HOME 特集

2020.03.24

【コラム】陸上の「U20日本記録」って? 今も残る1983年の記録とは
【コラム】陸上の「U20日本記録」って? 今も残る1983年の記録とは

女子円盤投でU20日本記録を樹立した齋藤真希

3月22日に行われた東京女子体育大学の土曜競技会(学内のみで実施)で、女子円盤投の齋藤真希(東女体大1年)が54m19をマーク。これはU20日本記録で、1996年に室伏由佳(中京大)が作った54m12を24年ぶりに更新するものだった。

齋藤は山形県出身。余目中から鶴岡工高を経て、昨年春から東女体大に進学した。姉・早希もインターハイ入賞者だった齋藤は、中学時代から円盤投に取り組み、中3から高校卒業まで、学年別記録を次々と更新。高3だった18年にはこの種目では戦後初となる日本選手権優勝を果たした。やり投を除いて「世界から遠い」と言われる女子投てき種目において、今後のさらなる成長が期待される逸材の一人だ。

U20は「20歳未満」

日本陸上競技連盟は、日本記録のほかに、「U20日本記録」と「U18日本記録」を認定している(※世界陸連ではU20世界記録のみ)。今回、齋藤がマークしたのがU20日本記録。では、この「U20」とは一体何を表しているのか?

「U=アンダー」は年齢を表しており、サッカー用語としてよく使用されて浸透したと言える。
U20……20歳未満
U18……18歳未満
とカテゴライズされ、陸上においては「該当年の12月31日現在の満年齢」である。

例えば、ストレートで大学に入学した場合は、多くの選手が「大学1年目の12月まで」がU20世代、早生まれの選手であれば「大学2年目の12月まで」がU20世代に該当する。

広告の下にコンテンツが続きます

齋藤は今年4月から大学2年目を迎えるが、2001年2月13日生まれの「早生まれ」であるため、今年いっぱいまではU20記録の資格を持っている。

19年度は日本選手権実施種目でU20日本記録(◎マークは日本陸連が公認していない種目・記録であり、U20日本最高記録とする)が更新されたのがこちら。男女合わせて9種目で更新された。
※複数更新されたものは最高のみ

【男子】
800m 1分46秒59 クレイ・アーロン竜波(相洋高)
110mH◎ 13秒36 泉谷駿介(順大)
走幅跳 8m12 藤原孝輝(洛南高)
三段跳 16m34 伊藤 陸(近大高専)
【女子】
5000m 15分05秒40 廣中瑠璃佳(JP日本郵政G)
3000m障害◎ 9分49秒30 吉村玲美(大東大)
棒高跳 4m15 田中伶奈(香川大)
円盤投 54m19 齋藤真希(東女体大)
ハンマー投 60m49 渡邊ももこ(筑波大)

このうち、泉谷の13秒36は当時日本タイ記録で、U20世界歴代4位という驚異的な記録だ。また、高校2年生の藤原の8m12はU18日本記録でもあり、U18世界歴代4位タイに入る。

今も残る愛敬重之の3000m障害

アジア大会優勝など活躍した愛敬重之

U20日本記録には、男子の100m10秒01・桐生祥秀(洛南高/13年)、400mH49秒09・為末大(広島皆実高/96年)、やり投78m57・ディーン元気(早大/10年)、女子の100m11秒43・土井杏南(埼玉栄高/12年)、1500m4分07秒86・小林祐梨子(須磨学園高/06年)、やり投61m38・北口榛花(日大/16年)といった、名実ともにトップクラスの選手たちがズラリと並ぶ。

そのU20日本記録の中で、2020年3月時点で「最古の記録」となっているのがこちら。

男子3000m障害 8分31秒27
愛敬重之(中京大)
1983年8月9日/ヘルシンキ世界選手権

なんと36年前の記録だ。愛敬は三重県出身で、名門・四日市工高時代にも1500m障害や5000mを中心に世代トップとして活躍。中京大時代に世界選手権でU20記録更新、インカレ制覇など果たし、NTNでもアジア大会金メダルなど、華々しい活躍を見せた名ランナーだった。現在は桑名市の市議会議員を務めている。

父・愛敬実もインカレで3000m障害優勝など中長距離として活躍した選手で、息子の愛敬彰太郎(桑名高→早大)は400mをメインに、今も父と同じNTN所属で高みを目指して走っている。

