2023.02.25
男子5000mで13分22秒99の高校記録を持つ吉岡大翔(佐久長聖高3長野)が、世界クロカン選手権(2月18日)から帰国して取材に応えた。
「完全とは言えませんが、少しずつ動けるようになってきています」。世界クロカンの舞台となった豪州・バサーストは高温で、海外勢を相手に積極的な走りを見せた吉岡だったが、フィニッシュ直前に倒れ込んだ。
「いつもより飛ばして、身体的にきついとは感じていました」。脚が動かず、手を使って必死でフィニッシュを目指す。「ラインを越えたと思ったら、実はスタートのラインでした。周囲から『ノーゴール』と言われたので、前に行きました」。本能でフィニッシュ前までたどり着いたが、「脚を前に出してから記憶がありません」。気がついたら室内のアイスバスにいたという。結果は途中棄権だった。
体内温度も高く、熱中症と診断。幸い大事には至らず20日朝に帰国し、そのまま国内の病院に向かって再度検査を受けた。軽症だったそうで、「翌日は休んで22日から歩き始めて、23日からジョグもしています」と笑顔を見せる。
佐藤悠基(現・SGホールディングス)や大迫傑(現・Nike)ら、数々の名ランナーを世に送り出してきた佐久長聖高で成長した吉岡。5000mでは高1(13分50秒27)、高2(13分38秒96)、そして高校記録と塗り替えた。競技力はもちろん、その姿勢や学校生活でも「隙がない」と高見澤勝先生は言う。
すでに退寮して進学先である順大で練習をスタートさせている。「高校とはまったく違うメニューで慣れるのに必死」と話し、毎日のように筋肉痛になるほど。質の高い練習はもちろん、3000m障害で世界トップクラスの三浦龍司(3年)ともコミュニケーションを取る。「世界の試合の環境など、いろいろ聞いています」とし、三浦からは「何かあったら頼って」と言われたそうだ。大学生活が被るのは1年間だけだが、濃密な期間となるだろう。
今年の最大目標はブダペスト世界選手権。参加標準記録13分07秒00は、大迫が持つ日本記録(13分08秒40)よりも高い壁だ。だが、吉岡は「いずれは日本記録、12分台も出したい」と強い思いを持つ。大学1年目で厳しい道のりなのは承知の上で、「来年以降も国際大会が続くので、それを見据えて代表を狙う過程を大事にしたい」という。
状態が戻れば3月末に3000mに出場予定。これが慣れ親しんだオレンジ色のユニフォームに袖を通して走る最後のレースとなりそうだ。
これまでは高校生が相手だったが、ここからの試合はすべてシニアの一線級が相手。「連戦やレベルの高いレースを経験しながら、どうやってパフォーマンスを上げていくか考えて、次につながるようにしていきたいです」。
高校陸上の歴史を塗り替えた吉岡は、順大から世界へと羽ばたいていく。
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