2020.02.28
免疫力UPでパフォーマンスアップ
「免疫」が持つチカラ(前編)1
新型コロナウイルス感染のニュースが流れ、不安な毎日を過ごしているアスリートも多いかもしれない。そうでなくとも冬は寒さ、乾燥からくる風邪などの体調不良が起こりやすく、インフルエンザやノロウイルスといった感染症も流行しやすい。
そこで重要となるのが「免疫力」だ。コンディショニングと密接な関係がある「免疫」をテーマとしたアドバイスを、国立スポーツ科学センター研究員の清水和弘氏からいただいた。今こそ「免疫力」を高めて冬を乗り越えよう!
◎構成/田坂友暁
1 免疫力とは?
最近『免疫力』という言葉をよく耳にします。「免疫」とは書いて字のごとく、疫(疾患、病気)を免れるための力です。
みなさんは、この免疫力と聞いて、何を想像されますか? 免疫力を高めれば風邪を引きにくくなる、病気にかかりにくくなる、などでしょうか。確かに免疫力が高まるとその通りになるのですが、厳密に言えば少し違います。
免疫力とは、「非自己なものを排除する力」のことです。ウイルスや細菌、花粉などもそうですが、これらは「非自己」。つまり、人間の中にもともとあるものではありません。これらが身体の中に入ってこようとした時に、身体の外に出す、もしくは中に入ってしまったらそれを撃退する機能が、免疫なのです。
粘膜免疫と全身免疫
免疫には2つの段階があります。1つ目が粘膜免疫で、繊毛や粘膜が非自己のものを体内に入らないようにするためのもの。いわゆる〝バリア機能〟と言われるものです。
もう1つは全身免疫。これは身体の中に入ってしまったウイルスなどの非自己なものを退治、排除する力です。感染してしまった細胞を退治するために、身体は発熱をしたり炎症を起こしたり、痛みが出たりします。こちらの全身免疫が働く時というのは、一般的に体調悪化と言われる状態になります。
2つの違いは、風邪の引き始めをイメージするとわかりやすいでしょう。くしゃみが出たり、鼻水が出たりする状態は、身体に入ろうとしている細菌やウイルスを体外に排出しようとする反応ですから、粘膜免疫が働いている状態です。それがしばらくすると、のどに痛みが出てくる。これは体内に入ったものを退治している状態になりますから、全身免疫です。
簡単に言えば、人間の身体はまず最初に粘膜免疫でウイルスや細菌の体内への侵入を防ごうとします。それでも侵入してきてしまったウイルスや細菌を、今度は全身免疫で退治する。こういう順番で、人間は体調を保っているのです。
もちろん、くしゃみや鼻水が出る状態(粘膜免疫)というのは、競技に集中できる状態ではありませんから、それも体調不良と捉えるべきでしょう。ただ、パフォーマンス向上を目指すアスリートなら、発熱や炎症を起こすような状態(全身免疫)まで体調を悪化させない、ということが大切になります。
つまり、体調不良、悪化を防ぐためには、まずは粘膜免疫の力を高め、細菌やウイルスを体内に入れない「バリア機能」の働きを持つ粘膜免疫の性能を高めることが大切になるということです。
免疫力は日々のコンディションにつながる
アスリートにとって、一番大切なことは何でしょうか。狙った大会にコンディションを合わせて結果を残すことももちろん大事です。ですが大会で結果を残すために、日々のトレーニングを良いコンディションで行い〝続ける〟ことではないでしょうか。体調が良い状態で、良いトレーニングをこなすことができれば、パフォーマンスは向上していきます。
そう考えれば、自ずと答えは見えてきます。免疫力というのは、良いコンディションを保つための要素の一つだということ。免疫力(バリア機能)を高める=パフォーマンスアップではなく、免疫力(バリア機能)を高めることによって、パフォーマンスを上げるためのトレーニングを継続して行える身体の状態を維持できる、ということなのです。
アスリートにとっては、体調が悪化してトレーニングができないことはパフォーマンス低下につながりますから、その状態にしないこと。バリア機能を高め、細菌やウイルスを排除してしまうこと。そうすれば、良いコンディションを保ち続けることができ、トレーニングも問題なく継続することができます。それが、結果的に自己の成長につながり、パフォーマンスアップにつながり、最終的には狙った大会で結果を残すことにつながっていくのです。
<引用元>
『月刊陸上競技』2020年1月号
免疫力UPでパフォーマンスアップ 「免疫」が持つチカラ(前編)1
新型コロナウイルス感染のニュースが流れ、不安な毎日を過ごしているアスリートも多いかもしれない。そうでなくとも冬は寒さ、乾燥からくる風邪などの体調不良が起こりやすく、インフルエンザやノロウイルスといった感染症も流行しやすい。 そこで重要となるのが「免疫力」だ。コンディショニングと密接な関係がある「免疫」をテーマとしたアドバイスを、国立スポーツ科学センター研究員の清水和弘氏からいただいた。今こそ「免疫力」を高めて冬を乗り越えよう! ◎構成/田坂友暁1 免疫力とは?
