2023.07.10
チームメイトや海老原有希さんの言葉に刺激を受けて
最初はゆっくりと、10分。「左膝が全然安定感がなくて、走り方もわからない。違和感だらけでした」という困惑もあったが、「やっと走れた」喜びも大きかった。一度、「膝の内側の筋肉が足りていなかった」ことでバイクトレーニングに戻ったが、その後に段階を1つ進めることができている。
「トラックで、800mを走りました。400mを1分40秒ペースで2周。スピードを出す感覚を戻していく段階ですが、めちゃくちゃきつかったです。酸欠で頭が痛くなるし(苦笑)」
回復の過程は、当初よりも全体的に1ヵ月早まっているという。「ジャンプを9月に、ダッシュを8月にと言われています」。そして、いよいよ復帰レースが見えてきた。
「11月のエコパトラックゲームスの4×100mリレーを目指していきます」
ここまで、目の前の「走れるようになること」を目指してきた青山に、さらに先の目標ができた。その過程が早まった要因には、チームメイトたちの活躍がある。
日本選手権では100mで1年生の藏重みゆが3位に食い込み、アジア選手権4×100mリレー代表に選ばれた。1年先輩の井戸アビゲイル風果は、200mで4月の日本学生個人選手権を制し、ワールドユニバーシティ代表に選出されている。2年生の岡根和奏、奥野由萌はともに100m、200mで自己新を連発している。
さらに、この4人で走った4×100mリレーでは関西インカレで44秒83をマーク。自身が2走を務めて大学初の日本一に輝いた昨年の日本選手権リレーで出した甲南大記録の44秒72(学生歴代3位)が、目前に迫るタイムだ。
「みんなの活躍はうれしかったです。でも、正直に言うと悔しい。このままだとみんなに追いつかれるし、リレーメンバーにも入れなくなる」。仲間たちからエースに送られた無言の“エール”。青山の心は、確実に揺さぶられた。
また、6月の日本選手権の時に、伊東先生を通じて、女子やり投で五輪2度(12年ロンドン、16年リオ)出場の海老原有希さん(国士大コーチ)と話す機会が得られたことも転機になった。
海老原さんは中学3年時に右膝の靭帯を断裂し、手術。大学時代にも同じ箇所を痛め、競技人生の大半は右膝の「テーピングと補強運動」と付き合ってきた。その経験を「マイナスなことはまったく言われず、こうすればいい、あれをしてきたと前向きに話してくださいました。すごくタメになったし、気持ちが楽になりました」と青山は、大先輩からのアドバイスに感謝する。
今季中の復帰に向けて、青山はまっすぐ前を見つめる。とはいえ、足元を見ていないわけではない。「いきなり自己ベストに戻せるなんて考えていません」。まずは12秒台でいい。それでも、来年が大学最後の年になることを考えたら、本来の短距離種目で「大会の雰囲気を味わって、記録を残しておきたいですよね」。それが、「冬季練習のモチベーションになるはずです」と言う。
本格復帰は来年。日本選手権の参加標準記録を切るところから始まるが、それでも、苦難の中で得たものは、自分の力になる。それを信じ、青山は一歩一歩、前を向いて進んでいく。
文/小川雅生
チームメイトや海老原有希さんの言葉に刺激を受けて
最初はゆっくりと、10分。「左膝が全然安定感がなくて、走り方もわからない。違和感だらけでした」という困惑もあったが、「やっと走れた」喜びも大きかった。一度、「膝の内側の筋肉が足りていなかった」ことでバイクトレーニングに戻ったが、その後に段階を1つ進めることができている。 「トラックで、800mを走りました。400mを1分40秒ペースで2周。スピードを出す感覚を戻していく段階ですが、めちゃくちゃきつかったです。酸欠で頭が痛くなるし(苦笑)」 回復の過程は、当初よりも全体的に1ヵ月早まっているという。「ジャンプを9月に、ダッシュを8月にと言われています」。そして、いよいよ復帰レースが見えてきた。 「11月のエコパトラックゲームスの4×100mリレーを目指していきます」 ここまで、目の前の「走れるようになること」を目指してきた青山に、さらに先の目標ができた。その過程が早まった要因には、チームメイトたちの活躍がある。 日本選手権では100mで1年生の藏重みゆが3位に食い込み、アジア選手権4×100mリレー代表に選ばれた。1年先輩の井戸アビゲイル風果は、200mで4月の日本学生個人選手権を制し、ワールドユニバーシティ代表に選出されている。2年生の岡根和奏、奥野由萌はともに100m、200mで自己新を連発している。 さらに、この4人で走った4×100mリレーでは関西インカレで44秒83をマーク。