◇織田記念(4月29日/広島・エディオンスタジアム)
サトウ食品日本グランプリシリーズの織田記念が行われ、男子110mハードルは金井大旺(ミズノ)が優勝した。自身が昨年マークした13秒27を上回る衝撃の13秒16(+1.7)。高山峻野(ゼンリン)が持つ13秒25を更新し、日本人初の13秒1台突入となる日本新記録で東京五輪の参加標準記録(13秒32)を突破した。アジア歴代では、あの劉翔(中国)に次ぐ2位に入り、今季の世界ランキングで3位という快記録でもある。
「想定していた記録をはるかに上回っていたのでとてもビックリしています」。いつも通り冷静に淡々と話す金井だが、その表情からは自信が満ちあふれていた。力強いインターバルランと踏み切り、そして流れるようなハードリング。1.7mという追い風に乗って他を圧倒した。
4月17日の法大競技会で初戦を迎え、13秒36(+1.3)と上々のスタートを切っていた。金井。冬季で「ウエイトトレーニングの質と量を増やしつつ、その出力をスピードトレーニングにつなげてきた」と言い、3月の室内60mハードル、そして屋外初戦と「中盤は良かった」と手応えがあった。一方で、「スタートが完璧ではなくて1、2台目で浮いてしまっていた」という。決勝では、「(力が)上にいくことなく、前に進められた。今回やっと噛み合った」と好記録の要因を分析。これまで以上のスピード感にも「ブレーキすることなく、すごくいいレースだったと思います」と納得の表情を浮かべた。
覚悟の冬を過ごした。金井は東京五輪を競技人生の集大成とし、今シーズン終了後には父の跡を継ぐため歯科医師を目指して進学すると決めている。日々の練習に加えて、「習慣化しないといけない」と毎日机に必ず向かうようにしているのだという。この冬は「1日、1日の重さを感じながら取り組んできた」と言い、「もう一度この冬季トレーニングができるかと聞かれてイエスとは言えない」というほど追い込んだ。「区切りをつけてやっているからこそ、この記録につながった」。どれだけの快記録を出しても、競技引退を覆すつもりはない。
目指すのは東京五輪のファイナル。13秒1台はまさにワールドクラスで、準決勝でマークすればほぼ間違いなく決勝へと進める記録であると同時に、メダルも射程圏内に入る。「決勝進出のラインをクリアできたので記録の面では良かった」と話すも、「今回は追い風に乗った。風がない中でもコンスタントに記録を出せるようにしていきたい。五輪の準決勝で13秒1台の動きができるように。まずは日本選手権で3位以内に入って出場権を獲得したい」と身を引き締める。これまで、110mハードルで五輪・世界選手権のファイナルにいった日本人は、いない。ハードル人生の最終章。歴史に名を刻む壮大なストーリーはいよいよ仕上げに入る。
2位に入った泉谷駿介(順大)も自己記録を0.03秒更新する13秒33(日本歴代3位)で、東京五輪の参加標準記録に0.01秒に迫った。
かない・たいおう/1995年9月28日生まれ。北海道函館市出身。函館ラ・サール高→法大→福井県スポーツ協会→ミズノ。

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