記録の面では、この「3000m障害」が非常に“くせもの”だ。

日本学生記録は新宅雅也(日体大)が1979年にマークした8分25秒8が現在も残っている。日本記録も2003年(岩水嘉孝、トヨタ自動車)から動いておらず「古い部類」に入ってきた。

昨年、三浦龍司が高校記録を更新したが、その前は櫛部静二が1989年に作った8分44秒77が「最古の高校記録」として30年間君臨していた。

ちなみに、3000m障害のU20日本記録が「最古」になったのは、昨年、伊藤陸によって男子三段跳の記録が更新されたから。それ以前は三段跳が最古のU20日本記録だった。

男子三段跳 16m29
中西正美(日体大)
1977年5月22日/関東インカレ

こちらは実に42年ぶりに更新されて話題となった。

2020年シーズン。次に「最古の記録」が更新されるのは何の種目だろうか。

文/向永拓史

女子円盤投でU20日本記録を樹立した齋藤真希 3月22日に行われた東京女子体育大学の土曜競技会(学内のみで実施)で、女子円盤投の齋藤真希(東女体大1年)が54m19をマーク。これはU20日本記録で、1996年に室伏由佳(中京大)が作った54m12を24年ぶりに更新するものだった。 齋藤は山形県出身。余目中から鶴岡工高を経て、昨年春から東女体大に進学した。姉・早希もインターハイ入賞者だった齋藤は、中学時代から円盤投に取り組み、中3から高校卒業まで、学年別記録を次々と更新。高3だった18年にはこの種目では戦後初となる日本選手権優勝を果たした。やり投を除いて「世界から遠い」と言われる女子投てき種目において、今後のさらなる成長が期待される逸材の一人だ。

U20は「20歳未満」

日本陸上競技連盟は、日本記録のほかに、「U20日本記録」と「U18日本記録」を認定している(※世界陸連ではU20世界記録のみ)。今回、齋藤がマークしたのがU20日本記録。では、この「U20」とは一体何を表しているのか? 「U=アンダー」は年齢を表しており、サッカー用語としてよく使用されて浸透したと言える。 U20……20歳未満 U18……18歳未満 とカテゴライズされ、陸上においては「該当年の12月31日現在の満年齢」である。 例えば、ストレートで大学に入学した場合は、多くの選手が「大学1年目の12月まで」がU20世代、早生まれの選手であれば「大学2年目の12月まで」がU20世代に該当する。 齋藤は今年4月から大学2年目を迎えるが、2001年2月13日生まれの「早生まれ」であるため、今年いっぱいまではU20記録の資格を持っている。 19年度は日本選手権実施種目でU20日本記録(◎マークは日本陸連が公認していない種目・記録であり、U20日本最高記録とする)が更新されたのがこちら。男女合わせて9種目で更新された。 ※複数更新されたものは最高のみ 【男子】 800m 1分46秒59 クレイ・アーロン竜波(相洋高) 110mH◎ 13秒36 泉谷駿介(順大) 走幅跳 8m12 藤原孝輝(洛南高) 三段跳 16m34 伊藤 陸(近大高専) 【女子】 5000m 15分05秒40 廣中瑠璃佳(JP日本郵政G) 3000m障害◎ 9分49秒30 吉村玲美(大東大) 棒高跳 4m15 田中伶奈(香川大) 円盤投 54m19 齋藤真希(東女体大) ハンマー投 60m49 渡邊ももこ(筑波大) このうち、泉谷の13秒36は当時日本タイ記録で、U20世界歴代4位という驚異的な記録だ。また、高校2年生の藤原の8m12はU18日本記録でもあり、U18世界歴代4位タイに入る。