最近『免疫力』という言葉をよく耳にします。「免疫」とは書いて字のごとく、疫(疾患、病気)を免れるための力です。 みなさんは、この免疫力と聞いて、何を想像されますか? 免疫力を高めれば風邪を引きにくくなる、病気にかかりにくくなる、などでしょうか。確かに免疫力が高まるとその通りになるのですが、厳密に言えば少し違います。 免疫力とは、「非自己なものを排除する力」のことです。ウイルスや細菌、花粉などもそうですが、これらは「非自己」。つまり、人間の中にもともとあるものではありません。これらが身体の中に入ってこようとした時に、身体の外に出す、もしくは中に入ってしまったらそれを撃退する機能が、免疫なのです。粘膜免疫と全身免疫
免疫には2つの段階があります。1つ目が粘膜免疫で、繊毛や粘膜が非自己のものを体内に入らないようにするためのもの。いわゆる〝バリア機能〟と言われるものです。 もう1つは全身免疫。これは身体の中に入ってしまったウイルスなどの非自己なものを退治、排除する力です。感染してしまった細胞を退治するために、身体は発熱をしたり炎症を起こしたり、痛みが出たりします。こちらの全身免疫が働く時というのは、一般的に体調悪化と言われる状態になります。 2つの違いは、風邪の引き始めをイメージするとわかりやすいでしょう。くしゃみが出たり、鼻水が出たりする状態は、身体に入ろうとしている細菌やウイルスを体外に排出しようとする反応ですから、粘膜免疫が働いている状態です。それがしばらくすると、のどに痛みが出てくる。これは体内に入ったものを退治している状態になりますから、全身免疫です。 簡単に言えば、人間の身体はまず最初に粘膜免疫でウイルスや細菌の体内への侵入を防ごうとします。それでも侵入してきてしまったウイルスや細菌を、今度は全身免疫で退治する。こういう順番で、人間は体調を保っているのです。
免疫力は日々のコンディションにつながる
アスリートにとって、一番大切なことは何でしょうか。狙った大会にコンディションを合わせて結果を残すことももちろん大事です。ですが大会で結果を残すために、日々のトレーニングを良いコンディションで行い〝続ける〟ことではないでしょうか。体調が良い状態で、良いトレーニングをこなすことができれば、パフォーマンスは向上していきます。 そう考えれば、自ずと答えは見えてきます。免疫力というのは、良いコンディションを保つための要素の一つだということ。免疫力(バリア機能)を高める=パフォーマンスアップではなく、免疫力(バリア機能)を高めることによって、パフォーマンスを上げるためのトレーニングを継続して行える身体の状態を維持できる、ということなのです。 アスリートにとっては、体調が悪化してトレーニングができないことはパフォーマンス低下につながりますから、その状態にしないこと。バリア機能を高め、細菌やウイルスを排除してしまうこと。そうすれば、良いコンディションを保ち続けることができ、トレーニングも問題なく継続することができます。それが、結果的に自己の成長につながり、パフォーマンスアップにつながり、最終的には狙った大会で結果を残すことにつながっていくのです。 免疫力UPでパフォーマンスアップ(前編)2へ <引用元> 『月刊陸上競技』2020年1月号
|
|
RECOMMENDED おすすめの記事
Ranking
人気記事ランキング
2025.06.15
編集部コラム「私のインターハイ地区大会」
2025.06.15
小原響が3000m障害で8分22秒64の日本歴代8位!セイコーGGPに続く自己新マーク
-
2025.06.11
2025.05.28
女子10000mがレース途中で異例の中断!! 大雨と雷の影響も選手困惑/アジア選手権
2025.05.16
2025高校最新ランキング【女子】
-
2025.06.04
2022.04.14
【フォト】U18・16陸上大会
2021.11.06
【フォト】全国高校総体(福井インターハイ)
-
2022.05.18
-
2023.04.01
-
2022.12.20
-
2023.06.17
-
2022.12.27
-
2021.12.28
Latest articles 最新の記事
2025.06.15
編集部コラム「私のインターハイ地区大会」
毎週金曜日更新!? ★月陸編集部★ 広告の下にコンテンツが続きます 攻め(?)のアンダーハンドリレーコラム🔥 毎週金曜日(できる限り!)、月刊陸上競技の編集部員がコラムをアップ! 陸上界への熱い想い、日頃 […]
2025.06.15
NCG5000mはアジア選手権5位・荒井七海が13分47秒58で日本人トップ!東海大・永本脩が学生トップ/日体大長距離競技会
第322回日本体育大学長距離競技会兼第16回NITTAIDAI Challenge Games(NCG)の2日目が6月15日に行われ、最終種目のNCG男子5000mはB.キプトゥー(麗澤大)が13分46秒77で1着を占め […]
2025.06.15
小原響が3000m障害で8分22秒64の日本歴代8位!セイコーGGPに続く自己新マーク
6月14日に米国・ポートランドで行われたポートランド・トラックフェスティバルの男子3000m障害で、小原響(GMOインターネットグループ)が日本歴代8位の8分22秒64をマークした。 大会は世界陸連コンチネンタルツアー・ […]
Latest Issue
最新号

2025年7月号 (6月13日発売)
詳報!アジア選手権
日本インカレ
IH都府県大会