自身が2走を務めて大学初の日本一に輝いた昨年の日本選手権リレーで出した甲南大記録の44秒72(学生歴代3位)が、目前に迫るタイムだ。 「みんなの活躍はうれしかったです。でも、正直に言うと悔しい。このままだとみんなに追いつかれるし、リレーメンバーにも入れなくなる」。仲間たちからエースに送られた無言の“エール”。青山の心は、確実に揺さぶられた。 また、6月の日本選手権の時に、伊東先生を通じて、女子やり投で五輪2度(12年ロンドン、16年リオ)出場の海老原有希さん(国士大コーチ)と話す機会が得られたことも転機になった。 海老原さんは中学3年時に右膝の靭帯を断裂し、手術。大学時代にも同じ箇所を痛め、競技人生の大半は右膝の「テーピングと補強運動」と付き合ってきた。その経験を「マイナスなことはまったく言われず、こうすればいい、あれをしてきたと前向きに話してくださいました。すごくタメになったし、気持ちが楽になりました」と青山は、大先輩からのアドバイスに感謝する。 今季中の復帰に向けて、青山はまっすぐ前を見つめる。とはいえ、足元を見ていないわけではない。「いきなり自己ベストに戻せるなんて考えていません」。まずは12秒台でいい。それでも、来年が大学最後の年になることを考えたら、本来の短距離種目で「大会の雰囲気を味わって、記録を残しておきたいですよね」。それが、「冬季練習のモチベーションになるはずです」と言う。 本格復帰は来年。日本選手権の参加標準記録を切るところから始まるが、それでも、苦難の中で得たものは、自分の力になる。それを信じ、青山は一歩一歩、前を向いて進んでいく。 文/小川雅生RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.10.29
【女子200m】酒井菜夏(金沢ACJr/北鳴中3)24秒37=中学歴代8位タイ
2025.10.28
5000m・成沢翔英が13分51秒35で慶大記録更新! 浜川舜斗ら青学大勢3人が13分台
-
2025.10.28
-
2025.10.28
-
2025.10.28
-
2025.10.28
-
2025.10.26
2025.10.18
【大会結果】第102回箱根駅伝予選会/個人成績(2025年10月18日)
-
2025.10.18
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.29
世界陸連がトレッドミルの世界選手権「RUN X」の開催を発表!総額賞金10万ドル&世界ロードランキング選手権の出場権授与
【画像】トレッドミル世界選手権の開催を発表したコー会長 この投稿をInstagramで見る Sebastian Coe(@sebcoeofficial)がシェアした投稿
2025.10.29
【女子200m】酒井菜夏(金沢ACJr/北鳴中3)24秒37=中学歴代8位タイ
女子200m中学歴代10傑をチェック! ■女子200m中学歴代10傑 23.99 1.8 ハッサン・ナワール(松戸五3千葉) 2019.10.11 24.12 1.7 土橋智花(見前3岩手) 2010. 8.22 24. […]
2025.10.28
5000m・成沢翔英が13分51秒35で慶大記録更新! 浜川舜斗ら青学大勢3人が13分台
国士大Combined Challenge1日目は10月25日、国士大多摩キャンパス陸上競技場で行われ、男子5000mで成沢翔英(慶大)が13分51秒35の慶大記録を更新した。 成沢は長野・上田六中出身で、岐阜・麗澤瑞浪 […]
2025.10.28
田中希実がフィアログループとスポンサー契約締結!「限界を超え、新たな挑戦に挑む」理念が重なり合う
フィアログループは10月28日、女子中長距離の田中希実(New Balance)とスポンサー契約を締結したことを発表した。 フィアログループは1939年に江戸川木型製作所として創業し、産業用機械の木型(マスターモデル)、 […]
2025.10.28
【女子400m】笠松悠花(GTR/天草倉岳中3)56秒24=中学歴代3位
女子400m中学歴代10傑をチェック! 55.66 人見仁菜(足寄1北海道) 2023.10.14 56.11 藤旗桜菜(高農クラブ・2岡山) 2025. 6.28 56.24 笠松悠花(GTR・3熊本) 2025.10 […]
Latest Issue
最新号
2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望