさらに見せられるようになれば、しばらく2走を任せられる選手の有力候補。米国のフレッド・カーリー、イタリアのラモント・マルセル・ジェイコブスら世界トップスプリンターを相手に、「自分がどうにかしよう」と思っても簡単にはできない区間です。2走は「耐える」ことが必要。その役割を十分に果たせたのではないかと感じました。 小池選手も、しっかりとつないだと思います。内側から攻められたといった印象はそこまでありませんでした。接触があったとのことですが、東京五輪も含め、近年はそういったことを想定した準備が必要になっていることは否めません。アクシデントに対して対応する力も求められます。 5位を「悔しい」と言える位置まで、戻ることができました。そして、「十分に戦える」こともわかりました。とはいえ、世界のレベルも前述のように上がっています。 米国は個々の走力では手が付けられないレベルですし、昨年は落ち込んだ東京五輪王者のイタリアも、銀メダルまで持ち直してきました。若手が育つジャマイカや、英国、フランス、南アフリカ、ブラジル、今回は予選落ちでしたが実績のあるカナダ、トリニダードトバゴらを相手に、メダル争いを続けていくためには、なにをすべきか。やはり、世界の情勢を把握して戦略を立て、それを実行していくことが求められます。 もちろん、個々の走力アップが欠かせないことは間違いありません。それに加えて、バトンパスの“実行力”をさらに追及する必要があるでしょう。大事な場面で「当たり前のことを当たり前にやる」ことの大切さは、今回も改めて感じさせられました。 パリ五輪の出場権は、出場16ヵ国中の14ヵ国が来年5月の世界リレー(バハマ・ナッソー)で決まります。個人での代表争いの中で、リレーにどれだけの価値を示し、チームジャパンが一丸となって同じ方向を目指していけるのか。その構想をどのように練っていくのか。 若手が世界の経験を積み、これまで日本の4×100mリレーを牽引してきた桐生祥秀選手(日本生命)、山縣亮太選手(セイコー)、多田修平選手(住友電工)らがメンバー争いに加われば、さらに戦力に厚みを増します。さらなる若手の台頭もあるでしょう。 パリ五輪に向けて、いい形で進んでいってほしいと願います。

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

         

Latest articles 最新の記事

PR

2026.02.16

日本マラソン界のホープ・平林清澄、世界に向けた挑戦! パワーアップの源となるレース前のルーティーンとは―

昨季まで國學院大學の主力として大学駅伝界を沸かせた平林清澄(ロジスティード)は、社会人になり〝冬眠〟期間を経てパワーアップした走りを披露している。狙ったレースを外さないのが平林。学生時代から食事等に人一倍気を使ってきたが […]

NEWS 【女子棒高跳】伊藤来莉(大砂土中1埼玉) 3m60=中1最高

2026.02.16

【女子棒高跳】伊藤来莉(大砂土中1埼玉) 3m60=中1最高

令和7年度第47回群馬県室内棒高跳記録会が、2月15日に群馬県吉岡町の棒高跳専用室内施設「ベルドーム」で行われ、女子高校・一般棒高跳で中学1年生の伊藤来莉(大砂土中1埼玉)が3m60の中1最高記録を更新した。これまでの中 […]

NEWS 【女子棒高跳】髙橋美優(観音寺中部中3香川) 3m74=中学歴代9位

2026.02.16

【女子棒高跳】髙橋美優(観音寺中部中3香川) 3m74=中学歴代9位

香川室内跳躍競技会が2月7日、8日に香川県観音寺市の市立総合体育館で行われ、7日の中学女子棒高跳で髙橋美優(観音寺中部中3)が3m74の中学歴代9位の記録で優勝した。 髙橋のこれまでのベストは昨年の県中学通信でマークした […]

NEWS キピエゴンが10km29分46秒で快勝 !「マラソンへの第一歩」

2026.02.16

キピエゴンが10km29分46秒で快勝 !「マラソンへの第一歩」

モナコ・ランが2月15日に開催され、女子ロード10kmで1500mの世界記録保持者F.キピエゴン(ケニア)がで29分46秒をマークした。 キピエゴンは五輪・世界選手権で8つの金メダルを獲得している32歳。ロード種目は23 […]

NEWS 三段跳・ロハスが14m95!23年以降の自己最高、アキレス腱断裂の大ケガからようやく復調へ

2026.02.16

三段跳・ロハスが14m95!23年以降の自己最高、アキレス腱断裂の大ケガからようやく復調へ

スペイン国内のクラブ室内選手権が2月14日にバルセロナで開催され、女子三段跳に世界記録保持者のY.ロハス(ベネズエラ)が出場し、今季世界最高の14m95をマークした。 ロハスは22年に15m74の世界記録を樹立した30歳 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2026年3月号 (2月14日発売)

2026年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
大阪国際女子マラソン
矢田みくにインタビュー
追跡箱根駅伝

page top