今も残る愛敬重之の3000m障害

アジア大会優勝など活躍した愛敬重之 U20日本記録には、男子の100m10秒01・桐生祥秀(洛南高/13年)、400mH49秒09・為末大(広島皆実高/96年)、やり投78m57・ディーン元気(早大/10年)、女子の100m11秒43・土井杏南(埼玉栄高/12年)、1500m4分07秒86・小林祐梨子(須磨学園高/06年)、やり投61m38・北口榛花(日大/16年)といった、名実ともにトップクラスの選手たちがズラリと並ぶ。 そのU20日本記録の中で、2020年3月時点で「最古の記録」となっているのがこちら。 男子3000m障害 8分31秒27 愛敬重之(中京大) 1983年8月9日/ヘルシンキ世界選手権 なんと36年前の記録だ。愛敬は三重県出身で、名門・四日市工高時代にも1500m障害や5000mを中心に世代トップとして活躍。中京大時代に世界選手権でU20記録更新、インカレ制覇など果たし、NTNでもアジア大会金メダルなど、華々しい活躍を見せた名ランナーだった。現在は桑名市の市議会議員を務めている。 父・愛敬実もインカレで3000m障害優勝など中長距離として活躍した選手で、息子の愛敬彰太郎(桑名高→早大)は400mをメインに、今も父と同じNTN所属で高みを目指して走っている。 記録の面では、この「3000m障害」が非常に“くせもの”だ。 日本学生記録は新宅雅也(日体大)が1979年にマークした8分25秒8が現在も残っている。日本記録も2003年(岩水嘉孝、トヨタ自動車)から動いておらず「古い部類」に入ってきた。 昨年、三浦龍司が高校記録を更新したが、その前は櫛部静二が1989年に作った8分44秒77が「最古の高校記録」として30年間君臨していた。 ちなみに、3000m障害のU20日本記録が「最古」になったのは、昨年、伊藤陸によって男子三段跳の記録が更新されたから。それ以前は三段跳が最古のU20日本記録だった。 男子三段跳 16m29 中西正美(日体大) 1977年5月22日/関東インカレ こちらは実に42年ぶりに更新されて話題となった。 2020年シーズン。次に「最古の記録」が更新されるのは何の種目だろうか。 文/向永拓史

次ページ:

       

RECOMMENDED おすすめの記事

    

Ranking 人気記事ランキング 人気記事ランキング

Latest articles 最新の記事

2025.02.15

連覇目指す順大は村尾雄己、永原颯磨、小暮真緒を登録!日体大は後半に山﨑、分須ら4年生トリオ/大学男女混合駅伝

関西学連は25年2月16日に開催される第5回全国大学対校男女混合駅伝のオーダーを発表した。 前回覇者で3度の優勝を誇る順大は、1区に日本インカレ3000m障害2連覇の村尾雄己、3区に3000m障害高校記録保持者の永原颯磨 […]

NEWS 女子3連覇狙う藤井菜々子 パリ五輪の「挫折をバネに」岡田久美子は6度目世界陸上目指す/日本選手権20km競歩

2025.02.15

女子3連覇狙う藤井菜々子 パリ五輪の「挫折をバネに」岡田久美子は6度目世界陸上目指す/日本選手権20km競歩

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース) 東京世界選手権代表選考会を兼ねた日本選手権20km競歩が行われる。大会を前日に控え、有力選手が会見に登壇した。女子は藤井菜々子(エ […]

NEWS 最後の箱根路/関東学生連合の亜細亜大・片川祐大 1区で見せ場「やり切れたのは間違いない」

2025.02.15

最後の箱根路/関東学生連合の亜細亜大・片川祐大 1区で見せ場「やり切れたのは間違いない」

第101回箱根駅伝で力走した選手たちがいる。勝利の栄光で日の目を見た選手以外にもそれぞれの思いを胸に秘め、必死でタスキをつないだ。毎年行われる箱根路でも「第101回」は一度のみ。そんな“最後”の舞台を駆け抜けた選手たちの […]

NEWS 五輪代表の濱西諒 東京世界陸上切符「つかめるように歩きたい」/日本選手権20km競歩

2025.02.15

五輪代表の濱西諒 東京世界陸上切符「つかめるように歩きたい」/日本選手権20km競歩

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース) 東京世界選手権代表選考会を兼ねた日本選手権20km競歩が行われる。大会を前日に控え、有力選手が会見に登壇した。 昨年のパリ五輪で初 […]

NEWS パリ五輪入賞の古賀友太「派遣設定記録を切って優勝」と初Vに照準/日本選手権20km競歩

2025.02.15

パリ五輪入賞の古賀友太「派遣設定記録を切って優勝」と初Vに照準/日本選手権20km競歩

◇第108回日本選手権20km競歩(2月16日/兵庫県神戸市・六甲アイランド付設コース) 東京世界選手権代表選考会を兼ねた日本選手権20km競歩が行われる。大会を前日に控え、有力選手が会見に登壇した。 昨年のパリ五輪男子 […]

SNS

Latest Issue 最新号 最新号

2025年3月号 (2月14日発売)

2025年3月号 (2月14日発売)

別府大分毎日マラソン
落合 晃×久保 凛
太田智樹、葛西潤
追跡箱根駅伝&高校駅伝

page top