◇第99回箱根駅伝予選会(10月15日/東京・陸上自衛隊立川駐屯地スタート、昭和記念公園フィニッシュ:21.0975km)
一昨年の28位、昨年の16位、そして6位――。立大が異例のジャンプアップで55年ぶりの箱根駅伝本戦出場を勝ち取った。「史上最長ブランク」を乗り越えたのは、1~3年生のフレッシュなメンバーたちだ。
「才能ある選手が入りましたし、上野(裕一郎)監督は指導力がありますからね」。こう話したのは別の大学の監督。他の大学でも立大予選突破の話題は持ち切りだった。ライバル校の台頭を警戒しつつも、「意外ではない」と受け取める他大学関係者は少なくない。
上野監督は2018年の監督就任直前まで現役。就任後も自ら走って選手を引っ張り、レースにも出てペースメイク役を買って出た。今年3月には立川シティハーフマラソンで優勝している。「日本一速い監督」と話題になり、「本当は僕が目立っていてはいけないのですけど」と頭をかく本人。「やりたいようにやってきた」と、選手時代の奔放さは自ら認めるところ。記憶に新しいそんなイメージと、「指導力のある監督」の実像に、駅伝ファンはギャップを感じるかもしれない。
「監督の苦悩ですか? 全然ないです。苦しんだのは選手たち。選手たちの走りやすい環境を整えるのが監督の仕事ですから」。そんな風に、スマートなコメントを残す「監督」だ。
遂行した作戦には、選手時代のらしさも垣間見えた。「15kmを45分で通過する」。ここに選手たちの意識を集中させた。「終盤のことは考えるな」と付け加えて。
前回の予選会でも、果敢にとばした。5km通過時では総合トップ。後半に失速して総合16位となったが、1年前のチャレンジが、今回の作戦の土台にある。
予選会では主流の集団走を行わず、個々人が自立してペースを作るスタイルは踏襲。「選手を縛りつけたくない」との信念に通じる。5kmを総合4位、10kmを総合3位で通過。15kmはやや下がって5位としだが、ここで11位チームに対するアドバンテージが2分58秒。これを生かすか殺すか。15kmでチームの先頭にいたのは1年生の國安広人だ。16kmで18位集団の前へ飛び出し、攻めの走りを敢行。本戦経験者らと堂々対峙し、個人21位に食い込んできた。
45位、53位に続いた中山凛斗(3年)と安藤圭佑(2年)も15kmから順位を引き上げてのフィニッシュ。林虎大朗(2年)、関口絢太(3年)、永井駿(1年)は、終盤の落ち込みを最小限に抑え、計6人が二桁順位に滑り込んだ。攻めてつかんだ本戦切符だ。
立大は1936~68年の間に27回本戦出場し、最高順位は1957年に3位を記録。青学大の33年、筑波大の26年などを超えて、最長ブランクを経た復活になる。「東京六大学」のうち5校が同時出場した1984年記念大会で、1校だけ蚊帳の外だったのが立大だった。
大学の創立150周年にあたる2024年の本戦復帰を目指していたが、1年早い目標達成だ。「55年」の感想を問われた上野監督は、「多くのサポートが思い起こされます」と関係者への感謝を寄せる。
上野監督が忙しく取材対応している場所へ、東海大・両角速監督が歩み寄ってきた。長野・佐久長聖高時代の恩師が手を差し出し、がっちり握手で祝福。予選会成績で総合9位の東海大を上回った。「これで超えたなんてことは決してなく、まだ追いかける立場だと思っています」とは、上野監督の謙遜でなく本音だろう。
「今日1日は喜んでいいと思いますが、これで注目される立場になり、私も選手も気を引き締めて、緊張感を共有していきたい」。「自立した走り」を遂行した選手たちが、本戦もたくましく走り抜けるだろうか。
文/奥村 崇

RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
-
2025.10.17
-
2025.10.13
-
2025.10.13
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.10.17
青森山田10年連続男女V 男子は2時間5分27秒で31回目の都大路 女子は1時間10分08秒で33連覇/青森県高校駅伝
全国高校駅伝の出場権を懸けた青森県高校駅伝が10月17日、青森市の新青森県総合運動公園陸上競技場を発着点とする周辺周回コースで行われ、青森山田が10年連続の男女Vを遂げた。男子(7区間42.195km)は2時間5分27秒 […]
2025.10.17
後藤大樹が300mH再びU18日本新の35秒44! 中盤にアクシデント「34秒台を目標にしていた」/U18・16大会
◇第19回U18・第56回U16大会(10月17~19日/三重交通Gスポーツの杜伊勢陸上競技場)1日目 U18・U16大会の第1日目が行われ、U18男子300mハードル決勝は後藤大樹(洛南高1京都)が35秒44で優勝し、 […]
2025.10.17
日本陸連キャリア支援プログラムの第6期受講生が決定 佐々木哲、大西勧也ら9名
日本陸連は10月17日、主に大学アスリートを対象としたキャリアサポート支援の「ライフスキルトレーニングプログラム」の第6期受講生を発表した。 今回決まった受講生は9名。男子3000m障害で今年のアジア選手権4位に入賞した […]
2025.10.17
ヴィンセント、池田耀平が故障のため欠場 近藤、飯田、森井らも調整不良のためキャンセル/東京レガシーハーフ
10月19日に行われる東京レガシーハーフマラソンの主催者は10月17日、招待選手の男子でイェゴン・ヴィンセント(Honda)、池田耀平(Kao)が欠場することを発表した。いずれも故障が理由という。 このほか、エリート男子 […]
Latest Issue
最新号

2025年11月号 (10月14日発売)
東京世界選手権 総特集
箱根駅伝予選会&全日本大学駅伝展望